■専守防衛の変容と軍事技術
ポストコロナの時代を見据えると共に軍事技術の発展と概念の変容も注視してゆく必要があるように考えます。

1980年代に自衛隊が対艦ミサイルを本格的に配備開始した当時には、艦砲と比べて非常に長い射程がおどろきを持って迎えられました。ASM-1の射程40kmも127mm艦砲より長いものでしたし、ハープーンミサイルの射程は戦艦大和の主砲と比較し三倍以上、ともいわれたものです。しかし開発基盤と技術背景が、蒸気機関車と新幹線ほど違いました。

日本の防衛、あれから40年以上が経ちまして、当然のように各種兵器の射程は日本とアメリカ以外大きく延伸しています、日本が延伸しなかったのは専守防衛の認識から、アメリカは1987年から2019年まで中距離核戦力全廃条約の制約があり、陸上配備型の550km以遠5500kmまでのミサイル保有が条約で厳しく制限されていた為です。そして現代は。

戦闘ヘリコプターから発射される対戦車ミサイルの射程が100kmを超えている、こう説明しますと驚かれるでしょうか。いや、自衛隊のアパッチはそこまで高度ではありませんが、ALE空中発射センサーとしましてアメリカは、AH-64Eより無人機を発進させ、ロングボウレーダーにより管制を実施、攻撃を加える。AH-64でさえここまで長射程化しました。

独善的な防衛観と一国平和主義に依拠した防衛の危険性は、中国の現在進めている一国防衛主義と日本の平和主義が重なる点があるとして前回、その限界と危険性を示していますが、防衛力というものは均衡が重要であり、均衡が綻ぶことはその破綻と、武力紛争を誘発する危険さえあります。すると、日本の防衛力についても一段階の変容が見えてきます。

スタンドオフ兵器。自衛隊の新しい装備体系として導入が開始されます。実際にはF-35戦闘機やF-15戦闘機へ搭載する装備品導入は何年も前に決定し、既に予算に計上されているのですが、導入開始と共に新しく自衛隊が装備する地対艦誘導弾システムを大幅に射程を延伸させるという。これも島嶼部防衛用高速滑空弾として既に何年も研究中なのだけれど。

新しい時代の日本の防衛を考えますと、スタンドオフ兵器というもの、その導入と周辺国の配備などの情勢を考えなければなりません。専守防衛を逸脱する、という批判もありますが、そもそもスタンドオフ兵器と銘打っていない通常の戦術兵器でさえ、大陸から日本列島へ充分到達するとなっては、飽和攻撃を受けた際の防空か抑止か、対策が必要です。

1500km程度の射程であれば、今日的にはスタンドオフ兵器というよりは通常の戦術打撃力に収斂している、こうした認識で考えるべきでしょう、流石に例えば仮に日本が中距離弾道ミサイルの射程である5500km以遠の射程の装備を大量装備する、というならば、何処を狙うのか、と指摘するところですが、1500kmから、トマホーク程度までは許容しうる。

トマホークの射程は2700kmですが、この程度までであれば、現在、世界各国で巡航ミサイルや長射程地対空ミサイルが普及している現状に鑑みれば、寧ろ防衛力の均衡を保つうえで必要である、と考えます。スタンドオフ兵器、そもそも地対空ミサイルの射程が1990年代の常識では100kmのものが長射程でしたが、ここがどんどん延伸しているのですね。

独善性というものは此処で、現在の各国で進む地対空ミサイルの射程延伸を考えずにスタンドオフ兵器の議論をしており、実は敵基地攻撃能力云々ではなく、本来防衛的であるはずの地対空ミサイルが、周辺国の装備した地対空ミサイルの射程が沖縄県や九州の一部、北海道まで延びてきている、という現実を無視しているのですね。この現実をみていない。

ロシア製S-400地対空ミサイル等は射程は500kmまで延伸していますので、単純論として500km以下の射程のミサイルでは策源地攻撃一つとっても重大な危険が伴います、そしてS-300等のミサイルは中国はじめ広く輸出され、敵基地攻撃能力を持たずとも、南西諸島や北海道が周辺国地対空ミサイルの射程内へ入る。その為に防衛政策転換が迫られた、と。

特別な国ではない、普通の国である、こうした認識の上で、戦術兵器というものの射程が留まるところを知らず延伸されるなかで、日本だけが特別扱いでの平和を世界から補償されるものではない、という認識が必要です。こうした視点から、自衛隊装備は必要に応じた射程を有するものへ、延伸というよりは近代化されてゆく認識が、必要なのでしょう。

海兵沿岸連隊。昨今は自衛隊の米軍化が進む、と所謂進歩的論壇から批判される事がありますが、何を言っているのだろう、というのが率直な印象です。その一例がアメリカ海兵隊が進める沿岸作戦連隊の編成です。もともとアメリカ海兵隊は水陸両用部隊の現在編成となる前には海外基地防衛部隊としての側面があり、沿岸砲兵の機能も有していました。

海兵沿岸連隊は、海兵大隊と防空砲兵大隊に地対艦ミサイル部隊と兵站部隊を加えた新し編成で、2021年初頭現在は改編に向けての評価試験等が進められています、これは水陸両用部隊としての海兵隊、沿岸砲兵部隊への再転換を期し、特に年々脅威度の増す中国軍の環太平洋インド洋地域での進出に対し、島嶼部奪取ではなく島嶼部防衛で臨むというもの。

自衛隊の南西諸島における部隊配置と海兵沿岸連隊の編成は驚くほど共通点があります、普通科部隊主体の警備隊、中距離地対空誘導弾システムを有する高射中隊と地対艦ミサイル中隊、そして情報収集に当る情報隊や沿岸監視隊が周辺島嶼部に展開する自衛隊の運用は、先島諸島と鹿児島県島嶼部にて2020年までに編制完結しました。この編成はまさに。

自衛隊の将来を考えますと、既に12式地対艦誘導弾システムの後継装備として、射程を大幅に延伸させる改良型の開発開始が2020年に画定しています、これを中国の中距離弾道弾の様な大射程を付与させることには反対ですが、1500km程度までであれば、現実的でしょう。地対艦ミサイル連隊は一個連隊で96発の発射が可能、1基数3斉射ですので威力は巨大だ。

プレジションストライクミサイル、アメリカ陸軍が2023年完成を目指して開発している地対地戦術ミサイルでINF中距離核戦力全廃条約離脱を受け既に開発されているロシアや中国の中距離ミサイルシステムへ対抗する目的から開発されています、こうしたものの射程を念頭に、自衛隊版の沿岸作戦連隊、いや沿岸特科連隊を、模索するべきと、思うのです。

トマホーク巡航ミサイルを潜水艦に搭載するべき、将来艦隊戦闘と巡航ミサイル、としまして2016年に特集していますが、陸上配備型以外のこの種の長距離打撃装備品であれば、無理に国産に拘るのではなく、むらさめ型護衛艦以降の護衛艦に採用されるMk41垂直発射装置から運用可能で費用も抑えられるトマホークミサイルの導入も考えるべき時代です。

反対論は出て来るでしょう、これは単純に周辺国のミサイル射程が、北朝鮮の弾道ミサイルくらいは時事情報の延長線上に知っていたとしても、中国や友好国である韓国、ロシア等も1000km以遠の射程を有する装備は最早普通となった実情を知らない為ではないか。こうした認識も踏まえ日本は最早特別な国ではなく普通扱いされる現実を視るべきです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ポストコロナの時代を見据えると共に軍事技術の発展と概念の変容も注視してゆく必要があるように考えます。

1980年代に自衛隊が対艦ミサイルを本格的に配備開始した当時には、艦砲と比べて非常に長い射程がおどろきを持って迎えられました。ASM-1の射程40kmも127mm艦砲より長いものでしたし、ハープーンミサイルの射程は戦艦大和の主砲と比較し三倍以上、ともいわれたものです。しかし開発基盤と技術背景が、蒸気機関車と新幹線ほど違いました。

日本の防衛、あれから40年以上が経ちまして、当然のように各種兵器の射程は日本とアメリカ以外大きく延伸しています、日本が延伸しなかったのは専守防衛の認識から、アメリカは1987年から2019年まで中距離核戦力全廃条約の制約があり、陸上配備型の550km以遠5500kmまでのミサイル保有が条約で厳しく制限されていた為です。そして現代は。

戦闘ヘリコプターから発射される対戦車ミサイルの射程が100kmを超えている、こう説明しますと驚かれるでしょうか。いや、自衛隊のアパッチはそこまで高度ではありませんが、ALE空中発射センサーとしましてアメリカは、AH-64Eより無人機を発進させ、ロングボウレーダーにより管制を実施、攻撃を加える。AH-64でさえここまで長射程化しました。

独善的な防衛観と一国平和主義に依拠した防衛の危険性は、中国の現在進めている一国防衛主義と日本の平和主義が重なる点があるとして前回、その限界と危険性を示していますが、防衛力というものは均衡が重要であり、均衡が綻ぶことはその破綻と、武力紛争を誘発する危険さえあります。すると、日本の防衛力についても一段階の変容が見えてきます。

スタンドオフ兵器。自衛隊の新しい装備体系として導入が開始されます。実際にはF-35戦闘機やF-15戦闘機へ搭載する装備品導入は何年も前に決定し、既に予算に計上されているのですが、導入開始と共に新しく自衛隊が装備する地対艦誘導弾システムを大幅に射程を延伸させるという。これも島嶼部防衛用高速滑空弾として既に何年も研究中なのだけれど。

新しい時代の日本の防衛を考えますと、スタンドオフ兵器というもの、その導入と周辺国の配備などの情勢を考えなければなりません。専守防衛を逸脱する、という批判もありますが、そもそもスタンドオフ兵器と銘打っていない通常の戦術兵器でさえ、大陸から日本列島へ充分到達するとなっては、飽和攻撃を受けた際の防空か抑止か、対策が必要です。

1500km程度の射程であれば、今日的にはスタンドオフ兵器というよりは通常の戦術打撃力に収斂している、こうした認識で考えるべきでしょう、流石に例えば仮に日本が中距離弾道ミサイルの射程である5500km以遠の射程の装備を大量装備する、というならば、何処を狙うのか、と指摘するところですが、1500kmから、トマホーク程度までは許容しうる。

トマホークの射程は2700kmですが、この程度までであれば、現在、世界各国で巡航ミサイルや長射程地対空ミサイルが普及している現状に鑑みれば、寧ろ防衛力の均衡を保つうえで必要である、と考えます。スタンドオフ兵器、そもそも地対空ミサイルの射程が1990年代の常識では100kmのものが長射程でしたが、ここがどんどん延伸しているのですね。

独善性というものは此処で、現在の各国で進む地対空ミサイルの射程延伸を考えずにスタンドオフ兵器の議論をしており、実は敵基地攻撃能力云々ではなく、本来防衛的であるはずの地対空ミサイルが、周辺国の装備した地対空ミサイルの射程が沖縄県や九州の一部、北海道まで延びてきている、という現実を無視しているのですね。この現実をみていない。

ロシア製S-400地対空ミサイル等は射程は500kmまで延伸していますので、単純論として500km以下の射程のミサイルでは策源地攻撃一つとっても重大な危険が伴います、そしてS-300等のミサイルは中国はじめ広く輸出され、敵基地攻撃能力を持たずとも、南西諸島や北海道が周辺国地対空ミサイルの射程内へ入る。その為に防衛政策転換が迫られた、と。

特別な国ではない、普通の国である、こうした認識の上で、戦術兵器というものの射程が留まるところを知らず延伸されるなかで、日本だけが特別扱いでの平和を世界から補償されるものではない、という認識が必要です。こうした視点から、自衛隊装備は必要に応じた射程を有するものへ、延伸というよりは近代化されてゆく認識が、必要なのでしょう。

海兵沿岸連隊。昨今は自衛隊の米軍化が進む、と所謂進歩的論壇から批判される事がありますが、何を言っているのだろう、というのが率直な印象です。その一例がアメリカ海兵隊が進める沿岸作戦連隊の編成です。もともとアメリカ海兵隊は水陸両用部隊の現在編成となる前には海外基地防衛部隊としての側面があり、沿岸砲兵の機能も有していました。

海兵沿岸連隊は、海兵大隊と防空砲兵大隊に地対艦ミサイル部隊と兵站部隊を加えた新し編成で、2021年初頭現在は改編に向けての評価試験等が進められています、これは水陸両用部隊としての海兵隊、沿岸砲兵部隊への再転換を期し、特に年々脅威度の増す中国軍の環太平洋インド洋地域での進出に対し、島嶼部奪取ではなく島嶼部防衛で臨むというもの。

自衛隊の南西諸島における部隊配置と海兵沿岸連隊の編成は驚くほど共通点があります、普通科部隊主体の警備隊、中距離地対空誘導弾システムを有する高射中隊と地対艦ミサイル中隊、そして情報収集に当る情報隊や沿岸監視隊が周辺島嶼部に展開する自衛隊の運用は、先島諸島と鹿児島県島嶼部にて2020年までに編制完結しました。この編成はまさに。

自衛隊の将来を考えますと、既に12式地対艦誘導弾システムの後継装備として、射程を大幅に延伸させる改良型の開発開始が2020年に画定しています、これを中国の中距離弾道弾の様な大射程を付与させることには反対ですが、1500km程度までであれば、現実的でしょう。地対艦ミサイル連隊は一個連隊で96発の発射が可能、1基数3斉射ですので威力は巨大だ。

プレジションストライクミサイル、アメリカ陸軍が2023年完成を目指して開発している地対地戦術ミサイルでINF中距離核戦力全廃条約離脱を受け既に開発されているロシアや中国の中距離ミサイルシステムへ対抗する目的から開発されています、こうしたものの射程を念頭に、自衛隊版の沿岸作戦連隊、いや沿岸特科連隊を、模索するべきと、思うのです。

トマホーク巡航ミサイルを潜水艦に搭載するべき、将来艦隊戦闘と巡航ミサイル、としまして2016年に特集していますが、陸上配備型以外のこの種の長距離打撃装備品であれば、無理に国産に拘るのではなく、むらさめ型護衛艦以降の護衛艦に採用されるMk41垂直発射装置から運用可能で費用も抑えられるトマホークミサイルの導入も考えるべき時代です。

反対論は出て来るでしょう、これは単純に周辺国のミサイル射程が、北朝鮮の弾道ミサイルくらいは時事情報の延長線上に知っていたとしても、中国や友好国である韓国、ロシア等も1000km以遠の射程を有する装備は最早普通となった実情を知らない為ではないか。こうした認識も踏まえ日本は最早特別な国ではなく普通扱いされる現実を視るべきです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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