稲田朋美の10月10日衆院予算委、山谷えり子の10月11日参院予算委「日本民族」発言の危険な意味

2015-11-12 10:41:42 | Weblog


 2015年11月10日衆議院予算委員会閉会中審査。トップバッターは安倍晋三と思想的に瓜二つの自民党右翼国家主義者稲田朋美56歳。TPPの質問から入って、大風呂敷でしかない参議院選挙用のキレイゴト「1億総活躍社会」へとヨイショそのものの質問へ移っていった。安倍晋三はそのヨイショに応えて自己宣伝に努める。

 「1億総活躍社会」がなぜ来年の参院選用のキレイゴトかと言うと、 厚労省前日(10月9日)発表9月「毎月勤労統計調査(速報)」で物価変動考慮の実質賃金は前年比たったの0.5%増・3カ月連続プラスとなったものの、安倍晋三は同じ11月10日の国会で岡田民主党代表に対してなかなか実質賃金が上がらなかった理由に消費税を5%から8%に上げた3%分、実質賃金を押し下げる効果があったことなどを挙げ、「総雇用者所得は民主政権時と同水準で推移している」と、実質賃金目減りを差引きするアベノミクス成果としていたが、「総雇用者所得」は高所得層から低所得層までの所得の総額であり、前者の所得が増え、後者が増えない全体所得の増加もある格差を構造としている指標であることを無視しているからである。

 このことは「1億総活躍社会」に格差の視点を欠いていることの相互反映であり、その視点を欠いている以上、キレイゴトとしか言うことができない。

 稲田朋美「次にアベノミクス第2ステージ『1億総活躍社会』についてお伺いを致します。総理は少子高齢化を克服し、日本の未来に向かって挑戦することを安倍政権の最優先課題にすると明確に示されました。

 人口減に歯止めをかけ、世界でも最も急速に進んでいる少子高齢化社会を持続可能なものにしていく。これは明治維新、戦争復興に次ぐ日本民族の歴史的な挑戦だと思います」・・・・・・・

 質問はまだ続き、安倍晋三の答弁は例の如くの日本は長いことデフレに見舞われていたが、安倍政権3年でデフレを脱却しつつある、もう少しで脱却できる、賃金も増加しつつあるといった宣伝に相努め、10月29日(2015年)第1回一億総活躍国民会議で提示した「合計出生率1.8の実現」だとか、「GDP600兆円の達成」を並べ立てたに過ぎない。
 
 アベノミクス下でGDPの6割を占める消費が伸びないのは株高で富裕層が大きな利益を上げて高額な貴金属をいくら買い込もうと、高級レストランで高額な料理をいくら贅沢三昧しようが、そういった消費の総額よりも一般生活者一人ひとりが使う額は少額であっても、消費に回すその総額の方が頭数で圧倒的に優勢を占めるために遥かに高額になるのだが、その一般生活者の賃金が少しぐらい上がっても物価高に追いつかずに消費に回す余裕がないことからの消費の低迷であって、当然、格差に目を向けなければならないはずだが、安倍政治は格差の視点からの賃上げ努力となっていない。単に数字上上がればいいとしている。

 「1億総活躍社会」で掲げたGDP600兆円を実現できたとしても、格差は置き去りにされ、なお拡大しているに違いない。

 所得の分配が上にだけ恩恵をもたらしているのはアベノミクス景気が格差で成り立たせているからに他ならない。

 稲田朋美は「1億総活躍社会」は「明治維新、戦争復興に次ぐ日本民族の歴史的な挑戦」だと言っている。

 翌11月11日の参議院予算委員会閉会中審査。これも右翼の山本えり子65歳が質問に立った。

 山谷えり子「私は領土・主権・海洋担当大臣としてですね、この地図(日本と日本海を挟んで中国大陸の東側を入れた地図を描いたパネルを出して)を小・中学校に配りました。

 きちんと島々を明記し、そして日本は小さな島国だと習っておりましたが、海洋面積では世界第6位なんですね。アメリカ、ロシア、オーストラリア、インドネシア、カナダ、日本という順で、海の面積では世界第6位でございます。

 7月20日の20回目の海の日には総理もご出席頂いてイベントを開きましたけれども、その海洋立国日本という政府インターネットテレビはですね、宣伝もしていないのに非常にアクセス数が多くて、7月半ばのアクセスが総理の70年談話が1位でしたが、海洋立国日本というのが3位に着けておりましてですね、やはり『われら海の子、われら海の子』の日本民族のDNAというのは、何か大きなものがあるのかなあ、というふうに思っております」・・・・・・・

 右翼国家主義者の稲田朋美と同様、山谷えり子も「日本民族」という言葉を使った。

 これは偶然ではない。右翼国家主義者として共に日本を「日本民族」の国家だと信念し、その信念を血としているからである。

 だから、稲田朋美にしても山谷えり子にしても、自然と「日本民族」という言葉が口を突いて出たのだろう。

 安倍晋三にしても「日本の美しい国柄」と言うとき、その国柄の背景には「日本民族」を置いているはずである。「日本民族」が作り上げた国柄だと。

 問題は今の時代・現代に於いてもそれを通用させていることである。「1億総活躍社会」を「日本民族の歴史的な挑戦」だと、民族的な、いわば日本民族に限った偉大な試みに祭り上げている。

 山谷えり子は「やはり『われら海の子、われら海の子』の日本民族のDNAというのは、何か大きなものがあるのかなあ」とそのDNAの偉大さ、その血の凄さを謳い上げている。

 と言うことは、稲田朋美も山谷えり子も共に日本を民族的な優越性を持たせた単一民族国家だと見做していることになる。見做していなければ、「1億総活躍社会」を「日本民族の歴史的な挑戦」だと、日本民族に限った挑戦とすることもないし、「日本民族のDNAというのは、何か大きなものがあるのかなあ」と、日本人だけの血を言うこともない。

 そもそもからして日本を単一民族国家とするとき、既にそこに民族的な優越性を持たせている。あるいは民族的な優越性を既成事実としている。

 安倍晋三が自著「美しい国へ」で書いている、あるいはテレビで発言している「日本では、天皇を縦糸にして歴史という長大なタペストリーが織られてきたのは事実だ」にしても、民族的な優越性を天皇に象徴させた、それ故に単一民族国家意識を形作ることになっていることからの天皇観であろう。

 天皇という存在を崇拝していなければ、天皇を国の中心に常に置いたこのような思想を身に纏うことはない。天皇の存在と関わりのない場所で歴史を作り上げてきた世俗権力者や一般民衆の存在を一切排除している。

 確かに日本という国の人種構成は日本人が95%以上占めているそうだが、歴史の初期に於いて中国大陸や朝鮮半島から多くを帰化人として迎えている混血人種であり、今日に於いても多くの外国人が日本国籍を得ている。今後も日本国籍を得る外国人も増えるだろう

 帰化日本人に関しては自然人類学者であった故埴原(はにはら)和郎氏が3世紀の弥生時代前期から奈良時代に至る7世紀までの1000年間に朝鮮半島から日本にやってきた渡来人の数を数十万から100万と推定していて、この推定は大阪府吹田市の国立民族学博物館小山修三教授が、縄文時代の約1千年間に数千人~30万人の間を浮動していた人口が弥生時代に約450万人の増加を見ていて、自然増とは決して見えないこの人口増加の最大原因は大陸からの民族大移入だとしているコンピューターを駆使した検証によって一種の裏付が行われている。

 いわば純粋日本人と言える存在はそれ程多くはない。

 このような歴史を無視するとしても、民族のレベルでその優越性を仄めかせて国家を誇るのは、何事も価値判断の根拠を民族の血に置くことになって、非常に危険な思想である。

  民族の優越性を思想的背景としていながら、外国との対等な関係や友好関係を言う。ゴマカシを働かせた対等関係、あるいは友好関係となる。

 安倍晋三にしても稲田朋美にしても山谷えり子にしても、このような危険な思想に染まっている。稲田朋美と山谷えり子に関して言うと、そのような危険な思想を10月10日と11月11日のそれぞれの予算委員会で露わにした。

 決して見過ごすことはできない。

コメント (1)
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