■自衛隊派遣部隊UNMISS撤収
陸上自衛隊は南スーダンでのPKO任務を完了し、五月末にも撤収を完了するとのこと。

UNMISS国連南スーダン支援団、スーダンから独立した南スーダンの新しい国家創造を国連がインフラ整備や選挙支援を以て支援するべく各国がPKO部隊を派遣、自衛隊も内陸部にある南スーダンへ隣国ウガンダのエンデべ空港等に中継点と輸送調整部隊を置きつつ部隊を派遣しました。現在は第11次派遣隊として、青森第9師団を中心とした施設部隊が派遣中です。

南スーダン情勢は日々悪化の報道がAFPやロイターのトップニュースに並びますが、特に昨年七月、副大統領派部隊がT-72戦車を中心に首都ジュバ市内にて蜂起、政府軍がMi-24戦闘ヘリコプターを派遣し航空攻撃により制圧するという一幕がありました、政府はこの状況を戦闘ではなく衝突、としてPKO部隊派遣に影響はない、という解釈を行いましたが、状況を不安視したPKO派遣各国はBMP-2装甲戦闘車等重装備を派遣しています。

情勢悪化前に撤収する、これは妥当です。今回の撤収は昨年九月ごろから水面下で撤収を模索して来た、菅官房長官は定例記者会見において発言しており、少なくとも情勢悪化を受けての緊急の撤退ではありません。今後自衛隊は撤収支援部隊を派遣すると共に建設工機等の一部装備品を南スーダン政府へ譲渡する事となっており、南スーダン政府からはこれまでの自衛隊活動と支援へ謝意が表明されました。

自衛隊の南スーダン派遣はいつまで継続されるのか、転機となったのは現在の派遣期間満了となる三月末を前に、これまで派遣期間終了二か月前には提示された派遣延長の閣議決定が行われず、PKO任務完了を宣言しての自衛隊撤収へ繋がる可能性が出てきたところです。特に各国が国連からの地域防護部隊派遣要請へ重装備の展開を持って応えたのに対し、自衛隊では重装備派遣を慎重に避けてきました、しかし情勢が悪化すれば軽装備では対応できません。

撤退では無く撤収、此処に大きな意義があります。仮に情勢が悪化した場合に自衛隊だけが撤収する状況となれば、自衛隊宿営地は南スーダン唯一の国際空港であるジュバ空港に隣接しており、自衛隊の撤収は宿営地共同防護任務全般を危機に陥れる事となります。しかし、撤収として着々と準備を行ったうえで部隊を引き上げるのであれば、PKO全体でも自衛隊撤収後の準備が出来ますので、話は別です。

安倍総理は治安の悪化が理由ではなく、施設整備がいったん終了したことを受けての撤収となります。治安悪化ではなく政策的判断であり、併せて自衛隊が撤収することは南スーダン国内において活動する邦人NGO職員の保護などにも影響が生じます。しかし、政府は国連が新たに4000名の地域防護部隊の派遣を決定していることから、国連により邦人保護任務の代替が可能となる、との見通しも併せて示しました。

地域防護部隊の派遣、この総理の発言は、解釈次第では現在国連が求めているPKO部隊は地域防護部隊であり、地域防護任務は自衛隊でも安全保障関連法整備により一定の関与は可能となりましたが国際貢献任務における本来任務ではなく、緊急避難的に実施されるもので、地域防護任務のために南スーダンへの派遣を行っているわけではなく、重ねて派遣される部隊が施設部隊であり、近接戦闘を担う普通科部隊ではない点からも読みとれるでしょう。

自衛隊の任務は南スーダン独立に伴う新国家建設への施設整備、これは派遣期間延長を繰り返しました中でも不変です。この中で必要な施設整備を実施しましたが、施設周辺と自衛隊宿営地以外での活動は偶発的衝突、戦前の日本語では戦闘といいますが、衝突に巻き込まれる可能性がありますので、可能となった施設整備は完了した、という視点が考えられます。

国連としては今回の自衛隊撤収をどのように受け止めているのでしょうか。国連は広報官報道会見において自衛隊の南スーダンでの活動への謝意を表明するとともに、自衛隊の撤収後における自衛隊に代わる派遣国を早急に探したい、との発言がありました。即ち、国連との調整は一定程度行われていたのでしょうが、自衛隊撤収を受け、この代わりとなるPKO部隊を派遣する加盟国はまだ目処が立っていない事を示したにほかなりません。

日本のPKOですが、今回の南スーダンPKO撤収とともに一段落します。1992年のPKO協力法制定と共にカンボジアPKO任務を開始して以降、我が国はほぼいずれかのPKOへ支援要員を派遣してきましたが、長期参加となっていたゴラン高原PKO任務がシリア内戦の激化を受け終了し、今回南スーダンPKOの終了を以て参加するPKOが一時的にとだえるのです。

ただ、PKO協力法制定当時と比較し陸上自衛隊は三万名近い人員が縮小される一方、南西諸島島嶼部防衛や大規模災害対処、北方脅威再興という情勢変化があり、人員に余裕がありません。特に陸上自衛隊では人員規模をほぼ増加させないまま、4000名規模の水陸機動団を新編し島嶼部防衛への専門部隊創設を急いでおり、実際のところ350名規模のPKO部隊、交代要員や予備要員の準備も含めての負担は中々小さくないものがありました。

南スーダン情勢ですが、今後の展開は不明です。南部は反政府勢力の勢力圏となっており、小野地域へ南スーダン政府が食糧供給を止めている為、飢餓の兆候が出始め、首都ジュバの国連基地内に設置された文民保護地区に多数の市民が避難している状況で国連は戦後最大の人道危機が南スーダンやイエメン等の地域で進行中として警鐘を鳴らします。こうした状況へ先進国としての日本は何らかの対応を行う事を世界は求めていますが、今後は別の形での安定化への方策を模索する事となります。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
陸上自衛隊は南スーダンでのPKO任務を完了し、五月末にも撤収を完了するとのこと。

UNMISS国連南スーダン支援団、スーダンから独立した南スーダンの新しい国家創造を国連がインフラ整備や選挙支援を以て支援するべく各国がPKO部隊を派遣、自衛隊も内陸部にある南スーダンへ隣国ウガンダのエンデべ空港等に中継点と輸送調整部隊を置きつつ部隊を派遣しました。現在は第11次派遣隊として、青森第9師団を中心とした施設部隊が派遣中です。

南スーダン情勢は日々悪化の報道がAFPやロイターのトップニュースに並びますが、特に昨年七月、副大統領派部隊がT-72戦車を中心に首都ジュバ市内にて蜂起、政府軍がMi-24戦闘ヘリコプターを派遣し航空攻撃により制圧するという一幕がありました、政府はこの状況を戦闘ではなく衝突、としてPKO部隊派遣に影響はない、という解釈を行いましたが、状況を不安視したPKO派遣各国はBMP-2装甲戦闘車等重装備を派遣しています。

情勢悪化前に撤収する、これは妥当です。今回の撤収は昨年九月ごろから水面下で撤収を模索して来た、菅官房長官は定例記者会見において発言しており、少なくとも情勢悪化を受けての緊急の撤退ではありません。今後自衛隊は撤収支援部隊を派遣すると共に建設工機等の一部装備品を南スーダン政府へ譲渡する事となっており、南スーダン政府からはこれまでの自衛隊活動と支援へ謝意が表明されました。

自衛隊の南スーダン派遣はいつまで継続されるのか、転機となったのは現在の派遣期間満了となる三月末を前に、これまで派遣期間終了二か月前には提示された派遣延長の閣議決定が行われず、PKO任務完了を宣言しての自衛隊撤収へ繋がる可能性が出てきたところです。特に各国が国連からの地域防護部隊派遣要請へ重装備の展開を持って応えたのに対し、自衛隊では重装備派遣を慎重に避けてきました、しかし情勢が悪化すれば軽装備では対応できません。

撤退では無く撤収、此処に大きな意義があります。仮に情勢が悪化した場合に自衛隊だけが撤収する状況となれば、自衛隊宿営地は南スーダン唯一の国際空港であるジュバ空港に隣接しており、自衛隊の撤収は宿営地共同防護任務全般を危機に陥れる事となります。しかし、撤収として着々と準備を行ったうえで部隊を引き上げるのであれば、PKO全体でも自衛隊撤収後の準備が出来ますので、話は別です。

安倍総理は治安の悪化が理由ではなく、施設整備がいったん終了したことを受けての撤収となります。治安悪化ではなく政策的判断であり、併せて自衛隊が撤収することは南スーダン国内において活動する邦人NGO職員の保護などにも影響が生じます。しかし、政府は国連が新たに4000名の地域防護部隊の派遣を決定していることから、国連により邦人保護任務の代替が可能となる、との見通しも併せて示しました。

地域防護部隊の派遣、この総理の発言は、解釈次第では現在国連が求めているPKO部隊は地域防護部隊であり、地域防護任務は自衛隊でも安全保障関連法整備により一定の関与は可能となりましたが国際貢献任務における本来任務ではなく、緊急避難的に実施されるもので、地域防護任務のために南スーダンへの派遣を行っているわけではなく、重ねて派遣される部隊が施設部隊であり、近接戦闘を担う普通科部隊ではない点からも読みとれるでしょう。

自衛隊の任務は南スーダン独立に伴う新国家建設への施設整備、これは派遣期間延長を繰り返しました中でも不変です。この中で必要な施設整備を実施しましたが、施設周辺と自衛隊宿営地以外での活動は偶発的衝突、戦前の日本語では戦闘といいますが、衝突に巻き込まれる可能性がありますので、可能となった施設整備は完了した、という視点が考えられます。

国連としては今回の自衛隊撤収をどのように受け止めているのでしょうか。国連は広報官報道会見において自衛隊の南スーダンでの活動への謝意を表明するとともに、自衛隊の撤収後における自衛隊に代わる派遣国を早急に探したい、との発言がありました。即ち、国連との調整は一定程度行われていたのでしょうが、自衛隊撤収を受け、この代わりとなるPKO部隊を派遣する加盟国はまだ目処が立っていない事を示したにほかなりません。

日本のPKOですが、今回の南スーダンPKO撤収とともに一段落します。1992年のPKO協力法制定と共にカンボジアPKO任務を開始して以降、我が国はほぼいずれかのPKOへ支援要員を派遣してきましたが、長期参加となっていたゴラン高原PKO任務がシリア内戦の激化を受け終了し、今回南スーダンPKOの終了を以て参加するPKOが一時的にとだえるのです。

ただ、PKO協力法制定当時と比較し陸上自衛隊は三万名近い人員が縮小される一方、南西諸島島嶼部防衛や大規模災害対処、北方脅威再興という情勢変化があり、人員に余裕がありません。特に陸上自衛隊では人員規模をほぼ増加させないまま、4000名規模の水陸機動団を新編し島嶼部防衛への専門部隊創設を急いでおり、実際のところ350名規模のPKO部隊、交代要員や予備要員の準備も含めての負担は中々小さくないものがありました。

南スーダン情勢ですが、今後の展開は不明です。南部は反政府勢力の勢力圏となっており、小野地域へ南スーダン政府が食糧供給を止めている為、飢餓の兆候が出始め、首都ジュバの国連基地内に設置された文民保護地区に多数の市民が避難している状況で国連は戦後最大の人道危機が南スーダンやイエメン等の地域で進行中として警鐘を鳴らします。こうした状況へ先進国としての日本は何らかの対応を行う事を世界は求めていますが、今後は別の形での安定化への方策を模索する事となります。
北大路機関:はるな くらま
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