沖縄オスプレイ不時着:米軍の説明を鵜呑みできない機体の大破、民間人も交えたパイロットへの検証を

2016-12-16 08:36:43 | 政治

 2016年12月14日夜、夜間空中給油訓練中の米軍普天間飛行場所属輸送機オスプレイが沖縄本島名護市の約80メートル沖の浅瀬に着水(?)、機体を大破させた。但し乗員2人は怪我をしたのみで、米軍嘉手納基地所属の救難ヘリが救助し、海軍病院に搬送したという。

 米軍はこの“着水”を不時着と発表、日本政府も米軍の発表に追随してのことだろう、米軍同様に不時着と発表している。

 だが、不時着にしては機体が大破している状況から、墜落ではないかとの疑いが出ている。マスコミ記事の写真を見ると、操縦席のある胴体頭部と尾翼を含む胴体後部が胴体中央部からもぎ取られ、胴体中央部は右の翼に付着しているものの、左の翼はどこかに吹き飛んでいて、普段は見えない接続部が隠されていた内臓が剥き出しになったみたいに外に曝け出された無残な姿を見せている。

 安慶田(あげた)沖縄県副知事が12月14日午後、アメリカ軍キャンプ瑞慶覧(すげらん)でニコルソン四軍調整官と会談し、抗議したところ、逆ギレされたようだ。

 勿論、会談したことを伝えている2016年12月14日付「NHK NEWS WEB」記事には逆ギレされたとは書いてはない。

 安慶田副知事「県民が配備に強く反対してきたオスプレイが、このような事故を起こしたことに対し、怒りを禁じえない」

 そしてオスプレイの飛行中止と配備撤回を要請したという。
  
 ニコルソン四軍調整官「パイロットは県民や住宅に被害を与えないようにしていて、感謝されるべきで表彰ものだ。県は政治問題化するつもりか」

 この逆ギレには生半可ではない相当な苛立ちを窺うことができる。
 
 会談後の対記者団発言。

 安慶田副知事「私たちからすれば、抗議して当たり前なのだが、抗議されること自体に非常に怒りをあらわにしていた。アメリカ軍は自分たちを理解してもらいたいと言うが、きょうのような態度では理解しようにも理解できない」

 ニコルソンの発言は明らかに逆ギレである。

 「時事ドットコム」記事がこのニコルソンの事故の状況の説明を載せている。12月14日午後、キャンプ瑞慶覧で記者会見したときの発言だそうだ。   

 ニコルソン「機体のシステムによる問題ではない。オスプレイは価値のある機体だ。空中給油を行った際に、事故機のプロペラが給油機のホースを切断。ブレード(羽根)の損傷で不安定な飛行となったため、パイロットが米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)沖への着陸を決めた。

 (市街地の飛行を避け、海岸での着陸を選んだパイロットに対して)称賛を送りたい。沖縄の人たちを守るため、浅瀬に着陸しようとしたのは良い判断だった」(下線部分は解説体を会話体に直す)

 記事は安慶田副知事と翁長県知事の発言を伝えている。

 安慶田副知事「(ニコルソンは)植民地意識丸出しという感じがした。抗議文を読んでいる時も外を見たりして、人間性を疑った」

 翁長知事「これまでも(ニコルソンは)高圧的な発言が多かった。米軍の考え方と県民感情は大きな違いがある」
 
 別の「時事ドットコム」記事によると、〈パイロットは普天間飛行場へ帰還を試みたが、住宅地を飛行することになるため現場から数キロ離れたキャンプシュワブに変更〉して、〈海岸沿いに基地を目指したが飛行困難な状況となり、パイロットの判断で浅瀬に不時着。〉したのだそうだ。

 キャンプシュワブは沖縄県名護市辺野古にあり、基地は海沿いにまで突き出している。

 要するにパイロットは住宅地に囲まれた世界一危険とされている普天間飛行場へ帰還した場合の万が一の住宅街への不時着の危険性を想定して、それを回避するためにキャンプシュワブへの帰還に変更、どうにか機体を制御して海沿いを飛んだが、制御しきれなくなって浅瀬に不時着したことになる。

 だとしたら、なぜもっと機体が制御できていた間に不時着を試みなかったのだろう。ご存知のようにオスプレイはプロペラを垂直方向か水平方向いずれかに移動が可能で、垂直方向とした場合、ヘリコプターとして飛行し、水平方向とした場合、プロペラ機として飛行する。

 NHKのニュースで航空自衛隊で戦闘機のパイロットを務めた元空将が「夜間の空中給油訓練はベテランのパイロットでないと行えないリスクの高い訓練で、不時着時の大破の状況から大事故の類い」だといったことを話していたが、ベテランパイロットで、当初から不時着の危険性を想定していたなら、制御可能なうちに機体への衝撃をより和らげ得るヘリコプター着水を試みたはずだ。
 
 ところが、操縦席のある胴体頭部と尾翼を含む胴体後部が胴体中央部からもぎ取られて、胴体中央部は右の翼を付けているものの左の翼がどこかに吹き飛んでいる状況からすると、プロペラ機として飛行していた状態での不時着としか見えない大破となっている。

 もしそれがヘリコプターとして飛行した“着水”によって引き起こされた大破であるなら、垂直に静かに降りてきて浅瀬に到達したのではなく、空中給油を行った際に給油機のホースを切断したためにプロペラのブレード(羽根)に損傷を与えてしまい、キャンプ・シュワブに向かう途中、左右のプロペラが均一な回転力を失って、錐揉み状態の制御不可能な状態を招いて浅瀬に激突したとしか考えられない。

 しかしこの考えは前に触れたように、なぜもっと機体が制御できていた間に不時着を試みなかったかという疑問ばかりか、ベテランパイロットに相応しい、在るべき操縦能力という点で明らかに矛盾することになる。

 ここでニコルソンの逆ギレが答を導いてくれる。
 
 オスプレイのプロペラのブレイドが給油機のホースを切断したいうことがウソ偽りのない真正な事実そのもので、そのことを発端とした住宅街への不時着によって引き起こされるかもしれない重大な危険性回避のためのコース変更が招いた浅瀬への不時着にしても、同じくウソ偽りのない真正な事実そのものだとしても、夜間であろうと、空中給油中にホースを切断したこと自体が重大な過失・失態であって、それが全ての始まり・全ての原因である以上、その始まり・原因の謝罪から入って然るべきを、いわば謝罪する立場に立たされていながら、謝罪するどころか、前段を切り捨てて、コース変更を選択した後段にだけ焦点を当て、「感謝されるべきで表彰ものだ」と逆に恩着せがましいことを言う。

 まさしく開き直りの逆ギレそのものだが、ニコルソンは自身の立場上オスプレーの沖縄配備が日米の安全保障上必要であると信じているはずだから、例えそのことに反対するどのような声に出会ったとしても、逆ギレしたり苛立ったりは抑えなければならないし、それを抑えて、例え安慶田副知事がオスプレイの不時着を受けてその飛行中止と配備撤回を要請したとしても、謝罪は謝罪として行い、自身の理によって飛行中止はできないことの、あるいは配備撤回には応じることができないことの説得に掛かったはずだ。

 ところが、そういった立場上の態度を取ることも、パイロットの給油機ホースの切断という重大な過失・失態を謝罪もせずに苛立った逆ギレを見せた。

 この妥当性を欠いたニコルソンの態度に正当性を与えるとしたら、前段も後段もウソ偽りのない真正な事実などではなく、逆のオスプレーの飛行を擁護するためにつくった事実と見る他はなくなる。

 墜落という疑惑を持たざるを得ない大破の状況から、米軍の説明だけで、機体に問題があるのではなく、プロペラのブレイドが給油機のホースを切断して損傷を受けたことが原因の不時着だと早々に決着づけることはできない。

 米軍だけではなく、沖縄側の民間人を交えたパイロットに対する聴取を行って、米軍発表の事実が事実かどうか検証すべきだろう。

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