昨夕のテレビニュースで安倍晋三が11月24日(2015年)に首相官邸で開いた経済財政諮問会議でGDP=国内総生産600兆円の達成に向けて、その達成の駆動力の一つとして現在全国平均で時給798円の最低賃金を来年以降、毎年3%程度引き上げ、1000円にすることを目指す考えを示したとマスコミが伝えていた。
安倍晋三は2015年9月24日、自民党本部で自民党総裁として記者会見して、GDP600兆円の達成を含めた「『ニッポン「一億総活躍」プラン』を作り、2020年に向けて、その実現に全力を尽くす決意です」と高らかに宣言した。
そのためには一般的な賃上げのみならず、最低賃金の引き上げも必要不可欠な達成の要素だと考えたのだろう。
要するに2020年GDP600兆円達成の計画を立てなければ出てこなかったかもしれない。
首相官邸サイトの「経済財政諮問会議」のページにアクセスしてみた。
安倍晋三「名目GDPを2020年頃に向けて600兆円に増加させていく中で、昨年12月の政労使合意に沿って賃金上昇等による継続的な好循環の確立を図るとともに、最低賃金についてもこれにふさわしいものとしなければなりません。
そのためには、最低賃金を年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくことが重要であります。これにより、全国加重平均が1000円となることを目指します。
このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業、小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図ってまいります。厚生労働大臣、経済産業大臣には最低賃金の引上げに向けてしっかりと対応するよう指示をします」――
9月24日の「一億総活躍社会」のプランを打ち出した記者会見では、「2020年に向けて、その実現に全力を尽くす決意です」との表現で期限をきっかりと2020年と区切っていたが、ここでは「2020年頃に向けて」と、「頃」の文字を付け加えて期限が曖昧になっている。
前倒しならともかく、後ろ倒しもあり得るニュアンスの発言へと変化させている。2020年までにGDP600兆円の達成は困難だとする論調の記事が出回っていることに対する用心に見える。
プランを唱えたばかりだというのに、今から用心を見せるようでは頼りないし、用心は達成できないときの責任問題に対する心理的な身構えでもあるから、狡猾な振舞いと言うこともできる。
いずれにしても最低賃金を年率3%程度を目途として「2020年頃」までに全国加重平均額が1000円となることを目指すとする目標を掲げた。
正直言って、「加重平均」について無知であったから、ネットでどのように計算するのか調べてみた。
冒頭に触れているように2015年10月に発表された「地域別最低賃金改定状況」に於ける全国加重平均額は798円となっている。各都道府県別の最低賃金を合計して47自治体で割ると、734円となって、加重平均額の方が64円高い。
最低賃金の加重平均はそれぞれの自治体で最低賃金で何人の労働者が働いていて、それらを乗じて、乗じた合計額に自治体数で割った金額らしい。
らしいというのは、調べてみて確信が持てないからだが、間違いないと思う。
例えば東京の今年の最低賃金は907円で、最低賃金で労働する人間が1000人いるとすると、全国で最も低い沖縄は693円で、他にも2自治体程同額となっているが、693円で働く労働者を700人とする。
両者の最低賃金の単純平均額は(907円+693円)÷2=800円。
これに労働者数を加えて計算すると、東京970円✕1000人=(970000円+沖縄693円✕700人=485100円)=1455100円。
1455100円÷(東京1000人+沖縄700人)=856円となって、見かけ上、平均額は多くなる。
労働者数はあくまでも東京の労働者人口が多くて、沖縄は少ないだろうと推定して適当な数字を用いたに過ぎないことを断っておく。
同じ1000人とすると、東京970円✕1000人=(970000円+沖縄693円✕1000人=693000円)=1663000円÷2000人≒832円となる。
労働者の人数に差を設けると、沖縄はマイナスの差が大きくなり、同数とすると、東京はプラスの差が大きくなる。
どうも加重平均額とすることで、平均額だけを大きく見せているように疑いたくなる。
各都道府県の労働者数は調べれば出てくるかもしれないが、膨大な計算になるから、全国加重平均額798円を基準に最低賃金を年3%上げていくと、(1+0.03)=1.03を掛けていって、何年に1000円に到達するか計算してみた。小数点以下は四捨五入。労働者数の増減は無視する。
一度に計算する方程式(多分乗倍していく計算)があるのかもしれないが、生憎数学が苦手ときている。
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
798 822 847 872 898 925 953 981 1011
2020年後から3年後の2023年にならないと、最低賃金は1000円を超えることができない。
このような計算方法で最低賃金693円の沖縄を計算してみた。
2000年から27年後の2027年に1000円一歩手前の998円。28年後の2028年に1018円と、1000円を18円超えることができる。
エクセルでの計算方法を調べたところ、沖縄最低賃金693円に2015年から2028年迄の13年を1.03の13乗としてみたところ、四捨五入で1018円とでたから、計算は正しいと思う。
同じく全国加重平均額798年に1.03を8年後の8乗してエクセルで計算すると、四捨五入で1010円と出た。
こう見てくると、〈「全国一律最低賃金1000円」とは言っていないのだから、〉(2015年1月26日7時10分書き加え)安倍晋三の「2020年GDP600兆円」はアベノミクスは格差ミクスの名前通りに相応しい、やはり格差をそのまま残した最低賃金全国加重平均額1000円と見なければならない。
参考までの以下を掲載しておく。
平成27年度地域別最低賃金改定状況
都道府県名 最低賃金時間額【円】 発効年月日
北海道 764 (748) 平成27年10月8日
青 森 695 (679) 平成27年10月18日
岩 手 695 (678) 平成27年10月16日
宮 城 726 (710) 平成27年10月3日
秋 田 695 (679) 平成27年10月7日
山 形 696 (680) 平成27年10月16日
福 島 705 (689) 平成27年10月3日
茨 城 747 (729) 平成27年10月4日
栃 木 751 (733) 平成27年10月1日
群 馬 737 (721) 平成27年10月8日
埼 玉 820 (802) 平成27年10月1日
千 葉 817 (798) 平成27年10月1日
東 京 907 (888) 平成27年10月1日
神奈川 905 (887) 平成27年10月18日
新 潟 731 (715) 平成27年10月3日
富 山 746 (728) 平成27年10月1日
石 川 735 (718) 平成27年10月1日
福 井 732 (716) 平成27年10月1日
山 梨 737 (721) 平成27年10月1日
長 野 746 (728) 平成27年10月1日
岐 阜 754 (738) 平成27年10月1日
静 岡 783 (765) 平成27年10月3日
愛 知 820 (800) 平成27年10月1日
三 重 771 (753) 平成27年10月1日
滋 賀 764 (746) 平成27年10月8日
京 都 807 (789) 平成27年10月7日
大 阪 858 (838) 平成27年10月1日
兵 庫 794 (776) 平成27年10月1日
奈 良 740 (724) 平成27年10月7日
和歌山 731 (715) 平成27年10月2日
鳥 取 693 (677) 平成27年10月4日
島 根 696 (679) 平成27年10月4日
岡 山 735 (719) 平成27年10月2日
広 島 769 (750) 平成27年10月1日
山 口 731 (715) 平成27年10月1日
徳 島 695 (679) 平成27年10月4日
香 川 719 (702) 平成27年10月1日
愛 媛 696 (680) 平成27年10月3日
高 知 693 (677) 平成27年10月18日
福 岡 743 (727) 平成27年10月4日
佐 賀 694 (678) 平成27年10月4日
長 崎 694 (677) 平成27年10月7日
熊 本 694 (677) 平成27年10月17日
大 分 694 (677) 平成27年10月17日
宮 崎 693 (677) 平成27年10月16日
鹿児島 694 (678) 平成27年10月8日
沖 縄 693 (677) 平成27年10月9日
全国加重平均額 798 (780)
※括弧書きは、平成26年度地域別最低賃金