■特報:世界の防衛,最新論点
現代戦争はウクライナ戦争を見る限り昔と同じように火力により決まるという再認識が広まったところで、今回の防衛情報は砲兵に関する話題を紹介しましょう。

スイス軍は次期自走榴弾砲としてアーチャー装輪自走榴弾砲を最終候補に決定しました。スイス軍がアーチャーを評価した背景には従来型のアーチャーが採用したボルボ製トラックに代え改良型はドイツのMAN社製八輪トラックを採用、これにより最高速度は60km/hから95km/hへと大幅に向上し、高速道路網を駆使しての砲兵運用能力が強化されたため。

アーチャー自走榴弾砲はボフォース社製でスウェーデンが冷戦時代に開発した牽引式のFH-77榴弾砲を39口径から52口径としたもの、FH-77は三発の反動利用式自動装填装置を採用し3発の効力射に僅か13秒間という非常に速い射撃能力を有していますが、アーチャーでは砲弾自動装填装置を大型化し、射撃に際し砲員は車内から全てを操砲可能です。

ボフォース社は冷戦時代にバンドカノン自走榴弾砲という自動装填装置付自走砲を開発、こちらは7発砲弾クリップ2基を自動装填装置に装填し45秒間で14発を射撃するという驚異的な155mm榴弾砲で、アーチャーの自動装填装置にはこのバンドカノンの技術が応用されています。アーチャーは通常榴弾で40km、精密誘導砲弾では50km以上の射程です。
■カエサル量産体制
ウクライナでの戦闘に火砲の重要性が再認識されていますが安易に数を揃えられるわけではない点が問題となっている。

フランスのF2ニュースは6月15日、フランスは戦時経済体制に入っているとマクロン大統領が発言しています。これはウクライナに12門のカエサル自走榴弾砲を供与していますが、フランス軍に装備されているカエサルが供与されているため、フランス国内の防衛力が、これによりフランスの防衛力が低下する事が憂慮されているためという事情がある。

ブルジェの工場にてカエサル自走榴弾砲は量産されていますが、フランスでは火砲製造能力が限られており、特に砲身などは量産する際に時間を要している他、専門技師は数名しか居ません、30門分の砲身が工場には備蓄されているものの、フランス国内での砲身は年間100門が限界、フランス軍が装備するカエサルは64両に過ぎず、砲身の不足が問題です。

カエサル自走榴弾砲の他、フランスではウクライナが6月までの戦闘で喪失した戦車数は、既にフランス軍が保有するすべての戦車に匹敵すると計算されており、火砲の他に戦車等も不足している現実が示されています。このため、フランスは有事に備え国防産業を強化する際、民間工場を保証金と共に徴用するなど、選択肢が検討されているとのことです。
■トマホーク地上発射型
アメリカは太平洋の洗浄などを背景に島嶼部から運用可能な長距離装備量産を急いでいますが日本の島嶼部防衛を大型スケール化した印象だ。

アメリカ国防省は陸軍と海軍及び海兵隊向けにトマホーク地上発射装置の154基量産をレイセオン社との間で契約しました、これはタイフーンミッドレンジプログラムとして進められるもので、トランプ政権時代にINF中距離核戦力全廃条約からアメリカが離脱したことで、通常弾頭で500km以上という地上発射型巡航ミサイルの装備が可能となりました。

BGM-109Gトマホークを運用、タイフーンミッドレンジプログラムではMAN社製M-983A4トランスポータにトマホーク4発を装填した装甲発射器を搭載、またBOC中隊指揮車なども契約に含まれ、試作車は2023会計年度にも納入が開始されるとのこと。今回の154基の内訳は海軍が70基と海兵隊に54基及び陸軍に30基が配備される計画です。

トマホークミサイルは冷戦時代に開発されたもので、亜音速巡航ミサイルとなっており、性能の面では極超音速兵器の時代には一見古いと誤解し得るものですが、G型の射程は2700kmに達し、この射程を活かし敵防空部隊を迂回し戦略目標を叩く等の運用が可能です。なお、冷戦時代に開発された核弾頭型は全て廃棄が完了、その様子は公開されています。
■SM-6も地上発射へ
この話題は日本のイージスアショアにおけるブースター落下問題を解決できたのかもしれません。

アメリカ国防総省が進めるタイフーンミッドレンジプログラムでは、スタンダードSM-6艦対空ミサイルの地上発射型等が構想されている、アメリカ陸軍は5月に発表したスライド資料に掲載しました。このタイフーンミッドレンジプログラムは元々、トマホーク巡航ミサイル地上発射器を意味していましたが、ここに長射程艦対空ミサイル地上型を加える。

スタンダードSM-6艦対空ミサイルは最大射程370kmを誇り、アメリカ陸軍防空砲兵が運用しているペトリオットミサイルの射程100kmを大幅に上回るとともに、ペトリオットPAC-3-MSEを用いた場合に30kmに限られる弾道ミサイル迎撃能力について、SM-6はイージスミサイル防衛システムの終末段階防衛用に改良型が開発、射程も充分な水準という。

計画では発射装置4両と弾薬車、指揮通信車と指揮御支援車輛で中隊を構成、ダークイーグル極超音速ミサイルなど開発中の将来兵器もタイフーンミッドレンジプログラムでは運用可能となる構想がありますが、これは例えば、イージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムにおいて運用するスタンダードSM-3迎撃ミサイルも、搭載可能となるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
現代戦争はウクライナ戦争を見る限り昔と同じように火力により決まるという再認識が広まったところで、今回の防衛情報は砲兵に関する話題を紹介しましょう。

スイス軍は次期自走榴弾砲としてアーチャー装輪自走榴弾砲を最終候補に決定しました。スイス軍がアーチャーを評価した背景には従来型のアーチャーが採用したボルボ製トラックに代え改良型はドイツのMAN社製八輪トラックを採用、これにより最高速度は60km/hから95km/hへと大幅に向上し、高速道路網を駆使しての砲兵運用能力が強化されたため。

アーチャー自走榴弾砲はボフォース社製でスウェーデンが冷戦時代に開発した牽引式のFH-77榴弾砲を39口径から52口径としたもの、FH-77は三発の反動利用式自動装填装置を採用し3発の効力射に僅か13秒間という非常に速い射撃能力を有していますが、アーチャーでは砲弾自動装填装置を大型化し、射撃に際し砲員は車内から全てを操砲可能です。

ボフォース社は冷戦時代にバンドカノン自走榴弾砲という自動装填装置付自走砲を開発、こちらは7発砲弾クリップ2基を自動装填装置に装填し45秒間で14発を射撃するという驚異的な155mm榴弾砲で、アーチャーの自動装填装置にはこのバンドカノンの技術が応用されています。アーチャーは通常榴弾で40km、精密誘導砲弾では50km以上の射程です。
■カエサル量産体制
ウクライナでの戦闘に火砲の重要性が再認識されていますが安易に数を揃えられるわけではない点が問題となっている。

フランスのF2ニュースは6月15日、フランスは戦時経済体制に入っているとマクロン大統領が発言しています。これはウクライナに12門のカエサル自走榴弾砲を供与していますが、フランス軍に装備されているカエサルが供与されているため、フランス国内の防衛力が、これによりフランスの防衛力が低下する事が憂慮されているためという事情がある。

ブルジェの工場にてカエサル自走榴弾砲は量産されていますが、フランスでは火砲製造能力が限られており、特に砲身などは量産する際に時間を要している他、専門技師は数名しか居ません、30門分の砲身が工場には備蓄されているものの、フランス国内での砲身は年間100門が限界、フランス軍が装備するカエサルは64両に過ぎず、砲身の不足が問題です。

カエサル自走榴弾砲の他、フランスではウクライナが6月までの戦闘で喪失した戦車数は、既にフランス軍が保有するすべての戦車に匹敵すると計算されており、火砲の他に戦車等も不足している現実が示されています。このため、フランスは有事に備え国防産業を強化する際、民間工場を保証金と共に徴用するなど、選択肢が検討されているとのことです。
■トマホーク地上発射型
アメリカは太平洋の洗浄などを背景に島嶼部から運用可能な長距離装備量産を急いでいますが日本の島嶼部防衛を大型スケール化した印象だ。

アメリカ国防省は陸軍と海軍及び海兵隊向けにトマホーク地上発射装置の154基量産をレイセオン社との間で契約しました、これはタイフーンミッドレンジプログラムとして進められるもので、トランプ政権時代にINF中距離核戦力全廃条約からアメリカが離脱したことで、通常弾頭で500km以上という地上発射型巡航ミサイルの装備が可能となりました。

BGM-109Gトマホークを運用、タイフーンミッドレンジプログラムではMAN社製M-983A4トランスポータにトマホーク4発を装填した装甲発射器を搭載、またBOC中隊指揮車なども契約に含まれ、試作車は2023会計年度にも納入が開始されるとのこと。今回の154基の内訳は海軍が70基と海兵隊に54基及び陸軍に30基が配備される計画です。

トマホークミサイルは冷戦時代に開発されたもので、亜音速巡航ミサイルとなっており、性能の面では極超音速兵器の時代には一見古いと誤解し得るものですが、G型の射程は2700kmに達し、この射程を活かし敵防空部隊を迂回し戦略目標を叩く等の運用が可能です。なお、冷戦時代に開発された核弾頭型は全て廃棄が完了、その様子は公開されています。
■SM-6も地上発射へ
この話題は日本のイージスアショアにおけるブースター落下問題を解決できたのかもしれません。

アメリカ国防総省が進めるタイフーンミッドレンジプログラムでは、スタンダードSM-6艦対空ミサイルの地上発射型等が構想されている、アメリカ陸軍は5月に発表したスライド資料に掲載しました。このタイフーンミッドレンジプログラムは元々、トマホーク巡航ミサイル地上発射器を意味していましたが、ここに長射程艦対空ミサイル地上型を加える。

スタンダードSM-6艦対空ミサイルは最大射程370kmを誇り、アメリカ陸軍防空砲兵が運用しているペトリオットミサイルの射程100kmを大幅に上回るとともに、ペトリオットPAC-3-MSEを用いた場合に30kmに限られる弾道ミサイル迎撃能力について、SM-6はイージスミサイル防衛システムの終末段階防衛用に改良型が開発、射程も充分な水準という。

計画では発射装置4両と弾薬車、指揮通信車と指揮御支援車輛で中隊を構成、ダークイーグル極超音速ミサイルなど開発中の将来兵器もタイフーンミッドレンジプログラムでは運用可能となる構想がありますが、これは例えば、イージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムにおいて運用するスタンダードSM-3迎撃ミサイルも、搭載可能となるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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