北大路機関

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【G3X撮影速報】富士学校開校65周年富士駐屯地祭,令和初の七夕に開校祭(2019-07-07)

2019-07-13 20:09:33 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■即応機動部隊と戦車部隊
 前回8日の記事について訂正、“G7X撮影速報”は“G3X撮影速報”の誤りでした、望遠レンズのG3Xでの速報です。行事は観閲行進から訓練展示へ、併せて撮影位置を陣地変換だ。

 富士学校創設65周年記念行事訓練展示模擬戦は、即応機動連隊を中心とした島嶼部防衛を想定し実施されました。富士学校を離島と想定し、普通科教導連隊第4中隊と機甲教導連隊戦闘中隊の2個中隊を即応機動連隊に見立て、敵着上陸前の機動展開を開始しました。

 軽装甲機動車、機甲教導連隊偵察中隊の所属です。通常偵察は偵察隊が装備する87式偵察警戒車が実施しますが、即応機動連隊情報小隊を念頭としているのでしょうか。偵察警戒車の対装甲車用25mm機関砲に代えて豆鉄砲の5.56mm機銃だけで軽快に斥候へ向かう。

 96式装輪装甲車より陣地構築へ下車する普通科隊員、善通寺駐屯地祭の第15即応機動連隊も陣地構築を行っていましたが、装甲の薄い96式装輪装甲車では積極的な機動打撃は難しく、基本的に陣地構築の上での防御戦闘を念頭とする、富士駐屯地で改めて感じましたね。

 重迫撃砲中隊の120mmRT重迫撃砲と普通科中隊迫撃砲小隊の81mm迫撃砲が展開します。即応機動連隊へは火力支援中隊として重迫撃砲が配備されます、今回の模擬戦では目標情報を無人偵察機が担っているという想定、重迫撃砲だけでは敵火砲位置を標定できません。

 16式機動戦闘車と軽装甲機動車、偵察に向っているのは後者です。状況では敵部隊の着上陸が開始され、その上陸橋頭堡の位置を斥候へ向かうというもの。機銃だけでは威力偵察は不可能ですが、無人偵察機では判明しない敵情の空気や雰囲気を察知する上で重要だ。

 UH-1J多用途ヘリコプター、滝ヶ原駐屯地の教育支援飛行隊富士派遣班より展開しました。上級部隊である航空学校ではUH-1Jの双発型に当るUH-2の評価試験が進みます。凡庸な機体ではありますが問題点の少ない秀才型の多用途ヘリコプターというところでしょうか。

 UH-1J多用途ヘリコプターが上陸地域付近にレンジャー隊員を展開させます。立川駐屯地での不時着事故が発生したばかり故にUH-1Jの参加は難しいのではとの諦観がありましたが、実際にはこの通り、基本設計は古いもののUH-1系統は陸上自衛隊のワークホースですね。

 MLRSと12式地対艦誘導弾が対艦戦闘へ展開します。実際の着上陸では、この二つの装備が在れば上陸は相当な犠牲を強いる、故に徹底した航空攻撃に曝される事となり、下志津の高射学校が装備する03式中距離地対空誘導弾や11式短距離地対空誘導弾が重要となる。

 敵水陸両用戦車海岸線へ接近、斥候に向った情報小隊よりの急報へ16式機動戦闘車の躍進が始ります。中国軍などは強力な水陸両用戦車を装備しており、海岸線での防衛にはどうしてもこの種の車両で対抗する必要がある。戦車が在れば圧倒できるのですが、無い故に。

 敵装甲部隊がついに姿を現した。当初は仮設敵部隊である第一機械介大隊がT-90式戦車で攻撃を仕掛けて来るかと思われましたが、PT-87水陸両用装甲車が威力偵察を試みたという。仮設敵が74式戦車時代はT-74と表現できたが90式となると日中露共に似たのがある。

 16式機動戦闘車は優れた火器管制装置により行進間のスラローム射撃を行い一撃離脱を図る。車体は戦車よりも大柄ですが重量は半分、正面装甲は多少の機銃弾や小口径機関砲弾には耐えますが、戦車のように戦車砲や大口径低圧砲には一溜りも無く、一撃離脱徹底へ。

 96式多目的誘導弾が長射程の支援を行う、自衛隊が保有する対戦車ミサイルでは一番射程が長い光ファイバー誘導方式のミサイルで、これが一つあれば周囲20km程度の離島ならば着上陸前に撃破可能です。問題は高価で充分に数が揃っていないところでしょうか。

 特科教導隊第1中隊のFH-70榴弾砲が方面特科連隊より展開した火砲、として参加しています。例年この一角はFH-70榴弾砲に99式自走榴弾砲と203mm自走榴弾砲にて針鼠となっている一角ですが、本年は一門のみ、核砲弾でも撃たねば1門で出来る事は限られる、もっと数を。

 敵BTR-82装甲車が偵察へ展開してきました、斥候部隊であっても敵の装甲車両が既に着上陸地点から内陸部まで進出している状況ですね。BTR-82はやや、82式指揮通信車やフランスのVAB軽装甲車と似ている気がしますが、この当たりは気にしてはいけません。

 84mm無反動砲が火を噴く、先ほどUH-1J多用途ヘリコプターにより展開したレンジャー隊員が待伏せしていて、敵のBTR-82装甲車やタイガー軽装甲機動車を真横から撃破します。しかし驚いたのは撮影したG3Xのズーム性能、端のレンジャーをここまで写せた。

 敵BMP-87装甲戦闘車が我が方の待伏せ攻撃に損害を受けつつも、攻撃前進を開始します、敵も海岸橋頭堡から内陸部への接近経路を制圧せねば海に叩き返される為に遮二無二攻撃を開始しました。流石にレンジャーの84mm無反動砲だけでは撃破できない規模である。

 16式機動戦闘車と96式装輪装甲車が一斉に防御戦闘を開始します、105mm砲と、貫徹力は低くとも40mm擲弾の対装甲弾が弾幕を張る、幸いBMP-87は機関砲を装備するのみですので、命中さえ避ければ105mm砲は敵機関砲の射程外からアウトレンジ攻撃が可能だ。

 T-74戦車、敵が戦車を展開させました。水陸両用戦車と異なり防御力の高い戦車は、命中箇所によっては16式機動戦闘車の105mm砲では対抗できない可能性が。敢えて古いT-74ですが、実際の有事にはT-90や99式VT4型戦車等、新鋭戦車が上陸して来るでしょう、大丈夫か。

 大丈夫!本土から増援到着、機甲教導連隊が世界に誇る10式戦車が一斉に到着します。実際、即応機動連隊の任務は本土から、正確には北海道からの重装備の増援が到着するまでの戦闘を担う構想です。集中してこその機甲戦力、航続して90式戦車も第一線へと急行します。

 90式戦車が一斉に主砲を射撃し、T-74戦車を圧倒します。120mm滑腔砲は自動装填装置により各社毎分15発を射撃し、砲安定装置と目標自動追尾装置に車長用照準装置を合せ2010年代にも卓越した威力を発揮します。ただ、エンジンなどそろそろ経年劣化も迫る。

 10式戦車と90式戦車の展開、続いて89式装甲戦闘車と陸上自衛隊機械化部隊の精鋭が到達します、10式戦車とReCS搭載90式戦車はデータリンクで相互を結び、発見した脅威情報を各車が画面上に共有し、4000m以内では、各車各個に別目標を確実に屠ってゆく。

 89式装甲戦闘車が殺到する。非常に優れた装備なのですが旧式化が始まり且つ数が少なすぎます。変な話、MLRSの方が生産数が多く、間もなくAAV-7水陸両用車にも抜かれます。両車は米軍のM-2装甲戦闘車と車体や駆動系が共通、いっそM-2を導入しては、とさえ。

 戦車部隊と装甲戦闘車が第一線に到達し、僅か数十秒、仮設敵の上陸部隊は一掃されました。もう戦車が在ればいいのじゃないかな、との素朴な声は状況開始より即応機動連隊が延々実施した防衛戦闘に苦戦した相手を旬雑に近いかたちで一掃したため。戦車が重要だ。

 16式機動戦闘車と96式装輪装甲車が戦果拡張へ参加する、これまで防御戦闘に終始していた軽装甲部隊も、戦機に乗じて躍進を開始します。機動打撃の側面を防衛する重責を担う、装甲防御力や打撃力に限界はありますが、全て装輪車ですので戦略機動性は兎に角高い。

 99式自走榴弾砲の展開、車体部分は89式装甲戦闘車と共通設計、まだわずかに生産は継続していますので、89式装甲戦闘車もこちらの車体と新設計の砲塔を搭載するならば、生産再開は充分可能です。尚この装備は射程が長く、警告射撃も出来、島嶼防衛には有効です。

 空中機動部隊の超越を受け、戦果拡張へ、こうして状況は終了となりました。もっともAH-1S対戦車ヘリコプターは装備品展示へ展開したものですが。本年、即応機動連隊の目新しさと共に火砲削減の厳しい現実と戦車の威力を強く感じた訓練展示となっていましたね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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