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【日曜特集】木更津駐屯地創設45周年航空祭【03】観閲飛行大編隊(2013-05-12)

2017-04-23 20:12:33 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■木更津航空祭大編隊
 木更津駐屯地創設45周年航空祭、最大の迫力を誇示する大編隊による観閲飛行が遂に頭上に展開します。

 大編隊がもう間もなくこちらの頭上へやってきます//第1ヘリコプター団は2008年に規模な編成改編を行い、航空機を充実させました。団本部、本部管理中隊、第1輸送ヘリコプター群、第102飛行隊、特別輸送ヘリコプター隊、第1ヘリコプター野整備隊、連絡偵察飛行隊、新しいヘリコプター団編成は以上の通り。

 観閲飛行は一回限り、このための撮影場所を選んだ//第1輸送ヘリコプター群は第1ヘリコプター隊と第2ヘリコプター隊を統合改編史誕生したもので、CH-47J/JA輸送ヘリコプターを運用する第103飛行隊、第104飛行隊、第105飛行隊、第106飛行隊を隷下に有しています。各飛行隊は8機のCH-47を装備している。

 CH-47が空を覆う//増強改編となったのは第102飛行隊の新編です、UH-60JA多用途ヘリコプターとOH-6D観測ヘリコプターを運用する部隊で、中央即応集団発足と共に特殊作戦群の支援任務が第1ヘリコプター団へ付与され、特殊作戦や強襲任務へ対応する装備として配備されたもの。

 AH-1S,記念塗装機の編隊//特別輸送ヘリコプター隊はEC-225LP輸送ヘリコプターを以て要人輸送に当たります、AS-332L輸送ヘリコプターの後継機として導入されたものですが、改良型です。フランス製で日仏貿易不均衡への改善策として1986年に導入、今ではすっかり自衛隊の一員です。

 広角レンズでも左右を編隊が長い長い機影を並べる//V-107輸送ヘリコプター、第1ヘリコプター団と共に陸上自衛隊航空史を俯瞰すれば、この万能ヘリコプターの存在を欠いて話す事は出来ません、バートル社が開発したタンデムローター型ヘリコプターはそれほどに自衛隊、そして日本航空産業へも影響がありました。

 AH-1SとOH-1の編隊//自衛隊とV-107輸送ヘリコプターですが、陸海空自衛隊が導入しており、その導入総数は110機という非常に大きな調達が実施されました。陸上自衛隊は輸送ヘリコプターとして、海上自衛隊は掃海ヘリコプター、航空自衛隊は救難ヘリコプターとして、運用しています。

 快晴という名の通りの青空には編隊が良く映える//バートル社がV-107を初飛行させたのは1958年ですが、自衛隊での運用開始は1962年の陸上自衛隊での配備から開始され、調達は非常に長く継続、最後の機体が除籍されたのは航空自衛隊救難ヘリコプターとして運用の機体で2008年にラストフライトを飾っています。

 自衛隊高等工科学校生徒の頭上を往く大編隊//CH-46中型ヘリコプターとしてアメリカ軍が制式化されていまして、興味深いのは中型であったためアメリカ陸軍ではほぼ評価されなかったものの、中型機種としては輸送力が大きい為、強襲揚陸艦からの運用に最適とされアメリカ海兵隊への大量配備が決定しました。

 観閲飛行の大編隊は一航過を経て着陸態勢へ入る//アメリカ海兵隊には300機以上が配備され、この内275機が改良型のCH-46Eへ改修、海兵隊の強襲ヘリコプターとして長期にわたり運用され、傑作機故に後継機開発が難航し、後継機MV-22可動翼機が配備された2015年まで長期に渡り第一線部隊で運用されました。

 UH-60とCH-47,着陸へ編隊が重なる瞬間を撮影//V-107はバートル社により開発されましたが、日米での運用に加えてカナダとスウェーデンやサウジアラビア等で多数が運用されています。カナダ軍ではCH-113,スウェーデン軍ではHKP-4として運用され、バートル社に加え川崎重工がライセンス生産した機体も多い。

 機影が其処此処で重なる//日本の航空産業との関係が深いと前述しましたが、これは川崎重工においてライセンス生産が行われていた為です、更に特筆すべきは武器輸出三原則拡大運用以前には、川崎重工製V-107に当たるKV-107がスウェーデンやサウジアラビアへ軍用として輸出されたこと。

 この情景の編隊だけで人員だけならば空挺大隊を空輸可能だ//川崎重工は1962年にノックダウン生産を開始し1966年にライセンス生産権を取得、日本での生産を本格化させました。自衛隊への配備開始は陸上自衛隊向けの機体が1966年からですが、警視庁KV-107や民間用ヘリコプターとしても多数が生産され、供給されています。

 AH-1SとCH-47//007は二度死ぬ、英国秘密諜報員ジェームズボンドが日本を舞台に秘密結社スペクターと戦う1965年の映画にもKV-107はタイガー田中率いる日本公安調査庁作戦機として登場し、その力の入れようを伝えます。KV107は神戸のカワサキミュージアムでも見る事が出来る。

 CH-47、同じ機体なのですが距離が違えばこれほど見え方も違う//自衛隊がV-107を導入した背景には、CH-46とともに同時期に開発されていましたCH-47、現在の陸上自衛隊主力輸送ヘリコプターとなっているCH-47の導入も併せて検討されていました、しかしCH-47は大型過ぎ、大量に調達するにはV-107の方が現実的と判断された。

 一眼レフ二台で二種類のレンズを駆使し状況の展開を撮影//600機のV-107輸送ヘリコプター導入計画、現在見ますと突飛な話ですが、自衛隊が多数の輸送ヘリコプターを導入する構想は過去に在ったとされます。600機のV-107とは相当驚かされるところですが、元々川崎重工には膨大なV-107の生産構想があったといいます。

 自衛隊高等工科学校生徒隊はこの後、ライフルドリルの展示を行う//東京大阪ヘリコプター航空路線、東海道新幹線開通は1964年で、これにより0系新幹線が東京と大阪を多数の新幹線特急電車で結ぶに至りましたが、実はこの東海道新幹線以上に、ヘリコプターを東京大阪間に多数飛行、東海道本線特急こだま号に対抗する構想があった。

 撮影は短時間なのですが枚数はどんどんと積み重なる//全日本ヘリコプター空輸、現在の全日空は、首都圏中心部から大阪までのヘリコプター旅客輸送を検討、この為に注目したのがフェアリーロートダイン複合ヘリコプターとバートルV-107ヘリコプターです。V-107はアメリカでの旅客機としての運用も実際あります。

 UH-60JAが二機着陸へ//フェアリーロートダインはイギリス製複合ヘリコプターで48名の定員と共に航続距離830kmと巡航速度350km/hという高速飛行が可能です、ただ、複合ヘリコプターは騒音と整備性の問題や離陸滑走の問題があり、V-107はその点で実績があり現実的といえたもの。

 旋回し着陸へ//V-107の東京大阪航路に導入されますと、V-107の利点として空港のような滑走路を必要とせず、高層ビル最上部のヘリパットなどを利用すればそのまま飛行場施設とできました。これは都市部に高層ビルが増えれば増える程、多数の空港施設を置けることを意味します。

 CH-47は着陸も迫力がある、遠景の掩体は戦時中に海軍が建築したもの//アメリカでの旅客機としてのV-107はニューヨーク航空やパンアメリカン航空で運用実績があります、1968年の映画“ニューヨーク無宿”劇中でクリントイーストウッドがニューヨーク航空V-107を利用する印象的な描写もありましたが、それだけ期待されていたもの。

 自衛隊高等工科学校生徒隊によるライフルドリル、同時に訓練展示準備が進む//東京大阪間の旅客需要は非常に大きく、最高速度200km/h以上の高速鉄道を大量運行させる事は鉄道そのものが旧時代の交通手段と見られていた点も踏まえ現実性がないと思われ、特に空港設備が土地不足により厳しい日本でのヘリコプターへの期待が大きかったのです。

 状況開始、UH-60のローターが会場上空の大気を切り裂き訓練展示がいよいよ開始されました//0系新幹線vsKV-107ヘリコプターの一騎打ちですが、しかし東海道新幹線の営業運転開始となりますと、その利便性の高さ、運転制御装置の先進性から大量の輸送需要に対応できるという点から0系新幹線が勝利を手にし、ヘリコプター航路は結局実現していません。

 UH-60の重機関銃射撃掩護下でCH-47が進入を開始します//600機V-107構想、これは仮に東海道新幹線に代えて川崎重工が大量のヘリコプター航路を東京大阪間に運行開始すれば、量産効果によりV-107の製造単価も当然低下しますから、自衛隊が安くなったV-107輸送ヘリコプターを大量調達する事はある意味現実的といえる。

 巨大な輸送力をもつCH-47は高機動車を吊下げ空輸し、訓練展示へ戦闘加入する//川崎重工がV-107のライセンス生産権を早い時期に取得した背景は民需の大きさがあり、一方、V-107に勝利した0系新幹線は3216両が量産、最盛期2338両が運用されました、仮にV-107が勝利していれば、もしかしたらば3000機以上のV-107旅客機が生産されていたのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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