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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

参院選2022:防衛力は削減すべきなのか-立て直しが必要な防衛力,防衛予算を現在のままとする事の意味

2022-07-07 20:00:49 | 国際・政治
■防衛費増額の政治論争
 参院選の議論となる防衛費について。いまは厳しいのでこの一年だけ我慢して頑張ってくれ、こう云われて厳しい境遇に耐える方は多いでしょうが我慢を1990年代から続けていたらどうでしょうか。

 防衛予算、実のところ、小泉政権時代から、任務は増大するが予算と人員はそのまま、この姿勢が堅持された事が大きな歪を生んでいる為、任務を減らすか、予算と人員を増やすか、この二者一択となります。小泉政権時代から増大した任務は、弾道ミサイル防衛、邦人救出任務、国際平和維持活動支援任務、海賊対処任務、島嶼部防衛任務、などなど。

 小泉政権時代には財政再建が大きな課題でしたので、今ある防衛力をスクラップ&ビルドにより対応するという施策が採られていましたが、ミサイル防衛だけでも毎年千数百億を必要とする施策、邦人救出も行えと自衛隊法改正の上で要請されますと不可能とは言えませんが、その為の輸送機増強は認められず、いや逆に機数は大型化の代償に削減された。

 海賊対処任務も、常に護衛艦をアフリカ沖に派遣するという事は、その為の交代要員の要請と片道数週間の護衛艦の回航という施策を行いつつ、忘れてはならないのは護衛艦は冷戦時代よりも数を減らされている中、南西諸島での中国艦艇行動増大を背景に護衛艦の任務は増大するばかりで、募集広報に必要な展示訓練さえ行えない程に負担が掛かっている。

 島嶼部防衛も、沖縄返還当時の1972年に陸上自衛隊は舟艇中隊を含む空中機動旅団の新編を検討しましたが予算上断念されました、それを急に中国脅威が増大したと前から指摘した事を逆手に予算をそのままに島嶼部防衛として新編部隊を幾つも、全体の人員はそのままに創設するのですから、全国の師団はかつての混成団を強化した程度の人員まで減った。

 現状建て直しが必要なのです。予算は様々なしわ寄せを生み、気づけば観測ヘリコプターは全廃、目視の範囲内で飛行させる小型無人機は増えましたが、隣の都道府県まで飛行できる機体を隣の町内へ飛行させるのも難しい機体で置換える事は出来ません、いや、陸上自衛隊のヘリコプターで充分配備されているのはCH-47くらい、全般的に部隊の定数割れを定数削減で誤魔化している。

 防衛産業は小渕政権時代であれば、戦車は毎年数十輌で戦闘機は十数機にヘリコプターも全体で数十機、護衛艦と掃海艇と輸送艦に潜水艦も毎年合計で十隻にはいかないが、それに近い数が建造さえていたものが、戦車は要求の無い年度、戦闘機は若干機、ヘリコプターも若干機から精々十数機という状況になり、撤退が相次ぎ、稼働率に影響しています。

 民間企業で考えて欲しいのは、年単位で受注零の部署を十年単位で維持する事は現実なのか、ということ。甘えるなそれくらい当たり前だわたしの会社も何年も工員共々何もやっていない工場は山ほどある、という反論はまさかないでしょう。海外製装備を輸入する選択肢はあるのですが、費用は国産より相当割高なのか“防衛情報”記事をみれば分ります。

 任務を減らす、しかし難しい、邦人救出を警察庁に移管して警察庁がC-130輸送機と特別車両機動隊に軽戦車隊を新設する訳にも参りませんし、ミサイル防衛を断念してスイスの様に新築住宅に核シェルター建設の為の数千万円を義務化する訳にも参りません、島嶼部防衛も沖縄返還から例えばアメリカ占領に戻すなんていう戯言は考えもしないでしょう。

 東日本大震災で活躍したRF-4偵察機は全廃され後継機も無い、巨大災害は懸念されるもののヘリコプターの数は耐用年数限界で減るばかり、戦車も火砲もどんどん削減され、新設部隊が出来れば他の部隊から装甲車を引抜き、たらいまわしの常態、戦闘機は1980年採用の機種が数の上で主力ですし、本州の戦車は大半が1970年代の設計です、これを踏まえて、今の予算で大丈夫なのか、万一の際に国民が犠牲を強いられる問題として、考えて欲しい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ドネツク州スラビャンスクへロシア軍迫る,動き始めたロシア軍電子戦とウクライナ軍民生無人機作戦利用の限界

2022-07-07 07:00:53 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍の侵攻速度が高まっておりドネツ川沿いに要衝クラマトルスクへ向かっているようです、そしてその手前のスラビャンスクが現在の焦点だ。

 ウクライナの戦況は、一歩間違えれば北海道で具現化していた状況であり、年末にも確定される我が国の国家安全保障戦略とともに、自衛隊では削り続けている特科火砲や機甲戦力、そしてウクライナの現状で死活的に重要な防空制圧能力や対電子戦能力などの強化を、真剣に取り組む必要があります。そしてこの数日間、ウクライナでは顕著な動きがあった。

 ウクライナ軍のドローン映像発表頻度が低下している、ウクライナ東部戦線において現在、緒戦の頃に発表され士気を鼓舞する様な無人機からの画像が、皆無ではないのですが発表される頻度が低下しています、これはロシア軍の電子妨害装置による無人航空機運用環境の悪化が背景に在るのかもしれません。有人機の少ないウクライナ軍は困難に直面する。

 1L269クラスハ電子妨害装置、大型トラックに車載され広範囲の電子妨害を行う電子妨害装置を今回ロシア軍はウクライナに派遣しています、派遣している根拠は3月にキエフ北方において放棄された車輛がウクライナ軍に鹵獲された為なのですが、もっとも普及している民生型ドローン、対妨害構造でない民生無人機には致命的な影響を及ぼしかねません。

 ロシア軍はソ連時代から電子戦能力を重視してきました、2014年のドンバス紛争では電子攻撃を効果的に用いた為、何故緒戦でロシア軍が大規模電子妨害を加えなかったのかは未知数で、一説にはロシア軍の無線機不足から自軍の民生無線機利用の為とも、一説にはここまでウクライナ軍とウクライナ国民の激しい抵抗を予見できなかったともいわれますが。

 無論対策はあります、スイッチブレード無人機を始め米軍供与兵器は逆にこの種の電子妨害装置を攻撃する用途にも用いられます、ただ課題はウクライナ軍予備役兵始め、馴染みの薄いNATO規格装備よりも使い慣れた民生機を多用する場合があるといい、ロシア軍の電子戦本格化に対して、ウクライナ軍も次の手を講じる必要が、出ていると云えましょう。

 スラビャンスクへの砲撃激化、ウクライナ東部ドネツク州のスラビャンスク市長は5日、SNSを通じ、市街地へ大規模な砲撃が継続的に加えられているとし、避難勧告を発しました。ロシア軍のドネツク州攻撃が本格化したのです。スラビャンスクはドネツ川支流河畔にありドネツク州の州都クラマトルスクの北方に位置し、M03高速道路で結ばれています。

 セヴェロドネツクとリシチャンシクを陥落させルガンスク州全域を占領下に置いたロシア軍ですが両市の中間にはドネツ川があり、両市の占領はドネツ川渡河点の確保を意味すると共にドネツ川支流に沿ってスラビャンスクへ攻撃を強化している状況です。まだウクライナ軍は抵抗を続けていますが、ここからクラマトルスクまで地形障害は多くありません。

 ウクライナ政府は、必要な装備さえそろえば戦況の挽回は可能だとしていますが、M-109自走榴弾砲やMLRS多連装ロケットシステムの供与が表明されているものの、なかなか引き渡され訓練された要員と共に第一線へは届くに至っていません。そして砲撃とともにロシア軍は6日の時点でスラビャンスクから16kmの地点まで地上部隊を前進させています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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