■週報:世界の防衛,最新11論点
2021年最初の防衛情報は一年の飛躍を願いまして航空関連の話題を中心に11の話題を集めました。

イタリア空軍は11月、保有するF-35A戦闘機及びF-35B戦闘機を完全重武装のビーストモードにて飛行させる事に成功したとのこと。ビーストモードでのF-35はAMRAAM空対空ミサイル4発及びAIM-9X空対空ミサイル2発とGBU-31/2000ポンド爆弾6発を搭載可能で、ステルス性を一部断念しつつ、機内弾薬庫と主翼パイロンを最大限活用します。

JSF統合打撃戦闘機計画として開発されたF-35にイタリアは開発段階で10億ドルを投資しアレー二ア社はじめイタリア防衛産業とレベル2開発国としてJSF計画に参加しています。この関係で優先顧客以上に早期にF-35を受領する権利を有しており、2016年に初号機を受領、イタリア空軍は単一の軍組織として現在唯一、F-35A,F-35Bを運用しています。

しかし、イタリア国内には巨額の開発費とユニットコストへの憂慮、トーネード攻撃機やハリアー攻撃機とAMX軽攻撃機など253機のイタリア軍作戦機を90機のF-35で置き換える事は作戦機数の激減を意味する為に反対も多く、ビーストモードでのF-35A,F-35Bの飛行を誇示することは、F-35のポテンシャルの大きさを示す意味でも重要といえましょう。
■イギリス,F-35B更に3機到着
日本の自衛隊への配備は順調に進んでいますが、F-35は友好国イギリスにも順調に配備が進んでいる模様ですね。

イギリス空軍は11月27日、新たに3機のF-35B戦闘機をアメリカ本土のロッキードマーティン社工場から受領したとのこと。受領の後にイギリス本土へイギリス空軍要員にょり回航されるとのこと。イギリス空軍には現在19機のF-35B戦闘機が配備されており、この3機の受領により21機となります。空軍は最終的に138機のF-35Bを導入予定です。

F-35Bはイギリス海軍に新しく配備された空母クイーンエリザベス艦上での運用を進めており、先日米英合同訓練においてアメリカ海兵隊所属のF-35Bとともに16機を飛行甲板に並べていますが、クイーンエリザベス級航空母艦には今後、イギリス軍だけで40機のF-35Bを搭載可能となるため、イギリスのF-35B導入はまだまだこれから本格化といえましょう。
■スイスF-X選定急遽F-35参加
スイスの次期戦闘機選定はスーパーホーネットで決定かと思っていたのですが、やはり第五世代戦闘機が欲しいようです。

アメリカのロッキードマーティン社はスイス空軍の次期戦闘機選定NFA計画へ正式にF-35A戦闘機を提案しました。これはスイス空軍の次期選定に当初候補として挙げられていなかったF-35が急遽スイス政府より要請される形で11月18日に提案書を提出する事となり、スイス空軍は最大40機の次期戦闘機を導入予定、提案書は2019年が期限でした。

F-35のほかにEF-2000タイフーンにJAS-39グリペンやF/A-18Eスーパーホーネット、ラファール戦闘機などが提案されています。スイス空軍の現用戦闘機は非常に古いF-5戦闘機と古いF/A-18C/D戦闘機で、後継機として60億スイスフラン、ドル換算で64億ドルを計画、直接民主制の瑞西ではこの計画へ野党反対を受け国民投票に掛けられる予定です。
■インドネシア,次はラファール
インドネシアの防衛装備品調達は二転三転当然ともめる事で有名なのですが、今回ばかりは度を越しているようで。

インドネシア空軍は次期戦闘機としてフランスのラファール戦闘機48機を調達予定であると12月2日にル・トリビューン紙が報じたとのこと。これは10月にフランスを訪問したインドネシアのスビアント国防大臣がダッソー社の工場を視察した際に示し、インドネシアは次期戦闘機を早ければ2020年内にも契約に漕ぎ着けたいと示唆したとのことです。

インドネシアの決定は二転三転する事で有名で、元々は韓国と第六世代戦闘機を共同開発する方針でしたが、アメリカの次期戦闘機導入を交渉しF-35の供与を求めアメリカが難色を示していました。しかしインドネシアはロシアとの間でSu-35戦闘機導入で合意に達しつつあるとの報道もあり、いきなりラファールの名が示され、今回も驚かされる次第です。
■ギリシャのラファールは最新
ギリシャはトルコとフランスの対立の関係から安価にラファールを導入する事となりましたが、安価でも最新型だ。

ギリシャ軍が2021年に導入するフランス製ラファール戦闘機18機のうち12機は2020年9月に初飛行したばかりのラファールF3R仕様となる見込みです。エーゲ海でのトルコ海洋開発を契機としたギリシャトルコ間の緊張が進み、トルコ政府がギリシャを牽制する為にリビア内戦を支援した結果、この対立はトルコとフランスの緊張に発展してゆきます。

ラファール戦闘機18機のギリシャ供与はこの緊張下において妥結され、18機のうち10機はフランス空軍の中古機となっており、実質的に無償供与となっています。しかし、今回新造機8機に加えて中古機の一部をラファールF3R仕様へ近代化改修し供与する方針が示されたかたち。無償供与機近代化改修費用についての詳細な数字は明らかではありません。

ラファールF3R仕様の従来型の機体に対しての改修点は巨大なタリオス新世代レーザー照準ポッドを機体前部に装着しており、これに併せてラファールでーらリンクシステムそのものが大容量化されている点、そして新開発されたシュフランAASM空対地空対艦ミサイルシリーズの運用能力が付与され、通常兵器での長距離打撃能力を有するに至った点です。
■SPEAR,F/A-18に超音速兵器
アメリカではスーパーホーネットを第五世代機時代においても強力な兵装搭載能力を最大限活かした運用を目指すようですね。

アメリカ海軍は10月21日、SPEARフライトデモンストレーターとしてF/A-18E/F戦闘攻撃機から運用する超音速兵器システムの実証装備開発をボーイング社に対し発注しました。これは超音速推進対応のラムジェット推進方式の装備を期しており、実証装備は、2022年後半に完成させる見通しといいます。当面の契約金額は3000万ドルとのこと。

SPEARフライトデモンストレーターの開発の背景にはハープーンシリーズやトマホークと、現在アメリカ海軍の装備体系が亜音速兵器に重点が置かれている点であり、これは冷戦後に開発が中止された超音速巡航ミサイルファーストホーク以降この種の兵器が開発されていなかった点に起因します。ラムジェット推進方式は極超音速さえ可能としましょう。

海軍航空戦センターがF/A-18E/F戦闘攻撃機を発射母機として選定した背景にはステルス性に影響が及ぶF-35Cに対して主翼下に大量の兵装を搭載するF/A-18E/Fの汎用性の高さであるといい、またこの装備の開発によりアメリカ海軍の空母航空団は対艦戦闘及び対地戦闘において高い優位性を維持します。この装備はF/A-XX計画にも影響するでしょう。
■ブルーエンジェルス交代
F/A-18Aからはじまりましたレガシーホーネットの時代は海軍曲技飛行部隊でも終焉を迎えスーパーホーネットに道を譲るようです。

アメリカ海軍の曲技飛行部隊ブルーエンジェルスは11月8日、運用しているF/A-18ホーネットの運用を終了しました。最後の飛行転移はフロリダのパンハンドルとアラバマの海岸上空を飛行しペンサコーラ海軍航空基地へ移動する際に30分間に渡り飛行を実施しています。F/A-18はブルーエンジェルスにおいて最長の34年間に渡り運用されてきました。

ブルーエンジェルスは2021年より新たにF/A-18E/Fを運用、厳密にはこちらもF/A-18の派生型ではありますが、F/A-18AからF/A-18Dまではホーネット若しくはレガシーホーネットとされ、2021年より運用開始する機体はライノの愛称で知られる第4.5世代戦闘機となり、ブルーエンジェルスにはF/A-18Eが9機とF/A-18Fが2機、配備される計画です。
■50番目のA-300-MRTT
エアバスは日本にもKC-767に続く給油機を提案していましたし、アメリカでもKC-135後継機となるエアバスの空中給油機は順調に生産が進む。

エアバスディフェンス社は2020年11月、50機目のエアバスA-330-MRTT空中給油輸送機用のA-330旅客機を納入したとのこと。機体は今後改修工事をうけます。このA-330-MRTTは大型旅客機エアバスA-330を原型とした空中給油輸送機で、NATO域内において統合運用される空中給油部隊に配備され各国に割り当てられる方式を採っています。

A-330-MRTT空中給油輸送機は戦闘機や輸送機への空中給油に当ると共に機体の上部は貨物型旅客機に相当するものであり、人員輸送やコンテナ貨物輸送、そして2020年代には更に、医療緊急搬送にも転用できる点が強調されています。50号機となるA-330-MRTT空中給油輸送機は現在のところ、ルクセンブルク空軍に割り当てられる計画となっています。
■C-27輸送機最新型の試験
C-130Jでは大き過ぎるが手頃な輸送機が必要、という国には魅力的なC-27Jに最新の話題が。

イタリアのレオナルド社は同社が生産するC-27J戦術輸送機の最新型について、その最終試験を11月中旬より開始しました。このC-27J最新型は2021年に某国空軍へ納入されるとのこと。レオナルド社広報はこのC-27J最新型について、2020年現在の世界を覆う新型コロナウィルスCOVID-19流行禍に対しても有用な空輸能力を発揮すると強調しました。

C-27J輸送機は機内には最大60名の人員か担架上の負傷者36名と医療関係者2名を空輸可能で貨物輸送能力も10tに達する双発の戦術輸送機です。このC-27J戦術輸送機最新型のFANS-1/Aプラスデータリンクシステムを搭載し、欧州などで規格化される次世代航空管制システムに適合するとともに戦術VNAVシステムを搭載し、救難任務にも対応します。
■ケニア軍C-27配備完了
C-27はC-130を双発にしたようなコンパクトな新世代輸送機です。

ケニア空軍は10月2日、C-27Jスパルタン戦術輸送機の3機納入計画の3号機を取得し導入計画を完了したとのこと。これは1億9800万ドルを投じて進めていた空軍空輸部隊近代化計画です。しかし、3機の内最初の2機は2020年1月に納入されましたが、3号機だけは新型コロナウィルスにより初飛行や要員訓練、引き渡しなどが大きく遅れていました。

C-27J納入式典にはケニア空軍司令官フランシスオゴラ少将とC-27Jを生産するイタリアのアルベルトピエリ大使が出席しました。C-27Jはアメリカ製C-130Jを小型化したといえる最新鋭の戦術輸送機で、機内には最大60名の人員か46名の空挺隊員、もしくは10tまでの貨物を搭載可能で、航空自衛隊のC-1輸送機に匹敵する搭載能力を有しています。
■中国Y-20輸送機に派生型
Y-20は世界への人民解放軍展開を視野に中国がアメリカのC-17に対抗し開発したかなり大型の戦域間輸送機です。

中国の四発大型輸送機Y-20について、その派生型に空中給油機が実用化、中国空軍が第五世代戦闘機として位置付けられるJ-20戦闘機へ空中給油試験を実施したとの事です。Y-20空中給油型はもともと中国軍が長距離ミサイル爆撃機として運用するH-6M爆撃機への空中給油用に用いられるべく2019年に開発されていますが、戦闘機への給油は初という。

中国環球時報が報道したところによれば、J-20戦闘機は空中給油を受ける事で航続距離8000km、戦闘行動半径にして3000kmまで作戦能力が拡張されると考えられ、H-6M爆撃機や改良型のH-6N爆撃機へJ-20戦闘機が護衛にあたる事も可能となり、このほかにKJ-500早期警戒機なども空中給油受油装置装着型が報じられ、新しい脅威といえましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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2021年最初の防衛情報は一年の飛躍を願いまして航空関連の話題を中心に11の話題を集めました。

イタリア空軍は11月、保有するF-35A戦闘機及びF-35B戦闘機を完全重武装のビーストモードにて飛行させる事に成功したとのこと。ビーストモードでのF-35はAMRAAM空対空ミサイル4発及びAIM-9X空対空ミサイル2発とGBU-31/2000ポンド爆弾6発を搭載可能で、ステルス性を一部断念しつつ、機内弾薬庫と主翼パイロンを最大限活用します。

JSF統合打撃戦闘機計画として開発されたF-35にイタリアは開発段階で10億ドルを投資しアレー二ア社はじめイタリア防衛産業とレベル2開発国としてJSF計画に参加しています。この関係で優先顧客以上に早期にF-35を受領する権利を有しており、2016年に初号機を受領、イタリア空軍は単一の軍組織として現在唯一、F-35A,F-35Bを運用しています。

しかし、イタリア国内には巨額の開発費とユニットコストへの憂慮、トーネード攻撃機やハリアー攻撃機とAMX軽攻撃機など253機のイタリア軍作戦機を90機のF-35で置き換える事は作戦機数の激減を意味する為に反対も多く、ビーストモードでのF-35A,F-35Bの飛行を誇示することは、F-35のポテンシャルの大きさを示す意味でも重要といえましょう。
■イギリス,F-35B更に3機到着
日本の自衛隊への配備は順調に進んでいますが、F-35は友好国イギリスにも順調に配備が進んでいる模様ですね。

イギリス空軍は11月27日、新たに3機のF-35B戦闘機をアメリカ本土のロッキードマーティン社工場から受領したとのこと。受領の後にイギリス本土へイギリス空軍要員にょり回航されるとのこと。イギリス空軍には現在19機のF-35B戦闘機が配備されており、この3機の受領により21機となります。空軍は最終的に138機のF-35Bを導入予定です。

F-35Bはイギリス海軍に新しく配備された空母クイーンエリザベス艦上での運用を進めており、先日米英合同訓練においてアメリカ海兵隊所属のF-35Bとともに16機を飛行甲板に並べていますが、クイーンエリザベス級航空母艦には今後、イギリス軍だけで40機のF-35Bを搭載可能となるため、イギリスのF-35B導入はまだまだこれから本格化といえましょう。
■スイスF-X選定急遽F-35参加
スイスの次期戦闘機選定はスーパーホーネットで決定かと思っていたのですが、やはり第五世代戦闘機が欲しいようです。

アメリカのロッキードマーティン社はスイス空軍の次期戦闘機選定NFA計画へ正式にF-35A戦闘機を提案しました。これはスイス空軍の次期選定に当初候補として挙げられていなかったF-35が急遽スイス政府より要請される形で11月18日に提案書を提出する事となり、スイス空軍は最大40機の次期戦闘機を導入予定、提案書は2019年が期限でした。

F-35のほかにEF-2000タイフーンにJAS-39グリペンやF/A-18Eスーパーホーネット、ラファール戦闘機などが提案されています。スイス空軍の現用戦闘機は非常に古いF-5戦闘機と古いF/A-18C/D戦闘機で、後継機として60億スイスフラン、ドル換算で64億ドルを計画、直接民主制の瑞西ではこの計画へ野党反対を受け国民投票に掛けられる予定です。
■インドネシア,次はラファール
インドネシアの防衛装備品調達は二転三転当然ともめる事で有名なのですが、今回ばかりは度を越しているようで。

インドネシア空軍は次期戦闘機としてフランスのラファール戦闘機48機を調達予定であると12月2日にル・トリビューン紙が報じたとのこと。これは10月にフランスを訪問したインドネシアのスビアント国防大臣がダッソー社の工場を視察した際に示し、インドネシアは次期戦闘機を早ければ2020年内にも契約に漕ぎ着けたいと示唆したとのことです。

インドネシアの決定は二転三転する事で有名で、元々は韓国と第六世代戦闘機を共同開発する方針でしたが、アメリカの次期戦闘機導入を交渉しF-35の供与を求めアメリカが難色を示していました。しかしインドネシアはロシアとの間でSu-35戦闘機導入で合意に達しつつあるとの報道もあり、いきなりラファールの名が示され、今回も驚かされる次第です。
■ギリシャのラファールは最新
ギリシャはトルコとフランスの対立の関係から安価にラファールを導入する事となりましたが、安価でも最新型だ。

ギリシャ軍が2021年に導入するフランス製ラファール戦闘機18機のうち12機は2020年9月に初飛行したばかりのラファールF3R仕様となる見込みです。エーゲ海でのトルコ海洋開発を契機としたギリシャトルコ間の緊張が進み、トルコ政府がギリシャを牽制する為にリビア内戦を支援した結果、この対立はトルコとフランスの緊張に発展してゆきます。

ラファール戦闘機18機のギリシャ供与はこの緊張下において妥結され、18機のうち10機はフランス空軍の中古機となっており、実質的に無償供与となっています。しかし、今回新造機8機に加えて中古機の一部をラファールF3R仕様へ近代化改修し供与する方針が示されたかたち。無償供与機近代化改修費用についての詳細な数字は明らかではありません。

ラファールF3R仕様の従来型の機体に対しての改修点は巨大なタリオス新世代レーザー照準ポッドを機体前部に装着しており、これに併せてラファールでーらリンクシステムそのものが大容量化されている点、そして新開発されたシュフランAASM空対地空対艦ミサイルシリーズの運用能力が付与され、通常兵器での長距離打撃能力を有するに至った点です。
■SPEAR,F/A-18に超音速兵器
アメリカではスーパーホーネットを第五世代機時代においても強力な兵装搭載能力を最大限活かした運用を目指すようですね。

アメリカ海軍は10月21日、SPEARフライトデモンストレーターとしてF/A-18E/F戦闘攻撃機から運用する超音速兵器システムの実証装備開発をボーイング社に対し発注しました。これは超音速推進対応のラムジェット推進方式の装備を期しており、実証装備は、2022年後半に完成させる見通しといいます。当面の契約金額は3000万ドルとのこと。

SPEARフライトデモンストレーターの開発の背景にはハープーンシリーズやトマホークと、現在アメリカ海軍の装備体系が亜音速兵器に重点が置かれている点であり、これは冷戦後に開発が中止された超音速巡航ミサイルファーストホーク以降この種の兵器が開発されていなかった点に起因します。ラムジェット推進方式は極超音速さえ可能としましょう。

海軍航空戦センターがF/A-18E/F戦闘攻撃機を発射母機として選定した背景にはステルス性に影響が及ぶF-35Cに対して主翼下に大量の兵装を搭載するF/A-18E/Fの汎用性の高さであるといい、またこの装備の開発によりアメリカ海軍の空母航空団は対艦戦闘及び対地戦闘において高い優位性を維持します。この装備はF/A-XX計画にも影響するでしょう。
■ブルーエンジェルス交代
F/A-18Aからはじまりましたレガシーホーネットの時代は海軍曲技飛行部隊でも終焉を迎えスーパーホーネットに道を譲るようです。

アメリカ海軍の曲技飛行部隊ブルーエンジェルスは11月8日、運用しているF/A-18ホーネットの運用を終了しました。最後の飛行転移はフロリダのパンハンドルとアラバマの海岸上空を飛行しペンサコーラ海軍航空基地へ移動する際に30分間に渡り飛行を実施しています。F/A-18はブルーエンジェルスにおいて最長の34年間に渡り運用されてきました。

ブルーエンジェルスは2021年より新たにF/A-18E/Fを運用、厳密にはこちらもF/A-18の派生型ではありますが、F/A-18AからF/A-18Dまではホーネット若しくはレガシーホーネットとされ、2021年より運用開始する機体はライノの愛称で知られる第4.5世代戦闘機となり、ブルーエンジェルスにはF/A-18Eが9機とF/A-18Fが2機、配備される計画です。
■50番目のA-300-MRTT
エアバスは日本にもKC-767に続く給油機を提案していましたし、アメリカでもKC-135後継機となるエアバスの空中給油機は順調に生産が進む。

エアバスディフェンス社は2020年11月、50機目のエアバスA-330-MRTT空中給油輸送機用のA-330旅客機を納入したとのこと。機体は今後改修工事をうけます。このA-330-MRTTは大型旅客機エアバスA-330を原型とした空中給油輸送機で、NATO域内において統合運用される空中給油部隊に配備され各国に割り当てられる方式を採っています。

A-330-MRTT空中給油輸送機は戦闘機や輸送機への空中給油に当ると共に機体の上部は貨物型旅客機に相当するものであり、人員輸送やコンテナ貨物輸送、そして2020年代には更に、医療緊急搬送にも転用できる点が強調されています。50号機となるA-330-MRTT空中給油輸送機は現在のところ、ルクセンブルク空軍に割り当てられる計画となっています。
■C-27輸送機最新型の試験
C-130Jでは大き過ぎるが手頃な輸送機が必要、という国には魅力的なC-27Jに最新の話題が。

イタリアのレオナルド社は同社が生産するC-27J戦術輸送機の最新型について、その最終試験を11月中旬より開始しました。このC-27J最新型は2021年に某国空軍へ納入されるとのこと。レオナルド社広報はこのC-27J最新型について、2020年現在の世界を覆う新型コロナウィルスCOVID-19流行禍に対しても有用な空輸能力を発揮すると強調しました。

C-27J輸送機は機内には最大60名の人員か担架上の負傷者36名と医療関係者2名を空輸可能で貨物輸送能力も10tに達する双発の戦術輸送機です。このC-27J戦術輸送機最新型のFANS-1/Aプラスデータリンクシステムを搭載し、欧州などで規格化される次世代航空管制システムに適合するとともに戦術VNAVシステムを搭載し、救難任務にも対応します。
■ケニア軍C-27配備完了
C-27はC-130を双発にしたようなコンパクトな新世代輸送機です。

ケニア空軍は10月2日、C-27Jスパルタン戦術輸送機の3機納入計画の3号機を取得し導入計画を完了したとのこと。これは1億9800万ドルを投じて進めていた空軍空輸部隊近代化計画です。しかし、3機の内最初の2機は2020年1月に納入されましたが、3号機だけは新型コロナウィルスにより初飛行や要員訓練、引き渡しなどが大きく遅れていました。

C-27J納入式典にはケニア空軍司令官フランシスオゴラ少将とC-27Jを生産するイタリアのアルベルトピエリ大使が出席しました。C-27Jはアメリカ製C-130Jを小型化したといえる最新鋭の戦術輸送機で、機内には最大60名の人員か46名の空挺隊員、もしくは10tまでの貨物を搭載可能で、航空自衛隊のC-1輸送機に匹敵する搭載能力を有しています。
■中国Y-20輸送機に派生型
Y-20は世界への人民解放軍展開を視野に中国がアメリカのC-17に対抗し開発したかなり大型の戦域間輸送機です。

中国の四発大型輸送機Y-20について、その派生型に空中給油機が実用化、中国空軍が第五世代戦闘機として位置付けられるJ-20戦闘機へ空中給油試験を実施したとの事です。Y-20空中給油型はもともと中国軍が長距離ミサイル爆撃機として運用するH-6M爆撃機への空中給油用に用いられるべく2019年に開発されていますが、戦闘機への給油は初という。

中国環球時報が報道したところによれば、J-20戦闘機は空中給油を受ける事で航続距離8000km、戦闘行動半径にして3000kmまで作戦能力が拡張されると考えられ、H-6M爆撃機や改良型のH-6N爆撃機へJ-20戦闘機が護衛にあたる事も可能となり、このほかにKJ-500早期警戒機なども空中給油受油装置装着型が報じられ、新しい脅威といえましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)