■自衛隊哨戒艦の一つの理想形
自衛隊の掃海艇が機雷掃討能力強化により建造費が高騰し数が揃わなくなり久しいですが、新しい動きが。
海上自衛隊の掃海艇が、えのしま型掃海艇はつしま竣工の2015年以降建造が止まっていまして、今後の掃海艇整備がどうなるのか、注視しているところですが、この試金石となり得る新しい掃海艇の建造が欧州で始まります。MCM機雷戦艦、三番艦えたじま、が来たる三月に竣工する海上自衛隊が建造を進める掃海艦あわじ型よりも大きな機雷戦艦艇です。
掃海艇は将来更に高価に且つ希少となり得る。MCM機雷戦艦、これはオランダ海軍とベルギー海洋軍が12隻を調達する将来掃海艇ですが、遠くない将来に掃海艇という概念は根本から転換する事となるのかもしれません。MCM機雷戦艦の外見は艦砲と上部構造物に後部には飛行甲板と多数の無人機が搭載された特異な艦容となっており、一見して掃海艇というよりも外洋哨戒艦というべき艦容です。
外洋哨戒艦というか掃海艇としてはかなり大型に思えるMCM機雷戦艦。艦砲として40mm機関砲のようなものと幾つかのRWS遠隔操作銃搭が搭載されるとともにタレスNS-50多機能レーダーが搭載、これは巡航ミサイルや無人機飽和攻撃等を識別できる掃海艇用としては破格の高性能レーダーで、明らかに水上戦闘艦との連携を考慮しているもので、飛行甲板はV-200無人ヘリコプターを運用しレーザー機雷探知戦を行います。
MCM機雷戦艦はステルス性を考慮した船体を採用し全長81.4mと、自衛隊の掃海艇すがしま型全長の54mよりもかなり大きなものとなっています。そして小型無人掃海艇を左右両舷から展開可能であり、機雷処分弾薬を搭載した無人小型掃海艇と機雷探知用無人艇やレーザー機雷探知装置搭載無人機を搭載、管制するという水中無人機母艦というべきもの。
MCM機雷戦艦に搭載する無人小型掃海艇は複数の種類が想定されているもので、機雷探知装置一基を搭載した小型のもの、そして機雷処分弾薬を5発程度搭載した中型のものが搭載され、掃海隊単位で行う機雷掃討任務を一隻で対応するとともに、従来船体規模である掃海艇には搭載が難しかった機雷探知能力を持つ無人機を運用できるものです。その分、建造費は更に高騰するのですけれども。
機雷掃討艦。海上自衛隊OBの方や海上自衛隊の展示訓練をご覧になった事のある方々ですと掃海艇による掃海展示をご覧になられた事は幾度かあるでしょう、文字通り掃海艇から掃海器具を曳航し、また解説として、音響掃海器具で音響機雷を、磁気掃海装置で磁気機雷を、それぞれ掃海する、と説明されていた事を思い出されるでしょう。が、今は無い。
展示訓練そのものが2014年を最後に無くなってしまったではないか、と反論があるかもしれませんが、現在の主力である掃海艇すがしま型以降は、実は区分では掃海艇であっても実態としては機雷掃討艇となっており、むかしながらの掃海器具を曳航する掃海はほとんど行っていないのですね。機雷掃討艇というのは機雷戦装置により機雷を掃討するもの。
機雷掃討艇は掃海艇よりも前方に在る機雷を攻撃し破壊するもの、掃海艇は基本的に自分は機雷に探知されないように機雷上を通過し曳航する掃海器具が機雷を掃海する、というものでした。海上自衛隊の掃海艇は長らく木造を採用してきましたが、これは磁気機雷に探知されない様に磁性を帯びない素材として木材が用いられてきた、とは有名な話ですね。
うわじま型掃海艇までは後部甲板が多数の掃海器具を搭載出来るように広く採った設計となっており、文字通り掃海器具を曳航する展示訓練の展示は中々に興味深い展示だったと思い出します。すがしま型掃海艇からは上部構造物が非常に大型化した一方で掃海器具を搭載するべき後部甲板は狭くなっている事を思い出されるでしょう、すがしま型も掃海器具を曳航する事は出来るのですが、実は掃海器具の大半は平時、陸上に揚げられています。
すがしま型は掃海軽視なのか、と思われるかもしれませんが真逆です、機雷の性能が高性能化しすぎた今日、掃海器具を曳航した掃海艇が機雷の真上を航行した場合には機雷がコンピュータにより掃海艇と掃海器具を識別し、掃海艇の方を狙うように設定されているのですね。音響掃海装置や磁気掃海装置の特性を分析、その前方を進む僅かな推進音を狙う。
機雷は第二次世界大戦前こそ係維機雷という昔ながらの水中に錘とともに浮く突起に付いた爆発物が主流ですが、第二次大戦緒戦にドイツ軍が磁気機雷を開発、大戦末期には航空機雷として磁気機雷や音響機雷が日本への飢餓作戦へ多用されるようになりましたが、日本はこうした機雷を戦後掃海するべく掃海能力を高めていましたが、機雷も高性能化した。
MCM機雷戦艦、建造費は高いものとなりますが、機雷に接近せず航法から無人掃海艇と無人航空機を駆使するという発想は、言い換えれば搭載無人機を切り替える事で性能が陳腐化せず長期間運用できる事を意味し、長期的に運用できる事を意味します。そして一隻で対処出来る海域は当然広くなりますし、船体も大きい為、掃海任務の他に、センサーを駆使し、周辺国のフリゲイトに威圧されても押し返せるような哨戒艦のように運用も可能となります。
自衛隊の掃海艇、すがしま型掃海艇は木造船体を採用している事から遠くない将来に船体老朽化から除籍が必要となります。海上自衛隊は30FFMとして護衛艦くまの、を筆頭に機雷戦にも対応する新世代護衛艦を建造しているところですが、海上自衛隊は続いて艦型未発表の哨戒艦、という新区分の艦艇を建造します。これはMCM機雷戦艦に近いものでは成り得るのでは、とも考えているのですが。
哨戒艦は機雷戦装置を搭載しない掃海艇えのしま型派生となるのでは、とは過去に掲載したものです、有事の際には掃海艇として運用するという意味で。しかし、MCM機雷戦艦というものから将来の機雷戦というものを考えますと、特に哨戒艦は掃海隊群に配備されるということですので、案外、無人機母艦のような多機能艦に掃海任務も哨戒任務も、更には複合高速艇を多数搭載して水陸両用作戦も担わせる可能性はあるかもしれませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
自衛隊の掃海艇が機雷掃討能力強化により建造費が高騰し数が揃わなくなり久しいですが、新しい動きが。
海上自衛隊の掃海艇が、えのしま型掃海艇はつしま竣工の2015年以降建造が止まっていまして、今後の掃海艇整備がどうなるのか、注視しているところですが、この試金石となり得る新しい掃海艇の建造が欧州で始まります。MCM機雷戦艦、三番艦えたじま、が来たる三月に竣工する海上自衛隊が建造を進める掃海艦あわじ型よりも大きな機雷戦艦艇です。
掃海艇は将来更に高価に且つ希少となり得る。MCM機雷戦艦、これはオランダ海軍とベルギー海洋軍が12隻を調達する将来掃海艇ですが、遠くない将来に掃海艇という概念は根本から転換する事となるのかもしれません。MCM機雷戦艦の外見は艦砲と上部構造物に後部には飛行甲板と多数の無人機が搭載された特異な艦容となっており、一見して掃海艇というよりも外洋哨戒艦というべき艦容です。
外洋哨戒艦というか掃海艇としてはかなり大型に思えるMCM機雷戦艦。艦砲として40mm機関砲のようなものと幾つかのRWS遠隔操作銃搭が搭載されるとともにタレスNS-50多機能レーダーが搭載、これは巡航ミサイルや無人機飽和攻撃等を識別できる掃海艇用としては破格の高性能レーダーで、明らかに水上戦闘艦との連携を考慮しているもので、飛行甲板はV-200無人ヘリコプターを運用しレーザー機雷探知戦を行います。
MCM機雷戦艦はステルス性を考慮した船体を採用し全長81.4mと、自衛隊の掃海艇すがしま型全長の54mよりもかなり大きなものとなっています。そして小型無人掃海艇を左右両舷から展開可能であり、機雷処分弾薬を搭載した無人小型掃海艇と機雷探知用無人艇やレーザー機雷探知装置搭載無人機を搭載、管制するという水中無人機母艦というべきもの。
MCM機雷戦艦に搭載する無人小型掃海艇は複数の種類が想定されているもので、機雷探知装置一基を搭載した小型のもの、そして機雷処分弾薬を5発程度搭載した中型のものが搭載され、掃海隊単位で行う機雷掃討任務を一隻で対応するとともに、従来船体規模である掃海艇には搭載が難しかった機雷探知能力を持つ無人機を運用できるものです。その分、建造費は更に高騰するのですけれども。
機雷掃討艦。海上自衛隊OBの方や海上自衛隊の展示訓練をご覧になった事のある方々ですと掃海艇による掃海展示をご覧になられた事は幾度かあるでしょう、文字通り掃海艇から掃海器具を曳航し、また解説として、音響掃海器具で音響機雷を、磁気掃海装置で磁気機雷を、それぞれ掃海する、と説明されていた事を思い出されるでしょう。が、今は無い。
展示訓練そのものが2014年を最後に無くなってしまったではないか、と反論があるかもしれませんが、現在の主力である掃海艇すがしま型以降は、実は区分では掃海艇であっても実態としては機雷掃討艇となっており、むかしながらの掃海器具を曳航する掃海はほとんど行っていないのですね。機雷掃討艇というのは機雷戦装置により機雷を掃討するもの。
機雷掃討艇は掃海艇よりも前方に在る機雷を攻撃し破壊するもの、掃海艇は基本的に自分は機雷に探知されないように機雷上を通過し曳航する掃海器具が機雷を掃海する、というものでした。海上自衛隊の掃海艇は長らく木造を採用してきましたが、これは磁気機雷に探知されない様に磁性を帯びない素材として木材が用いられてきた、とは有名な話ですね。
うわじま型掃海艇までは後部甲板が多数の掃海器具を搭載出来るように広く採った設計となっており、文字通り掃海器具を曳航する展示訓練の展示は中々に興味深い展示だったと思い出します。すがしま型掃海艇からは上部構造物が非常に大型化した一方で掃海器具を搭載するべき後部甲板は狭くなっている事を思い出されるでしょう、すがしま型も掃海器具を曳航する事は出来るのですが、実は掃海器具の大半は平時、陸上に揚げられています。
すがしま型は掃海軽視なのか、と思われるかもしれませんが真逆です、機雷の性能が高性能化しすぎた今日、掃海器具を曳航した掃海艇が機雷の真上を航行した場合には機雷がコンピュータにより掃海艇と掃海器具を識別し、掃海艇の方を狙うように設定されているのですね。音響掃海装置や磁気掃海装置の特性を分析、その前方を進む僅かな推進音を狙う。
機雷は第二次世界大戦前こそ係維機雷という昔ながらの水中に錘とともに浮く突起に付いた爆発物が主流ですが、第二次大戦緒戦にドイツ軍が磁気機雷を開発、大戦末期には航空機雷として磁気機雷や音響機雷が日本への飢餓作戦へ多用されるようになりましたが、日本はこうした機雷を戦後掃海するべく掃海能力を高めていましたが、機雷も高性能化した。
MCM機雷戦艦、建造費は高いものとなりますが、機雷に接近せず航法から無人掃海艇と無人航空機を駆使するという発想は、言い換えれば搭載無人機を切り替える事で性能が陳腐化せず長期間運用できる事を意味し、長期的に運用できる事を意味します。そして一隻で対処出来る海域は当然広くなりますし、船体も大きい為、掃海任務の他に、センサーを駆使し、周辺国のフリゲイトに威圧されても押し返せるような哨戒艦のように運用も可能となります。
自衛隊の掃海艇、すがしま型掃海艇は木造船体を採用している事から遠くない将来に船体老朽化から除籍が必要となります。海上自衛隊は30FFMとして護衛艦くまの、を筆頭に機雷戦にも対応する新世代護衛艦を建造しているところですが、海上自衛隊は続いて艦型未発表の哨戒艦、という新区分の艦艇を建造します。これはMCM機雷戦艦に近いものでは成り得るのでは、とも考えているのですが。
哨戒艦は機雷戦装置を搭載しない掃海艇えのしま型派生となるのでは、とは過去に掲載したものです、有事の際には掃海艇として運用するという意味で。しかし、MCM機雷戦艦というものから将来の機雷戦というものを考えますと、特に哨戒艦は掃海隊群に配備されるということですので、案外、無人機母艦のような多機能艦に掃海任務も哨戒任務も、更には複合高速艇を多数搭載して水陸両用作戦も担わせる可能性はあるかもしれませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)