北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊新砕氷艦しらせ日誌 “建造、進水、公試、そして就役へ”

2009-05-30 16:45:03 | 北大路機関特別企画

◆しらせ、はこうして建造された

 本日、そして明日、横須賀基地では、20日に就役したばかりの新砕氷艦しらせ、一般公開が行われている。そこで、本日は、ユニバーサル造船舞鶴工場にて、新しらせ、がどのように建造されたか、特集したい。

090520img_2644  除籍された元ヘリコプター搭載護衛艦はるな、その隣を、就役したばかりの砕氷艦しらせ、が母港横須賀に向けて出港してゆく。自衛艦にもフネとしての一生があり、初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、は、数々の任務を完遂し激変する国際情勢を背景によく、その責務を全うした。新砕氷艦しらせ、も檄浪の南氷洋に向かう艦で、幸多い生涯を祈りたい。

071231img_0199  2007年12月31日、大晦日に舞鶴基地北吸桟橋より撮影した新砕氷艦しらせ。当時はまだ艦名決定前であるので、当時の呼称は、AGB 12500t TYPE、12500㌧型砕氷艦である。まだ船体が完成した段階で、上部構造物の建造は始まったばかりという状況だが、砕氷艦のオレンジ色に塗られた船体の様子がよくわかる。

080202img_6953  2008年2月2日の情景。建造は進んでおり、上部構造物の姿が少しづつ組み立てられているのが見える。隣には定期整備中のミサイル護衛艦みょうこう、がみえる。みょうこう、は満載排水量9500㌧、世界でも有数の大型水上戦闘艦であるが、12500㌧型砕氷艦の満載排水量は22000㌧に達する。

080217img_8478  2008年2月17日、この日は舞鶴基地に練習艦隊が入港した日であるのだが、舞鶴をはじめ山陰地方は豪雪に見舞われていた。上部構造物は、2日と比べるとヘリコプター格納庫の姿がはっきりとわかるようになっている。CH-101輸送ヘリ2機と観測ヘリコプターを収容するかなり大きな格納庫だ。

080322img_1805  2008年3月22日の情景。青春18きっぷ期間中、在来線に自由に乗り降りできるということで舞鶴に足を運ぶと、ファンネルや艦橋を含む上部構造物が、少なくとも形状はかなり完成に近づいてきている。しかし、マストなどをみると電装品などは、まだまだこれから艤装が開始される、という段階であるのが見て取れる。

080726img_0844  2008年7月26日の様子。新砕氷艦12500㌧型砕氷艦は、AGB-5003、砕氷艦しらせ、として進水式を終え、舞鶴の水面に浮く。ユニバーサル造船舞鶴工場は手狭で、山を掘りぬいたトンネルを倉庫に使っているほどなのだが、進水式を終えて海に出ると、砕氷艦の印象が大きく変わってくる。

080726img_0851  上部構造物の艤装工事が進んでいる。この写真を撮影したのは7月26日、舞鶴ちびっこヤング大会実施日。四日後の7月30日には横須賀基地にて、砕氷艦しらせ、が自衛艦旗を返納、除籍されている。当初予算を負担する文部科学省が予算を中々通すことが出来ず、結局防衛省予算にて建造することとなったのだが一年遅れ、南極観測支援用砕氷艦の空白時代が始まった。

080906img_9668  2008年9月6日。内装の整備が進められているのだろうか、通常の砕氷艦と異なり、海上自衛隊の砕氷艦は、南極観測支援という任務を帯びて運用されるため、観測隊公室や専用の居住区を設けて設計されている。専用の事務室、寝室、隊長公室なども設けられており、特徴的な内装となっている。

081016img_4119  2008年10月16日。上部構造物は、艦橋周囲に取り付けられていた足場が取り払われており、進捗状況を端的に示している。他方で、艦橋前面やファンネル付近には足場が設置されており、マストでも電装品の取り付けが続けられている。ちなみに、新しらせ、の公試は12月から開始されている。

090203img_6688  2009年2月3日に撮影した、新しらせ。やや霞がかかっていることもあり、判りにくいがファンネルからは薄らと白煙が昇っており、機関が稼働していることを意味する。ディーゼルエレクトリック方式を採用しており、出力は30000馬力。旧しらせ、は三軸推進であったが、この新しらせ、は二軸推進を採用している。

090208img_7764  2009年2月8日の様子。全長138㍍、幅28㍍、砕氷艦は、いつでも就役できるような状況にみえる。もともと、20000㌧型砕氷艦となる予定が、予算の関係上、12500㌧となってしまい、ややがっかりさせられたが、ファンネルが舷側に配置された設計は力強い印象を与え、なるほど、出来上がってみると立派だ。

090317img_5416  2009年3月17日に撮影した様子。前島埠頭から長時間露光撮影に挑戦。夜の埠頭は、少し躊躇したが、実際行ってみると、前島埠頭は夜釣りの名所、多くの釣客が釣果を目指し、煌々と集魚灯を焚いていた。なかなか暗くならず、待ち続けて撮った一枚。新しらせ、のシルエットがくっきりと浮かんでいる。

090318img_5510  翌3月18日の情景。この日、快晴に恵まれた舞鶴基地では、海上自衛隊最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、が自衛艦旗を返納、その歴史に幕を降ろした。同じ日には横浜にて新ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、が就役しており、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦が世代交代を迎えた日である。

090404img_9480  2009年4月4日、北朝鮮の弾道ミサイル実験実施宣言が行われ、いよいよ発射か、という日、新しらせ、は再びドックに入渠していた。就役前の調整や整備、ということだろうか。当日は、舞鶴地方隊や護衛艦隊所属の護衛艦で出航準備をしている姿もみられ、いよいよ始まるのか、という印象だった。

090520img_2706  そして5月20日、就役。新砕氷艦しらせ、は、自衛艦旗を受領、高らかに掲げ、舞鶴を出発、母港横須賀へと向かった。舞鶴では、日本海までの海岸で、多くの市民や艦船ファンがカメラを並べ、また手を振っていた。起工式から足掛け三年、舞鶴で親しまれた新造艦ということもあり、見送りにも力が入っていたようだ。新緑を背景に、しらせ、は日本海、太平洋へ、旅立っていった。

HARUNA

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