石油輸出国機構(OPEC)は2016年11月30日、オーストリアで開いた総会で8年ぶりの原油減産で最終合意し、非加盟国ロシアが減産に協調姿勢を見せたという。
この事態に12月1日のニューヨーク原油先物相場が一時1バレル=51ドル台に急伸、12月1日夕から12月2日早朝までに東京商品取引所で行われた夜間取引で中東のドバイ産原油の先物が上昇し、指標価格は約1年1カ月ぶりの高値水準となる一時1キロリットル当たり3万7880円を付けて今年の取引時間中の最高値を連日で更新した。
上げ幅は2012年8月3日以来の大きさだという。
マスコミ記事を纏めると以上のようになる。
この2012年8月3日という日付は第2次安倍内閣発足の2012年12月26日を約5カ月近くを遡る。
2013年ドバイ産原油が2012年に対して年間平均1バレル3ドル程度下がり、2014年は2013年に対して同じく年間平均で9ドル近く下がり、2015年は2014年に対して年間平均45ドル近く下がって、2016年では2015年に対して12ドル近く下がることになる。
要するに第2次安倍内閣の約4年間は原油安で推移した。
2013年4月3日導入決定の日銀の異次元の金融緩和を受けて為替と株価は円安・株高に大きく振れた。そして2014年4月1日からの5%から8%への消費税増税。
株高によってその利益に無縁な一般生活者を他処に置いて大企業は軒並み史上最高となる利益を受けることになったが、アベノミクスの本体が景気回復に機能しない中、企業は自らの利益を従業員に対して賃金として満足に還元せず、安倍晋三は官製の賃上げでそれをどうにか補っているものの、一般生活者が安心できる程の賃上げを実現できずに推移している。
株高を受けたこういった状況に対して円安が招くことになった状況は一般生活者に対する輸入生活物資の直接的な値上がりだけではなく、日本が各種製品の原材料の多くを輸入に頼っていることから、そのコストの上昇を受けた製品価格への転嫁による物価高が一般生活者の生活経費を圧迫し、さらに消費税増税による物価高が官製の賃上げでは追いつかない生活不安感を一般生活者に与えることになっていた。
但し円安が一般生活者の生活に決定的な打撃を与えなかった一つの大きな要因は、このことはまた機能不全のアベノミクスの決定的な命取りとならなかった要因でもあるが、2012年以降の第2次安倍内閣の約4年間を通した原油安である。石油、天然ガス等のエネルギー資源の多くを輸入に頼っている関係からの電気やガス、あるいは電気を使ったりガスを使ったりして製造する製品への価格転嫁を原油が安い分、抑えることができたからである。
マスコミの中にはこの原油安をアベノミクスに吹いた神風とまで表現している。
ところが為替の円安傾向は2016年4月末に米国が利上げを見送ったことと同じく4月末に日銀が追加金融緩和を見送ったことから円高に振れることになった。
円高と連動して株価は下落に転じ、円安と株高に多くを頼っていた企業の利益にまで影響を与えることになった。企業が来年の賃上げに慎重になったのはこういった事情があった。
但しこのようなアベノミクスと企業の苦境を救ったのは2016年11月8日(現地)投開票の米大統領選でトランプが当選すると、一旦は株価が下落したものの、トランンプが選挙戦中とは違った穏健な姿勢を示すと、その経済政策への期待からドルが買われ、円が売られて、円高から一転して大きく円安に振れ、円安と同時に株価が回復、日経平均は11月末には11カ月ぶりに18,000円台を記録した。
株の高騰によって受ける経済的恩恵には無縁で、原油安が円安を受けた輸入原材料の高騰からの製造コストへの転嫁を一定程度吸収するクッション材になっていたとしても、それでも円安は生活費の高騰を招くことになって生活の圧迫要因となる一般生活者には、こういった経済状況は迷惑な話だが、安倍晋三と大企業にとっては朗報だろう。兎に角アベノミクスは円安と株高だけで、いわば日銀の異次元の金融緩和だけで持ってきたのだから。
しかし円安が影響することになる物価高を受けた一般生活者の生活の圧迫を少しは緩和してくれていた原油安が最初に触れたようにOPECが原油減産で最終合意したことにより原油高に転じることになった。
この原油高によって石油関連の銘柄が一斉に買われ、株価を一層押し上げ、為替も大きく円安に振れた。但し原油高は円安による生活物資の高騰から原油安が担っていた、その高騰を一定程度吸収するクッション材の役目を奪うことを意味する。
安倍晋三からしたらアベノミクスに吹いていた“神風”が吹き止むことになる。
製品原材料やエネルギー資源の多くを輸入に頼っている関係から、企業にとっても原油高は歓迎せざる利害要因ではあるが、それでも株高と円安が企業利益獲得の大きな支えとして残る。
結果、株を保有している高額所得者以外の国民の大多数を占める一般生活者だけが円安・原油高の影響を受けて従来以上に生活の圧迫を受けることになる。
アベノミクス本体は景気回復に機能不全を呈していたがゆえに安倍政権の約4年間は円安・株高、そして原油安というツキだけで持っていたが、そのツキだけという状況を官製賃上げや雇用状況の改善でどうにか誤魔化してきたものの、ここに来て国民の大多数を占める一般生活者に対しては原油安というツキが剥がれることになって、アベノミクス本体の機能不全を国民の前により露わにすることになるだろう。
安倍晋三が今年(2016年)9月2日(日本時間同)、ロシア極東ウラジオストクを訪れてプーチン大統領と行った会談後に記者団に話した発言を「産経ニュース」記事から見てみる。
先ず安倍晋三とプーチンは次回首脳会談を11月にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に行い、12月15日には首相の地元、山口県長門市で会談することで合意し、夕食会でプーチンに5月の首脳会談で提案した極東の産業振興など8項目の経済協力に関しエネルギー分野をめぐる両政府による協議会の設置を提案したと記事は解説している。
安倍晋三「(領土交渉の進め方について)道筋が見えてきた。その手応えを強く感じとることができた会談だった。
平和条約(締結交渉)について二人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができたと思う。70年以上にわたり平和条約が締結されていない異常な状況を打開するためには、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見いだしていくしか道はない。
(2月の山口県での会談について)ゆっくりと静かな雰囲気の中で平和条約(締結交渉)を加速させていく会談にしていきたい」
日本側は平和条約の締結と北方領土返還を一体の問題とする姿勢を取っているから、両問題共にプーチンから好感触を得たということであり、その様子をまざまざと窺うことのできる発言となっている。
「道筋が見えてきた」、「その手応えを強く感じとることができた」、「二人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができた」等の言葉に確かな進展を見て取ることができる。安倍晋三は解決への期待で胸を含まらせたに違いない。会談を終えて椅子から立ち上がって握手したとき、これ以上ない強い信頼の思いを込めて相手の手を強く握りしめ、その手を何度も振ったに違いない。
そして会談がそのような展開を見せたのは何もかも「首脳同士の信頼関係」が原動力となっている。この「信頼関係」を力に最終解決に持っていく強い決意を示した。
記事は安倍晋三とプーチンとの会談は第1次安倍政権時代を含めると今回で14回目だと伝えている。
いわば過去13回の会談で積み重ねてきた「信頼関係」が今回の会談で花をつけ始め、問題解決進展に貢献した。
五分咲きなのか、六分咲きなのか、この初期的な開花を受けて、2月の山口県での会談に八分咲き、九分咲きに向けて一気に賭けることにした。
東京生まれではあるが、一族の故郷で、本籍地を置き、選挙の地元でもある山口で領土返還と平和条約締結の解決を目と鼻の先にする。安倍晋三はきっと胸を膨らませ、大きな成果を確信したに違いない。
確信してもおかしくないプーチンとの会談後の対記者団発言となっている。
少なくとも政治史に自らの外交成果として記録するために自身の任期中の解決を望んでいることになる。
プーチンとの間で合意した12月15日の地元山口での会談を公式会談と位置づけ、共同文書を発表する見通しだと「毎日新聞」が伝えているが、こういった成り行きからであろう。
ところが安倍晋三の好感触とは裏腹にモスクワで外務次官級の日ロ戦略対話が近く開催される前の10月5日、ロシア外務省のザハロワ情報局長(女性)が発表した声明を「時事ドットコム」記事が伝えている。
声明「ロシアの立場は一貫しており不変だ。(四島は)第2次大戦の結果、ロシアに帰属しており、ロシアが主権を持つことに疑問の余地はない」
四島はロシアの領土だから、返還の義務はないと言っていることになる。
そしてロシアは2016年5月に成立させた地域振興を目的とした極東地域の土地無償分与の新法に基づいて、その分与を10月以降、北方領土にまで広げて申請受理を開始した。
新法は分与する土地の面積は1ヘクタール(100メートル四方)、申請どおりの使用を条件に5年後に土地の私有権が認められるというものである。
北方四島をロシアの領土としていることを前提とした土地分与であろう。
10月末にはこの申請が40件を超えたとマスコミは報道している。」(NHK NEWS WEB/2016年10月28日 7時05分)
10月27日、プーチンは南部の保養地ソチで内外の国際政治学者などとの会合に出席。
プーチン(北方領土問題の解決を含む日本との平和条約の締結の見通しについて)「解決を望み、そのために努力するが、いつどのように行われるのか、今は答えることができない。期限を決めるのは不可能で有害だ」(NHK NEWS WEB/2016年10月28日 7時05分)
返さないとは言っていない。だが、解決は近い将来ではないと言っている。
安倍晋三が解決進展の重要な機会としている12月15日の地元山口での会談で成果を期待することを前以て牽制している。
一方で北方四島を含めた極東地域に土地をエサにロシア人の入植を進め、他の一方で北方四島を返還するのは期限不明の先の話だとしている。
これを返還する気はないが、経済の実利を獲るための先延ばし作戦と見るか、返還する気はあるが、ロシア国民の世論や国内の政治事情、あるいは国際情勢との兼ね合いで時期尚早と判断していると取るかである。
尤も自身の任期中の解決を望んでいる安倍晋三は諦めるわけにはいかない。
この諦めるわけにはいかない安倍晋三の切迫性をプーチンは巧みに利用しているのかもしれない。
11月19日夜(日本時間11月20日午前)、ウラジオストクの首脳会談で合意していたアルゼンチン・ブエノスアイレスでのAPEC首脳会議に合わせた首脳会談をプーチンとの間で行った。
会議翌日の11月21日夜(日本時間11月22日午前)、ブエノスアイレス市内で記者会見を行った。
安倍晋三「たった1回の首脳会談で解決するような簡単な問題ではない。首脳間の信頼関係がなければ解決しない問題であり、私自身がプーチン大統領と直接やり取りして、一歩一歩着実に進めていく。
(具体的な交渉内容について)言及できない。北方領土に対する従来の政府の立場を、何ら変えているということはない。北方四島の将来の発展について、日本とロシア双方にとって『ウィンウィン』の形で進めていくことが何よりも重要な視点と確信している」(asahi.com/2016年11月22日11時29分)
ここでも「信頼関係」を問題解決の重要なカギとしているが、過去14回も首脳会談を重ねて「信頼関係」を積み上げてきながら、「たった1回の首脳会談で解決するような簡単な問題ではない」と矛盾したことを言っている。
ウラジオストクの会談後の対記者団発言とトーンが明らかに違うことも矛盾の一つだが、これらの矛盾に辻褄を合わせるとしたら、12月15日の地元山口の首脳会談での大きな前進に向けてブエノスアイレスでのプーチンとの会談を確実な足掛かりとしたいと考えていたが、その思惑がすっかり外れたと言うことではないだろうか。
この見方が当っているとしたら、「首脳間の信頼関係がなければ解決しない問題であり、私自身がプーチン大統領と直接やり取りして、一歩一歩着実に進めていく」という発言にしても、「北方四島の将来の発展について、日本とロシア双方にとって『ウィンウィン』の形で進めていくことが何よりも重要な視点と確信している」という発言にしても、自分自身に言い聞かせるための強がりの類いとなる。
安倍晋三がブエノスアイレスでプーチンと会談した11月19日から3日後の11月22日、ロシアのメディアが、ロシア国防省が軍の部隊が駐留する北方領土の択捉島と国後島に地上から艦船を狙う新型の地対艦ミサイルシステムをそれぞれ配備したと伝えたと日本の各マスコミが報道した。
官房長官の菅義偉は11月24日午前の記者会見で、「ミサイル配備は北方領土問題を含む平和条約交渉への影響は全くない」と発言しているが、一般的常識からしたら、返還するつもりのある島に土地を与えて入植者を集めたり、ミサイルを配備したりするだろうか。
2016年11月29日付「日経電子版」は11月22日夜、安倍晋三が自民党幹事長の二階俊博や党幹部と11月28日夜に東京都内のホテルで会食し、〈北方領土問題が焦点となる12月15日の日ロ首脳会談に関し「領土交渉は非常に厳しい」と語った。〉とする共同電を配信、情報源を〈出席した衛藤征士郎元衆院副議長が記者団に明らかにした〉ものだとしている。
9月2日のウラジオストクでのプーチンとの会談では、領土問題に関して「道筋が見えてきた。その手応えを強く感じとることができた会談だった」と、解決進展に向けて好感触を得ていたかのように発言していたトーンを11月19日夜のブエノスアイレスでのプーチンとの会談後の11月21日夜の内外記者会見では、「たった1回の首脳会談で解決するような簡単な問題ではない」と10回以上の首脳会談で積み重ねてきたと自負している「信頼関係」をどこかに置き忘れてトーンダウン。11月28日夜の党幹部との会食では、「領土交渉は非常に厳しい」とさらにさらにトーンダウン、悲観的見通しの吐露となっている。
安倍晋三自身は常々自負していたプーチンとの「信頼関係」を自負に反して無効だったと暴露するような悲観的見通しの吐露であるにも関わらず、それを内々の発言とするのではなく、元衆院副議長の衛藤征士郎をしてマスコミに披露する。
いや、いくら党幹部との会食と言えども、肝心の12月15日の地元山口での公式会談を控えて領土問題解決に意欲を見せていた手前、こういった悲観的見通しを明らかにすること自体がタブーとしなければならないはずだ。
だが、タブーとせずに公の情報とした。
と言うことは、悲観的見通しを知らしめる必要性があったということであろう。
その必要性とは、12月15日のわざわざ地元山口に呼んでまで開く、それゆえに何らかの成果を国民に示さなければならない、いわば特別機会の首脳会談で何の成果も期待できないことに気づいて、前以て予防線を張り、守りに入ったと見るしかない。
但し発言のトーンダウンの経緯を見ると、プーチンが領土を返還する気がないことに気づき始めたからであろう。
安倍晋三の悲観的見通しに追い打ちをかけるかのように安倍晋三の党幹部との会食の11月22日から8日後の11月30日、ロシアは北方領土を事実上管轄しているロシア極東のサハリン州が国後島と色丹島とを22人乗りミル8型ヘリコプターで結ぶ定期路線を開設すると発表した。
日本最大の労働組合である略称連合(正式名・日本労働組合総連合会)の組合員数は約680万人。内、原子力発電所を抱える電力会社の労働組合電力総連の組合員数は「Wikipedia」によると約22万人弱。
2016年10月16日投開票の新潟県知事選では東京電力柏崎原子力発電所の再稼働反対を掲げた医師米山隆一候補者(49)を共産党、自由党、社民連が推薦し、再稼働容認の前長岡市長森民夫(67)候補を自公が推薦、柏崎原発所属の東電労組を抱えている関係からだろう、連合新潟は与党候補の支援にまわった。
民進党が再稼働反対の米山候補の支援に回らずに自主投票を決めたのは電力総連を抱えた連合が民進党の最大の支持母体であることからなのはマスコミの解説を待たずとも察しはつく。
ところが終盤情勢で米山氏の優勢が伝えられると、蓮舫は投開票前々日に新潟入りし、米山候補応援の街頭演説を行った。その理由は民進党新代表就任後の初の国政選挙、11月23日投開票衆院東京10区補選と衆院福岡6区補選で民進党候補の劣勢を伝えられていたからに他ならない。
いわば国政選挙ではなく、地方選挙と言えども、何の功績もないままに終わるよりも、どんな形であっても勝利にツバをつけておいて、少しでも功績を残したい焦りからの後からの参戦といったところなのだろう。
蓮舫としては新代表として華々しいデビューを飾りたかっただろうが、事実国政両補選とも民進党候補は惨敗したために新代表としての功績を何ら記すことができなかった。遅ればせながらにでも新潟知事選に駆けつけなかったなら、全敗という惨憺たる結果に終わっただろう。
だとしても、蓮舫は、あるいは民進党は原発再稼働反対の新潟県民のみならず、新潟を超えた全国の稼働反対の一般生活者の声よりも、連合が民進党最大の支持母体という関係から、全国規模で見て、連合組合員数約680万人の内の電力総連組合員数約22万人弱に過ぎない稼働容認の声を優先させることを自らの利害とした。
連合は民進党と共産党の選挙協力は勿論、野党連合政権にさえ反対している。2016年11月30日付の「NHK NEWS WEB」記事は連合が衆院選方針の素案を纏めた中で民進党と共産党との協力を強く牽制していることを伝えている。
具体的には、〈与野党の勢力が拮抗し、政策で切磋琢磨する政治体制を確立することが重要だとして、引き続き、民進党への支援を強化していく〉とする一方で、〈野党連携について、「政権選択選挙である衆議院選挙では、基本政策の一致が不可欠で、目の前の勝利のみを目的とした共闘は、国民の理解が得られない」と指摘〉、〈「共産党は、民進党などの民主主義政党とは根本的に異なり、選挙戦で連携することはありえない」と強く牽制〉する素案の内容となっていると解説している。
問題は連合組合員数は約680万人という数字である。連合傘下外の労働組合員数を加えた「厚労省」調査の全労働組合員数は約982万5000人。
また企業の規模が大きくなる程に、いわば大企業になる程、労働組合の組織率は高くなるという。
と言うことは、企業の規模が小さくなる程に、いわば中小企業に向かう程、組織率は低くなる。
このことを2014年6月4日付の「東京新聞」が伝えている。
従業員1000人以上の大企業の組織率 1980代後半65%→2013年45%
従業員100人から1000人未満の中堅企業の組織率 1983年31%→2013年13%
従業員100人未満中小企業組織率 1983年2・6%→2013年1%
組織率=労働組合参加者は年々減っているものの、大企業は従業員の約半数近くを確保しているのに対して中堅企業で約1割強、中小企業では殆ど消えかかっている。
いわば連合の組合員数約680万人は経営規模のより大きい大企業に所属していることになる。
従業員の利害に余程反しない限り、連合はそういった大企業の利害を代弁することになるのは当然の成り行きであろう。
連合が旧民主党の最大支持母体となったのは小沢一郎が旧民主党代表時代に連合と会合を積み重ねて政権交代の土台を築いたからだと言われているが、連合にしても民主党に勢いを感じ取ったことと、労働者の代表という顔を持っている都合上、民主党が政権党となった場合の支持母体となることによって自らの利害を最大限に実現したい思惑があったからだろう。
ところが、政権を離れた民主党、その後の民進党は連合の利害を実現させる力を失った。こういうことを考えると、2016年11月30日に連合が5年振りに自民党と政策協議を行ったことを同日付「NHK NEWS WEB」が伝えているが、ある種当然の成り行きであろう。
自民党本部での5年振りの政策協議には自民党から政調会長の茂木敏充らが、連合からは逢見事務局長らが出席したという。
逢見事務局長「大きな影響力を持つ自民党との意見交換は大変ありがたい」
そして労働者の雇用の安定やすべての世代が安心できる社会保障制度の確立等を要請したと解説している。
茂木敏充「連合の政策に最も近いのは自民党ではないかと自負している。労働界を代表する連合との意見交換を通じて、働き方改革などの実現につなげていきたい」
政策協議後の記者団への発言。
逢見事務局長「相撲でいえば、お互いの感覚が一致して、立ち会いができた。自民党とは政策面での距離感は無く、特に雇用や労働、社会保障の面での問題意識は、自民党も同じであり、来年は、もう少し早く行いたい」
逢見のすべての発言は民進党の最大の支持母体とは言えない、自民党ベッタリの内容となっている。
要するに連合の利害を最大限に実現するには民進党では頼りなく、かつてのように自民党と引っついた方が得策ではないのかと計算したことからの政策協議なのかもしれない。
あるいは共産党と選挙協力するなら、自民党に引っつくぞという警告ということもあるかもしれない。
だが、連合という労働組合が大企業寄りであり、その利害を代弁する立場にあることは茂木敏充の「連合の政策に最も近いのは自民党ではないかと自負している」と言っている言葉と、連合逢見の「自民党とは政策面での距離感は無い」と言っている言葉に如実に現れている。
因みに日本の経営規模別の企業数とそれぞれの企業規模別の従業員数の割合を「日本の中小企業」のサイトから見てみる。
企業数(421.0万社)
中小企業 約432.6万社 99.7%
大企業 約1.2万社 0.3%
従業者数(4013万人)
大企業 約1229万 約31%
中小企業 約2,784万人 約69%
全従業者数4013万人から先に挙げた全労働組合員数約990万人を差し引くと、3023万人が労働組合に所属していないことになる。
いわば連合は労働組合に所属していない3023万人の利害を直接的には代弁していないと同時に日本の全企業数の0.3%、全従業者数4013万人の約31%の、しかも大企業寄りの利害しか代弁していないことになる。
また、参院選公示前日の2016年6月21日現在の選挙人名簿登録者数は18、19歳の約240万人が新たに有権者として加わって約1億660万人だという。
この約1億660万人から連合組合員数約680万人のみならず、全労働組合員数約990万人を差引いたとしても、9670万人の有権者が労働組合に参加していない一般国民とすることができて、間接的には兎も角、やはり直接的には連合の利害対象から外れていることになる。
勿論、この中には自民党の大企業寄りの政策と利害を一致させる高所得者も数多く存在するが、そういった高所得者よりも自民党の政策から落ちこぼれている中小企業や小規模自営業に所属する中低所得者の方が遥かに人数は多い。平成26年度の平均所得541万9千円以下の世帯が全世帯の約50%、半分も存在する。
民進党は連合の組合員数を遥かに上回るこういった一般国民をこそ、最大の支持母体とすると宣言すべきではないだろうか。
そうすることによって、自身の利害の状況に応じては自民党に擦り寄ろうとする連合の影響から自由になることができる。自由党代表の小沢一郎が定例記者会見で言っている民主党の主体性ある姿を取ることができる。
小沢一郎代表「(民進党と支持母体の連合との関係について)僕が民主党の代表をしていたころも連合の支援を要請したが、あくまでも組合は応援団であって、政党ではない。政治的な決定は政党が行うという姿勢をずっと貫いた。組合が政治的なアレをしたいなら政党になればいい。おかしいでしょ。色んな意見を言ったり要請したりするのはいいが、支援者だ。判断するのはあくまでも政党だ。その主体性がなくなった時、もう政党じゃなくなっちゃう。組合の一部になっちゃう。そこはちゃんと蓮舫代表も考えてんじゃないすか」(asahi.com/2016年10月25日21時24分)