愛媛県新文書国会提出:新文書が出ても、追及を前に進めることが疑問な野党のお粗末な国政監視能力

2018-05-22 12:18:47 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 昨夜2018年5月21日夜7時からのNHKニュースが愛媛県の中村知事から2015年4月2日に元首相秘書官柳瀬唯夫が首相官邸で愛媛県の今治市の職員、それに加計学園関係者との面会に関連する加計学園獣医学部新設に関わる新たな文書が国会に提出されたと報じていた。ニュースが終わってからNHKサイトにアクセスして記事を採取した。

 「NHK NEWS WEB」(/2018年5月21日 19時10分)

 記事は、中村知事が〈午後5時半すぎに取材に応じ、「国権の最高機関の国会から与野党合意のうえ、関連文書を出してほしいと要請があったので提出した」と述べ、文書の今後の扱いは国会に委ねる考えを示した〉と記している。

 同じ2018年5月21日付「朝日デジタル」記事に文書の画像が2枚掲載されていたから、テキスト化した。

 「報告」

 「獣医師養成系大学の設置に係る情勢について」
                      27.2
                      地域政策課

 1 今治市から、加計学園と加藤内閣官房副長官との面会」の状況は
   次のとおりであり、今治市への設置は厳しい状況にあるとの連絡
   があった。
  
   《加藤内閣官房副長官のコメント》

   ① 獣医師養成系大学・学部の新設については、日本獣医師会
     の強力な反対運動がある。
   ② 加えて、既存大学からの反発も大きく、文科大臣の対応にも影響か。
   ③ 県・今治市の構造改革特区への取り組みは評価。ただし
     関係団体からの反発が極めて大きい。

 2 そのような中、国では、国家戦略特区申請の積み残し分につい
  て、地方創生特区の名のもとに追加承認を行う模様であり、加計
  学園では、新潟市の国家戦略特区の中で提案されている獣医学部
  設置が政治主導により決まるかもしれないとの危機感を抱いて
  おり、同学園理事長が安倍総理を面談する動きもある。
 
 3 今後とも、加計学園からの情報提供を踏まえながら、今治市と
  連携して対応してまいりたい。

 【参考】

 ○新潟市は、大規模農業改革拠点を目指して、平成26年12月19日に国家戦略
  特区「新潟市革新的農業実践特区」の認定を受け、農地法等の特例措置
  により、ローソンによる農業生産法人の設立や農地での農家レストラン設
  置などに加え、獣医師養成系大学の設置や、一体的な保税地域の設置等の
  追加の規制改革を求め、現在、関係省庁と協議が継続中。
 ○本県からは国家戦略特区での提案は行っていない。
 

  
「報告」                   

 「獣医師養成系大学の設置に係る加計学園関係者
  等との打ち合わせ会について」
                      27.3
                      地域政策課

1 加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告
  したいとの申し出があり、3月3日、同学園関係者と県との間で打
  ち合わせ会を行った。

2 加計学園からの報告等は、次のとおり。

① 2/25に 理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師
  養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、
  国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは「そ
  ういう新しい獣医学大学の考えはいいね。」とのこコメントあり。
   また、柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示が
  あったので、早急に資料を調整し、提出する予定。
 
② 下村文科大臣が一歩引いたスタンスになっており、県において
  も、官邸への働きかけを非公式で実施いただけないかとの要望
  があったが、政治的な動きが難しい旨回答。
③ 検討中の大学付属施設(高度総合検査センター等)の設置には、
   多額の費用が必要であるが、施設設置に伴う国からの補助がな
  い中、一私学では困難であるので、国 の支援が可能となる方策
  の検討を含め、県・市の財政支援をお願いしたい。

  なお、3月4日には、同学園と今治市長が面会し、ほぼ同内容
  の説明があった。
  
3 おって、3/3に開催された国家戦略特区諮問会議では、特区法
  改正案に盛り込む追加規制緩和案が決定されたが、新潟市の国家
  戦略特区(獣医学部設置に係る規制緩和)は、含まれていない。
  今後、26年度までに出される構造改革特区提案(愛媛県・今治
  市)に対する回答と合わせて、国家戦略特区の結論も出される模
  様。

4 ついては、加計学園の具体的な大学校構想が示されたことから、
  特区提案の動向を踏まえ、今後の対応方針について、今治市とし
   っかりと協議を進めていきたい。

 平成27年2月の愛媛県地域政策課作成の最初の文書では「加計学園と加藤内閣官房副長官との面会」の状況を、〈今治市への設置は厳しい状況にあるとの連絡があった。〉

 次の平成27年3月の愛媛県文書では、平成27年2月25日に加計学園理事長加計孝太郎と安倍晋三が15分程度面会し、加計孝太郎から、「獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指す」ことなどを説明。

 対して安倍晋三が 「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね」と応じたことを3月3日、加計学園から理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいとの申し出があり、同学園関係者と県との間で打ち合わせ会で知ることとなった。

 但し安倍晋三と加計孝太郎は30年来の腹心の友であり、一緒にゴルフをしたりバーベキューをしたりする仲であることからすると、加計孝太郎の国際水準の獣医学教育を内容とする獣医学部新設計画に対して「そういう新しい獣医学大学の考えはいいね」の一言では済まなかったはずだ。

 このことは、〈柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があった〉ことが証明している。この「指示」は安倍晋三が加計孝太郎に対して何らかの協力の言質を与えたことを証明している。その言質が柳瀬唯夫の資料提出指示となって現れた。

 そして最初の愛媛県文書では獣医学部の今治市への設置は厳しい状況にあると知らされたが、次の文書ではたった1カ月の間で前へ動き出したことを窺わせる文面となっている。

 〈加計学園の具体的な大学校構想が示された〉としていることも、前進の一つの形とすることができる。

 上記「NHK NEWS WEB」記事は愛媛県新文書について野党や自民幹事長の発言を伝えているが、以下2者の発言を取り上げてみる。

 立民国対委委員長辻元清美「「『柳瀬元総理大臣秘書官の証言がウソだった』という濃厚な証拠が出てきたと思うし、『1国の総理大臣が国会や国民に対し、ウソを突き通してきたのではないか』ということにつながると思う。

 『ウソをウソで上書きして、書き直そうとしても無理だ』ということだ」

 国民民主党共同代表玉木雄一郎「「『加計ありき』がより鮮明になったし、『一連のストーリーは安倍総理大臣の指示から始まったのではないか』という極めて核心的な疑惑が出てきた。

 この疑惑を明らかにすることなく、ほかの重要法案の審議は到底できない。安倍総理大臣、加計理事長、愛媛県の中村知事ら関係者に一堂に予算委員会の集中審議に集まってもらい、真実をしっかり話してもらわなければならない」

 2015年4月2日付の今治市の文書では今治市職員が「獣医師系養成大学の設置に関する協議」を目的として都道府県会館東京事務所と内閣府、首相官邸を訪問したことが記されているが、公開された文書は面会の相手側は黒塗りされて誰か分からなかったが、首相官邸での相手方は当時の首相秘書官柳瀬唯夫だと目されていて、それを質すために2017年7月24日の加計学園衆院予算委員会閉会中審査と翌日2017年7月25日参議院予算委員会閉会中審査に柳瀬唯夫を参考人招致して質疑が行われたが、柳瀬唯夫は面会を「記憶にない」一点張りでかわして、野党は満足な追及はできずじまいとなった。

 ところが面会を事実とする愛媛県文書の存在を2018年4月10日付「朝日デジタル」が報じ、同日のうちに愛媛県知事中村時広が記者会見でその存在を認めた。

 その文書には、〈獣医師養成系大学の設置について、県地域政策課長・今治市企画課長・加計学園事務局長らが内閣府藤原次長及び柳瀬首相秘書官らとそれぞれ面談した結果は、次のとおり。〉と記されていて、面会者は今治市職員ばかりか、愛媛県職員と加計学園事務局長が加わっていて、内閣府での応対者は内閣府地方創生推進室次長の藤原豊、首相官邸での応対者は首相秘書官の柳瀬唯夫となっていた。

 そして《藤原豊の発言は、「要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市がこれまで構造改革特区申請をされてきたことも承知」、その他が、柳瀬唯夫の発言は「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」、その他が書かれていた。

 朝日新聞の報道と愛媛県の中村知事による愛媛県文書の公表を受けて、野党は柳瀬唯夫の証人喚問を求めて与党と交渉、与党は受け入れず、参考人招致で妥協して、2018年5月10日、午前中衆院予算委、午後参院予算委で加計学園獣医学部認可安倍晋三政治関与疑惑を追及する質疑が柳瀬唯夫を相手に行われた。

 だが、安倍晋三の政治関与の疑惑を膨らませることができても、決定的証拠を上げることはできず、いわばクロとすることはできずにグレーのまま幕引きさせることになった。

 柳瀬唯夫の答弁の不合理な点、辻褄が合わない点を追及しなければならなかったはずだが、それが満足にできなかったのだから、新しい文書の公表が役に立たなかったことになり、今回の愛媛県の新文書も果たして追及の切り札とすることができるかどうかは至って断言できないことになる。

 2018年5月11日のブログ、《5・10柳瀬唯夫参考人招致:名刺交換と「首相案件」に関わる発言を取り上げただけで矛盾とウソを追及可能 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》と題して既に取り上げたが、例えば2018年5月10日午前中衆院予算委のトップバッター自民党の後藤茂之から質問早々に「4月2日に柳瀬元秘書官は愛媛県、今治市、加計学園関係者と会っていないのか。先ず最初にしっかりと説明して下さい」と問われて、柳瀬唯夫は、「メーンテーブルの真ん中に座った加計学園の元東大教授と加計学園の事務局長が殆んど話していたためにて、随行されていた方の中に愛媛県の方や今治市の方がいらしたかどうかという記録は、残っておりません」と答弁している。

 今治市と加計学園は構造改革特区でタッグを組んでいた。「メーンテーブルの真ん中に座った」加計学園関係者の二人だけが殆ど話して、愛媛県と今治市の職員が獣医学部新設に向けた県と市に関わる発言をしなかったということは、不合理そのものである

 この時点では名刺交換には触れていない。但し後藤茂之は次の質問で、「名刺を交換しなかったのか」と質問している。

 柳瀬唯夫「随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません。私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけておりますが、多くの方とお会いするために交換した名刺の中で保存するのはごく一部でございます。今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」

 一般的には面会者全員と名刺交換するのが礼儀であるのに対して「随行者の方々全員と名刺交換をしたかどうかは分かりません」というのは常識的には矛盾しているし、「私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけております」と言っていることとも矛盾する。

 しかも名刺交換は顔を合わせてからほぼ即座に自己紹介と共に行う儀式であにも関わらず、「今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」と言っていることからして、「名刺交換をしたかどうかは分かりません」ではなくて、名刺交換をしなかったことになる。

 応対者である柳瀬唯夫の正面に最初に自然と立つのが面会者の中でも主だった人物ということになるが、愛媛県と今治市の職員を最初から加計学園関係者とは明確に分けて「随行者」扱いしていて、それゆえに名刺交換をしなかったことの理由としている。

 この明確に分けた「随行者」扱いにしても不自然で、合理的な対応とは言えない。

 名刺交換をしなかっただけではない。例え加計学園関係者が主として説明を受け持っていたとしても、今治市に校舎を建てる以上、愛媛県と今治市の職員は用件に入る前に柳瀬唯夫に対して自己紹介もしなかったことになって、これも不合理な話しとなるだけではなく、失礼な話で、社会常識に照らしても矛盾する。

 名刺交換についてもう一つ不審な点を挙げてみる。同じ5月10日午前中柳瀬証人喚問衆院予算委で野党トップバッターの立民長妻昭が「加計孝太郎理事長含めて加計学園関係者と会ったのは何回だ」と尋ねたのに対して柳瀬唯夫は「ゴールデンウィークに総理の別荘がある河口湖にお供をして自身はゴルフをしなかったが、ゴルフコンペの後のバーベキューをしたときに加計学園の理事長と事務局長と会ったという記憶がございます」といった趣旨の答弁をしている。

 このゴルフコンペとバーベキューは2013年5月6日だそうだ。

 柳瀬唯夫はここで加計孝太郎と事務局長に会った際、後藤茂之の質問に対して「私は普段から失礼にならないように自分から名を名乗って、名刺交換をするように心がけております」と答えていることからしても、安倍晋三の仲立ちのもと、双方共に自己紹介をし、名刺交換したはずだ。

 安倍晋三の首相秘書官たるものが2013年5月6日に安倍晋三の「お供」をして、単にバーベキューの肉を焼いたり、皿に盛ったりのお助けマンを演じていたわけではあるまい。柳瀬唯夫が正直に答弁するはずはないが、安倍晋三と加計孝太郎、学園の事務局長を混じえて、どういったことを話し合ったか、話題については質問者は頭に入れておかなければならない。

 入れておけば、質問の機会が訪れるかもしれない。
 そして約二年後の2015年4月2日。柳瀬唯夫は首相官邸での加計学園関係者との面会を後藤茂之に対して「以前、総理とご一緒した際に加計学園の関係者の方とお会いしたことがございました。その後、平成27年の2月から3月頃だったと思いますけども、加計学園の事務局の方から上京する際に『お伺いしたい』という申し入れがありまして、官邸でお会おしました」と答弁している。

 要するに2013年5月6日の安倍晋三の仲立ちによって加計孝太郎と加計学園事務局長と名刺交換までしたであろう面識を持った相手方から平成27年の2月から3月頃に「加計学園の事務局の方から上京する際に『お伺いしたい』という申し入れがあり」、官邸で面会した。

 安倍晋三を交えてこういった関係となり、加計学園の事務局長の背後に加計孝太郎が控えていることを考えると、事務局長の私事で首相官邸を訪れることはないはずだから、その事務局長が天下の首相秘書官に面会するのに「上京する際に『お伺いしたい』」の一言しか口にしないと言うことはあり得るだろうか。

 一般的には用件を最初に伝えて、相手がその用件を認識した上で面会するか否かを決める。そうなっていないことの不合理な点をあとで質問に立ったときに野党は追及しなければならないはずだが、追及したとの報道もないし、テレビの中継を聞いた限りでは誰も追及していない。

 柳瀬唯夫が「随行されていた方の中に愛媛県の方や今治市の方がいらしたかどうかという記録は、残っておりません」と答弁し、名刺交換については「今回の件で私が保存している名刺の中に今治市や愛媛県の方の名刺はございませんでした」と答弁したことに対して愛媛県の中村知事は5月11日の記者会見で、「県職員はメインテーブルに座り柳瀬氏と名刺も交換し、しっかりと県の立場を発言した」(NHK NEWS WEB)と柳瀬唯夫を批判、面会した際に受け取った柳瀬唯夫の名刺を公開した。(左掲)

 国政の監視、国家権力の監視が役目だと言うなら、本来なら野党が名刺交換を含めた柳瀬唯夫の説明の不合理な点、矛盾点を国会で追及し、事実究明にまで持っていかなければならないはずだが、それが満足にできなくて、国会以外からの報道機関を含めた第三者からの新たな事実の公表に頼った追及をするが、それでも満足な事実究明ができない堂々巡りの力不足を露呈している。

 立憲民主党の辻元清美や国民民主党共同代表の玉木雄一が何と言おうと、野党のお粗末な国政監視能力と言わざるを得ない。多分、各野党の政党支持率を正直に反映したお粗末さではないだろうか。

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