安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
2018年5月21日に中村時広愛媛県知事が愛媛県や今治市職員、加計学園関係者と当時の首相秘書官柳瀬唯夫との首相官邸面会に関連する新たなメモや文書を参議院の要請に基づいて提出した。
その文書の1枚に2015年2月25日に加計学園理事長加計孝太郎と安倍晋三が約15分程度の面談を行い、加計孝太郎から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。安倍晋三から「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね」とのコメントがあったことが記されていた。
同文書には加計学園と今治市長の面会も記載されていて、菅良二今治市長は5月25日の記者会見で、加計孝太郎と安倍晋三が面会したことを当時、市の担当者から報告を受けていたと明らかにした。
その一方で面会が事実か否かの判断には慎重姿勢を示した。
菅良二「私どもに対する力強いエールではないか、と受け止めている。直接総理から聞いたわけでもなく、官邸の記録もない。(面会があったかは)白紙で考えないといけない」(朝日デジタル/2018年5月25日22時00分)
勿論、安倍晋三は面談を否定している。加計学園獣医学部認可に関わるこれまでの国会答弁や記者会見発言を全て虚偽一色で塗りつぶすことになるから肯定はできない。
ところが、加計学園は5月26日に面談を否定するコメントを発表した。その全文をネットで探したところ、「Hatena Keyword」が「自称ニュースサイト」と紹介しているページが全文を載せていた。
「netgeek」(2018年5月26日) ▼加計学園のコメント全文 平素より学園の教育活動にご理解とご協力を賜り誠にありがとうございます。 一連の愛媛県文書にある打ち合わせの内容について、当時の関係者に記憶の範囲で確認できたことを下記の通りコメントいたします。 当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と(今治)市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことでした。その結果、当時の担当者の不適切な発言が関係者の皆さまに、ご迷惑をお掛けしてしまったことについて、深くおわび申し上げます。 なお、学生たちの平穏な教育環境を確保することが大字の責務と考えますので、夢と希望に満ちあふれて、勉学に励んでいる在学生を、どうぞ温かく見守っていただきますようお願い申し上げます。 |
同ページは、〈蓋を開けてみれば加戸前知事の読み通り。やはり加計学園側が交渉を有利に進めるためにポロッと言ったことだったのだ。〉と、面談否定を肯定している。
先ず第一にこの場合、一般的にもだが、加計学園側が「誤った情報」、いわばニセ情報を愛媛県と今治市に吹き込んで信じ込ませ、そのニセ情報を三者が共有する関係に持っていくについては、そうすることによって加計学園側が自らの獣医学部新設を有利に進めることができると踏んだ何らかの目的・意図、あるいは謀略を有していなければならない。
ところが、加計学園のコメントからはそのような目的・意図、あるいは謀略は一切見えてこない。見えてくるのは「一時停滞していた」「獣医学部設置の動き」に「活路」を見い出す「打開策」だけのために安倍晋三と加計孝太郎が「面会」したというニセ情報を愛媛県と今治市に吹き込んで信じ込ませ、三者がそのニセ情報を共有するに至ったという経緯のみである。
このことのどこが加計学園の獣医学部新設を有利に進めることができる目的・意図、あるいは謀略に値すると言うことができるだろうか。
さらに言うと、ニセ情報の伝達が愛媛県と今治市止まりであったなら、そのニセ情報は獣医学部新設を有利に進めることができる目的・意図、あるいは謀略の役目を何ら果たさず、ニセ情報を流したこと自体の意味を失う。
なぜなら、加計学園にしても、愛媛県と今治市にしても、獣医学部新設を働きかける側であって、その働きかけを受けて獣医学部新設の実現を進める側ではないからだ。
事実ニセ情報であったとしても、そのニセ情報を真に役立たせるためには内閣府や文科省、さらには農水省、安倍晋三を含めた首相官邸等の働きかけを受ける側にまで流してこそ、ニセ情報としての意味を初めて持つ。
だが、コメントはニセ情報が、そんなことはあるはずもないのに愛媛県と今治市止まりの説明となっている。当然、ニセ情報を流した目的・意図、あるいは謀略を隠していることになって、コメント自体に信用を置くことはできない。
例えば、これはニセ情報ではないが、国有地売却の財務省側と当時森友学園理事長籠池泰典との打ち合わせの際に籠池泰典が、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と財務省側に対して発言したのは、財務省が国有地売却をどう進めるかの決定権を握っている側であって、そうであるからこそ、国有地売却を森友学園側に有利に進めることができる目的・意図、あるいは謀略の意味を持たせた「いい土地ですから、前に進めてください」云々の安倍昭恵の発言ということであろう。
いわば決定権を握っていない側が決定権を握る側に対して事を有利に進めるための情報、あるいはニセ情報を後者の側にまで伝達して初めて、特別配慮や忖度を得ることを目的とし、意図していたとしたら、あるいは謀略としていたとしたら、それらを手に入れる可能性ある状況をつくり得る。
先ずは味方を騙して安倍晋三と加計孝太郎の面談を事実と思わせ、事実と思わせたそのニセ情報を愛媛県と今治市はそれがニセ情報とはしらずに加計学園、愛媛県、今治市の三者が協力して決定権を握る側にまで事を有利に運ぶ材料として信じ込ませるべく働きかけを行い得たとき、あるいはその働きかけが成功し得たとき初めてニセ情報としての意味を持つ以上、決定権を握る側に向けた“働きかけ”というプロセスを欠いたニセ情報、あるいはそのプロセスを隠したニセ情報ということなら、決して面談否定とするところにまではいっていない
却って面談が事実であることを否定するためのレトリックとしか受け取ることができない。いわば否定の肯定という構図を取っている。
このことは安倍晋三の愛媛県新文書公表後の態度にも現れている。中村時広愛媛県知事が加計孝太郎と安倍晋三の面談が記載されている新文書を参議院の要請に基づいて提出したと公表したのは2018年5月21日夕方の記者会見。
安倍晋三が首相官邸でこのことを記者団に問われたが、無言のまま行き過ぎたのは2018年5月21日夜。
この間の時間が短かったから、面会が事実かどうかの確認は取れなかったという言い訳は成立しない。なぜなら、安倍晋三は「加計理事長が私の地位や立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは一度もなかった」、あるいは「最終的には本年(2017年)1月に事業者の公募を行い、加計学位園から応募があったわけであります。その後の分科会でのオープンの議論を経て、(2017年)1月20日に諮問会議で認定することになりますが、その際私は初めて加計学園の計画について承知をしたところであります」とずっと国会答弁して来たのだから、獣医学部新設に関わる加計孝太郎との面会は有り得べからざることとして直ちに否定しなければならなかった。
だが、即座には否定できなかったということは面会の事実を物語って余りある。多分、推測に過ぎないが、否定のためのレトリックを構築する作戦会議を開く時間を必要としたのだろう。
安倍晋三がそのレトリックを用いることができたのは2018年5月22日午前の首相官邸での対記者団発言によってである。「毎日新聞」(2018年5月22日 09時44分)
記者首相は2015年2月25日に加計学園の理事長と面会したか。その際に、獣医学部設置計画について「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と話したか」
安倍晋三「ご指摘の日に加計孝太郎理事長と会ったことはございません。念のために昨日、官邸の記録を調べたところでございますが、確認できませんでした。加計孝太郎氏とは獣医学部新設について、今まで国会等でお話をさせて頂いてきたように、そういう事柄について、加計孝太郎氏から話をされたこともございませんし、私から話をしたこともございません」
この発言はそっくりそのまま前日の2018年5月21日夜の対記者団発言で口にしていなければならなかったものでありながら、十数時間かそれ以上の時間を要したことも面談が事実であることを物語っている。
以下はブログに書いたことだが、5月22日午後の衆院本会議でも立憲民主党の阿部知子の質問に答えて面会を否定している。
安倍晋三「ご指摘の平成27年2月25日に加計理事長とお会いしたことはありません。念のため入邸記録を調査しましたが、加計理事長が官邸を来訪した記録は確認できませんでした」――
2018年5月23日の衆院厚生労働委員会では次のように面会否定している。
安倍晋三「ご指摘の平成27年2月25日に加計理事長とお会いしたことはない。念のために訪問予約も調査を致しましたが、加計理事長が官邸を来訪した記録は確認できなかったということでございます」
2018年5月21日夜の対記者団発言で「官邸の記録」と言っていることは5月22日の国会答弁で言っている「入邸記録」、あるいは5月23日の「訪問予約」ということになる。「訪問予約」は正式には「訪問予約届」であるらしい。
だが、安倍晋三自身も官房長官の菅義偉も、当時官房副長官だった安倍晋三の腰巾着萩生田光一も、「入邸記録」、もしくは「訪問予約届」も「業務終了後はその使用目的を終えることから速やかに廃棄される取り扱いになっている」との趣旨の発言で廃棄済みの証言を行っている。
にも関わらず、面会否定の根拠に廃棄済みで存在するはずもない「官邸の記録」、いわば「入邸記録」、あるいは「訪問予約届」を持ち出さなければならない苦しい国会答弁、あるいは対記者談発言となっている。
要するに加計学園の面会否定のコメントにしても、安倍晋三の面会否定発言にしても、正当な否定を成立させていないのだから、約15分程度の安倍晋三の加計孝太郎との面談は事実としないと、事実関係の整合性は一切取れなくなる。
結局の所、面談否定が面談肯定としかなっていない。