■緊急特集:陸自ヘリ墜落
宮古島陸自ヘリコプター墜落事故、現在も登場していた第8師団長含め行方不明のままとなっていますが将官の事故死となれば自衛隊で初ですし中将の事故死は世界的に見て少ない。
自衛隊ヘリコプター事故、特に陸上自衛隊のヘリコプター事故は過去20年間に及ぶ予算不足の放置という政治の怠慢が招いた事故であり、残念ながら現場が出来る再発防止策には限度があります、それは防衛予算をそのままにミサイル防衛という巨額の費用を要する防衛事業を20年間続けた結果であり、再発防止策をどう講じても短期的には是正不能です。
観測ヘリコプター170機、対戦車ヘリコプター90機、多用途ヘリコプター150機、輸送ヘリコプター50機、北大路機関が創設された当時は460機のヘリコプターが陸上自衛隊に装備されていました、多用途ヘリコプターには旧式のUH-1Hが残り、戦闘ヘリコプターAH-64Dはまだ配備開始前でしたが、これだけの数がそろっていたのです、しかし現在は。
観測ヘリコプター30機、対戦車ヘリコプター/戦闘ヘリコプター35機、多用途ヘリコプター100機、輸送ヘリコプター65機、練習ヘリコプター28機。現在のヘリコプターは250機程度と実質半減しています、そしてこれが重要なことなのですが、ヘリコプター部隊は減っていません、いや実際には第15ヘリコプター隊などいくつかの飛行隊が増えたほどだ。
航空機予算はそれほど減っていない、という反論があるのかも知れませんが、AH-1Sを倍の費用を投じてAH-64Dに置き換え、OH-6も五倍以上の費用のOH-1に置き換え、UH-1HとUH-60JAも製造費用は四倍近く高くなっている、しかも費用が高くなったので年間調達数を削減するという方策により、製造ライン維持費が嵩み、結果製造単価も高くなる。
V-22オスプレイ可動翼機の17機導入も、あれは政治主導により導入されたものですが、導入決定こそ、アルジェリアガスプラント邦人企業襲撃事件という当時の事件に、自衛隊には対処出来る邦人救出用航空機が無かった事を受け、急遽導入したものですが、政治主導であっても補正予算ではなく防衛予算で調達、結果的に他の航空機予算を圧迫しました。
部隊が増大しているのだから航空機調達数は減らすのではなく増やすべきだった、機種が高性能機種に置き換わるのだから航空機予算もそれなりに増やすべきだった、予算と機数を削り続けたことで残る航空機に負担が増し、予備部品は少なく、整備予算さえも削られる、しかし任務は増えているのだから当然ながら必要な分を飛ばさないわけには行かない。
半減したが任務は増大、民間企業で同様のことを考えてください。トラックを半減させ人員を大きく削った物流会社が半減させるよりも前の貨物量を輸送しようとするならば、現場の任務時間が延々時間外労働を強いて車両整備も限界が生じる、しかし、今年だけがんばってほしいと社員をだまし続け20年を過ぎる、破綻しない方がおかしいようにおもう。
民間企業ならば非正規労働力により人数を補填することは出来ますが、自衛隊に非正規部隊はありません、そして当たり前ですが、人間に定年退職があるように航空機には耐用年数があり、これも延命改修により機体寿命を延ばすことは可能なのですが、退役する航空機の機数を新規調達する航空機により同じ機数を補填しなければそれだけ数が減るのです。
AH-1SもUH-1Jも、要するに1995年に調達した航空機は2015年から2020年に退役、2000年に調達した航空機は2020年から2025年には退役、自衛隊が本格的にミサイル防衛に着手したのは2003年です、その前はバブル崩壊野影響から橋本内閣時代の行政改革一環として防衛費縮小が始まっており、こうしたなかで後継機が調達されなければ当然響く。
響くのはそれだけではない、規模の縮小は教育に影響する、考えてほしいのは民間企業の企業内教育の場合、中小企業よりも大企業の方が教育の余裕があります、学校教育では少人数教育の方が効果はあるといわれていますが、それは児童がクラスあたりの少人数の場合であって、教員を手薄に少人数にした方が教育効果が高まるという研究はありません。
政治が抜本的な対策をとらない限り影響は続きます、抜本的な対策とは部隊数を大幅に減らしてヘリコプター数に見合った数、たとえば九州南部と北海道以外では自衛隊ヘリコプター部隊は教育部隊以外配備しないとか、もしくは1990年代は年間35機から40機程度はヘリコプターを調達していましたので、処方箋は当面50機を毎年導入する、ということ。
点検の強化や操縦訓練の改善、恐らく事故対策として幾つかの対応はなされるでしょう、しかし、機数の減少と部隊の増加、この根本要因を解決しない事には事故は形を変えて表面化します、ただ、その所掌は政治の領分であり、政治は現場の現在すでに問題化している状況を認識していません、事故は問題の表面化だからこそ連続する、してしまうのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
宮古島陸自ヘリコプター墜落事故、現在も登場していた第8師団長含め行方不明のままとなっていますが将官の事故死となれば自衛隊で初ですし中将の事故死は世界的に見て少ない。
自衛隊ヘリコプター事故、特に陸上自衛隊のヘリコプター事故は過去20年間に及ぶ予算不足の放置という政治の怠慢が招いた事故であり、残念ながら現場が出来る再発防止策には限度があります、それは防衛予算をそのままにミサイル防衛という巨額の費用を要する防衛事業を20年間続けた結果であり、再発防止策をどう講じても短期的には是正不能です。
観測ヘリコプター170機、対戦車ヘリコプター90機、多用途ヘリコプター150機、輸送ヘリコプター50機、北大路機関が創設された当時は460機のヘリコプターが陸上自衛隊に装備されていました、多用途ヘリコプターには旧式のUH-1Hが残り、戦闘ヘリコプターAH-64Dはまだ配備開始前でしたが、これだけの数がそろっていたのです、しかし現在は。
観測ヘリコプター30機、対戦車ヘリコプター/戦闘ヘリコプター35機、多用途ヘリコプター100機、輸送ヘリコプター65機、練習ヘリコプター28機。現在のヘリコプターは250機程度と実質半減しています、そしてこれが重要なことなのですが、ヘリコプター部隊は減っていません、いや実際には第15ヘリコプター隊などいくつかの飛行隊が増えたほどだ。
航空機予算はそれほど減っていない、という反論があるのかも知れませんが、AH-1Sを倍の費用を投じてAH-64Dに置き換え、OH-6も五倍以上の費用のOH-1に置き換え、UH-1HとUH-60JAも製造費用は四倍近く高くなっている、しかも費用が高くなったので年間調達数を削減するという方策により、製造ライン維持費が嵩み、結果製造単価も高くなる。
V-22オスプレイ可動翼機の17機導入も、あれは政治主導により導入されたものですが、導入決定こそ、アルジェリアガスプラント邦人企業襲撃事件という当時の事件に、自衛隊には対処出来る邦人救出用航空機が無かった事を受け、急遽導入したものですが、政治主導であっても補正予算ではなく防衛予算で調達、結果的に他の航空機予算を圧迫しました。
部隊が増大しているのだから航空機調達数は減らすのではなく増やすべきだった、機種が高性能機種に置き換わるのだから航空機予算もそれなりに増やすべきだった、予算と機数を削り続けたことで残る航空機に負担が増し、予備部品は少なく、整備予算さえも削られる、しかし任務は増えているのだから当然ながら必要な分を飛ばさないわけには行かない。
半減したが任務は増大、民間企業で同様のことを考えてください。トラックを半減させ人員を大きく削った物流会社が半減させるよりも前の貨物量を輸送しようとするならば、現場の任務時間が延々時間外労働を強いて車両整備も限界が生じる、しかし、今年だけがんばってほしいと社員をだまし続け20年を過ぎる、破綻しない方がおかしいようにおもう。
民間企業ならば非正規労働力により人数を補填することは出来ますが、自衛隊に非正規部隊はありません、そして当たり前ですが、人間に定年退職があるように航空機には耐用年数があり、これも延命改修により機体寿命を延ばすことは可能なのですが、退役する航空機の機数を新規調達する航空機により同じ機数を補填しなければそれだけ数が減るのです。
AH-1SもUH-1Jも、要するに1995年に調達した航空機は2015年から2020年に退役、2000年に調達した航空機は2020年から2025年には退役、自衛隊が本格的にミサイル防衛に着手したのは2003年です、その前はバブル崩壊野影響から橋本内閣時代の行政改革一環として防衛費縮小が始まっており、こうしたなかで後継機が調達されなければ当然響く。
響くのはそれだけではない、規模の縮小は教育に影響する、考えてほしいのは民間企業の企業内教育の場合、中小企業よりも大企業の方が教育の余裕があります、学校教育では少人数教育の方が効果はあるといわれていますが、それは児童がクラスあたりの少人数の場合であって、教員を手薄に少人数にした方が教育効果が高まるという研究はありません。
政治が抜本的な対策をとらない限り影響は続きます、抜本的な対策とは部隊数を大幅に減らしてヘリコプター数に見合った数、たとえば九州南部と北海道以外では自衛隊ヘリコプター部隊は教育部隊以外配備しないとか、もしくは1990年代は年間35機から40機程度はヘリコプターを調達していましたので、処方箋は当面50機を毎年導入する、ということ。
点検の強化や操縦訓練の改善、恐らく事故対策として幾つかの対応はなされるでしょう、しかし、機数の減少と部隊の増加、この根本要因を解決しない事には事故は形を変えて表面化します、ただ、その所掌は政治の領分であり、政治は現場の現在すでに問題化している状況を認識していません、事故は問題の表面化だからこそ連続する、してしまうのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
私は最初の迷走は、OH-1から始まったと思います。きちんっと失敗だと認め、調達方針を早々に改めるべきだった。EC135とかEC145(川崎のデザインベースです)を採用すればよかったのです。
オスプレイは本当に酷かったですね。購入した時には空自か陸自かどちらに配置するかも決まっていないおかしな装備です(これは政府が悪い)。でも、陸自もオスプレイという高性能機、C-130H相当の額の大物を17機も買ったのに、これを使い倒す編成はしていません。人員を例えば5000人減らして、人件費や個人装備などの関連経費を年間300-500億円レベルで削り、きちんと装備と維持費へ投入すべきでした。
全く別の話ではありますが、いつも言っているように「師団」はなんと定員が6000人、実員が5000人以下程度。しかも中将が指揮。世界標準は定員1.5万人で少将指揮です。半分以下の兵力で司令の階級は一つ上。世界にはむしろ准将指揮の旅団で定員6000人近い部隊もあるくらい。こんな自己改革能力に欠ける軍隊も、珍しいです。
今からでも遅くないので、人員削減(というか少子化かつ大学進学率上昇中なので、人員削減はやむを得ない)、そして装備編成の強化による精鋭化が唯一の方向だと思います。個々人の隊員が愚かだと言っているのではありません。気合と訓練による精鋭化は頑張っているとは思うのです。が、なぜこれに装備の精鋭化を加えることで、より精鋭にしようとしないのか。陸自の本部は、いったい何を考えているのでしょうね。。。
ここを改革すれば、装備費・維持費は十分捻出できます。弾薬の備蓄(訓練でもジャンジャン使うべき)、装備の数や交換部品の増大や整備要員の強化(前線兵員が相対的に減るには、全体の強化のためには当然必要)。「陸自を強くする」という一点に絞るなら、やることは山積みかつ最初の3-4手はシンプルかつ自明だと思うのですが。。。
消耗を考慮すべき実力組織がこうでは、有事にまともな行動ができるとはちょっと思えない。
内部改革ができないなら、どうすれば政治的な軌道修正ができるのでしょうか。
政治が自衛隊の編成に口を出すのは、できるできないでは、できるのでしょう。突然にオスプレイ購入したり長射程ミサイル配備を決めたりできるのだから。
すると、編成改革まで公約に掲げられる議員の登場が必要なのでしょうか。つまり陸自の編成について知識がある国民が一定数必要と・・・
やっぱり国民教育なのでしょうか。