日ハムファイターズ広告「北海道は、開拓者の大地」の問題点は何か アイヌ民族は北方四島の返還を求めよ

2015-11-09 07:38:36 | 政治


 北海道・新千歳空港出発ロビーの鉄骨屋根から吊るした縦5.5メートル✕横2メートルの特大の垂れ幕型のプロ野球北海道日本ハムファイターズの広告が北海道の先住民であるアイヌ民族の、その先住民としての権利を害しているとしてアイヌ民族の最大組織「北海道アイヌ協会」(札幌市)が球団側に配慮を求める文書を提出する方針だということでマスコミを賑わしている。

 広告の絵柄はグラウンド上を横向きに歩いている栗山監督が顔のみ正面に向けたその顔を上からと右片面から囲むように縦3段に、

 「北海道は、

 開拓者の

 大地だ」
と大きな白文字で描かれている。

 これは4枚の内の1枚だそうで、要するにキャッチコピーが問題にされた。

 「47NEWS」記事が共同通信社の取材に対する日ハム関係者の発言を伝えている。  

 「解釈の相違であって、スポーツにおいて何事にもチャレンジし、道を切り開くという意味で使った」

 「開拓」という意味は既にご存知だろうが、「荒野を開いて田畑とする」という意味と「新分野を切り開く」という意味がある。

 「北海道は、開拓者の大地だ」と言うとき、その「大地」は所有物としての“物”を意味させることになる。いわば、「北海道はその大地を切り開いた者の所有物だ」という意味になる。

 北海道を開拓したのは和人であって、北海道は日本人の所有物だという意味になる。

 但し北海道が未知の大地、未開の大地であったなら、「開拓者の大地だ」は開拓者にとって格好の開拓のターゲットだという意味になる。

 後者との関連から、この未知・未開を野球というスポーツが未だ取り入れられていない空間の意味、いわば野球という新しいスポーツを切り開く格好の空間という意味に譬えて、「スポーツ(野球)において何事にもチャレンジし、道を切り開くという意味」だと無理に解釈させることができないでもない。

 だが、野球というスポーツは北海道という大地に既に十分に浸透していて、新分野を切り開くという意味での開拓には当たらないし、「スポーツ(野球)において何事にもチャレンジし、道を切り開くという意味」を言葉通りに解釈すると、「スポーツ(野球)」そのものを対象としたチャレンジであり、「スポーツ(野球)」そのものに限った「道を切り開くという意味」であって、いくら日ハムファイターズが北海道を根拠地としていても、北海道を持ってきて、新分野でもない野球の「開拓者の大地だ」と意味させているとしたら、あるいは日ハムを北海道という大地に於ける野球の開拓者の位置に据え付けているとしたら、牽強付会に等しい。

 どう素直に読んでも、「北海道は、開拓者の大地だ」は開拓した和人の「大地だ」=所有物だの意味となる。

 日本人は北海道を未知の大地・未開の大地として開拓していった。だが、北海道を未知の大地・未開の大地としていたのは日本人の側であって、そこにはアイヌ民族が先住民として存在していて、アイヌ民族にとっては未知でも未開でもなく、既知の大地であった。

 アイヌ民族のその大地を日本人は優勢な武力と入植による人口の優勢によってアイヌ民族を北海道から駆逐していった。

 もし日ハムが宣伝文句に北海道と開拓という言葉を入れて、「スポーツにおいて何事にもチャレンジし、道を切り開くという意味」を持たせたかったなら、「北海道の大地で新たな地平へと開拓していく」、あるいは「北海道の大地で新たな地平へと切り開いていく」とでも書くべきだったろう。

 栗山監督の写真が開拓していく、あるいは切り開いていく主語は野球を知る者は日ハムの野球だと、その殆どが理解できるはずである。

 2008年〈平成20年〉6月6日、国会はアイヌ民族を「日本列島北部周辺、とりわけ北海道」の先住民だと認める国会決議を可決している。これは2007年9月13日の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が日本政府も賛成して採択されたことを受けた可決であった。 

 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」は第28条1項で、〈先住民族は、彼・彼女らが伝統的に所有し、または占有もしくは使用してきた土地、領域および資源であって、彼・彼女らの自由で事前の情報に基づいた合意なくして没収、収奪、占有、使用され、または損害を与えられたものに対して、原状回復を含む手段により、またはそれが可能でなければ正当、公正かつ公平な補償の手段により救済を受ける権利を有する。〉と定めている。

 いわば北海道をアイヌの大地だと原状回復――北海道返還を求めることもできる。

 だが、北海道は既に多くの日本人が住んでいて、原状回復は困難な状況にある。千島列島もアイヌ民族が先住民であったのだから、北方四島のアイヌ民族への返還を求めて、現住ロシア人と共存のアイヌ国家を建国すべきではないだろうか。

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