北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

岐阜市消防局防災訓練・巡視船みうら入港

2006-03-19 13:21:37 | 写真

岐阜市消防局防災訓練

 2月23日に撮影した写真で少々遅くなり恐縮だが、詳報としてお送りしたい。消防出初式や府警県警観閲式、都道府県中心の対テロ訓練などは北大路機関の特性上、扱わなかったが今回は特別に情報があり、小生も展開を行った。

Img_7592  人口40万の人口を抱える岐阜市は、200万の岐阜県県庁所在地であると同時に、東海三県にあって名古屋市に次ぐ大都市であり、一宮市・岡崎市・小牧市・春日井市・大垣市・豊橋市とともに名古屋都市圏を構成している。

 その為、複合商業施設や航空産業といった工業地域も所在し、岐阜市消防局はこの広域を責任範囲として任務に当たっている。また、岐阜県は北部に三千米級の飛騨山脈を有する関係上、岐阜県警とともに山岳災害に対する責任も負っている。今回は、岐阜市南部の複合商業施設において火災が発生したとの想定で県警・市消防局が協力し対処する訓練を実施した。

Img_7580  これまでは、岐阜市内に高層建築物は極限られていたが、目下岐阜駅周辺に100㍍クラスの超高層ビルが建築中であり消防局はその需要に応じ大型の梯子車を装備している。

 浅学にして梯子車に関する詳細な知識を持ち合わせないが、十階程度の中層建築物に対しては対応可能な装備である事が写真から判別できる。

 梯子車は人命救助と同時に、高所からの放水による延焼阻止という任務を有している。

Img_7569  要救助者を吊り上げる岐阜県警航空隊のBK-117ヘリコプター、川崎重工とユーロコプター社が共同開発した機体で、容量の大きな胴体には10名の人員を収容可能、ユーロコプター社ではHOT対戦車ミサイルと機銃搭載の武装ヘリ型を提案している。

 同機は先日、岐阜基地においてスキーをスキッドに装着し訓練している様子が報道されており、冬季の山岳救助にも大きな威力が期待できる。3190㍍の穂高を中心に連なる飛騨山脈では例年多くの登山者が事故にあっており、航空救難は県警航空隊の重要な任務の一つである。

Img_7599  放水を終わり装備品を格納する消防車。

 東海地震の危険区域に区分される岐阜県であるが、広大な面積を誇る岐阜県に対して、県内には陸上自衛隊は地区施設隊(岐阜分屯地)の一個中隊のみで、災害派遣は名古屋市の第十師団の協力を得るより無いが、第十師団も名古屋や愛知県南部の災害派遣という重責がある。東海地震発生時には救援活動の拠点となるであろう航空自衛隊岐阜基地の機能維持が限界であると見られているため、その分、市消防局の双肩にかかった責任は非常に大きいといえよう。

Img_7600  梯子を格納中の梯子車。

 航空自衛隊の航空事故対応型消防車に見慣れた小生には、梯子車というものを詳細に見たのはこれが初めてかもしれない。

 高所火災消火に不可欠な梯子車であるが、その分重量があり、現場到達までの機動性に限界があるのが難点だ。

 尚、警察は犯罪の広域性に対応して都道府県単位、消防は火災の延焼範囲の局地性を考慮し市町村単位に本部が設けられている。

Img_7593  見事な機動飛行を展示するBK-117。

 機種部分にサーチライトが装備されており、地上灯火の豊富な都市部であれば、視界が良好である限り夜間飛行が可能である。

 機体左側面にはウインチが装備されている。BK-117は愛知県警航空隊も装備しているが、同機はスタビライザー付の球状カメラを装備しており交通監視・犯罪対応に重点を置いているが、ウインチ装備の本機は災害時における救難を主眼としている事がわかる。

 このように充実した訓練を行っており、情報次第では京都・岐阜・愛知の対テロ訓練も展開を今後考慮したいと思った次第だ。

Img_7620  さて、小生は当日、名古屋にて別法があり、同時に巡視船入港の情報を得た事から早めに名古屋市に展開した。

 名古屋市は人口220万名、パリ市が230万名であるから世界的に見ても大都市であり、愛知県内のGDPはベルギーやオランダ一国に相当する規模を有している(ただし、東京都域内GDPはイギリス一国に相当するが)。写真は名古屋駅前の大名古屋ビルヂングと建設中の豊田ビル(新)である。現在名古屋市では急速に高層化が進んでいる。

Img_7634  巡視船を撮影すべく名古屋港に展開した際の写真である。写真は永久保存されている海上自衛隊の退役砕氷艦『ふじ』と、南極観測隊に同行したカラフト犬、“タロ”“ジロ”の銅像である。

 無神経で非道徳なアメリカ人がリメイクした『南極物語』が劇場では好評と聞くが、高倉健・渡瀬恒彦の南極物語は、戦後初の南極観測隊派遣に際して、日本の昭和基地を舞台とした実話である。当時は南極といっても簡単に行けるものではなく、第一次越冬隊は遺書をしたため、砕氷艦『宗谷』も恐らく沈没するのではないかと晴海埠頭を見送る家族や一般国民は一大壮挙としつつ、永久の別れを覚悟したという。

Img_7625  現在運用されている砕氷艦『しらせ』は基準排水量11600㌧、この『ふじ』も5000㌧であるが、『宗谷』は2500㌧、『はつゆき』型護衛艦よりも遥かに小さく、また建造は戦前であった。しかし、南洋航路航行中に魚雷を受けても不発であったり、また主要航路を航行しながらも米潜水艦に中々遭遇しなかったなど、幸運艦であった。戦艦『榛名』、駆逐艦『雪風』など数多の戦闘を運というより無いほどの中で生き延びたフネは多々あり、『宗谷』もその一隻であったが、悪天候の中やむにやまれずカラフト犬は置き去りにされ、二匹が奇跡的に生還したという実話である。ヴェトナム戦争に大量の軍用犬を送り、輸送手段がありながらも見捨てて帰国したヤンキー共とは違う事は留意しておくべきだろう。

Img_7627  『ふじ』は『宗谷』の後継として建造され、運用は海上保安庁から海上自衛隊に移った。ヘリコプター格納庫を有する最初の艦として建造され、南極観測隊を昭和基地まで送り届けた。

 砕氷艦とは、艦首部分を氷に叩きつけ、それでも突破できなければ後退して再度加速、駄目ならば氷に乗り上げて艦内の重量物を左舷右舷と移動させ振動によって氷を破砕する。『ふじ』以降実施されないと聞くが、最後の手段では氷に爆薬を仕掛け、一列に連続爆破させるという最終手段がある。

Img_7622  こうした南極観測は日本国内でのコンテナハウスや極地用無線機、雪上車というような、いわば後方支援と技術的下支えの下で完成している。

 写真は雪上車であるが、戦後日本、軍事超大国としての地位を敗戦によって失った日本にとり、経済成長を実感させる国威発揚にも南極観測は有形無形の成果を示し、安定した顕在大国の地位を不動とした今日では、オゾンホールや地球温暖化観測と対策の最前線として各国は南極に観測隊を送り続けている。

Img_7672  『ふじ』の撮影を終え、イタリア村のあるガーデン埠頭方面に歩いていると時間通り、名古屋港に海上保安庁の練習巡視船『みうら』が入港してきた。

 『みうら』は既に既報ながら、災害対策型巡視船の二代目として建造されたもので、平時にあっては舞鶴港を母港とし、若い海上保安官のシーマンシップ育成に当たっているが、災害時には練習巡視船から災害対応巡視船に転用される訳である。

Img_7655  災害対応型巡視船とは、その必要性が痛感されたのが1995年の兵庫県南部地震、いわゆる阪神淡路大震災である。

 災害救難の中心となるべき第七管区海上保安本部が被災してしまい、通信や人員といったその指揮機能が麻痺した事に端を発する。

 『みうら』には、講堂として用いられている区画を急速に災害対策指揮所に変更する事が出来、洋上から指揮命令系統を維持できる。

 他にも、医療設備も他の巡視船と比して高度なものが搭載されており、応急的な病院船としての機能を持つことに加え、毛布や非常食糧、医薬品などを平時から備蓄している。

 無論、巡視船であるから、20㍉多銃身機銃を有し、必要に応じて警備救難任務にも対応できる他、ヘリコプターの発着支援設備も有している。

Img_7694  なお蛇足ながら、昭和50年代に建造された海上保安庁の1000㌧型巡視船の多くは耐用年数を向かえ若しくは超えており、急務として代用船舶の建造が急がれているが、北朝鮮工作船侵入事案に端を発する、高速性能やダメージコントロール機能、火器充実といった警備救難任務の強化とともに、災害対策という重大課題もあり、対して予算増額は難しいという現況が海上保安庁にある事を頭の片隅においておくべきと小生は考える。

 練習巡視船『みうら』に続いて、ということでもないが、3月26日には、海上自衛隊の近海練習航海部隊が三隻、名古屋港に入港予定とされている。

Img_7704  『みうら』を撮影した後、名古屋市内に戻った。

 星野書店、三省堂というような書店が名古屋駅前の名駅には多く所在し、中心部栄にもBOOK1st、旭屋書店、紀伊国屋という書店街が、そして鶴舞・上前津周辺には30軒程の古書店が並んでおり、学術書に関しても京都大学隣の古書店外よりも充実している。

 小生も友人と合流するまでのあいだ書店を回り、必要な書籍を探す事が出来た(海上自衛隊機密情報漏洩事件の第一報が入電したのはこの頃である)。

Img_7712  その後、友人と別法にて酒を酌み交わした。

 友人のY氏は中国文学を専門とする古くからの友人で、非常に博学である。インテリ肌という訳ではないが、中々鋭い。

 今回の別法は、彼の大学院合格祝いというカタチであるが、鍋を囲み、ビールを幾本か空け、熱燗も空け店を出たらば、名古屋市のシンボルであるツインタワーが点灯しており、その写真も撮影し撤収した。

Img_9292  昨日、舞鶴に展開した際に『みうら』を探したが、残念ながら見ることは出来なかった。出港していたのだろうか。

 舞鶴基地の自衛隊桟橋は舞鶴の観光名所となっており、護衛艦に多くの一般市民が写真を撮ったり質問していたりした。

 写真は第三護衛隊群旗艦『はるな』と、第63護衛隊隷下の『しまかぜ』。

HARUNA

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