■東南アジア地域の緊張増大懸念
冷戦時代のソ連戦略ミサイル原潜聖域としてのオホーツク海、この海の核の海への閉塞が世界有数の海上航路の通る南シナ海に醸成されつつある。

戦後日本の専守防衛政策は前提として、何か大きな戦争が日本に突き付けられるまでは警戒監視に徹する、というものでした。日本から仕掛けなければ平和は維持される、という前提のものであり、これは東西冷戦下では極東地域においてソ連軍の強大な軍事力に対しアメリカを基調とした均衡状態があってのものでした。しかし、ソ連はもうありません。

現在進む緊張状態の萌芽、特に南シナ海で進む緊張状態は、現行憲法と現行法では放置しておかねばなりません、一方で放置し我が国へ影響が及んだ時点では、既に手遅れとなり、南シナ海から日本本土まで、緊張状態は一挙に第二次世界大戦中、太平洋戦争中の状況まで激化し得るもので、適切な予防外交が必要です。以下に再度、現状を俯瞰しましょう。

中国習近平国家主席のもとでの軍備強化、この中には核戦力の強化が含まれ、戦略ミサイル原潜については永らく1隻のみ、実験的な性格の強かった夏級戦略ミサイル原潜の後継として新たに晋級戦略ミサイル原潜の量産が開始されています。晋級原潜は射程8000kmの巨浪二型潜水艦発射弾道弾12基を搭載し、少なくとも5隻が建造されているという。

南シナ海、中国がヴェトナムやフィリピンの環礁を武力奪取し、人工島を建築し領域宣言している事で問題化しています。当初は南シナ海海底に眠る豊富な天然資源を奪取する事が目的と理解されていましたが、天然資源開発にしては異常な水準での軍事施設建設が続き、ここに習近平国家主席の核戦力強化との連関性が考えられるようになってきました。

晋級戦略ミサイル原潜は全て南海艦隊に所属しており、その行動海域は南シナ海となります。ここに、南シナ海人工島建設は、東南アジア諸国をはじめ海軍力を締め出し、この海域を戦略ミサイル原潜の聖域、中国海軍以外の行動を一切拒否し、全面核戦争に際して地上の大陸間弾道ミサイル基地全滅後の報復手段を維持させる聖域化の可能性が出てきます。

しかし、日本の立場から考える場合、南シナ海には中東からの石油資源シーレーンが通ると共に、TPP加盟国を含む東南アジア諸国との重要な通商路です。石油タンカーは最後の手段として豪州南を迂回する選択肢がありますが、東南アジアからの航路は、恰も京都から名古屋まで和歌山経由で迂回する程の現実的ではない迂回路となり、維持が出来ません。

南シナ海の中国海軍戦略ミサイル原潜聖域化と海域閉塞化への危惧、着手され既成事実化した場合、例えばヴェトナムやインドネシアから対日輸出も一旦スンダ海峡を経て太平洋上へ迂回しなければならなくなる可能性があります。勿論平時から南シナ海全域を海上封鎖したならば、それは戦争開戦を意味しますので杞憂ですが、制限される可能性は残る。

戦時に戦略ミサイル原潜を阻止する事は可能だ、と勇ましい発言は意味がありません。勿論、戦略ミサイル原潜を阻止するのであれば、自航式機雷やキャプチャー機雷、前者は魚雷のように敷設予定海域から離れた位置より投射する機雷で、後者は機雷内部に短魚雷を内蔵し付近を航行する目標を攻撃するものですが、こうしたものが威力を発揮しましょう。

東南アジア沿岸国には中国海軍の水上打撃部隊や潜水艦部隊に対し自衛隊のように優位性を保つ海軍国は存在しません、しかし、比較的安価な機雷、特に潜水艦を狙う深深度機雷であれば、これは敷設しても潜水艦を持たない諸国には危害を及ぼさない、こうした装備により中国戦略ミサイル原潜への航行を阻止する事も可能でしょう。すると一見、対処は容易に見える。

ただ、この視点は一つ思い出すべき歴史があります、冷戦時代のオホーツク海、ここに隣接していました北海道へのソ連軍事圧力です。冷戦時代、ソ連は戦略ミサイル原潜の聖域として太平洋艦隊司令部のあるウラジヴォストーク基地に近く、千島列島で太平洋から隔てられたオホーツク海を聖域化しました。その為に沿岸の第三国、即ち日本への圧力が。

自衛隊は北海道に4個師団を置き、重点的に機械化すると共に機甲師団へ改編する等の防衛強化を行いました、それ程にソ連軍軍事圧力が大きかったのですね。ソ連の視点からは北海道北部を占領したならば、オホーツク海の防衛が完全なものとなり、侵攻の蓋然性はありました。これは過去の話ですが、今後は南シナ海沿岸国がこうした圧力を受ける事に。

戦略ミサイル原潜の聖域として南シナ海を考える場合、例えば北海艦隊拠点の渤海湾と比較し水深が深く面積も広い。しかし、沿岸部には比較的強力なシンガポール海軍やマレーシア海軍、軽空母を持つタイ海軍、近代化を進めるヴェトナム海軍の拠点があります。この戦略原潜聖域化を放置するならば、シーレーンへの脅威と共に地域不安定化の要因も放置する事となります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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冷戦時代のソ連戦略ミサイル原潜聖域としてのオホーツク海、この海の核の海への閉塞が世界有数の海上航路の通る南シナ海に醸成されつつある。

戦後日本の専守防衛政策は前提として、何か大きな戦争が日本に突き付けられるまでは警戒監視に徹する、というものでした。日本から仕掛けなければ平和は維持される、という前提のものであり、これは東西冷戦下では極東地域においてソ連軍の強大な軍事力に対しアメリカを基調とした均衡状態があってのものでした。しかし、ソ連はもうありません。

現在進む緊張状態の萌芽、特に南シナ海で進む緊張状態は、現行憲法と現行法では放置しておかねばなりません、一方で放置し我が国へ影響が及んだ時点では、既に手遅れとなり、南シナ海から日本本土まで、緊張状態は一挙に第二次世界大戦中、太平洋戦争中の状況まで激化し得るもので、適切な予防外交が必要です。以下に再度、現状を俯瞰しましょう。

中国習近平国家主席のもとでの軍備強化、この中には核戦力の強化が含まれ、戦略ミサイル原潜については永らく1隻のみ、実験的な性格の強かった夏級戦略ミサイル原潜の後継として新たに晋級戦略ミサイル原潜の量産が開始されています。晋級原潜は射程8000kmの巨浪二型潜水艦発射弾道弾12基を搭載し、少なくとも5隻が建造されているという。

南シナ海、中国がヴェトナムやフィリピンの環礁を武力奪取し、人工島を建築し領域宣言している事で問題化しています。当初は南シナ海海底に眠る豊富な天然資源を奪取する事が目的と理解されていましたが、天然資源開発にしては異常な水準での軍事施設建設が続き、ここに習近平国家主席の核戦力強化との連関性が考えられるようになってきました。

晋級戦略ミサイル原潜は全て南海艦隊に所属しており、その行動海域は南シナ海となります。ここに、南シナ海人工島建設は、東南アジア諸国をはじめ海軍力を締め出し、この海域を戦略ミサイル原潜の聖域、中国海軍以外の行動を一切拒否し、全面核戦争に際して地上の大陸間弾道ミサイル基地全滅後の報復手段を維持させる聖域化の可能性が出てきます。

しかし、日本の立場から考える場合、南シナ海には中東からの石油資源シーレーンが通ると共に、TPP加盟国を含む東南アジア諸国との重要な通商路です。石油タンカーは最後の手段として豪州南を迂回する選択肢がありますが、東南アジアからの航路は、恰も京都から名古屋まで和歌山経由で迂回する程の現実的ではない迂回路となり、維持が出来ません。

南シナ海の中国海軍戦略ミサイル原潜聖域化と海域閉塞化への危惧、着手され既成事実化した場合、例えばヴェトナムやインドネシアから対日輸出も一旦スンダ海峡を経て太平洋上へ迂回しなければならなくなる可能性があります。勿論平時から南シナ海全域を海上封鎖したならば、それは戦争開戦を意味しますので杞憂ですが、制限される可能性は残る。

戦時に戦略ミサイル原潜を阻止する事は可能だ、と勇ましい発言は意味がありません。勿論、戦略ミサイル原潜を阻止するのであれば、自航式機雷やキャプチャー機雷、前者は魚雷のように敷設予定海域から離れた位置より投射する機雷で、後者は機雷内部に短魚雷を内蔵し付近を航行する目標を攻撃するものですが、こうしたものが威力を発揮しましょう。

東南アジア沿岸国には中国海軍の水上打撃部隊や潜水艦部隊に対し自衛隊のように優位性を保つ海軍国は存在しません、しかし、比較的安価な機雷、特に潜水艦を狙う深深度機雷であれば、これは敷設しても潜水艦を持たない諸国には危害を及ぼさない、こうした装備により中国戦略ミサイル原潜への航行を阻止する事も可能でしょう。すると一見、対処は容易に見える。

ただ、この視点は一つ思い出すべき歴史があります、冷戦時代のオホーツク海、ここに隣接していました北海道へのソ連軍事圧力です。冷戦時代、ソ連は戦略ミサイル原潜の聖域として太平洋艦隊司令部のあるウラジヴォストーク基地に近く、千島列島で太平洋から隔てられたオホーツク海を聖域化しました。その為に沿岸の第三国、即ち日本への圧力が。

自衛隊は北海道に4個師団を置き、重点的に機械化すると共に機甲師団へ改編する等の防衛強化を行いました、それ程にソ連軍軍事圧力が大きかったのですね。ソ連の視点からは北海道北部を占領したならば、オホーツク海の防衛が完全なものとなり、侵攻の蓋然性はありました。これは過去の話ですが、今後は南シナ海沿岸国がこうした圧力を受ける事に。

戦略ミサイル原潜の聖域として南シナ海を考える場合、例えば北海艦隊拠点の渤海湾と比較し水深が深く面積も広い。しかし、沿岸部には比較的強力なシンガポール海軍やマレーシア海軍、軽空母を持つタイ海軍、近代化を進めるヴェトナム海軍の拠点があります。この戦略原潜聖域化を放置するならば、シーレーンへの脅威と共に地域不安定化の要因も放置する事となります。
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