◆第472回護衛任務~第481回護衛任務より
海上自衛隊は先日、ソマリア沖海賊対処任務第481回護衛任務を完了しました。しかし、現在、どの程度の船団を護衛しているのでしょうか。
海賊対処法に基づく海上護衛任務は海賊対処法施行以来440回、それ以前の海上警備行動命令下での護衛を含め481回ですが、この任務の下で累計3022隻の船舶を護衛しました。ただ、第472回護衛任務から第481回護衛任務までの護衛実績を見ますと24隻で、一回当たり2.4隻という規模でしかありません。
護衛対象を更に見てみますと日本船籍船は0隻、我が国海運業者の運航する船舶が3隻、その他外国船籍の護衛が21隻で、過去全体の平均値を見ますと一回当たり6.8隻を護衛していることになりますので、昨今の護衛規模は明らかに縮小していることが分かるでしょう。
海上自衛隊は海賊対処任務へ護衛艦二隻を派遣していますが、これまで護衛艦二隻により船団の前後を護衛していたのに対し、このうち一隻を多国籍任務部隊の海賊対処哨戒任務へ移管させ、船団護衛には一隻のみを運用しています。ただ、現状の2隻前後しか護衛需要が無い状況を見れば、一隻の護衛艦で対処できるという現状が分かります。
実のところ、多国籍任務部隊への派遣要請を航空部隊派遣に留め、派遣護衛艦を一隻と縮小させていた方が、増加し続ける海上自衛隊任務におけるソマリア沖海賊派遣任務の負担を軽減させ、実任務と訓練に補給という体制の両立に寄与したのではないか、とも思うところ。
他方、各国海軍とのデータリンク実施を考えれば海上保安庁巡視船では大容量のデータ処理と通信に対応できないため致し方ないことではありますが、大型護衛艦を二隻充当しなければならないのは、南西諸島警備等に艦艇を回さなければならない現状では厳しいものがあり、この点の影響は大きいといえるでしょう。
昨年の観艦式海上自衛隊海洋安全保障シンポジウムでは、海賊対処任務に際し、英海軍大佐より海上自衛隊は長距離護衛任務を想定した外洋哨戒艦を持つべきだ、という指摘を行っていましたが、他方外洋哨戒艦もそれなりに建造費が高く、既存護衛艦をどう活用するか等を含め議論する必要はあるのかもしれません。
この点、旧地方隊で護衛艦隊直轄の護衛隊、所謂二桁護衛隊の護衛艦に対し、既存護衛艦の武装を簡略化し、乗員をほかの任務へ集中できるよう縮減すると共に、乗員居住区の充実を行い長期間の行動における負担を軽減する措置という検討は、行われても良いのでは、とも考えたのですが、反面、従来脅威への対処への復帰も難しくなるため、安易に結論は出せません。
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