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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【くらま】日本DDH物語 《第五回》 五〇年代の将来構想,システム艦の必要性見抜く設計陣

2017-03-04 20:17:47 | 先端軍事テクノロジー
■はるな型護衛艦へ至る道
 原子力ヘリコプター巡洋艦、という今日的には突飛とも先進的過ぎるともの視点を提示しました1950年代の設計技師たち、この視点をもう少し見てみましょう。

 ヘリコプター草創期の技術革新は早く、航空対潜機材としまして一挙に金属骨組の航空機というよりは飛行実験装置然とした機材は実用航空機へ改良型が即座に開発され、既に海軍において一定の地位を得ていた空母搭乗員への救難ヘリコプター機体を原型としまして、対潜ヘリコプターとしての運用区分が極めて短期間に構築されてゆく事となりました。

 航空機からの潜水艦捜索は従来、飛行艇と対潜哨戒機があたっていましたが、残念ながらこれらはソナーを搭載していても継続的に海面下に展開させ音響索敵を行うことが出来ません、飛行艇にソナーを搭載する試みはアメリカで、実は後に日本でも広く実施され、新明和工業による対潜哨戒飛行艇PS-1の開発へ進むのですが、これはもう少し後の話です。

 さて、飛行艇により着水し潜水艦を探す方策も模索されますが、ヘリコプターによるホバーリングは適宜捜索海域を調整し潜水艦音響情報と兆候を継続的に追尾可能です。これはヘリコプターならではの運用といえるかもしれません。一方、飛行艇の離着水には制約は低いものの海象に左右され、ヘリコプターホバーリングよりも煩雑である事は確かでした。

 ヘリコプターの対潜掃討における有用性が確認されると共にこの技術がアメリカ海軍において発達すると同時に、我が国でもアメリカ海軍からの技術提供を受けその能力を我が対潜掃討部隊へ整備するべく大きく前進を始めます。一方、アメリカ海軍からも海上自衛隊の対潜掃討部隊の養成へ、最新技術供与を含め好意的な協力を受け強化されてゆきます。

 我が国海上自衛隊の将来護衛艦について、海上警備隊から海上自衛隊草創期、潜水艦を掃討するにはヘリコプターと小型護衛艦を連携させる大型の水上戦闘艦という方式を既に造船側が認識し、ヘリコプター空母ではなく大型護衛艦を基盤、特に個々の護衛艦に1機のヘリコプターを運用する方式ではなく、大型水上戦闘艦を母艦とする運用を提示しました。

 大型水上戦闘艦を母艦とする運用、この方式が提示された背景には、想定する脅威が原子力潜水艦であることから長期的な継続体制を構築する必要があり、第二次世界大戦中の巡洋艦規模に当る水上戦闘艦を想定した、海上自衛隊が護衛艦はるな型として実にこの技術展望から建造まで約10年前の時点で、建造する概略と概ね重なる技術を模索しています。

 その上で注目するべきは、大型水上戦闘艦にコンピュータ情報統制装置を搭載し、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦により実現するシステム艦としての能力を付与させる、という必要性にも言及していた点です。システム艦の必要性を示した背景には、潜水艦は基本的に長時間潜行する為、様々な兆候を処理する事でしか標定出来ぬ事を見通していました。

 システム艦の必要性、通常動力潜水艦の捜索に用いるスノーケルや潜望鏡をレーダーにて探知する捜索を主流とする方式できず、音響兆候や磁気兆候をコンピュータにより総合的に情報処理分析し、潜水艦の潜む海域を電子計算上で把握した上で航空部隊と護衛艦部隊を指揮する必要を認識するに至りました、戦後十年強でもここまで見通していた訳です。

 CICとして戦闘情報を集約する必要性は、旧海軍駆逐艦から供与を受けたアメリカ海軍水上戦闘艦艇の戦闘指揮所配置と情報集約能力を受けて海上戦闘の様相が旧海軍時代からの変化を痛感していましたが、そのうえでコンピュータを搭載するには多数の護衛艦に分散するよりも一隻の護衛艦を、後のシステム艦として完成させる必要性に言及しています。

北大路機関:はるな くらま
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