安倍晋三のプーチンの平和条約発言が北方四島の日本への帰属を意味させているかどうか理解できない頭の悪さ

2016-12-22 10:07:46 | 政治

 戦後71年を経てもなお日露間で締結されていない平和条約に関する日本の立場は、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することを基本方針としている。

 要するにロシアが自国領としている北方四島の領有権を日本側に手渡し、日本の領土だとなったとっきに初めて平和条約の締結交渉に日本側は入ることができることになる。

 と言うことは、平和条約締結は北方四島の領有権のロシアから日本への移行を前提としている。

 つまり、北方領土が日本領とならない限り平和条約は締結しないことの宣言でもある。

 このことは誰もが認識していることであり、誰もが認識していなければならない将来的経緯と言うことになる。

 であるなら、これは当然のことだが、安倍晋三は平和条約、もしくはその締結に言及する場合は、その発言は常に領有権の日本への帰属を見越していなければならない。

 と同時にプーチンが平和条約、もしくはその締結に言及する場合にしても、その発言は常に領有権の、少なくとも将来的には日本への帰属を見込んだ内容となっていなければならない。

 そうでなければ、プーチンはこれまで通りに北方四島がロシアの領土であることを前提とした平和条約に関わる発言、もしくはその締結に触れた発言ということになって、安倍晋三は平和条約締結の交渉にすら入ることができないことになる。

 2016年12月19日付「産経ニュース」が12月18日夜に出演したフジテレビ番組「Mr.サンデー」での発言を伝えている。
   
 司会者「(日露首脳会談の結果について)日本のメディアは希望と落胆、両方報じている。経済協力の話題が多く、ロシアに食い逃げされるのではないかとのという報道もある」

 安倍晋三「全体の会談は6時間半行われたのですが、一番大切な、私とプーチン大統領2人だけの膝詰めの会談は95分。その殆どは、平和条約、領土交渉、問題についてじっくり話をしました。しかし、そこは解決をしたときにしか出せない。中身については。残念ながら、表に出すことはできませんから」

 今回の安倍晋三とプーチンの首脳会談は16回だそうだが、これまでもプーチンと何回首脳会談を開いたと、その回数によって信頼関係を構築できたと誇っていたのと同じ線上の発言となっている。会談で取り決めた結果が証明することになる成果を会談時間の長さが証明するかのような言い回しの合理性の欠如は相変わらずである。

 安倍晋三はこの後、「本格的な領土交渉には入ったと私は思っています」と断言している。

 要するに「共同経済活動」だけを本格的に話し合ったわけではなく、領土交渉に関しても本格的な議題としたと言うことなのだろう。

 当然、安倍晋三の以下の平和条約の締結に関する言及は話し合ったはずの領有権の帰属問題を含んでいることになる。

 司会者「共同会見で平和条約がない異常な状態に私たちの手で終止符を打たなければならない、とおっしゃった。プーチン氏も『私たちにとって一番大事なのは平和条約の締結です』とおっしゃった。プーチン氏は2018年に大統領選がある。おそらく再選し、長期政権になるので大統領選まで待ってくれと。その後に平和条約、二島返還、4島返還という工程表が両首脳の間で交わされているのでは」

 安倍晋三「(プーチン氏の『最も重要なことは平和条約の締結だ』という発言は)一番重要な発言なんですが、95分間、膝詰めで話しあった結果でもあるんです。

 今まで、プーチン大統領が『一番大事なのは、平和条約の締結』と発言したことは1回もありません。平和条約に触れる際は非常に慎重です」

 この発言は北方四島の領有権を、少なくとも将来的には日本に帰属させることを前提としたプーチンの発言だと安倍晋三が受け止めていることを意味する。

 だから、「95分間、膝詰めで話しあった結果でもある」と誇ることができ、プーチンの発言を「一番重要な発言」だと意義づけることができる。

 ロシアの領有権を前提としたプーチンの発言だと見ていたなら、膝詰めの話し合いを誇ることも、「一番重要な発言」と位置づけることもできない。

 以上のフジテレビでの安倍晋三のプーチンとの首脳会談に対する評価は安倍晋三がそうだとしている評価であって、プーチンの評価が加わっているわけではない。プーチンがどう評価しているか、2回の会談後の共同記者会見でのプーチンの発言を記者との質疑から見る他ない。

 質疑の遣り取りを「産経ニュース」が伝えている。   

 プーチンは質疑の最後の方で確かに「もし誰かが、私たち(ロシア側)が経済関係の発展だけに関心があり、平和条約の締結を二次的なものだと考えているというのであれば、それは間違いです。私たちにとって一番大事なのは平和条約の締結なのです」と発言している。

 この「一番大事な」平和条約の締結が安倍晋三の解釈どおりに北方四島の領有権を将来的には日本に帰属させる意図を含んだ発言なのか、その解釈に反してロシア側に帰属させたままの発言なのかが問題となる。

 記者「平和条約締結に関しては、先日の日本メディアとのインタビューで『我々のパートナーの柔軟性にかかわっている』とも述べた。かつては『引き分け』という表現も使った。大統領の主張は後退しているような印象があるが、日本に柔軟性を求めるのであれば、ロシア側はどんな柔軟性を示すのか」

 プーチン「その質問に満足に答えるためには、まずとても短く歴史の問題に触れる必要があります。 日本は先ず1855年にその島々(北方四島)を受け取った。プチャーチン提督がロシア政府と皇帝の合意のもとづき、これらの島々を日本の施政下に引き渡した。それまでは、ロシア側はクリル諸島はロシアの航海者によって発見されたため自国の領土と認識していました。

 条約を締結するためロシアはクリル諸島を日本に引き渡しました。ちょうど50年たって、日本はその島だけでは満足できないように思うようになった。

 1905年の日露戦争のあとに、戦争の結果としてサハリンの半分を取得しました。あの時、国境は北緯50度の線で決められたのちに日本はサハリンの北半分も獲得しました。
 ちなみにポーツマス条約のおかけでその領土からロシア国民を追放する権利もありました。40年後の1945年の戦争の後にソ連はサハリンを取り戻しただけでなく南クリル諸島も手に入れることができました」

 わざわざ1855年2月7日(安政元年)の日露和親条約の締結にまで遡って歴史を紐解き、その締結以前は北方四島はロシア領であったこと、その後歴史の変遷を経たのち、第2次大戦の結果、サハリンだけではなく、北方四島はロシア領となったと、ロシアは領土を回復させたのだという文脈で北方領土を語っている。

 つまりサハリンにしても北方四島にしても、元々からロシア領だと主張しているに等しい。

 だとすると、プーチンが「最も重要なことは平和条約の締結だ」と言っていることは安倍晋三が解釈しているような北方四島の領有権の将来的な日本への帰属を意図した発言ではなく、ロシアの領有権を前提とした平和条約の締結が「一番大事」だと主張していたことになる。

 と言うことは、ロシアの魂胆は先ず北方四島で共同経済活動を発展させて、日露が経済的に切っても切れない関係を築いてから、平和条約締結交渉に取っ掛かる。日本側は北方四島の領有権の日本への帰属を前提に条約の締結を図ろうと交渉を進めるのに対してロシア側は領有権をロシアに置いたままの締結に持っていこうと交渉を進めることになる。

 だが、安倍晋三の頭の中は日本と同様にロシアも日本への領有権の帰属を前提とした交渉を思い描いている。

 このことは12月20日午後、東京都内のホテルで開催した「内外情勢調査会」での安倍晋三の冒頭のスピーチにも現れている。発言は12月20日付「産経ニュース」からの引用。   

 安倍晋三「結果として日露首脳会談が行われた直後、来週には歴史的な真珠湾訪問を控えて、絶妙なタイミングになったと言ってもいいと思います。『政治で最も重要なのは勘だ』これは小泉純一郎元首相がよく私に言っていたことでありまして、私の勘も捨てたものではないと思います。どうでしょうか?」――

 もしプーチンの平和条約締結に関わる発言が北方四島の領有権をロシアに帰属させたままの締結を意図していると安倍晋三が解釈できていたなら、日露首脳会談直後の真珠湾訪問を「絶妙なタイミング」とすることなどできるはずはなく、「私の勘も捨てたものではない」などと言った言葉は間違っても口にすることはできなかったろう。

 頭の悪い男。

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