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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ジェラルドRフォード級原子力空母とトランプ大統領のアメリカ空母戦略“新技術の間隙”

2017-03-23 20:13:42 | 先端軍事テクノロジー
■最強空母と新技術の間隙
 ロイターコラムに“トランプ大統領が誇る米空母戦略の「落とし穴」”との興味深いコラムが掲載されていました、価格が高騰する最新空母とその脆弱性について指摘したものです。

 トランプ大統領が強調する航空母艦戦力の強化、ロイターコラムでは現在建造費が最新のジェラルドフォードで130億ドルにまで高騰しており、しかも建造費は予定よりも25億ドル超過している実需を紹介しました。更に二番艦ジョンFケネディの建造が五年も遅れている点を指摘、アメリカ海軍は空母打撃力を重視しつつ、潜水艦脅威への対応が後手に回っています。

 2015年の国際合同演習ではフランスの小型原子力潜水艦サフィールにより空母戦闘群が撃破判定を受けた事を紹介しています、ある意味、アメリカ海軍は高すぎる空母の建造に併せ、イージス艦と同程度の費用で建造可能なヘリコプター搭載護衛艦型の全通飛行甲板駆逐艦、満載排水量18000t程度で航空機を20機程度搭載でき、戦力投射任務と対潜中枢艦となり得るを揃える対潜水艦能力強化施策も並行して行うべきかもしれません。

 航空母艦の脆弱性についてランド研究所などは単なる標的に過ぎない、と指摘するに至っていますが、一方で航空基地のような動くことが出来ない固定目標の弾道ミサイル等への脆弱性に比較すれば、空母機動部隊は展開海域の秘匿性が高く、更に現在アメリカ海軍が運用する大型水上戦闘艦は全てイージス艦、多数の航空機による同時飽和攻撃から弾道ミサイル攻撃まで対処できる、その防御力の高さも無視するべきではないでしょう。

 アメリカの航空母艦、その能力の大きさは複数の戦闘攻撃飛行隊に早期警戒機部隊を併せた空母航空団を多数のイージス艦と共に運用する空母戦闘群としての能力の高さとともに、なによりも空母そのものを新原子力空母ジェラルドRフォードとニミッツ級原子力空母10隻、実に二桁の数が保有されている事に在ります。空母一隻ではアメリカ以外の地域大国空軍力を必ずしも凌駕出来ない可能性は一応ありますが、11隻の原子力空母、空母戦闘群という作戦単位を複数同時展開させられる能力は、きわめて大きなものがあり、この点の認識が必要です。

 ただ、航空母艦の種類については今後一考の余地がある可能性は否定しません。現在の亜アメリカ海軍主力空母はニミッツ級原子力空母ですが、核燃料交換の為に定期的に年単位の炉心交換工事に入る必要がありました。これにより稼動航空母艦の数に原子炉炉心交換工事による入渠という制限が加わる実情があり、最新型のジェラルドフォード級空母は、竣工すれば除籍まで半世紀以上炉心交換工事を必要としない新型原子炉を搭載、この他カタパルトなどの新技術の採用により建造費が増大してしまいました。

 ジェラルドフォード級空母には様々な新技術が反映されているのですが、その新技術が開発途上の技術を採用した事例も少なくない事から建造費を大きく増大させてしま多可能性があるとの事で、実際、前型のニミッツ級空母は同じ原子力推進ながら1975年より順次改良が続けられており、1990年代には50億ドルで建造されていましたので、130億ドルという数値は、如何に最新技術とインフレ率を踏まえても少々コストが管理不能となってしまった印象が否定できません。

 航空母艦へ脆弱性がある事は否定しませんが、単純に戦略爆撃機から投射する巡航ミサイルにより代替出来るような性格のものではありません、しかし、航空母艦は膨大な建造費を要する戦略兵器である訳で、結果的に最優先の予算配分がその建造に話される訳ですが、他の部門、空軍戦闘機や陸軍重師団等の維持費に大きく影響する分野ですので、費用管理を強く求める部門が多い事も否定できず、様々な視点から見てゆく必要があるでしょう。


北大路機関:はるな くらま
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