■角川映画,深作欣二監督作品
COVID-19流行と共に懐かしい本作が注目を集めているようで、深い内容の本作を流行禍に便乗して撫でるのは余りに残念と思い深読みの話題を綴ってみました。
復活の日、角川映画が1981年に制作しましたSF巨編です。原作は1963年に発表された日本SF界の巨匠小松左京の著書であり、アジア風邪や香港風邪の影響下で発表、日本沈没や首都消失とともに膨大な代表作の中でも異彩を放っています。そして復活の日、その主題が新型ウィルスによる人類文明の終焉と復活への端緒という、壮大なものなのですね。
2011年東日本大震災に際し同じ著者の代表作“日本沈没”に注目が集まった事を一つ思い出しました、あの作品は1973年版映画やテレビドラマ版も素晴らしいのですが、最後に護衛艦はるな登場、日本沈没第二部では護衛艦くらま舞台、そして災害描写以上に日本の文明観を問う、実は非常に深い原作を映画として纏め、一種原作への入り口としていました。
潜水艦の映画だ。実はこの作品、原作にも原子力潜水艦が重要な役割を果たしますし、映画では原子力潜水艦は流石に撮影協力が得られなかったようですが、チリ海軍の潜水艦が撮影に協力、映画“潜水艦イ57降伏せず”程ではありませんが潜水艦も描かれている邦画屈指の潜水艦映画、といえるかもしれません。これも映画化への力の入れよう、とおもう。
深作欣二監督作品。映画は仁義なき戦い始め任侠映画で世界的な知名度と共に映画エイリアンシリーズに影響及ぼしたガンマー第3号-宇宙大作戦や日本版スターウォーズというべき宇宙からのメッセージ、日米合作戦争映画トラ・トラ・トラというよな様々な作品で名を残した深作監督の作品で、製作費は30億円規模、邦画としては超大作予算が組まれた。
草刈正雄主演。南極昭和基地に渡瀬恒彦と夏木勲と千葉真一というアクション映画並みの陣容とともに多岐川裕美と緒形拳を加え、更にアメリカ政府首脳にグレン-フォードとロバート-ヴォーン、原子力潜水艦艦長にチャック-コナーズ、マクマード基地越冬隊長に困ったときはいつものジョージ-ケネディ、本作のキーマンにボー-スヴェンソン、中々の顔ぶれ。
小松左京の作品、日本沈没や首都消失にエスパイ、映画化されたものは数多く、さよならジュピターのように映画は振るわなかったが後に発行したノベライズ版がベストセラーとなった事例も多く、しかしその世界観は壮大であり世界観まで包括しての映画化が難しい、故に首都消失や日本沈没はたんなるパニック映画に終わった印象がないでもありません。
原作を敢えて読まれてみては、世界観が広がりますよ、ということで読了前、敢えての少しネタバレを挟みます。復活の日、ベストセラーでありまして、私も初めて読破したのは中学生の頃でしょうか、なにか価値観の形成に大きな影響があった作品です。そしてこの作品には、小松左京氏の旧制中学時代の価値観が反映されているようにもおもえるのです。
新型インフルエンザ、これに偽装した未知のウィルスによる人類滅亡の危機を示した本作は、現在流行しつつあるCOVID-19新型コロナウィルス肺炎の中国での流行が本格化した頃からAMAZONプライムビデオなどの配信において、同じく感染症の脅威を描いたアウトブレイクとともに、こちらは空気感染するエボラ新型が相手でしたが、注目を集めた。
アウトブレイクとともに、そのうち細菌列島のような作品にも注目が集まるのでしょうけれども、改めてAMAZONプライムビデオにて視聴されたかたには、より深い原作世界も触れていただければ、としまして今回特集としました。復活の日、日本でのベストセラー化と一時はアメリカへ映画化権利が検討されるほどに1960年代には話題となりました。
南極の観測基地で越冬中であった一万名程度の観測隊員と米ソの原子力潜水艦二隻を残して世界は破滅する、衝撃的な展開で、角川映画はこの超大作の映画化にあたって世界初という南極ロケを敢行するなど、その制作にも注目が集まるものでした。しかしこの作品、単なるアウトブレイク、爆発的感染やパンデミー、世界的流行禍が舞台ではありません。
チベット風邪とよばれる新型インフルエンザが春先頃から爆発的感染をすすめ、しかも同時期に鶏など鳥類にも致命的な伝染病が蔓延、インフルエンザワクチンを有精卵から培養していた世界のワクチン産業は大打撃を受け、阪大が細菌分離に成功するものの、世界中で有効なワクチン開発が遅々として進まず、致死率は徐々に30%へと不気味に上ってゆく。
インフルエンザでは他の天然痘などの様な法定伝染病のような厳しい防疫手段を世界中が執ることが出来ず、今風にいうならば、正しく恐れて、いるうちに病院は機能不随に陥り、しかもインフルエンザとともに突如心筋梗塞を引き起こすポックリ病と呼ばれる正体不明の伝染病が伝播し始める、こうして学校休校から始まり社会は徐々に蝕まれて行きます。
人との接触感染か飛沫感染か、とにかく町中ではマスクが溢れ、せき込む声が満員電車の中で聞こえますと人々は顔をしかめ、葛根湯がよいとか卵酒に限るとか、新興宗教にホメオパシーというべき疑似科学の怪しい対処法が溢れる中でも現実としての感染者数が増えてゆき、たかが風邪じゃないか、という楽観論が手遅れを防ぐ端緒を塞いでゆきました。
ソ連首相が風邪で死亡、日常的なインフルエンザへの不安が一つ、新聞の社会欄から国際欄に飛び出る一つの転機としまして、この事件が登場するのですが、この転機もアメリカ大統領が、折角進めていた米ソ核軍縮交渉が頓挫してしまった、こう嘆きまして、インフルエンザよりも核戦争の脅威払拭の方が重視されている風潮が示されるに留まりました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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COVID-19流行と共に懐かしい本作が注目を集めているようで、深い内容の本作を流行禍に便乗して撫でるのは余りに残念と思い深読みの話題を綴ってみました。
復活の日、角川映画が1981年に制作しましたSF巨編です。原作は1963年に発表された日本SF界の巨匠小松左京の著書であり、アジア風邪や香港風邪の影響下で発表、日本沈没や首都消失とともに膨大な代表作の中でも異彩を放っています。そして復活の日、その主題が新型ウィルスによる人類文明の終焉と復活への端緒という、壮大なものなのですね。
2011年東日本大震災に際し同じ著者の代表作“日本沈没”に注目が集まった事を一つ思い出しました、あの作品は1973年版映画やテレビドラマ版も素晴らしいのですが、最後に護衛艦はるな登場、日本沈没第二部では護衛艦くらま舞台、そして災害描写以上に日本の文明観を問う、実は非常に深い原作を映画として纏め、一種原作への入り口としていました。
潜水艦の映画だ。実はこの作品、原作にも原子力潜水艦が重要な役割を果たしますし、映画では原子力潜水艦は流石に撮影協力が得られなかったようですが、チリ海軍の潜水艦が撮影に協力、映画“潜水艦イ57降伏せず”程ではありませんが潜水艦も描かれている邦画屈指の潜水艦映画、といえるかもしれません。これも映画化への力の入れよう、とおもう。
深作欣二監督作品。映画は仁義なき戦い始め任侠映画で世界的な知名度と共に映画エイリアンシリーズに影響及ぼしたガンマー第3号-宇宙大作戦や日本版スターウォーズというべき宇宙からのメッセージ、日米合作戦争映画トラ・トラ・トラというよな様々な作品で名を残した深作監督の作品で、製作費は30億円規模、邦画としては超大作予算が組まれた。
草刈正雄主演。南極昭和基地に渡瀬恒彦と夏木勲と千葉真一というアクション映画並みの陣容とともに多岐川裕美と緒形拳を加え、更にアメリカ政府首脳にグレン-フォードとロバート-ヴォーン、原子力潜水艦艦長にチャック-コナーズ、マクマード基地越冬隊長に困ったときはいつものジョージ-ケネディ、本作のキーマンにボー-スヴェンソン、中々の顔ぶれ。
小松左京の作品、日本沈没や首都消失にエスパイ、映画化されたものは数多く、さよならジュピターのように映画は振るわなかったが後に発行したノベライズ版がベストセラーとなった事例も多く、しかしその世界観は壮大であり世界観まで包括しての映画化が難しい、故に首都消失や日本沈没はたんなるパニック映画に終わった印象がないでもありません。
原作を敢えて読まれてみては、世界観が広がりますよ、ということで読了前、敢えての少しネタバレを挟みます。復活の日、ベストセラーでありまして、私も初めて読破したのは中学生の頃でしょうか、なにか価値観の形成に大きな影響があった作品です。そしてこの作品には、小松左京氏の旧制中学時代の価値観が反映されているようにもおもえるのです。
新型インフルエンザ、これに偽装した未知のウィルスによる人類滅亡の危機を示した本作は、現在流行しつつあるCOVID-19新型コロナウィルス肺炎の中国での流行が本格化した頃からAMAZONプライムビデオなどの配信において、同じく感染症の脅威を描いたアウトブレイクとともに、こちらは空気感染するエボラ新型が相手でしたが、注目を集めた。
アウトブレイクとともに、そのうち細菌列島のような作品にも注目が集まるのでしょうけれども、改めてAMAZONプライムビデオにて視聴されたかたには、より深い原作世界も触れていただければ、としまして今回特集としました。復活の日、日本でのベストセラー化と一時はアメリカへ映画化権利が検討されるほどに1960年代には話題となりました。
南極の観測基地で越冬中であった一万名程度の観測隊員と米ソの原子力潜水艦二隻を残して世界は破滅する、衝撃的な展開で、角川映画はこの超大作の映画化にあたって世界初という南極ロケを敢行するなど、その制作にも注目が集まるものでした。しかしこの作品、単なるアウトブレイク、爆発的感染やパンデミー、世界的流行禍が舞台ではありません。
チベット風邪とよばれる新型インフルエンザが春先頃から爆発的感染をすすめ、しかも同時期に鶏など鳥類にも致命的な伝染病が蔓延、インフルエンザワクチンを有精卵から培養していた世界のワクチン産業は大打撃を受け、阪大が細菌分離に成功するものの、世界中で有効なワクチン開発が遅々として進まず、致死率は徐々に30%へと不気味に上ってゆく。
インフルエンザでは他の天然痘などの様な法定伝染病のような厳しい防疫手段を世界中が執ることが出来ず、今風にいうならば、正しく恐れて、いるうちに病院は機能不随に陥り、しかもインフルエンザとともに突如心筋梗塞を引き起こすポックリ病と呼ばれる正体不明の伝染病が伝播し始める、こうして学校休校から始まり社会は徐々に蝕まれて行きます。
人との接触感染か飛沫感染か、とにかく町中ではマスクが溢れ、せき込む声が満員電車の中で聞こえますと人々は顔をしかめ、葛根湯がよいとか卵酒に限るとか、新興宗教にホメオパシーというべき疑似科学の怪しい対処法が溢れる中でも現実としての感染者数が増えてゆき、たかが風邪じゃないか、という楽観論が手遅れを防ぐ端緒を塞いでゆきました。
ソ連首相が風邪で死亡、日常的なインフルエンザへの不安が一つ、新聞の社会欄から国際欄に飛び出る一つの転機としまして、この事件が登場するのですが、この転機もアメリカ大統領が、折角進めていた米ソ核軍縮交渉が頓挫してしまった、こう嘆きまして、インフルエンザよりも核戦争の脅威払拭の方が重視されている風潮が示されるに留まりました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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