◆水陸両用準備部隊創設も来年度予算盛り込みへ
海上自衛隊及び陸上自衛隊により六月に米西海岸において実施された日米共同統合実動訓練ドーンブリッツ2013参加部隊へ、統幕長岩崎空将より8月5日付で2級賞状が授与されました。
ドーンブリッツ2013は、カリフォルニア手キャンプペンドルトン及びその周辺で実施され、予てより課題となっていた島嶼部防衛を主眼とし、陸上自衛隊西部方面普通科連隊と海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが、ミサイル護衛艦あたご、輸送艦しもきた、の連携による島嶼部での独立した行動の演練を米軍の支援下で向上させる目的で実施されたもの。
訓練へは海上自衛隊護衛艦や輸送艦への米海兵隊MV-22の発着などが話題となりましたが、それ以上に両用作戦能力の端緒が正しく進められた意味が大きく、岩崎統幕長からの訓練参加部隊への2等賞状授与は、この訓練の重要性を端的に示している、といえるのかもしれません。
今回の訓練は、イージス艦による防空網の支援下での、ヘリコプター搭載護衛艦からの戦闘ヘリコプターと輸送ヘリコプターの連携による空中機動、輸送艦からの陸上部隊展開、という一連の行動を実働したもので、この分野では高度な能力、もともと第二次大戦中の対日戦により培われたものですが、有する海兵隊の支援を元に行われています。
イージス艦とヘリコプター搭載護衛艦に輸送艦、合計では三隻と、規模こそ大きい物とは言えず、むしろ小さいものですが、我が国が想定する島嶼部防衛は大規模着上陸が難しいところでもあるため、離島の面積から逆算される防衛力の水準や着上陸の規模を考えた場合には、妥当な規模ともいえるでしょう。
多数の島嶼部を以て構成される大洋の大陸外縁に位置する弧状列島を国土とする我が国において、その島嶼部防衛の重要性が冷戦期における北方防衛の重要性への比重により後回しとせざるを得なかった状況への改善努力が一定の水準に達したものといえる訓練でした。
一方で防衛省は、来年度予算概算要求へ水陸両用準備部隊の発足を盛り込む方針を定め、島嶼部防衛の実動部隊創設への準備を急ぐ方針を示しました。これは、我が国周辺における特に南西諸島への着上陸事態が現実味を帯びてきたための対応と考えられ、関連装備などの調達も要求されるとのこと。
関連装備としては水陸両用装甲車AAV-7が今年度予算での4両調達に続いて更に2両が調達される方針とされ、AAV-7は基本設計が古く、災害派遣や水陸両用車運用研究等に用いられる性格が強いともいえるものですが、これによりヘリボーン以外に上陸第一波の構成を可能とすることとなるでしょう。
現在、西部方面隊直轄の緊急展開部隊としての運用を想定し創設された西部方面普通科連隊が、海兵隊との共同訓練を積み重ね、その能力強化を急いできましたが、来年度予算で想定される水陸両用準備部隊は、この西部方面普通科連隊を中心として編成され、将来的には拡大改編することで創設する方針とも考えられています。
西部方面普通科連隊を中心に編成、という背景には、中央即応集団のような部隊を想定しているのか、かつての第102装甲輸送隊のように、第101水陸両用装甲輸送隊を創設し、西部方面普通科連隊と西部方面航空隊を統合した水陸両用混成団とするのか、現時点では想像以外はできませんが、関心を以て今後の展開を見守りたいですね。
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