朝鮮中央テレビは、午後五時の放送で、“自衛的抑止力を強化する一環として、きょう再び地下核実験を成功裏に行った、今回の核実験は爆発力と制御技術において新たに高いレベルで行われ、核兵器の威力をさらに高めた”と報じた。
核実験を行ったとされる時間帯、日本や韓国、ロシアの地震計は咸鏡北道のプンゲリを基点として、0954時に人工的な揺れを感知、中国の北朝鮮との国境に面した延吉市では、体感できる揺れを観測し、一部の学校では地震発生を想定し避難なども行われたとのことだ。
日本の気象庁が観測した地震データは、通常の地震とは異なり、もともと地震の起こりにくい地域にあり、しかも、ほぼ地表近くで発生している点から、気象庁の関田康雄地震津波監視課長は、何らかの人為的な振動という可能性は否定できないとし、核実験による振動ではないかと分析している。震源地は北緯41.2°、東経129.2°。気象庁によれば、マグニチュード5.3と推定している。三年前の核実験の際に検知した地震波はマグニチュード4.9と推定されており、こんかいの規模は大きくなったといえる。
日本政府は、首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置。河村官房長官は、仮に核実験を北朝鮮が行ったということになったら、明確に安保理決議違反で、断じて容認することはできない、と発言。
麻生総理は、声明として、我が国の安全に対する重大な脅威であり、北東アジアと国際社会の平和と安全を著しく害する、断じて容認できず、厳重抗議・断固として非難する、拉致・核・ミサイルという懸案解決へ具体的行動をとるよう求める、と発言した。
韓国大統領府も、国家安全保障会議を緊急招集。大統領府の李東官報道官は、六ヵ国協議の合意や国連安保理に明確に違反したもので、決して許すことのできない挑発行為だ、と声明を発表した。
ハノイで柳外交通商相と中曽根外相が緊急に会談を行い、国連安保理で緊急に対応していくべきとの意見の合意をみた。麻生総理は韓国の李大統領と電話で会談し、麻生総理の、国際社会の平和と安定に対する脅威であり、断じて容認できないという発言に対し、李大統領は同様の考えであると示し、麻生総理が国連安保理を開くよう要請、李大統領も、安保理でしっかり対応が重要とし、アメリカを含め三か国で緊密連携をとることで合意した。また、アメリカのオバマ大統領も、国際社会で厳しく対応してゆかなくてはならないとの声明を発表。
一方北朝鮮は、北京の北朝鮮大使館職員の話として、核実験を行うことはすでに発表していた、我々は言ったとおりに実施する、六ヵ国協議のことはもう忘れるべきだ、と発表。続いて、北朝鮮は短射程ミサイルを発射。韓国国防省は、今日、二度にわたり地対空短距離ミサイルを発射したと報道している。
今回の核実験はロシアでも観測され、ロシア国防省は、核実験の規模は三年前よりも大きく、10~20キロトン程度であると発表。
核実験について、東京大学の阿部勝征名誉教授は、標準的な岩盤で行われたと考えると、少なくとも通常火薬2000トン分相当の威力があっただろう、としている。爆発の威力が大きくなった点について、東京大学公共政策大学院の鈴木達二郎客員教授は、北朝鮮のプルトニウム保有量は限られているので、実験に使うプルトニウムの量を増やしているとは考えにくい、今回は同じプルトニウムの量を使っていると考えれば、核爆発装置の精度はあがったと考えられる、との分析を示した。
環境についての影響は、放射線医学総合研究所の山田祐司部長によれば、北朝鮮の地下核実験を閉じ込める能力の水準について、報道が無く定かではないが、恐らく密閉性について大きな漏れはないのではと考えている、密閉性が保たれているのであればまず日本への影響は可能性は極めて低い、と意見を述べている。
文部科学省と各自治体は、可搬式放射線モニタリングポストを用いて検知を行っているが、今のところ大気中の放射性物質について、大きな変化はないとのことだが、政府は異常が無いか監視を強めることにしている。
航空自衛隊は、百里基地など三か所の基地より放射性物質集塵器を搭載したT-4練習機を発進させ、高空における放射性物質の監視を実施している。
この時期に核実験が行われた点について、朝鮮半島問題が専門の防衛研究所武貞秀士統括研究官は、核保有国と認めさせるためのメッセージではないかとの見解をしめしている。北朝鮮は核を保有してアメリカと対等な交渉を望んでおり、それにはワシントンに届く大陸間弾道弾、そして核弾頭の小型化をしなければならない。先月5日にテポドンミサイルの発射試験を実施したが、先月のミサイル発射と対米交渉という関係性をみているようだ。3200km以上飛んだ弾道ミサイル実験から50日後、この時期に核実験をしたということで、相乗効果があるということである。核保有国であると早く認めてくれよというメッセージであり、オバマ政権が核廃絶の演説を行った直後であるから、核技術を移転しないよう、外国に流出させないようにするにはどうするかについての力点をおきながた米朝協議を進めるという目的があるのではないかとのことだ。
また、静岡県立大学の伊豆見元教授は、その目的についてこう述べた。いま北朝鮮はとにかくいそいでいる、ある意味で焦っているという切迫感が感じられる。金正日総書記の健康問題、体制からスムーズに後継に移してゆく場合、アメリカの脅威がなくなって安心して後継させるかたちをつくらないと不安でしょうがない、ということだと思う、とし、総書記の健康問題があるとなるとますます急がなければならないと分析、2006年10月に北朝鮮は核実験を行ったが、その後国際社会が非常に強く反応したか、中国が強く出てきたか、韓国が強く出たかというとそうではなかった、リスクはあるが、うまくいくのではと楽観的に考えている可能性が高い、しかし、今度は制裁措置の面で言うと中国は踏み込んで北朝鮮に圧力をかける可能性は十分あると思う、とした。