■ミサイル巡洋艦モスクワ
美しい艦だった。ロシア海軍の満載排水量11300tという太平洋艦隊旗艦を実際に目にしたときにはある種の新鮮な衝撃を受けました。
2011年にロシア太平洋艦隊旗艦ワリャーグが京都の舞鶴基地を親善訪問、空母攻撃に特化した巨大なP-1000対艦ミサイルを左右両舷に並べ、尖った艦首から機能的に配置された巡洋艦は、日米のものとは別の視点から戦闘に特化したソ連時代の設計、これはスラヴァ級ミサイル巡洋艦といい、同型艦に一番艦モスクワ、三番艦マーシャルウスチーノフがいる。
ウクライナ海軍の反撃です、黒海艦隊旗艦モスクワがミサイルにより攻撃を受け炎上したとウクライナが発表しました。攻撃にはネプチューン対艦ミサイル、ソ連時代にハープーンスキーと称されたKh-35対艦ミサイルのウクライナ仕様地対艦ミサイルが用いられ2発が命中したとされています。Kh-35は派生型として3K60バルという地対艦型があります。
モスクワ。ロシア海軍の発表は、インタファクス通信がロシア国防省の発表として、火災が発生し重大な損傷が生じた為、総員離艦が命じられ全乗員が退避した後に弾薬に誘爆した、と発表しており、ウクライナ側の攻撃有無を含め火災の原因には言及していません。ただ、総員離艦は火災活動が不能で在る状況で発令されるため、沈没か廃艦を意味します。
黒海艦隊旗艦。巡洋艦が戦闘により沈没したのは前回では、1982年5月2日のフォークランド紛争中、アルゼンチン海軍の巡洋艦ヘネラルベルグラノがイギリス潜水艦コンカラーの魚雷攻撃により撃沈された例、その前の撃沈となりますと1945年7月20日、つまり第二次世界大戦中、アメリカのインディアナポリスが日本の伊58に撃沈された事例まで遡る。
ロシア海軍には衝撃となります、今四隻しか巡洋艦は無い。巡洋艦が撃沈されたのはロシア連邦建国以来初めてであるのは勿論、第二次世界大戦後ではソ連海軍でも経験がありません、いや建造中に破壊されたものや空襲で大破したものはありますが、撃沈されたものは巡洋艦と呼称されたが嚮導駆逐艦であったタシュケントまで、すると1905年日本海海戦以来となるのでしょうか。
ネプチューン対艦ミサイル、今回ウクライナ側が攻撃に使用したのはソ連時代に開発されたKh-35の改良型で、形状がアメリカ製ハープーンミサイルに類似していた事からハープーンスキーとも呼ばれているミサイルのウクライナ仕様、キーウ設計公社は2015年に開発開始を発表、2021年に完成したもの、日本の88式地対艦誘導弾と共通するミサイルです。
対艦ミサイルが命中したならばひとたまりもない。1992年に高名な軍事評論家江畑謙介氏が一番艦スラヴァを取材する機会に恵まれ、並ぶ巨大なミサイル発射筒を見上げつつ、戦闘による火災対策を問うたところ、本艦がミサイル攻撃を受ける際には全てのミサイルを発射した後ですよ、と笑われたとのこと。故にスラヴァ級を殴り込み用一発屋ともいう。
しかし、情報は錯そうしています、ウクライナは攻撃を主張していますが、ロシア側は火災と総員離艦のみ認めています。実はロシア艦は火災事故も多く1994年には空母アドミラルゴルシコフが暖房費不足から艦内で焚火を行い暖を採っていたところ爆発し大破航行不能という事故も発生しています。詳細の情報はあと24時間の確認が必要なのかもしれない。
モスクワ。数奇な運命を辿っています、1982年に竣工、当時の艦名は一番艦スラヴァ、1989年に冷戦終結となったマルタ会談ではゴルバチョフ大統領が乗艦し会議へ臨んだ。しかしソ連崩壊後に巡洋艦モスクワと改められますが、ロシア経済崩壊により廃艦の危機となり、街の名を冠した事で当時のモスクワ市民が募金運動を行い退役を免れたという歴史もある。
マルタ会談という平和への歴史的舞台に臨んだ巡洋艦ですが、同時に黒海艦隊旗艦と云う意味で重要な一隻となっています。こういいますのも、ロシア黒海艦隊の水上戦闘艦はミサイル巡洋艦モスクワ以外、巡洋艦や駆逐艦は無くクリヴァク型フリゲイト2隻、ロシア時代に建造された満載排水量4000tのアドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイト3隻のみ。
モスクワは沈没したのか大破しているのかは不明です、しかし大型対艦ミサイルを搭載していますので、誘爆した場合は恐らく上部構造物は何も残りません、また総員離艦と云う事は常識で考えれば、消火活動不能という状況を意味します。また、強力な対艦ミサイルとともにS-300系統のミサイルを搭載する艦隊防空艦ですので、この喪失も大きな意味が。
艦隊防空艦が喪失したという事は、クリミア半島近海でのロシア軍地対空ミサイル防空網に大きな空白が生じた事となる、黒海艦隊は勿論、南部戦域の防空にも空白を意味します。ウクライナ海軍、2021年など平時からロシア軍による拿捕など受け、開戦と共に水上戦闘艦や哨戒艇などすべてを撃沈、海軍陸戦隊が抗戦している状況ですが一矢報いた構図です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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美しい艦だった。ロシア海軍の満載排水量11300tという太平洋艦隊旗艦を実際に目にしたときにはある種の新鮮な衝撃を受けました。
2011年にロシア太平洋艦隊旗艦ワリャーグが京都の舞鶴基地を親善訪問、空母攻撃に特化した巨大なP-1000対艦ミサイルを左右両舷に並べ、尖った艦首から機能的に配置された巡洋艦は、日米のものとは別の視点から戦闘に特化したソ連時代の設計、これはスラヴァ級ミサイル巡洋艦といい、同型艦に一番艦モスクワ、三番艦マーシャルウスチーノフがいる。
ウクライナ海軍の反撃です、黒海艦隊旗艦モスクワがミサイルにより攻撃を受け炎上したとウクライナが発表しました。攻撃にはネプチューン対艦ミサイル、ソ連時代にハープーンスキーと称されたKh-35対艦ミサイルのウクライナ仕様地対艦ミサイルが用いられ2発が命中したとされています。Kh-35は派生型として3K60バルという地対艦型があります。
モスクワ。ロシア海軍の発表は、インタファクス通信がロシア国防省の発表として、火災が発生し重大な損傷が生じた為、総員離艦が命じられ全乗員が退避した後に弾薬に誘爆した、と発表しており、ウクライナ側の攻撃有無を含め火災の原因には言及していません。ただ、総員離艦は火災活動が不能で在る状況で発令されるため、沈没か廃艦を意味します。
黒海艦隊旗艦。巡洋艦が戦闘により沈没したのは前回では、1982年5月2日のフォークランド紛争中、アルゼンチン海軍の巡洋艦ヘネラルベルグラノがイギリス潜水艦コンカラーの魚雷攻撃により撃沈された例、その前の撃沈となりますと1945年7月20日、つまり第二次世界大戦中、アメリカのインディアナポリスが日本の伊58に撃沈された事例まで遡る。
ロシア海軍には衝撃となります、今四隻しか巡洋艦は無い。巡洋艦が撃沈されたのはロシア連邦建国以来初めてであるのは勿論、第二次世界大戦後ではソ連海軍でも経験がありません、いや建造中に破壊されたものや空襲で大破したものはありますが、撃沈されたものは巡洋艦と呼称されたが嚮導駆逐艦であったタシュケントまで、すると1905年日本海海戦以来となるのでしょうか。
ネプチューン対艦ミサイル、今回ウクライナ側が攻撃に使用したのはソ連時代に開発されたKh-35の改良型で、形状がアメリカ製ハープーンミサイルに類似していた事からハープーンスキーとも呼ばれているミサイルのウクライナ仕様、キーウ設計公社は2015年に開発開始を発表、2021年に完成したもの、日本の88式地対艦誘導弾と共通するミサイルです。
対艦ミサイルが命中したならばひとたまりもない。1992年に高名な軍事評論家江畑謙介氏が一番艦スラヴァを取材する機会に恵まれ、並ぶ巨大なミサイル発射筒を見上げつつ、戦闘による火災対策を問うたところ、本艦がミサイル攻撃を受ける際には全てのミサイルを発射した後ですよ、と笑われたとのこと。故にスラヴァ級を殴り込み用一発屋ともいう。
しかし、情報は錯そうしています、ウクライナは攻撃を主張していますが、ロシア側は火災と総員離艦のみ認めています。実はロシア艦は火災事故も多く1994年には空母アドミラルゴルシコフが暖房費不足から艦内で焚火を行い暖を採っていたところ爆発し大破航行不能という事故も発生しています。詳細の情報はあと24時間の確認が必要なのかもしれない。
モスクワ。数奇な運命を辿っています、1982年に竣工、当時の艦名は一番艦スラヴァ、1989年に冷戦終結となったマルタ会談ではゴルバチョフ大統領が乗艦し会議へ臨んだ。しかしソ連崩壊後に巡洋艦モスクワと改められますが、ロシア経済崩壊により廃艦の危機となり、街の名を冠した事で当時のモスクワ市民が募金運動を行い退役を免れたという歴史もある。
マルタ会談という平和への歴史的舞台に臨んだ巡洋艦ですが、同時に黒海艦隊旗艦と云う意味で重要な一隻となっています。こういいますのも、ロシア黒海艦隊の水上戦闘艦はミサイル巡洋艦モスクワ以外、巡洋艦や駆逐艦は無くクリヴァク型フリゲイト2隻、ロシア時代に建造された満載排水量4000tのアドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイト3隻のみ。
モスクワは沈没したのか大破しているのかは不明です、しかし大型対艦ミサイルを搭載していますので、誘爆した場合は恐らく上部構造物は何も残りません、また総員離艦と云う事は常識で考えれば、消火活動不能という状況を意味します。また、強力な対艦ミサイルとともにS-300系統のミサイルを搭載する艦隊防空艦ですので、この喪失も大きな意味が。
艦隊防空艦が喪失したという事は、クリミア半島近海でのロシア軍地対空ミサイル防空網に大きな空白が生じた事となる、黒海艦隊は勿論、南部戦域の防空にも空白を意味します。ウクライナ海軍、2021年など平時からロシア軍による拿捕など受け、開戦と共に水上戦闘艦や哨戒艇などすべてを撃沈、海軍陸戦隊が抗戦している状況ですが一矢報いた構図です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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