北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国四川地震から一年 思いのほか深かった日中の溝

2009-05-12 23:20:42 | 国際・政治

◆512大地震から一年

 本日は、四川地震から一年を迎えた日である。地震国日本としても、対岸の揺れと安穏に過ごす訳にはゆかず、やがて来るだろう地震への備えを進める必要がある。

Img_8661  2008年5月12日、四川省汶川を震源とするマグニチュード7.9の地震が発生、250kmもの長さの断層が二回にわたり動くという大地震により、四川省だけでも死者6万9197名、行方不明者1万8222名、負傷者は37万にも上り、スマトラ沖地震津波災害と並び近年では未曾有の大災害となった。

Img_0896  さて、この地震について、被害の詳細や、検証は他の媒体に譲るとして、当時の地震に際して、当方が感じたのは、交通が寸断された山間部の地域に、他に展開集団が無いということで降下した空挺部隊の姿が新潟中越地震に立ち向かう12旅団の姿と重なるとともに、日本からの救援物資を搭載した航空自衛隊輸送機の展開を、中国側が断ったという事が強く印象に残っている。

Img_4050  日本も、1995年の阪神大震災の際に、米空母の救援の申し出を、指揮権の問題などを併せ、運用上の齟齬を来す可能性があり、断ったという事例があるが、今回自衛隊が行うべく提案したのは、被災地への災害派遣ではなく輸送機による物資輸送である。当然受け入れられるだろうと考え、日中の相互信頼醸成の一助にもなると期待したのだが、結局断られてしまった。

Img_8636  米軍機が受け入れられているのと対照的に、日中間の溝はまだまだ深かったのか、と驚いた覚えがある。その理由は、国民感情、つまり、日本の輸送機の支援は受けたくないというものがあったと報じられている。一方で、東京消防庁や国際消防救助隊、海上保安庁特殊救難隊、国際警察緊急援助隊は派遣され、被災地での救命救助活動にあたっている。

Img_5472  航空自衛隊が、まさに被災者が苦しんでいる次期に輸送を申し出、断られてその後、2009年に入り、また一つの象徴的な事案があった。中国が建国記念国際観艦式を行うに際には、海上自衛隊の護衛艦、護衛艦の中でも伝え聞くところによれば、イージス艦の中国観艦式参加を希望したとのことだ。

Img_9460  結局海上自衛隊は、インド洋派遣任務、北朝鮮ミサイル試験への警戒と、ソマリア沖海賊対処任務への艦艇派遣に加え、練習艦隊の遠洋航海とも重なっている時期で、参加は実現しなかったが、緊急物資の輸送を断ったのち、一年も経たずして、観艦式に参加するよう大型護衛艦の派遣を求める。面子に拘るというか、価値観の相違というか、溝というものは、まだあるのかな、とも思った次第。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする