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台湾軍が国籍不明無人機撃墜-金門県獅嶼島上空,中国外務省は中国側関与を否定-難しい平時における無人機対処

2022-09-02 07:01:44 | 国際・政治
■臨時情報-台湾海峡情勢
 台湾上空に侵入を繰り返した小型無人機を台湾が9月1日、撃墜しました。台湾上空ですが台湾本島ではなく離島上空であり無人機は国籍不明で軍用か民間人の悪戯かも不明だ。

 金門県の獅嶼島上空に所属不明の無人航空機が繰り返し進入、同島を警備する中華民国台湾軍は繰り返し警告を行いましたが、数日間に渡り不審な飛行を繰り返し、とうとう撃墜という強硬手段が執られました。所属不明の無人航空機であり、中国軍の関与有無などは定かではありませんが、同島は中国本土厦門から4kmの距離にあり、飛行圏内にあります。

 獅嶼島上空の無人機、台湾軍はその様子を撮影していますが、中国国内SNSではその無人機から撮影した画像が投稿されています。その映像には警備哨の十数m付近まで接近する内容が含まれ、余りに接近した為に警備哨の兵士が投石する様子なども含まれていました。無人機の侵入は十日間以上に渡り、台北では厳しい措置を警告、遂に実施されたかたち。

 中国当局は現在のところ対抗措置などの示唆には至っていません。中国外務省は9月1日、無人機撃墜については中国当局が感知するものではない、としていますが、同時に無人機撃墜を直接批判するものではありませんが、台湾当局についてこの領空侵犯を口実として台湾側からの緊張増大を行わないよう遠まわしに警告しています。ただ、頭の痛い問題だ。

 無人航空機に対する対領空侵犯措置は、長年課題とされてきました。空中で鹵獲する方法も確立しておらず、放置か撃墜か、どちらかしかありません。他方でこの問題は日本も無関係ではありません、無人航空機による領空侵犯事案は既に発生している為です。そして小型無人機であっても操船インフラや電子機材等を狙う攻撃に転用する事は可能という。

 スウォーム攻撃、スウォームとはアメリカの昆虫パニック映画タイトルにも用いられているものですが蜂雲、大量の蜂の群れを示す用語ですが、一つ一つ攻撃力は小さくとも数百数千の無人機を同時運用する事で、なにしろ手榴弾を運べるクワッドドローンはタングステン製の20mm機関砲弾の半額以下、威力は小さくとも弾幕の様に飛ばし威力を高める。

 電子妨害という選択肢が無人機対策の王道と成り得ます、しかしこれも金門県では難しい、無人機の通信帯域を遮断する電子妨害を行えば、対岸にある中国本土の都市部を電子妨害する事となり、これこそ電子攻撃、台湾から中国への攻撃とみなされかねません。放置する事も電子妨害で無力化する事も出来ない為に撃墜する、これしか選択肢がなかった。

 継続追跡権を行使できるならば、領空侵犯した無人航空機を軍用無人機により追跡する事は可能でしょう、例えば領海侵犯事案等については侵犯船が領海を出た後でも継続追跡する権利が国際慣習法として認められています。これが無人機に対しても適用出来るならば、誰が発進させたかを中国本土まで追跡出来る事になりますが、適用は事実上難しいのだ。

 ただ、中国外務省が発表した通りに中国当局が関与していないのであれば、中国政府は取り締まるべきで、これが許されるならば第三者が中国国内に対して同様の無人機浸透を行ったとしても批判できない事となります。逆にこれが偽旗作戦等に悪用される懸念もあり、無人機の不審な行動に対して、どのように対応するのか、日本も検討せねばなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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