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【京都幕間旅情】本法寺,町衆支持は暴虐くじ引き将軍足利義教立ち向かった開基日親の信念

2021-10-27 20:00:18 | 写真
■本法寺-その夜の伽藍を巡る
 若き平清盛を市川雷蔵が演じた溝口健二監督の"新平家物語"が撮影された寺院です。しかし歴史を辿れば遥かに波濤を超えた寺院だ。

 本法寺。京都市上京区小川通寺之内上る本法寺前町、裏千家茶道資料館に隣接する、しかし堀川通りから一本はいった立地にありますので、気づかない人は気づかず通り過ぎる寺院です。しかしここは不思議だ、驚くような庭園と仏教美術とを、街中に湛えています。

 堀川通り沿いのこの寺院は、開基日親と室町将軍足利義教との軋轢と戦い、ともすれば一宗教人には勝ち目がないような歴史を経て今に至る寺院です。いや実は度々の移転を経ているのですが、応仁の乱の更に前の時代、二人を前に歴史を紐解くと寺院も違って見える。

 足利義教、くじびき将軍として知られる室町幕府第六代将軍です。本法寺開山と強い結びつきがあります、が、こう書きますと手厚く保護したという数多京都の寺院の歴史を思い浮かべるかもしれませんが、実際は真逆でして、圧政に対抗した信仰というものがある。

 日親は足利義教の治世に真っ向から反対したことで弾圧を受け、これが逆に同じように弾圧を受けていた庶民から公家に武士、そして文化人からも支持を集めたという。ここまで弾圧を受けていましたが、これは室町幕府の過渡的という治世と混迷が背景にありました。

 くじびき将軍と表現しますと牧歌的な響きですが、そんなに甘いものではなく第五代将軍足利義量が後継者を指名せず、その指名を頑なに拒み死去したために起きた混乱の代償でした。足利義量は外交を除き名将軍とされた足利義満の孫、父は義満の実子という系譜だ。

 石清水八幡宮で行われたくじ引き、これは先代将軍が後継者を指名しなかったが、三代将軍足利義満には四人の子が居り、一人足利義持は四代将軍となりましたが、残る三人の実子から、決められないのでくじ引きで将軍を決めよう、というもう無茶苦茶なものでした。

 三宝院満済と幕府管領畠山満家とが苦心の結果にくじ引きを思い立ったのですが、このとき足利義満三人の子は全員出家していました、仏門にあるものを誰が将軍に相応しいか神に問うという。こうして足利義教は将軍となるのですね、自負心が沸く、神に選ばれたと。

 神に選ばれた将軍、足利義教は父義満の親中外交の復活を試みますが、足利義満の中国外交は日本の権威よりも実利を優先した一種国辱的な、平安朝と鎌倉時代の頃には避けていた手法を用いたため反対も多く、先ず反対派を粛正しました。これが圧政の最初ですね。

 徳政。しかし義教は暴政を好んだわけではなく政治の理想論があり、実際金閣寺に挙げられるように義満の実現した豊かな国家造営を目指したものですので暴君ではなかったのです、故に徳政も発布しました、ただ、これは借金帳消しの徳政令ではなく、親政を示す。

 御前沙汰、義教の徳政は将軍トップダウンの裁判や評定という方式で将軍の徳をもって治世と為す理想でした。しかし当たり前ですが、将軍一人に集中させると負担も集中するために一つ一つ審理がぞんざいとなるのとは否めず、そこで神に選ばれた将軍は考えました。

 湯起請。義教が重宝したのは神に神託を求める湯起請という裁判の解決法でした、簡単にいえば原告と被告の前に小石を入れた煮え立つ鉄鍋や土鍋を用意し、素手で小石を掴ませる。火傷の少ない方が神仏の加護があり真実を述べている、という。弥生時代からある。

 商人同士の最後の結審に希に、結論がでないときには湯起請は鎌倉時代にも記録はあるのですが、義教は商人庶民問わず武家に公家まで湯起請が多用します、こうした率直な権力者故に暴政を厭わず、ここに本法寺の日親は、正面から恐れず法話説き庶民に慕われます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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