北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮核ミサイルの脅威 その存在はどのように証明されるか

2009-05-27 22:31:16 | 国際・政治

◆上海万博には出せない核ミサイルの素朴な疑問

 イージス艦“みらい”が第二次大戦中にタイムスリップしてしまい、それにより歴史が狂うという状況下で、歴史に無い核開発を阻止しようと立ち向かう、かわぐちかいじ氏のコミック“ジパング”。

Img_5665  核兵器をどう使うか、これは難しい。連載では、あの手この手で入手した核関連物質と技術を総動員し、一発の原爆を製造した。その原爆を製造した元海軍少佐は、原爆を戦艦に搭載、歴史よりも早く生じたマリアナ攻防戦の第一線に原爆を持ち込んだ。原爆を日本が保有していることを示し講和の道を探すのか、大量破壊兵器として米海軍のただ中で使用し打撃力とするのか、第三の道が用意されているのか、SPY-1レーダーが破壊され満身創痍のイージス艦“みらい”は、原爆の使用を阻止出来るのか、連載はいよいよ佳境に差し掛かる今日この頃。現実世界の隣国では、自国は核保有国であり、核兵器を太平洋を越えて運搬できることを示そうと躍起だ。

Img_21811  北朝鮮の長距離ミサイル実験(人工衛星を搭載した飛翔体という表現から、最近は長距離弾道ミサイル試験と表現されることが多くなった)に続く一昨日の核実験、北朝鮮の脅威が高まっているとの指摘に反論は難しく、現在、真剣に策源地攻撃について、検討が進められている。この中で、日本にとっての最大の脅威は、ノドンミサイルに核弾頭が装備されることである。ノドンミサイルの弾頭は比較的小型で、核爆発装置を弾頭に収まる程度に小型化する技術が果たしてあるのか、あるとしたら、どの程度の精度で爆発させることが出来るのか、ということである。

Img_7051  核兵器は、例えば通常弾頭であればHE火薬にしても装甲の強化や構造物の堅牢性を高めることで対処でき、生物化学兵器にしても非戦闘員への攻撃の場合はともかくとして、防護服などの対NBC装備や除洗装備と併せれば、被害は局限化することが出来るものの、核兵器の熱線と放射線、衝撃波に関しては防ぐことが不可能に近い。また、運搬手段である弾道ミサイルは、小型目標が、宇宙を経由し高高度から極超音速で落下してくるため、迎撃は極超音速であり難しく、仮に成功しても落下を防ぐことは避けられない。巡航ミサイルや航空機による運搬手段であれば、既存の防空体制で阻止出来る。

Img_9799  かりに多数の航空機やミサイルによる飽和攻撃に際しても、要撃機、地対空ミサイルと早期警戒機などのデータリンクにより阻止できる要素はあるが、弾道ミサイル防衛は、今日、限定的にその可能性は高まっているものの、難題であることに変わりない。したがって、核弾頭を装着した弾道ミサイルは、迎撃及び防護が不可能に近い装備である、といえる。しかし、技術的にこれが可能となっていなければ、脅威度は低い。即ち弾道ミサイルに搭載できるまでの核弾頭の小型化、弾道ミサイルが落下する際、目標を破壊するための最適な高度で起爆させるための制御装置を実用化できるか、ということだ。

Img_2036  はたして、現時点で北朝鮮がこの能力を有しているかについて、既にノドンミサイルに配備している、という情報、そしてノドンミサイルに搭載できる技術を有している、とする情報、現段階では、その技術を有していないという情報、などなど錯そうしている。持っているのかいないのか、持つとすればいつ頃になるのか。これが重要だ。他方、北朝鮮にも難しい命題がある。仮にそうした技術を保有したとしても、これをどのようにして証明するかということだ。核弾頭を起爆させるのが最も早い手段であるが、これは無理だろう。地下核実験を実施したことでも包括的核実験禁止条約に抵触し、弾道ミサイルに搭載し、太平洋上の公海上で、起爆、核爆発を起こすのが最も手っ取り早いものの、実際にやれば部分的核実験禁止条約から国連海洋法条約、その他諸々の国際法に抵触し、放射性降下物により被害が生じれば、国連憲章でいうところの武力攻撃として、逆に被害国により平壌が核攻撃される可能性が生じる。

Img_4820  大気圏内で核実験を実施出来た50年代から60年代にかけて、核兵器国の中で弾道ミサイルを運搬手段とした国々は実際に弾道ミサイルを用いて核実験を億名うことで、その技術を誇示したが、今日では、これは無理である。しかし、北朝鮮は、核保有国となり、加えてアメリカへの運搬手段に搭載することが可能となったことを誇示し、抑止力とすると共に対米交渉の手段とする展望のもと、核開発を実施してきたとされている。何らかの手段にて、しかし、武力紛争に発展しない範囲内、政権や国家体制を維持できる範囲内で誇示しなくては、余り意味は無い。かといって、北朝鮮では、兵器見本市にあたる航空祭のような行事は行われておらず、パレードで展示したとしても通過するだけでは、実物であり、ダミーではない、という証明は難しい。

Img_2096  欧米や日本から専門家を招いて開発した弾道ミサイルと小型化に成功した核弾頭を分析してもらう、というのもナンセンスであるし、さりとて、一般大衆の世論を頼りに上海万博の北朝鮮ブースにて、北朝鮮国産核弾頭搭載型弾道ミサイル!として展示するわけにもいかず、もちろん、世界の兵器見本市に核兵器を出展するわけにもいかない。どのようにして、弾道ミサイルに搭載できる程度に核弾頭を小型化できたかを示すのか、ある意味興味がもたれる事例ではある。実態やいかに。恫喝に使おうにも、現在、向けた刃は竹光でないかが疑われている。一生懸命振ってみるが、竹光でない証明になりそうでならない。竹光では脅せないが、さりとて切りかかれば、逆に手痛い結果を招く。運搬手段と核兵器のみを以て国際政治の難題を万事解決、とは現実世界では、いかないようだ。

HARUNA

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コメント (7)
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