■特報:世界の防衛,最新論点
今回はアメリカ軍の先端技術についていくつか紹介しましょう。最初にズムウォルト級駆逐艦についてなのですが個人的にこの艦だけは日本の全通飛行甲板型護衛艦の方が良かったように思う。
アメリカ国防省はズムウォルト級ミサイル駆逐艦のスタンダードSM-2AZ艦対空ミサイルシステム開発状況を発表しました。ズムウォルト級は当初ステルス性を重視した新型駆逐艦として建造されていましたが、建造中の安全保障環境変化を受け艦隊防空ミサイルの追加搭載を決定、ズムウォルト級駆逐艦はズムウォルト級ミサイル駆逐艦へ発展しました。
海軍海上システム司令部は2021年末に5億7831万ドルを投じてスタンダードSM-2各種269発の追加調達をレイセオンミサイルディフェンス社との間で契約しており、この内54発がズムウォルト級ミサイル駆逐艦用のSM-2AZ,また海上自衛隊など七か国海軍へ輸出するSM-2が215発となっています。SM-2とSM-2AZの調達費用は内部構造により異なる。
スタンダードSM-2AZ艦対空ミサイルはズムウォルト級ミサイル駆逐艦用に特化したスタンダードミサイルです、これは従来のスタンダードミサイルがアメリカ海軍ではタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦始めイージス艦等多数の艦艇で運用されている一方、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦にはイルミネータが搭載されておらず、終末誘導方式が異なる為です。
■AWACS-ACEWIRE技術
E-7という後継機が決定しましたE-3ですが先進技術を加えて進化は今後も続きます。
アメリカ空軍AWACS試験部隊は四月にE-3早期警戒管制機最新改良型のE-3G試験を実施しました。E-3Gの画期的な能力は作戦や運用プログラムを飛行中にアップデート可能という能力の追加で、試験においてAWACS試験部隊はテキサス州上空を飛行中の第605評価支援飛行隊E-3Gとフロリダ州エグリン空軍基地の空軍プログラム作戦隊が参加した。
E-3Gはテキサス州中部上空にて電子的脅威を受けたという想定のもとで衛星通信システムを通じ情報を伝送、空軍プログラム作戦隊は対抗プログラムを作成し、再度衛星通信システムを通じてエグリン空軍基地からのESM電子支援を受信し、作戦中に受けた新しい脅威を即時に地上部隊へ伝送し返送を空中でアップデートするという実験となっています。
ACEWIRE空中協同電子戦闘リプログラミング能力と称される能力はIPECインターネットプロトコル対応通信を航空戦闘においても普及、従来は情報を基地に持ち帰り対策を講じ機体へは基地列線整備の際に物理的に能力向上を行っていましたが、これを飛行中に実施、次段階としては友軍戦闘機へもAWACSを通じACEWIREを行う技術を構築します。
■HALEU第四世代原子炉
省エネ対策に原発というものが世界で注目されており事故対策や核廃棄物の問題を巡り環境学者との間で激論はあるようですが化石燃料価格の高騰もまた現実です。
アメリカ国防総省のSCO戦略先進研究室は野戦用5MW出力超小型移動式原子炉の試験結果を発表しました。これはアメリカが初めて開発した第四世代型商用原子炉でもあり、INLアイダホ国立研究所が組み立てを行いました。なお、世界初の第四世代型原子炉は2021年9月に中国が完成させたHTR-PMで、同様の技術は日本でも三菱重工が開発中です。
第四世代型原子炉としてINLアイダホ国立研究所が組み立てたものは、移動可能な小型のもので、コンテナに搭載し大型トレーラーにより移動させる事が可能であるほか、C-130戦術輸送機の貨物室にさえ積載する事も可能となっています。その出力は1MWから最大5MWで、持続性は最大出力で運転した場合でも最低3年間は出力を維持できるとのこと。
この原子炉はHALEU高調整低濃縮ウランを用いたTRISO三構造等方性核燃料方式を採用、現在同研究所のTREAT過渡反応炉試験施設において更なる試験を実施しています。アメリカ国防総省では電力消費だけで毎日1000万ガロンの化石燃料を用いており、将来的には複数の小型原子炉が化石燃料を用いた発電から脱却に寄与すると期待しているもようです。
■NGAD将来戦闘機価格高騰
NGAD将来戦闘機として開発が進められるF-22後継機に難しい課題が突き付けられそうです。
アメリカ空軍の将来戦闘機NGADは取得費用で一機当たり数億ドルに達する可能性が高い、これは4月27日にアメリカ空軍のフランクケンドール長官が臨席しての空軍委員会会議に際し、長官が発言したもの。NGADはアメリカ空軍が初めて開発している第六世代戦闘機であり、第五世代戦闘機であるF-22戦闘機の後継機として位置付けられています。
F-35戦闘機のアメリカ空軍調達費用は8000万ドルとなっているため、二倍以上であり三倍を超える高価な機体となる見通し。第六世代戦闘機についてフランクケンドール長官は将来航空戦闘を左右する画期的な戦闘機となる見通しを示しつつ、しかし充分な航空機を揃えるにはより安価な航空プラットフォームを同時並行で運用する必要もしめしました。
NGADについては、第六世代戦闘機の定義は曖昧であり、例えば第五世代戦闘機であるF-22やF-35は超音速巡航性能やステルス性等が当初は挙げられていたものの、更にACEWIRE空中協同電子戦闘リプログラミング能力のような新技術が追加されつつあります、イギリスは第六世代機で価格を低下させる構想で進めており、NGADの今後は関心事といえます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回はアメリカ軍の先端技術についていくつか紹介しましょう。最初にズムウォルト級駆逐艦についてなのですが個人的にこの艦だけは日本の全通飛行甲板型護衛艦の方が良かったように思う。
アメリカ国防省はズムウォルト級ミサイル駆逐艦のスタンダードSM-2AZ艦対空ミサイルシステム開発状況を発表しました。ズムウォルト級は当初ステルス性を重視した新型駆逐艦として建造されていましたが、建造中の安全保障環境変化を受け艦隊防空ミサイルの追加搭載を決定、ズムウォルト級駆逐艦はズムウォルト級ミサイル駆逐艦へ発展しました。
海軍海上システム司令部は2021年末に5億7831万ドルを投じてスタンダードSM-2各種269発の追加調達をレイセオンミサイルディフェンス社との間で契約しており、この内54発がズムウォルト級ミサイル駆逐艦用のSM-2AZ,また海上自衛隊など七か国海軍へ輸出するSM-2が215発となっています。SM-2とSM-2AZの調達費用は内部構造により異なる。
スタンダードSM-2AZ艦対空ミサイルはズムウォルト級ミサイル駆逐艦用に特化したスタンダードミサイルです、これは従来のスタンダードミサイルがアメリカ海軍ではタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦始めイージス艦等多数の艦艇で運用されている一方、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦にはイルミネータが搭載されておらず、終末誘導方式が異なる為です。
■AWACS-ACEWIRE技術
E-7という後継機が決定しましたE-3ですが先進技術を加えて進化は今後も続きます。
アメリカ空軍AWACS試験部隊は四月にE-3早期警戒管制機最新改良型のE-3G試験を実施しました。E-3Gの画期的な能力は作戦や運用プログラムを飛行中にアップデート可能という能力の追加で、試験においてAWACS試験部隊はテキサス州上空を飛行中の第605評価支援飛行隊E-3Gとフロリダ州エグリン空軍基地の空軍プログラム作戦隊が参加した。
E-3Gはテキサス州中部上空にて電子的脅威を受けたという想定のもとで衛星通信システムを通じ情報を伝送、空軍プログラム作戦隊は対抗プログラムを作成し、再度衛星通信システムを通じてエグリン空軍基地からのESM電子支援を受信し、作戦中に受けた新しい脅威を即時に地上部隊へ伝送し返送を空中でアップデートするという実験となっています。
ACEWIRE空中協同電子戦闘リプログラミング能力と称される能力はIPECインターネットプロトコル対応通信を航空戦闘においても普及、従来は情報を基地に持ち帰り対策を講じ機体へは基地列線整備の際に物理的に能力向上を行っていましたが、これを飛行中に実施、次段階としては友軍戦闘機へもAWACSを通じACEWIREを行う技術を構築します。
■HALEU第四世代原子炉
省エネ対策に原発というものが世界で注目されており事故対策や核廃棄物の問題を巡り環境学者との間で激論はあるようですが化石燃料価格の高騰もまた現実です。
アメリカ国防総省のSCO戦略先進研究室は野戦用5MW出力超小型移動式原子炉の試験結果を発表しました。これはアメリカが初めて開発した第四世代型商用原子炉でもあり、INLアイダホ国立研究所が組み立てを行いました。なお、世界初の第四世代型原子炉は2021年9月に中国が完成させたHTR-PMで、同様の技術は日本でも三菱重工が開発中です。
第四世代型原子炉としてINLアイダホ国立研究所が組み立てたものは、移動可能な小型のもので、コンテナに搭載し大型トレーラーにより移動させる事が可能であるほか、C-130戦術輸送機の貨物室にさえ積載する事も可能となっています。その出力は1MWから最大5MWで、持続性は最大出力で運転した場合でも最低3年間は出力を維持できるとのこと。
この原子炉はHALEU高調整低濃縮ウランを用いたTRISO三構造等方性核燃料方式を採用、現在同研究所のTREAT過渡反応炉試験施設において更なる試験を実施しています。アメリカ国防総省では電力消費だけで毎日1000万ガロンの化石燃料を用いており、将来的には複数の小型原子炉が化石燃料を用いた発電から脱却に寄与すると期待しているもようです。
■NGAD将来戦闘機価格高騰
NGAD将来戦闘機として開発が進められるF-22後継機に難しい課題が突き付けられそうです。
アメリカ空軍の将来戦闘機NGADは取得費用で一機当たり数億ドルに達する可能性が高い、これは4月27日にアメリカ空軍のフランクケンドール長官が臨席しての空軍委員会会議に際し、長官が発言したもの。NGADはアメリカ空軍が初めて開発している第六世代戦闘機であり、第五世代戦闘機であるF-22戦闘機の後継機として位置付けられています。
F-35戦闘機のアメリカ空軍調達費用は8000万ドルとなっているため、二倍以上であり三倍を超える高価な機体となる見通し。第六世代戦闘機についてフランクケンドール長官は将来航空戦闘を左右する画期的な戦闘機となる見通しを示しつつ、しかし充分な航空機を揃えるにはより安価な航空プラットフォームを同時並行で運用する必要もしめしました。
NGADについては、第六世代戦闘機の定義は曖昧であり、例えば第五世代戦闘機であるF-22やF-35は超音速巡航性能やステルス性等が当初は挙げられていたものの、更にACEWIRE空中協同電子戦闘リプログラミング能力のような新技術が追加されつつあります、イギリスは第六世代機で価格を低下させる構想で進めており、NGADの今後は関心事といえます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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