北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊 笠取山分屯基地開庁50周年記念行事

2006-07-25 14:40:26 | 航空自衛隊 装備名鑑

■第一警戒群一般公開

 航空自衛隊は全国28箇所にレーダーサイトを配置し、日夜一瞬の隙も無く日本周辺空域の警戒を続けている。

 23日、三重県津市にある航空自衛隊笠取山分屯基地祭へ展開した。笠取山分屯基地にはレーダーサイトを運用する第一警戒群が展開し、要撃管制の要となる情報を収集している。

Img_4880  運用するレーダーは1990年代より配備が開始された三菱電機製で国産の三次元レーダーJ/FPS-3で、性能に関して「日本の防衛戦力③ 航空自衛隊」(読売新聞社編1987)によれば、その探知距離は600km以上(J/FPS-2に関する記載)といわれている。現在では順次J/FPS-4への更新が進んでいる(レドームは二つあり、もう一方は確認できなかったが、既に更新されている可能性もある、写真ももしかしたら4?3?という状況(汗))。写真のカバーは装備年鑑によれば硬質レドームNCW-29/GPSというもので、悪天候からレーダー本体を防護するものである。50㍉氷結、400㍉積雪、風速65㍍にも耐えるという。

Img_4887  式典にはとなりの白山分屯基地より、航空自衛隊第四高射群第14高射隊がペトリオットミサイルの装備品展示を行っており、訪れたNHKのスタッフや市民に対して隊員が丁寧に説明していた。説明の隊員によれば、一番大変なのは移動の際という。装備品は30輌以上からなり、車間距離を充分にとると2kmの車列になり、運転には細心の注意を必要とするとのことだ。ともあれ、弾道ミサイル防衛がクローズアップされるなか、多くの人々が再装填の訓練展示を興味深く見ていた。

2005116_064  上の写真は分屯基地正門のヘリポートから撮影したのだが、天候急変により浜松基地からの飛行展示が中止となったため、仕方なく降りていくと・・・、霧で何も見えず大変なことに・・・。冒頭のレドームは正門から3km程はなれているそうで、あの写真を撮影できた時点では視程は最低3kmあったはずなのだが、ほんの数分で視程30㍍という状況に。幻想的、若しくはマイナスイオン全開!というと聞こえは良いが、はっきり言って怖いほどの霧であった。

2005116_012  レーダーサイトらしいパラボラアンテナであるが、写真はO/H多重通信装置J/FRQ-8(多分)で、自衛隊装備年鑑によれば、航空自衛隊ではレーダーサイト間を結ぶ主要通信装置として機能している。日本電気製で、受信用と送信用に分かれている。

 特に自動警戒管制装置を円滑に機能させるには必要不可欠な装置であり、新型化によって電送品質やチャンネル数の増加、高性能化が図られている。

2005116_061  で、数分後、同じところを撮ってもこうなる・・・。レンズが曇っているのではない!ホントに霧でここまで白くなるのである。

 霧くらい恐れるな!というなかれ!!、霧が、スローモーションの津波映像のように分屯基地を覆っていくのである!さすがは伊賀!忍者が出ても良いほどの雰囲気である。しかし、これだけ霧が濃ければ飛行展示も中止やむなしといったところであろうか。実際、アナウンス放送によれば浜松基地を離陸したT-4は太平洋まで出たとのことだが、途中で断念したとの事である。

2005116_042  基地祭では1100時と1300時より、ペトリオットミサイルの再装填作業の様子を訓練展示によって公開していた。

 ペトリオットミサイルは、航空自衛隊が運用する日本でもっとも射程の長い地対空ミサイルで、その射程は100km以上に達する。アメリカレイセイン社製で、西側を代表する広域地対空ミサイルであるが、米陸軍防空砲兵部隊向けに1980年より生産を開始、航空自衛隊では1985年より整備に着手している。

2005116_046  1994年に那覇基地の第五高射群に配備したことで、航空自衛隊から旧式のナイキミサイルは引退し、ペトリオットミサイルに更新されている。また、ペトリオットミサイルそのものもPAC-1から新型のPAC-2へ、そしてコンピュータの近代化や電子妨害への耐性強化などの近代化が為され、近年でも2003年より早期警戒管制機とのデータリンク機能付与などの能力向上策が行われている。また、今年度末からは弾道ミサイルへの迎撃能力を有するPAC-3(射程15~30km)の緊急導入が開始されるとのことで、今後ともニュースなどでよく見かけるであろう装備である。

Img_4876  訓練展示が終了し、飛行展示を求め再び高台の正門付近にあるヘリポート付近へ向かうと、雲海が迫ってきた。

 蛇足ながら、第14高射隊は映画「ガメラⅢ」において、遠州灘から出現し奈良方面へ飛行するガメラを撃墜するシーンで登場している。恐らく日本映画史上初のペトリオットミサイル実射シーンは派米訓練に同行し、撮影したもので、装備品展示の説明に当たっていた隊員も皆しっていた。そこでマニアな話も盛り上がったり。

2005116_081  どんなに盛り上がっても、雲が盛り上がってしまっては飛行展示は出来ない。従って、小生は次の訓練展示会場へと向かった。

 野外炊飯訓練展示(イベントプログラムより)!、災害派遣などを想定し、カレーライスを調理、販売するという自衛隊ならではの訓練展示である。日本の国民食に挙げられるほどのカレーライスであり、小生も体を張った訓練展示の体験が出来るとあり、気を引き締めて訓練展示会場へ展開した。

2005116_087  訓練展示!

 航空自衛隊のカレーライスは一般に甘口として知られているが、近年、隊員や災害派遣時に喫食する市民の嗜好は年々変化している。しかし、災害派遣というその任務の特性上、安易に香辛料を増加する施策も特に児童への喫食を考えれば困難である。こうして、近代化改修の一環として、写真左下にあるような“辛さ調整調味料”なるものを導入した!このオレンジ色の調味料により辛さを調整し、嗜好に併せた配食が可能となったわけだ。

2005116_086  式典会場ともなった体育館は盛況で、この野外炊飯訓練展示の体験を希望する市民で会場は一杯となった。会場では広報ビデオの上映も行われており、広報ビデオと観つつ喫食という観客も数多く居た。

 しかし、ご飯の炊飯が追いつかず、訓練展示も途中で中断する一幕もあった。次の炊飯完了時間や配膳、基地一般公開の時間に配食が間に合うかなど、実戦さながらの厳しい状況に市民達(並んだ人)は熱い視線を送っていた。ちなみにカレーライスは一食300円と格安!

2005116_102  訓練展示(カレーの方)が終了した後、飛行展示は天候状況によっては再開するという事で、それまでの間、写真パネルを観て回る事とした。写真パネルは、雪中通路とよばれる長い通路において実施されており、撮影可、とのことだったが、途中上がったり下がったり、曲がったりという地下通路で、主要な施設を地下通路で繋いでいるということだ。非常に雰囲気のある長い通路で、来年当たり「閉所訓練状況展示」としてオバケ屋敷でもやったらどうか、と思うほどであった。

Img_4934  霧に包まれた第一警戒群本部の置かれた庁舎。結局、残念なことに浜松基地からのT-4、岐阜基地からのF-15J、F-2、F-4EJ改、小牧基地からのU-125、UH-60JA、明野駐屯地からのAH-1S、OH-6Dといった飛行展示は中止となってしまったが、久居駅からバスで一時間半、携帯電話もなかなか通じないという厳しい環境の下で任務に当たる航空自衛官の環境を知る事が出来た貴重な一日となった。

 50周年の節目に当たる行事が悪天候に見舞われたことは残念であったが、レドームや雪中通路、ペトリオット再装填などの珍しいものを多く観る事が出来、収穫も多い一日であった。全国28箇所のレーダーサイト、皆さんも一度は足を運ばれてみては如何だろうか。

HARUNA

(本ブログの本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
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