北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F-35アメリカ州兵配備本格化とF-16用レギオンポッド,インドSu-30追加とAMCA先進戦闘機

2022-07-11 20:21:59 | インポート
■特報:世界の防衛,最新12論点
 今回は空軍関連の12の話題を通して各国情勢をみてみましょう。

 アメリカのウィスコンシン州兵空軍は州兵空軍として二番目のF-35運用部隊となります。ウィスコンシン州兵空軍の第115戦闘航空団はマディソン郡のトルアックスフィールド空軍州兵基地に展開していて、現在F-16戦闘機を運用していますが、2023年春にもF-16戦闘機をF-35戦闘機へ機種更新する計画となっています、これをバーモント州兵が支援する。

 バーモント州州兵空軍の第158戦闘航空団は州兵空軍として初のF-35戦闘機部隊となっていますが、今回のウィスコンシン州州兵空軍のF-35戦闘機への機種転換に際しマザースコードロンとして改編を支援することとなり、いわば州兵空軍が別の州兵空軍のF-35機種転換を行う事となります、これによりアメリカ州兵空軍へのF-35は大きく進む事となります。
■MDSレギオンポッド
 F-16については今後アメリカ空軍での位置づけがどうなるのでしょうか。

 アメリカ空軍はF-15戦闘機とF-16戦闘機を用いた多機能MDSシステムレギオンポッドの追尾試験を実施しました。これはIRST前方赤外線監視装置とデータリンクシステムを重ね、目標データを複数の戦闘機が装備するIRSTが、あたかも三角測量するように、目標位置を標定する事が可能です。IRSTの利点としては電波を発しない点が挙げられます。

 レギオンポッドは、戦闘機の他に無人機などに搭載できるもので、例えば従来のレーダーは早期警戒機などから強力な索敵能力を発揮する一方、超長距離からそのレーダー索敵は検知されるものですが、IRSTは見る側でありその心配はありません、ただ、自己完結システムである為、発見した空中目標情報を共有する技術が重要な課題となっていました。
■オランダのMQ-9
 戦闘機を配備する程ではない安全な海外領土でも必要な警戒監視能力という選択肢の帰結なのでしょうか。

 オランダ空軍はMQ-9Aリーパー無人攻撃機新型のblock5運用を開始しました、運用はオランダ領でカリブ海にあるキュラソー島に配備されています、オランダ空軍はMQ-9Aリーパー無人攻撃機について機体3機と地上管制装置2基を導入していますが最終的に機体4機と地上管制装置3基を導入する計画です。キュラソー島はベネズエラ60km沖にある。

 MQ-9Aリーパー無人攻撃機はアメリカのジェネラルアトミクス社製無人機で27時間の滞空時間を有しており、1746kgの各種電子装備や兵装を搭載可能、兵装搭載能力は1361kgとCOIN機並みに高い対地攻撃能力と共に限定的な空対空戦闘能力を有しています。このblock5はオランダ仕様となっていて、特色としては三重の遠隔操縦系統を有しています。
■パキスタンJ-10C配備
 JF-17ではなくJ-10Cは10と17では誤解しやすいものですがJ-10の方がハイスペックです。

 パキスタン空軍は3月11日に初のJ-10C戦闘機8機を中国から受領したとのこと。パキスタンへ輸出されたものは新鋭のJ-10CE型とされている。パキスタンでは中国との間でJF-17戦闘機を共同開発している、これは安価な第四世代戦闘機という、近年世界ではF-16戦闘機の高価格化等を受け空白となっていた領域へ売りむ機種として輸出に成功している。

 J-10C戦闘機は中国空軍が自国向けに開発したもので、性能では安価な輸出用のJF-17と比較し第4.5世代となっている、JF-17は胴体前部や主翼と垂直尾翼など58%と最終組立をパキスタンで実施し、中国は42%の構成部品を供給している。今回J-10Cがパキスタンへ配備される背景には、より先進的な戦闘機供与に両国防衛交流が進んだ証左といえよう。
■スカイホーク練習機
 スカイホーク違いではあるのですが軽量小型で一定程度の性能を持つA-4スカイホークは搭載ミサイルと外装センサーの発達で現代こそ新しい居場所がありそうです。

 フィリピン空軍はアメリカよりスカイホーク練習機4機を取得しました。スカイホーク練習機とはいっても有名なA-4スカイホーク攻撃機の複座型ではなくセスナ172S軽飛行機の練習機型で、4機の取得費用は220万ドルとなっています。フィリピン空軍は中国軍事脅威を受けての抜本的な国軍近代合計画を推進中であり、練習機はその基礎を固める装備だ。

 セスナ172S軽飛行機はセスナ社が1955年に初飛行させた高翼型軽飛行機セスナ172の改良型で、1998年に開発されました。その改良部分はライカミングIO-360-L2Aエンジンを採用し、前型よりも20hp強力な180hpに強化した点です。セスナ172そのものは既に4万4000機以上が量産されており、セスナ機を小型機の代名詞とした立役者の航空機です。
■中国最新WS-15エンジン
 WS-15エンジンは中国が遅れていたエンジン分野でも建国時代から連綿と広げた基礎分野に依拠した成果というところでしょう。

 中国のステルス機として知られるJ-20戦闘機用は新型WS-15エンジンによる評価試験で良好な成績を収めたと中国CCTVが報じています。J-20戦闘機は部分的に量産を開始すると共に開発を並行して進めており、初期の製造航空機を実戦部隊における技術実証機として運用しつつ、対航空機戦闘など全ての性能を盛り込む完成型の開発をすすめています。

 WS-15エンジンは従来型のWS-10エンジンと比較した場合、エンジン推力は15tから18tへ大幅に強化され、特にJ-20戦闘機は双発である為に推力は30tから36tへと強化されるとともに超音速巡航能力と機体機動性の向上が可能になるといい、中国は戦闘機用エンジンの分野でさらに注力し、世界を先行するアメリカとの技術格差を更に短縮したいもよう。

 中国ではWS-15エンジンの性能に満足する事無くさらに強力な次世代仕様というWS-20エンジンを開発中とされ、WS-15のように戦闘機に搭載される段階までは足していませんが、現時点でエンジン試作機は完成、Y-20輸送機に搭載し空中試験を実施しています。J-20の難点は大型過ぎて空母に搭載出来ない点であり、単発の強力なエンジン開発も課題です。
■インド,ロシアからSu-30
 ロシアのウクライナ侵攻を受けての各国からの厳しい視線はりますがいきなり戦闘機の供給源を失ったまま中国との緊張関係には対応できません。

 インド軍はロシア軍ウクライナ侵攻後初のスホーイSu-30戦闘機追加発注を行います。増加発注は12機が予定されており、完全退役方針が確定した旧式のMiG-21戦闘機を置換える方針です。この12機はヒンディスタン航空公社によりライセンス生産される事となっており、システムや電子系統の一部はインド製、電子線装置の一部はイスラエル製という。

 Su-30MKIと云うインド軍仕様、ロシアからの防衛装備導入については、ロシア経済制裁を主導する欧州やアメリカから懸念の視線が送られています、しかし、インド軍はフランスのラファール戦闘機導入や国産のテジャス戦闘機製造を進める一方、ラファールはライセンス生産や取得費用面、テジャスは性能面でSu-30に及ばず、計画通り追加するもよう。
■KF-21戦闘機用レーダー
 韓国製装備はお値段お手頃性能上々という装備が増えていますので案外と安価な新世代戦闘機を求める諸国に評価されるのでしょう。

 韓国が開発しているKF-21ボラメ戦闘機は国産AESAレーダーの試験を開始しました、これは韓国の聯合ニュースが報じたもので3月中に国内性能試験を開始するとしました。韓国国防省はこの開発が成功するならば韓国は戦闘機搭載用世界12大AESAレーダー開発大国に入るとしており、評価試験は2023年4月までの評価試験を計画しています。

 韓国独自のAESAレーダーはハンワシステムズ社が海外企業の協力を受け開発したものであり、AESAレーダーの試験はアメリカ製ボーイング737型旅客機に搭載し航空機一体運用も構想しており、評価項目は62項目、飛行試験は50回を計画しています。KF-21ボラメ戦闘機はKAI韓国航空宇宙産業社が開発、共同開発としてインドネシアも参加している。
■インドAMCA先進戦闘機
 航空機設計のデジタル化によりそれ程開発の敷居は高くなったために原型の開発期間の長さを考えれば野心的な開発です。

 インドのHAL公社は最新のAMCA先進中型戦闘機の開発を開始しました、これはインド空軍及びインド海軍が運用する第五世代戦闘機と第六世代戦闘機を目指すものでAMCA-Mark1には第五世代戦闘機として先行して開発生産を行い、並行してAMCA-Mark2を開発、インド独自構想での段階発展型航空機を目指しているとのこと。

 AMCA先進中型戦闘機は大まかには、ステルス機である事、双発戦闘機である事を期し、制空戦闘機としての任務や対地攻撃及び防空制圧機と電子戦航空機としての任務を担う。難しいのは、インドの防衛装備開発は長期化する傾向が在り、現時点では先ずAMCA-Mark1を開発しますが、その試作機など完成目処等は具体的に示されていません。
■南アフリカムワリ攻撃機
 無人機に滞空時間で有人機が対抗するには休息と手洗い等の問題があります。

 南アフリカのパラマウントグループは対無人機用ムワリ空中プラットフォームを開発しています。これは近年地上戦闘に脅威となる中高度領域の無人機に滞空時間の長いアラック小型航空機を転用して対処する試みであり、アラックは550mの場外滑走路で発着可能、2名が搭乗し最高速度504km/hを発揮、滞空時間は最大10時間に達する小型機です。

 アラックは小型ターボプロップ機ですが射程4kmの多用途ミサイルや800m以内の無人機を狙う機関砲ポッドが搭載可能とのこと。ただ近年問題になっているのは沿空域と呼ばれる高度100m前後の低空域を小型無人機が運用される事であり、この種の有人機には小型無人機を判別するセンサーを搭載できません、更に中高度では対空火器の標的となります。
■ドイツC-130J配備開始
 自衛隊のC-130HもC-2輸送機で置換えてC-2輸送機の量産数を増やすのか補給体系など難しい事は考えずC-130Jを導入するかをそろそろ考えねばならない。

 ドイツ空軍は初のC-130J輸送機を受領しました。これは2018年に発注した6機のC-130J輸送機初号機にあたり、2月19日にフランスのノルマンディー地方に置かれる独仏統合空輸センターへ到着したとの事です。ドイツとフランスはエアバスA-400M輸送機を運用していますが、C-130輸送機も運用しており戦術輸送機と戦域輸送機の区分と云える。

 ノルマンディーのエブルー基地に置かれている独仏統合空輸センターではドイツとフランス両国がC-130J輸送機5機とKC-130J空中給油輸送機5機の10機から成る国際輸送部隊を編成するとのこと。前述のA-400Mほど多数は搭載出来ませんが、各国空輸装備にはC-130を念頭に規格化されているものものあり、C-130Jは改良型を含め生産がつづきます。
■ハンガリーL-39NG取得
 L-39は007にも出演した見た目の優美な練習機ですが改良型開発と共に細々と生産されている。

 ハンガリー空軍はチェコのアエロヴォドホディ社よりL-39NG高等練習機12機を取得する。この計画は2021年からハンガリーが運用するL-39後継機として調整が進められ、このほどガスパルマロス国防大臣が正式に契約に署名した。ハンガリー空軍では8機を練習機、4機を偵察機として運用する計画で、初号機は2024年にも納入される見通しである。

 L-39NGは冷戦時代の1968年に開発されたL-39アルバトロスの改良型で、特にアエロヴォドホディ社は冷戦崩壊後にJPATSアメリカ海空軍統合基本航空機訓練システム計画へ応募するべくL-139練習機やアメリカ製エンジンを搭載したL-159ALCA練習機を開発しており、この経験を活かして2015年に完成した。NGとなネクストジェネレーションを示す。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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岸田総理首相官邸帰京へ三時間-安倍元総理暗殺事件,臨時閣議と閣僚移動に必要なヘリコプターの問題

2022-07-11 07:00:28 | 国際・政治
■臨時情報-安倍元総理暗殺
 臨時閣議を行う為の要人輸送ヘリコプターという視点の問題です。

 ブラックホークかオスプレイか。安倍元総理大臣暗殺事件が発生した際に岸田総理大臣は首相官邸へ戻るまでに三時間を要しました、当時は福島県で選挙遊説中、福島空港から羽田空港まで最速の旅客機を用い、そして羽田空港から首相官邸までは陸上自衛隊のUH-1ヘリコプターにより移動しました。問題はこの総理の移動へ三時間という時間の空白です。

 首相官邸まで福島県から、当初はヘリコプターにより直接移動する事を検討したようですが、結局旅客機を用いています。ヘリコプター、福島県から東京まで一直線で飛行するには福島県警のヘリコプターでは航続距離に限界があり、航続距離の長いヘリコプターは千葉県木更津駐屯地のUH-60JAやCH-47,もしくは要人輸送用のEC-225しかありません。

 三時間の政治空白、木更津駐屯地の他に、新潟分屯基地のUH-60J救難ヘリコプター、宮城県の霞目駐屯地のUH-1Jは航続距離で福島にて給油すれば一応飛行は可能、群馬県の北宇都宮駐屯地のUH-60JA多用途ヘリコプター、首相が遊説していた福島県は、ヘリコプターの回送時間を踏まえるとかなり難しい立地に在った事が、旅客機併用に繋がったもよう。

 ここで考えなければならないのは、今回は福島県から東京という移動距離でしたが、要人輸送ヘリコプターの運用体制というものは現在のままで充分なのでしょうか、具体的には運用機数も総理の移動には十分ではなかった事は自明ですし、なにより日本列島は広い、日本列島を欧州地図に遷移させれば北は北欧で南はアフリカ大陸に達する長大さなのです。

 閣僚も、臨時閣議を開くには内閣法で閣僚全員の出席、不可能な場合は事務次官の代理出席が必要となります、今回の安倍元総理大臣銃撃事件では参院選挙中とあり、閣僚の多くが全国に遊説へ移動していた為、首相官邸へ戻るまで時間を要しました。民主主義国家である為に手続は重要です、すると首相と共に閣僚の移動というものも課題となるのです。

 V-22オスプレイ、非常に高価な航空機であり、陸上自衛隊は安倍政権時代に17機を導入した際、CH-47に換算すると34機、UH-60Jブラックホークに換算すると55機分という高い航空機である事は、わたしも問題点だとは指摘したのですが、しかし、今回のような状況を考えると、総務省予算を用いてでも要人が素早く長距離を移動する為には必要と思う。

 V-22ならば首相官邸に直接着陸できる、そして巡航速度もジェット旅客機よりは遅いがターボプロップ機に準じる程度には早い。もちろん、全国にUH-60JAをもう少し多用途機として配備し、配備密度を高めるという選択肢もあります、なんとなれ、国の指導者や閣僚が素早く移動する為のヘリコプターや航空機については、もう少し考えなければならない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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