安倍晋三のツキだけで持っていた景気押上効果のないアベノミクスから原油安のツキが剥がれ落ちる

2016-12-03 11:02:44 | 政治

 石油輸出国機構(OPEC)は2016年11月30日、オーストリアで開いた総会で8年ぶりの原油減産で最終合意し、非加盟国ロシアが減産に協調姿勢を見せたという。

 この事態に12月1日のニューヨーク原油先物相場が一時1バレル=51ドル台に急伸、12月1日夕から12月2日早朝までに東京商品取引所で行われた夜間取引で中東のドバイ産原油の先物が上昇し、指標価格は約1年1カ月ぶりの高値水準となる一時1キロリットル当たり3万7880円を付けて今年の取引時間中の最高値を連日で更新した。

 上げ幅は2012年8月3日以来の大きさだという。

 マスコミ記事を纏めると以上のようになる。

 この2012年8月3日という日付は第2次安倍内閣発足の2012年12月26日を約5カ月近くを遡る。

 2013年ドバイ産原油が2012年に対して年間平均1バレル3ドル程度下がり、2014年は2013年に対して同じく年間平均で9ドル近く下がり、2015年は2014年に対して年間平均45ドル近く下がって、2016年では2015年に対して12ドル近く下がることになる。

 要するに第2次安倍内閣の約4年間は原油安で推移した。

 2013年4月3日導入決定の日銀の異次元の金融緩和を受けて為替と株価は円安・株高に大きく振れた。そして2014年4月1日からの5%から8%への消費税増税。

 株高によってその利益に無縁な一般生活者を他処に置いて大企業は軒並み史上最高となる利益を受けることになったが、アベノミクスの本体が景気回復に機能しない中、企業は自らの利益を従業員に対して賃金として満足に還元せず、安倍晋三は官製の賃上げでそれをどうにか補っているものの、一般生活者が安心できる程の賃上げを実現できずに推移している。

 株高を受けたこういった状況に対して円安が招くことになった状況は一般生活者に対する輸入生活物資の直接的な値上がりだけではなく、日本が各種製品の原材料の多くを輸入に頼っていることから、そのコストの上昇を受けた製品価格への転嫁による物価高が一般生活者の生活経費を圧迫し、さらに消費税増税による物価高が官製の賃上げでは追いつかない生活不安感を一般生活者に与えることになっていた。

 但し円安が一般生活者の生活に決定的な打撃を与えなかった一つの大きな要因は、このことはまた機能不全のアベノミクスの決定的な命取りとならなかった要因でもあるが、2012年以降の第2次安倍内閣の約4年間を通した原油安である。石油、天然ガス等のエネルギー資源の多くを輸入に頼っている関係からの電気やガス、あるいは電気を使ったりガスを使ったりして製造する製品への価格転嫁を原油が安い分、抑えることができたからである。

 マスコミの中にはこの原油安をアベノミクスに吹いた神風とまで表現している。

 ところが為替の円安傾向は2016年4月末に米国が利上げを見送ったことと同じく4月末に日銀が追加金融緩和を見送ったことから円高に振れることになった。

 円高と連動して株価は下落に転じ、円安と株高に多くを頼っていた企業の利益にまで影響を与えることになった。企業が来年の賃上げに慎重になったのはこういった事情があった。

 但しこのようなアベノミクスと企業の苦境を救ったのは2016年11月8日(現地)投開票の米大統領選でトランプが当選すると、一旦は株価が下落したものの、トランンプが選挙戦中とは違った穏健な姿勢を示すと、その経済政策への期待からドルが買われ、円が売られて、円高から一転して大きく円安に振れ、円安と同時に株価が回復、日経平均は11月末には11カ月ぶりに18,000円台を記録した。

 株の高騰によって受ける経済的恩恵には無縁で、原油安が円安を受けた輸入原材料の高騰からの製造コストへの転嫁を一定程度吸収するクッション材になっていたとしても、それでも円安は生活費の高騰を招くことになって生活の圧迫要因となる一般生活者には、こういった経済状況は迷惑な話だが、安倍晋三と大企業にとっては朗報だろう。兎に角アベノミクスは円安と株高だけで、いわば日銀の異次元の金融緩和だけで持ってきたのだから。

 しかし円安が影響することになる物価高を受けた一般生活者の生活の圧迫を少しは緩和してくれていた原油安が最初に触れたようにOPECが原油減産で最終合意したことにより原油高に転じることになった。

 この原油高によって石油関連の銘柄が一斉に買われ、株価を一層押し上げ、為替も大きく円安に振れた。但し原油高は円安による生活物資の高騰から原油安が担っていた、その高騰を一定程度吸収するクッション材の役目を奪うことを意味する。

 安倍晋三からしたらアベノミクスに吹いていた“神風”が吹き止むことになる。

 製品原材料やエネルギー資源の多くを輸入に頼っている関係から、企業にとっても原油高は歓迎せざる利害要因ではあるが、それでも株高と円安が企業利益獲得の大きな支えとして残る。

 結果、株を保有している高額所得者以外の国民の大多数を占める一般生活者だけが円安・原油高の影響を受けて従来以上に生活の圧迫を受けることになる。

 アベノミクス本体は景気回復に機能不全を呈していたがゆえに安倍政権の約4年間は円安・株高、そして原油安というツキだけで持っていたが、そのツキだけという状況を官製賃上げや雇用状況の改善でどうにか誤魔化してきたものの、ここに来て国民の大多数を占める一般生活者に対しては原油安というツキが剥がれることになって、アベノミクス本体の機能不全を国民の前により露わにすることになるだろう。

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