北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

朝鮮半島有事北朝鮮攻撃の可能性:危機は回避,カールビンソン反転とロナルドレーガン停泊

2017-04-20 19:41:36 | 国際・政治
■米軍は即応体制維持し静観
 朝鮮半島有事北朝鮮攻撃の可能性ですが、危機は回避されたようです。米軍は即応体制維持を強調していますが、大規模攻撃準備の態勢は少なくとも現時点では整えていません。

 朝鮮半島有事が現実のものとなれば我が国へも大きな影響が及びます。在韓邦人救出任務が発動しますし、対岸の火事ではなく在日米軍基地への弾道ミサイル攻撃や、我が国港湾施設へのミサイル攻撃という懸念が高く考えられたためです。トランプ大統領は豪州沖の原子力空母カールビンソンが朝鮮半島沖へ向かい、もう一つの空母戦闘群が展開しつつある、としました。しかし、AFP報道では空母は一時北上したものの反転南下し、もう一隻の空母は横須賀で整備中となっています。

 日本を訪問中の19日にペンスアメリカ副大統領は横須賀基地へ前方展開する原子力空母ロナルドレーガンを視察、米兵や自衛隊員らを前に演説し、われわれはいかなる攻撃をも打ち負かし、通常兵器や核兵器が使用された際にも米国は圧倒的かつ効果的に対応する、と述べ、重ねて北朝鮮からのいかなる攻撃にも「圧倒的かつ効果的」に対抗措置を取ると艦上で演説しました。ロナルドレーガン艦上へ自衛艦が招かれている点に注目しつつ、現在、ロナルドレーガンは横須賀基地に停泊しており、洋上に展開していないという事実も注目すべきでしょう

 ロナルドレーガンが横須賀に停泊したまま、副大統領を迎えたという意味は重要です。野島崎沖や四国沖を遊弋しているのでゃなく、横須賀に停泊したままでは、F/A-18E等の艦載機を運用できないばかりか、原子炉二基を搭載したまま動かない状態という事を示します。更にロナルドレーガンは現在横須賀において整備中であり、BBC報道では予定として整備へ一ヶ月程度を要するとの事、ペンス副大統領はこの整備を早期に終了させ、早期に出港する選択肢もあるとしていますが、その兆候はありません。

 横須賀基地は北朝鮮のノドンミサイル射程圏内にあります。仮に懸念されている通り、アメリカ海軍がシリアに対して実施したようなトマホークミサイルによる北朝鮮核施設への限定攻撃を行うならば、弾道ミサイルによる反撃を想定し、横須賀基地を出航していなければなりません。アメリカ海軍が朝鮮半島において大規模な軍事行動を行う体制に無いという事を端的に占めるものといえましょう。

 原子力空母カールビンソン、豪州沖から朝鮮半島沖へ急行する旨がアメリカ海軍から発表され、ジャワ島沖を航行する様子が公式発表されていましたが、最新の情報では豪州北西海域を遊弋しているとされ、アメリカ海軍当局も現在位置を認めました。豪州沖から西日本沖には三日から四日程度を要します。また、ジャワ沖を航行している写真を公表した後に豪州沖を遊弋している現状は、一時反転し豪州へ戻った事を意味します。

 ミサイル防衛体制強化も在韓米軍では棚上げされています。アメリカ政府は、先日、韓国への新型ミサイル防衛システムTHAADの前方展開を、中国との関係上当面棚上げするとの発表を行っており、こちらもTHAADのレーダーシステムは在日米軍基地防護への第一線警戒監視手段であることから、THAADの配備棚上げは朝鮮半島有事の可能性を政治的に示唆しつつ、軍事的には準備していない事を端的に示していました。

 在韓米軍への新型ミサイル迎撃システムTHAADの韓国国内配備が一時棚上げされました、米軍は3月よりTHAADの一部構成器材を韓国内に運び入れ、配備を開始しており報道では早ければ4月中にも運用が開始されると報じていました。これは中国側への配慮を踏まえた米中首脳会談の結果を受けてのものと考えられますが、北朝鮮のミサイル実験はこの直後に行われた訳です。国防総省は朝鮮半島近海に巡航ミサイルを搭載したイージス艦二隻が遊弋している状況を発表していますが、THAADに代えてイージス艦がミサイル防衛任務を補完している可能性もあります。

 核実験の強行、延坪島砲撃事件、哨戒艦天安沈没事件、サンオ級潜水艦江陵浸透事件、北朝鮮が実施し得るアメリカや韓国への挑発としての選択肢はこうしたものが挙げられます。また、長距離弾道ミサイル実験として日本近海へ弾道ミサイルを発射する可能性もあるでしょう。アメリカ政府は、核実験が行われたならば行動を起こしていた、と発表しており、場合によっては核実験以外の行動へは軍事行動が起こされない可能性もあるでしょう。

 延坪島砲撃事件は2010年に発生した北朝鮮軍による韓国離島無差別砲撃に端を発する韓国軍砲兵隊との砲兵戦闘、哨戒艦天安沈没事件は同じく2010年に発生した黄海上の浦項級哨戒艦への小型潜水艇による雷撃撃沈事件です。サンオ級潜水艦江陵浸透事件は1996年に発生した潜水艦による工作員浸透事案で工作員など26名の上陸へ韓国軍2個師団が掃討へ出動し射殺自決等22名、対して韓国側に17名の戦死者や事故死者が出ました。このように危機は段階を踏んで移行しますが、この種の事態はまだ発生していません。

 朝鮮半島情勢は極めて緊迫しているとの報道が多々ありますが、アメリカが行動を行う場合、北朝鮮はカノン砲射程内にある韓国最大の都市である首都ソウルを攻撃可能、重ねて在日米軍基地への中距離弾道ミサイル攻撃と在韓米軍基地へのロケット弾攻撃や短距離弾道ミサイル攻撃への対策を行う必要があります。韓国在留アメリカ国民の退避体制確立、在日米軍基地のミサイル防衛体制強化等が指摘されますが、いずれも実施されていない。当面はトランプ大統領の華々しい発言の一方、準備を整える構図には無いようです。

北大路機関:はるな くらま
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