北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

バラク・オバマ米第44代大統領、就任 アメリカの再興に200万が集う

2009-01-21 12:57:59 | 国際・政治

◆変革を訴え、8年ぶりの米民主党政権

 ワシントン時間20日、アメリカ合衆国第44代大統領として、バラク・オバマ氏が就任した。アメリカでは8年ぶりの民主党政権であり、新しいアメリカのリーダーの着任式には、200万の市民が集った。

Img_9405_1  アメリカが今置かれている状況は、長引くテロとの戦い、特に状況が緊迫するアフガニスタン情勢や、膨大な戦費を投じて今日は撤退の時期が問われるイラク情勢など。そして、米中関係や朝鮮半島の核問題など安全保障面では、抜き差しならない実情が背景にある。新政権は、国際協調の中で対処方法を模索する、とのことであるが、これはアメリカ一国での限界、という背景も忘れてはならない。

Img_7480_1  経済問題としては、金融恐慌が引き金となり、百年に一度という経済危機の状況が背景にある。80年代から知財重視の経済体制に移行したアメリカは、賃金上昇を断念させる反面、有価証券などのストックオプションに代替させるという構造が成立しており、その構造が破綻し、今日の状況が生じるに至っている。この仕組みは短期投機資金が世界中を飛び交う、という今20世紀末からの混乱要素となっており、これにどのように立ち向かうかにも注目が集まる。

Img_9026_1  グローバリゼーションの負の構造として挙げられる、紛争解決から経済危機への対応、そしてもうひとつ、環境問題への対応は、アメリカ一国では対応できない反面、協調というよりも、国際規範に応えられるよう、アメリカそのものの構造の変革が必要とされる事案でもある。切迫した事案は、同時に変革を促すのではないか、アメリカ国民のみならず世界が注目している新政権である。

Img_9672  とかく、日本とアメリカの関係は、安全保障、特に日米の軍事的な同盟関係で問題点などが議論され、こうした場合、日本は憲法問題にて議論が空転してしまい、発展をみない、という状況は存在する。ただし、安全保障協力は、軍事面だけではなく、経済、社会、人道分野から平和構築など多岐に及び議論されるべき命題であるので、日本にも柔軟な変革などが求められることとなるだろう。

HARUNA

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海上自衛隊 ソマリア海賊対処に東アフリカ沖派遣を検討 (第四回)

2009-01-20 12:59:24 | 防衛・安全保障

◆暫定的に海上警備行動で対応

 本日は、ジプチ周辺の情勢などについて、掲載する予定であったが、護衛艦派遣について、動きがあったので、そちらを掲載したい。

Img_1219  本件事案を検討している自民党公明党の与党作業チームは、海上自衛隊の海賊対処のための東アフリカソマリア沖派遣について、自衛隊法の海上警備行動命令に基づく派遣、という法的位置づけのもとで実施することとなった。海上警備行動命令が発令されれば、能登半島沖工作船侵入事案、南西諸島原子力潜水艦領海侵犯事案に続き三度目の発令となる。防衛省によれば、海上警備行動の準備には一か月を要するとのこと。

Img_6473  海上警備行動命令に基づく派遣では、日本船籍の船舶に加えて、日本人乗組員が乗船している船舶や、日本に向けての物資などを輸送する船舶に対しても護衛を行うことが可能、としている。ただし、外国船舶に対する護衛について、現状の海上警備行動命令では行うことが出来ないという課題が残る。

Img_9773  外国船舶が海賊に襲われた場合に護衛を行うことが現行法では不可能ということは作業チームでも問題とされている。これについて、三月上旬に新法を制定して、護衛任務を可能なようにする、としている。三月上旬であれば、一ヶ月後に派遣準備が完了し、任務に就くまでに間に合う。武器の使用は自衛などに限られる、ということなので、逃走する不審船に対して対艦ミサイルを発射したり、疑わしい陸上の施設に対して艦砲射撃を加えることなどはできない。

Img_1051  武力による攻撃については、米海軍なども躊躇しており、その理由は海賊船か占拠された民間船かの区別がつきにくいということだ。海賊は交戦団体でもなければ国家による不法行為でもなく、識別は難しい、特に、占拠された民間船を攻撃して、民間船の旗国の人員を殺傷することとなれば、逆に問題ではあるが、実際こういう事案も生じている。

Img_2509  なお、現在検討が進められている新法の制定や、自衛隊の海賊対処のための派遣について、社民党は反対の姿勢を加えている。海賊対処は、海賊行為を行っているのが海軍であれば国際紛争となるので、憲法九条が禁止している国際紛争への武力の使用、と言えなくもないが、海賊行為が私人によるものである限り、少なくとも現在検討されている対処法には、憲法上の問題はない。

Img_0214  ただし、大きな問題は、今回派遣されるのは、一個護衛隊4隻という規模であり、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援の補給艦、護衛艦各1隻の派遣と併せれば、海上自衛隊全護衛艦の一割以上がインド洋、アラビア海に展開していることとなる。一割というと、なんとかなりそうな印象が生まれるが、交代の一個護衛隊の回航や準備期間を加えると、これは大きな負担で、何らかの対応や、柔軟な運用が必要となる。

HARUNA

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ジプチ基地の概要 ソマリア沖海賊対策事案へ検討されているP-3C派遣先

2009-01-19 17:51:56 | 国際・政治

◆ジプチ基地の概要

 海上自衛隊のP-3C部隊が展開を検討しているというジプチについて、本日は掲載したい。アフリカの過酷な滑走路だけの前線飛行場、というイメージを持たれているかもしれないが、実はフランス空軍の戦闘航空団が展開している航空基地である。

Img_9535_1  P-3Cや基地の話題のまえに、まずジプチという国から。ジプチはフランスの植民地として発達し、1977年に独立。もともと1960年代に独立の是非が検討されたものの、一時はタヒチのようなフランスの海外県として留まることを選択、その後、民族運動の高まりをうけて1977年に独立したが、国内にはフランス軍部隊が駐留している。国内ではソマリアとの部族問題などにより内戦状態にあったが、現在は内戦が終結している。人口は45万、横須賀市の人口と同じくらいの国だ。アフリカ、そして紛争地ということで気になるのは政情であるが、フランス軍が駐留しているため、治安は良好だ。

Img_8086  基地においてP-3Cを運用できるのか、という点について。ジプチにはフランス軍が駐留していおり、その中でもジプチ航空基地には、航空戦闘軍団隷下の第4/33戦闘航空団が展開している。航空団は、ミラージュF-1戦闘機を運用しており、協定によりフランス空軍部隊は、ジプチの防空任務にあたっている。ジプチ空軍は輸送機やヘリコプターなどを運用しているのみであり、実質的に防空はフランス空軍が実施しているようだ。ミラージュF1は、航空自衛隊のF4と同世代で、制空・迎撃・攻撃・偵察に運用することが可能な多用途戦闘機だ。ミラージュシリーズの中でも、頑丈な二重タイヤを採用し、前線の未整備滑走路からも運用が可能なミラージュF1を派遣しているあたり、やや滑走路の状況に一考の余地を置きたくなるが、一方で、ミラージュF1の輸出実績は、ジプチ周辺のアフリカ諸国に多いという点も挙げられる。

Img_9566_1  海上自衛隊は、フランスと同様に、ジプチと地位協定を結ぶというが、ジプチにおけるフランスの位置づけについて。フランス外人部隊の機械化部隊である第13准旅団[二個連隊基幹]、陸軍第5国際混成連隊、そして陸軍航空隊ジプチ分遣隊がSA342の飛行隊を派遣している。フランス軍機械化部隊は、四輪式のVAB装甲車やVBL軽装甲車を装備している。航空隊のAS342とは、フランス陸軍の小型汎用ヘリで、愛称はガゼル、人員3名もしくは600kgの貨物を搭載することが可能で、20㍉GIAT機関砲かHOT対戦車ミサイルを搭載して攻撃任務に就けることも可能だ。

Img_0810  ジプチ陸軍は人員4000名、その六分の一が憲兵隊で、国境警備部隊、コマンド大隊などからなる軽装備の部隊である。したがって、フランス軍地上部隊のポテンシャルは大きい。第一線を知る軍事アナリストである毛利元貞氏がフランス外人部隊在隊時に所属していたのも、この第13准旅団で、120㍉重迫撃砲小隊に所属していたとのこと。当時の様子は氏の著書“傭兵修行”(並木書房 1990)にも詳しい。

Photo  哨戒機の運用基盤については不詳だが、ボーイング747の運用が可能とのことで、加えて、少なくとも訓練目的でC-160輸送機の展開は多く、米軍部隊も駐留している。仮に海上自衛隊の展開によりP-3C哨戒機の運用基盤が整えば、NATO加盟国でP-3Cのジプチ派遣を行う国も出てくるかもしれない。もちろん、課題は多い、これまで訓練で派遣されたグアムよりも遠いことは確かであるし、部品や機材の搬入にはかなりの苦労が予想される。この点、航空自衛隊のクウェート派遣などのノウハウを共有し、また、必要であれば輸送機の支援とともに対応することが前提となる。

HARUNA

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京都の地下を行く地下鉄と意外に便利な近鉄・阪急・京阪の地下路線

2009-01-18 22:38:26 | コラム

◆京都の地下

 本日は、京都の地下を移動する路線について掲載。当方が利用する北大路からは、京都駅まで、地下鉄が最速で、大阪まで安く行くには四条から阪急線の乗り換えると便利だ。

Img_1143_2  先日、年末年始に京都を訪れた友人から、ほかの都市圏と比して京都の地下鉄は利用しにくいというコメントをいただいた。京都市営地下鉄は、京都駅を中心に、竹田と北大路、国際会館を結ぶ烏丸線、そして烏丸線の烏丸御池を中心に二条、天神川と醍醐、六地蔵駅を結ぶ東西線の二本がクロスしている。地下鉄路線は、この二本だけである。

Img_1139  あまり大々的に路線を開発すると史跡が出てきてしまうので、確かに路線が短いのは仕方ないのかもしれない[烏丸御池駅に“出土品”が展示されている]。しかし、地下鉄は、JRや私鉄線と連絡している駅も多く、しかも私鉄路線を駆使すれば、そこそこ移動は便利となる。本日は、その紹介。

Img_0622  近鉄電車は、烏丸線の国際会館駅まで乗り入れており、時間帯によっては、急行奈良行きが国際会館駅から発着している。竹田駅にて、近鉄京都線と合流する。特急は、近鉄京都駅から発着しているため、国際会館駅や烏丸線には乗り入れないものの、京都の中心から奈良まで近鉄電車が結んでいるのは、便利ではないか。

Img_1168  阪急京都線は烏丸駅が地下鉄四条駅とつながっている。切符は共通ではないが、烏丸線とクロスして、四条通の地下を、中心部であり繁華街の四条河原町まで、阪急京都本線が走っており、地下区間を走る京都本線は大宮駅と西院駅で京福線と連絡している。バスで移動すると混雑しており、意外と所要時間がかかるため、阪急線を地下鉄代りに利用すると早い。また、初乗り料金も安い。

Img_0805_2  三条駅で、地下鉄東西線と京阪三条駅とが隣接している。こちらも切符の互換性はないが、鴨東線を利用すれば、出町柳駅にて叡山電鉄に連絡できるし、祇園四条駅、清水五条まで、こちらも地下鉄のように利用することができる。清水五条駅からは、清水寺まで遠いので驚かれるかもしれないが、紅葉や桜花シーズンには、混雑の無い電車は便利だ。

Img_0641  また、京阪電車は地下鉄東西線に乗り入れており、こちらは御陵駅から、山科[駅舎は地下鉄とは別]を経て、京津線に乗り入れる。浜大津駅までで、石山坂本線には直接乗り入れないが、琵琶湖観光には便利である。以前、鉄道ジャーナル誌の投稿コーナーに、切符の互換性があれば便利なのに、という投稿が掲載されていたが、確かに、これらが結ばれれば高まる利便性は京都観光を更に充実したものにしてくれるのでは、と考える次第。

HARUNA

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JR東海 新快速・特別快速が共に運行される東海道本線

2009-01-17 14:09:27 | コラム

◆新快速&特別快速

 1月9日の記事にて、313系を載せたらば、新快速と特別快速の種別の色の見分けを間違ってしまった。ということで本日は、JR東海の新快速と特別快速特集。

Img_5697  313系特別快速が並行する名鉄本線に対抗して全速力で駆け抜ける。速度は特急電車にひけをとらない最高速度130km/h。JR東日本の近郊型電車のようなグリーン車などは無く、全車転換式クロスシートを採用している片側3扉車で、JR西日本の223系とともに、私鉄特急との競合区間を勝ち抜くための高性能車両だ。

Img_5743  JR東海の東海道線区間で面白いのは、新快速・特別快速・快速・区間快速が走っており、もちろん、普通から、特急まで様々な種別の電車が運行されている。特急は、特急“しらさぎ”“ひだ”“しなの”などから、寝台特急“富士・はやぶさ”まで、昨年三月までは寝台車ではあるが急行“銀河”が走っていた。私鉄並みの種別の多さが一つの特色といえる。

Img_3458  313系は、以前に新快速として運用されていた311系が最高速度120km/hであったことから、より速度性能を向上させた電車として開発された。シートピッチも若干、311系よりも余裕があるようで、速度も快適性も高い。例えば名古屋から豊橋の割引切符では、少し料金を上乗せすれば新幹線を利用できるというサービスがあり、これはある意味、新幹線と並んだ通勤電車、といえるかもしれない[ひかり21分、こだま29分、新快速・特別快速47分、ただし、運行本数では新快速・特別快速の方が多い]。

Img_4151  停車駅は、米原~大垣~岐阜の各駅、尾張一宮・名古屋・金山・大府・刈谷・安城・岡崎・蒲郡・豊橋、~浜松までの各駅。名鉄本線の名鉄岐阜~名鉄名古屋~豊橋の並行区間ではひたすら飛ばすが、名鉄と競合しない大垣や米原、浜松への運行では各駅停車になり、速度もそれほどではなくなっている。

Img_1509   313系特別快速。停車駅は、新快速とほぼ同じで、大府に停車するか、三河三谷に停車するか、という微妙な違いがある程度だ。基本、新快速、特別快速、快速、区間快速を問わず、来た電車に乗れば目的地に早く到着するようになっており、このあたりが、JR西日本の新快速と快速の運行体系とは違っている模様。

Img_1492  しかし、特別快速と新快速が同じ区間を走っているというのも珍しく、そもそもどういった扱いになっているのか、ということに興味がわいてこないでもない。名鉄の特急・快速特急のような上下関係があるわけでもなく、もちろん、阪急の通勤特急と特急のような運行時間のすみ分けがあるわけでもない。旧ダイヤ時代での名鉄快急と特急のような車両の区分けがあるわけでもない。

Img_4557  さてさて、最後になったが、本日の本題。新快速と特別快速の種別表示のカラーリングについて。新快速はオレンジ、特別快速はレモンカラー、快速はブルーで区間快速がグリーンの種別表示を採用している。そして、共通点は、それもスピードが速い、ということだろうか。なお、311系や117系がこの区間で快速や区間快速、新快速に用いられることもある。

HARUNA

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冬景色便り 厳寒の湖南 雪原を行く223系新快速

2009-01-16 22:40:08 | コラム

◆冬景色の写真

 忙しい、本当に忙しい。北大路機関も最近、『これって去年夏ごろの話題だよね』っていう記事が増えてるが、それは昨年貯めた記事を使っているからなので仕方ない。

Img_2043  そんな中で、冬らしい写真が入手できたので,本日の特集としてお伝えしたい。やっぱり見るのは本の山よりも自然の山、A4用紙の白よりも雪景色の白、壁紙の風景よりも本物の新快速を撮った方が、ストレス解消になる。そういえば、この冬、まだ、冬らしい写真は殆ど撮ってねえや、という今日この頃。

Img_2039_2  写真は、近江八幡と米原の間で撮影。雪煙を蹴散らしてこちらに向かってくるのは223系新快速。ここは本当にアーバンネットワークの一端なの?と思うほどの、けっこうな迫力。薄らと雪が、というのではなく、レールの上の方だけが見える位に雪に埋まってしまっている。これはけっこう積雪があったんだね、という風景。

Img_2041  223系新快速は、首都圏の特別快速とは違って、京阪神を結ぶ京阪や阪急に阪神の特急や快速特急、通勤特急に快速急行と本気の速度競争を繰り広げている。線形に恵まれた路線を130km/hの速度を活かして全速力で疾走するクロスシート車。そんな車両が雪原を雪煙とともに駆け抜けている様子は、非日常的で面白い。

Img_2036_2  普通電車の運行に就く223系。乗り心地が良い223系に慣れると、JR東日本のロングシート車が気の毒に見えてくる。この新快速、混雑するときはもう、物凄く混雑するのだが、クロスシートの方が、座れた時のリラックスはなかなかのもの。ああ、ここまで雪が降っているのであれば、北陸線に雷鳥や日本海やトワイライトに国鉄急行型を撮りに行きたいのだけれども、それは二月まで、がまんだ。積もりかたでは、能登川駅からみえるあたりが非常に凄かった。

Img_2032  EF66が牽引する貨物列車。雪景色の写真を撮影した場所から新快速で10分と離れていない場所の様子。湖南と湖東で積雪がここまで違うのは、おもしろい。しかし、写真にも写ってるように、ライトの光には、雪が降っている様子が映っている。もしかしたら、このあと、撮影した場所にも雪が積ったのかもしれない。

HARUNA

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ソマリア沖海賊対策事案 海上自衛隊P-3C哨戒機派遣を検討

2009-01-15 11:56:32 | 防衛・安全保障

■護衛艦と哨戒機を派遣

 14日の報道によれば、政府は、アフリカソマリア沖での海賊対策事案において、現在検討している護衛艦の派遣に加えて、海上自衛隊の哨戒機を派遣する検討を行っているとのこと。

P_img_6052 派遣が検討されているのは、現在、海上自衛隊で80機が運用されているP-3C哨戒機。P-3C哨戒機は、アフリカのジプチなどを拠点航空基地として運用することを想定しているようで、既に海賊対策へ尽力しているフランスより、フランスとジプチとの間で取り決められている地位協定に日本を加えることで、P-3Cの派遣を早期に実現させることが可能とのことだ。

P_img_7588 護衛艦部隊としては、ヘリコプター搭載護衛艦を中心とする1個護衛隊の派遣が既に検討されており、この護衛隊は、ヘリコプター搭載護衛艦、ミサイル護衛艦各1隻と、汎用護衛艦2隻からなる4隻の編成で、艦載ヘリコプター5機を定数としている。ヘリコプター護衛艦を中心とした編成であるから、広範な哨戒任務が可能で、予定されている船団護衛に加えて突発的事態にも迅速に対応することが可能だ。

P_img_2238  他方で、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援任務にも艦艇を派遣している海上自衛隊には、護衛艦の一割以上をインド洋に展開させることとなり、交代の艦艇を含めればより多くの護衛艦が、インド洋に関係する任務に就くこととなる。従って艦艇のローテーションとしてより大きな負担がかかるということも留意して置くべきだろう。乗員のローテーションや教育訓練体系、場合によっては護衛艦の定数までも含めて再検討が必要な時期にきているのではないか、とも考える次第。一方で、インド洋に対して、海上自衛隊のプレゼンスを示すことができる、これにはひとつの意義があろう。

P_img_9283  P-3C哨戒機は、対潜哨戒機として導入されたが、高高度からの洋上哨戒能力にも優れ、近年では南西諸島における外国艦船動向の哨戒に大きな注目が集まっている。海上自衛隊は、日本が極めて長いシーレーンを有していることから、この種の航空機の装備化には積極的で、対潜哨戒機の保有数では、アメリカ海軍に続き世界第二位の規模を誇っており、欧州NATO軍の総数よりも、その保有数は多い。派遣が決定すれば長大な航続距離を活かして洋上の船舶情報収集にあたり、水上艦との情報共有に当たるほか、通信中継などの任務にもつくことが想定される。

HARUNA

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レーダーサイト新設を! 小笠原諸島の島嶼部防衛へ一提案

2009-01-14 12:54:08 | 防衛・安全保障

■太平洋側からの脅威に備える

 中国海軍の航空母艦建造、ロシア製中古空母ワリャーグの修理などなど、実現までは時間がありそうだが今後日本が想定していないような地域からの脅威にどう対処するか、という問題提起。

Img_1726  日本全土には、航空自衛隊により北部航空警戒管制団、中部航空警戒管制団、西部航空警戒管制団、南西航空警戒管制隊が28ヵ所のレーダーサイトを配置され、24時間365日、休みなくレーダーにより領空侵犯に備える警戒網が構築されている。飛行計画にない航空機はすぐに探知され、航空基地から要撃機がスクランブルをかける。

Img_5723 しかし、日本近隣諸国に航空母艦を保有する国が現れれば、現在、レーダーサイトが配置されていない小笠原諸島が防空の真空地帯となる可能性がある。冷戦時代には、ソ連海軍にはVSTOL機を除けば固定翼機を運用する航空母艦を極東地域に進出させたことはなく、仮にそういう状況が生起しても、宗谷・津軽・対馬の三海峡を通行する際に発見することができ、対応を立てることにも猶予時間があった。

Img_6864_1  かつて、小牧や浜松に要撃飛行隊を配置して、このような太平洋側からの脅威に対応する準備は必要、と記載したが、警戒管制網を小笠原諸島にも広げる必要性があるのではないか、というのが本論の軸。小笠原諸島は、日本の排他的経済水域の防衛という観点からは重要であるのだが、その防備は、現段階からは脅威が無いという状況ではあるが、脅威が現実となれば南西諸島以上に無防備である。

Img_6247 現在、小笠原諸島には、海上自衛隊が父島基地分遣隊、硫黄島航空基地隊、南鳥島航空派遣隊を、航空自衛隊が硫黄島基地隊を配置している。この中で、硫黄島と南鳥島にレーダーサイトを配置出来ないか、という提案。

Img_8211_2  南鳥島は、硫黄島から1280km離れており、四方1000マイル以内に何も無い島ではあるが、滑走路が置かれ、その保守のための10名前後の海上自衛官と海上保安官、気象庁職員が駐留している。1.5km三方の三角形の島、万一の津波からの防護も含め堅牢な建物が必要であるし、将来的には、レーダーサイトが必要ではないか、ということ。

Img_1078  レーダーサイト、もしくは、中空の移動警戒隊部隊数に余裕をもたせ、必要であればすぐに展開できる体制を構築すれば、将来的に緊張が高まった場合には、基地防空隊を配置して防備を固めることも可能となる。もちろん、補給や、なによりも真水の確保からして、工事には多大な苦労は予想されるものの、必要性は将来的に高まるという観点に立てば、準備は必要となるだろう。

Img_8421  硫黄島は、玉砕の島ではあるが、同時に米海軍空母艦載機の陸上空母発着訓練に用いられていることから、年間3000機以上の航空機が飛来する。同時に小笠原諸島は、海上自衛隊の救難飛行艇による急患輸送なども行われており、一つの拠点でもある。ここにもレーダーサイトを配置することが出来れば、小笠原諸島の防備は飛躍的に向上する。

Img_7931  陸上空母発着訓練を行う硫黄島に、救難隊を展開させ、硫黄島基地として基地機能を強化することもひとつの手法ではあるように思う。なによりも、プレゼンスを示すことが重要だ。すぐには必要に無い状況であっても、必要なときに備え、政治レベルでの議論を進めることは必要なように思うのだが、どうだろうか。

HARUNA

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五地方隊にも旗艦を 護衛艦隊再編後の地方隊

2009-01-13 19:18:41 | 防衛・安全保障

■地方隊にも旗艦が必要だ

 海上自衛隊は、機動運用に充てる護衛艦隊とは別に、沿岸警備にあてる部隊として、横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊の各基地に地方隊を置いている。地方隊は基地機能の維持や曹士人事、教育訓練なども行っている。

Img_1365  その地方隊が沿岸警備を行う際に主たる部隊として扱われるのが、掃海隊である。掃海隊には掃海艇三隻が配備されており、ミサイル艇2隻から成るミサイル艇隊が配備されている舞鶴、佐世保、大湊(3隻、ただし将来的に2隻)を除けば、実際には基地を機能させる船を除き、掃海艇が重要な部隊となる。将来的には30㍉機関砲を搭載した新型掃海艇を導入し、沿岸警備能力を充実させる構想ではあるが、それにしても少ない。

Img_3910  もともと、地方隊には二個護衛隊、もしくは魚雷艇隊や駆潜艇隊を有しており、護衛隊の所属護衛艦は小型護衛艦(DE)が配備され、護衛艦隊と比べれば見劣りするものではあったが、数はあった。しかし、95年防衛大綱改訂に伴い、護衛艦定数の削減が決定し、護衛艦隊は減らせない、ということから、地方隊の護衛隊が削減、1個護衛隊体制となった、魚雷艇、駆潜艇は老朽化により区分そのものが消滅した。その後、2008年の部隊改編により、地方隊隷下の護衛隊が護衛艦隊に編入され、今日に至る。

Img_9750  現在、地方隊において、最も大きな自衛艦は、ひうち型多用途訓練支援艦である(除籍された砕氷艦しらせ、は横須賀地方隊直轄であったが)。各地方隊に直轄艦として配備、満載排水量は1400㌧、武装はなく速力は15ノット。艦艇の水上射撃や航空機の魚雷投下訓練、潜水艦の訓練支援などにあてるもので、後部には広い作業甲板が配置、水上標的を運用するが、必要に応じて中型トラックを4台程度搭載し、クレーンを用いて揚陸作業にあてることもできるので、災害派遣にも対応している。

Img_8039  地方総監といえば、海将。しかも、陸上要員を中心に2000名前後を指揮する立場なのだが、どうしても護衛隊群司令と比べれば、という気がしないでもない。地方隊の展示訓練を想像してみると良い、多用途訓練支援艦は、重要な自衛艦であるが、イージス艦やヘリコプター搭載護衛艦と比較すると、どうであろうか。また、災害派遣に対しても、この規模で果たして大丈夫なのか、という疑問がわいて来ないでもない。やはり、地方隊といえば、というような艦が必要なのではないか、と考える次第。

Img_6221  写真は1号型輸送艇。地方隊には、概ね直轄艦として710㌧の輸送艦か540㌧輸送艇が配備されており、災害派遣や軽輸送任務にあてているが、それにしても輸送能力では小さい、と言わざるを得ない。ここで、地方隊旗艦に、両用戦に対応する水上艦を導入しては、と考える次第。水上戦闘艦と輸送艦を折半したような艦艇としてはデンマーク海軍が建造したもので面白い一隻がある。アプサロン級といい、2004年から2隻が就役した。速力は23ノットと水上戦闘艦と比較すれば遅いものの、ヘリコプター2機を搭載し、5インチ砲、ハープーンSSMや対空用のESSM用VLSを搭載した満載排水量6300㌧の“輸送艦”だ。

Img_6329  基本的には、うらが型掃海母艦に車両甲板を取り付け、たかなみ型護衛艦と足して二で割ったような艦である。デンマーク海軍は、多目的支援艦と表現しているがNATOは揚陸艦に区分しているもので、900平方㍍の車両甲板には、主力戦車からコンテナ(最大34)まで搭載することが可能だ。三次元レーダーSMART-Sを搭載しており、戦闘能力は新世代フリゲイトと比較しても遜色なく、旗艦任務から輸送艦、掃海母艦、病院船などにも対応できるものである。地方隊の任務対応能力充実と、地方総監の位置づけの再認識の為にも、旗艦のような艦は必要なのではないか、と考える次第。

HARUNA

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海上自衛隊 ソマリア海賊対処に東アフリカ沖派遣を検討 (第三回)

2009-01-12 18:00:31 | 防衛・安全保障

■考えなければならないこと

 ソマリア沖海賊取締りへの海上自衛隊派遣、煽るつもりは無いのだが、いわゆる平和主義の人たちは今何をしているのだろうか、と思うことがある。海賊とまず話し合え、というのはナンセンスなのだろうけれども。

Img_9671  ヘリコプター搭載護衛艦はるな、1999年3月22日に、日本近海に侵入した北朝鮮のものとみられる工作船に対して海上警備行動命令が発令され、“はるな”を旗艦とする護衛艦三隻、P-3C哨戒機が出動、警告射撃を実施した。結局、だ捕することは出来なかったが、初めて、明確に日本への脅威に向け5インチ砲の実弾を発射して以来、あれから十年が経とうとしている。

Img_6346  今回、海上自衛隊が派遣されるソマリア沖、海賊はロケット砲や、20㍉機関砲を所持し、相当沖合へも母船を伴って進出してくる。海軍艦艇が護衛している商船に直接攻撃を加えてきた事例は、まだ無いようだが、一旦占拠すると、船上から射撃などを加えてくる事例があり、米軍のイージス艦が相手でも果敢に攻撃を加えてくる。

Img_1109  インド海軍の事例では海賊船の母船と思い撃沈してみると、占拠されたタイの遠洋漁業船だった、という事例もあり、こういった理由から、取締りを躊躇する海軍も少なく無いとのこと。日本は、大井篤の『海上護衛戦』(第二次大戦中のシーレーン防衛を担った海軍の苦戦と戦訓を集めている)に描かれたような船団護衛方式を考えているようだが、船団を集めて、しかも最も遅い船舶に併せなければならないので、逆に非効率なのではないか。

Img_1103  もちろん、船団護衛によりすべてを抑止出来れば素晴らしいのだが、例えば国際法上の管轄権が日本にある船舶が既に占拠された場合や、発砲を必要とする時であれば、日本が戦後初めて、外敵の生命を奪う、という瞬間が来るかもしれない。これに対して、日本の社会や世論は、耐えることができるのだろうか。もちろん、将来的には逆の場合もあり得る。

Img_2123  こう言ったことに対する準備というものは、幸か不幸か、日本は必要が逼迫していなかったことから、ある種、後回しにされていた問題である。対領空侵犯措置任務に携わる航空自衛隊の要撃飛行隊に配属されているパイロットには、もちろん、それ以前から、法的な意味を除いても、心的な負担はあっただろう。

Img_2260  また、国際平和維持活動に対しても、もちろん日本は独自の理由から治安任務などの武器の使用を必要とする任務を極力避け、日本の国是は、少なくとも世界の政策決定者に間ではある程度認知され、理解されてきた。こういった背景もあるのか、自衛隊は戦後、外敵に対して明確な武力は使用する機会は訪れなかったが、これは僥倖であり、永続するものでは無い。

Img_9285  難しい問題ではあるものの、避けては通れない問題でもある。日本は艦船を派遣しない、という選択肢もあるのかもしれないが、海上における治安活動に、途上国までもが潤沢では無い国家予算から負担を以て国際公益に海軍力を投じているわけであるから、海洋の自由と安全に恩恵を受けている日本は、途上国に負担を更にかけて、というのは難しいのかもしれない。しかし、考えたくは無いこともあるわけで、これに挑む全国民的な意志も必要なのかな、と考える次第。

HARUNA

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