北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

スクランブル発進、平成22年度4~12月の動向を防衛省が発表

2011-02-08 23:29:31 | 防衛・安全保障

◆ロシア機が多数を占めた対領空侵犯措置

 防衛省は4~12月の航空自衛隊による対領空侵犯措置任務の緊急発進を行った回数を発表しました。BSで史上最大の作戦がやっていて、観ていたらばこんな時間に、ちょっと本日は手短に文章だけ重ねてみました。

Img_32532/3日付 ニュース トップ 22年度4~12月緊急発進 対ロシア機 76%で最多 ロシア機と中国機の飛行パターン・・・ 統幕は1月27日、空自機による22年度第3四半期まで(昨年4月1日から12月31日)の緊急発進(スクランブル)回数を発表した。 それによると、第3四半期のみの緊急発進回数は104回で、1~3四半期までの合計は290回(21年度同期比77回増)と増加した。領空侵犯はなかった。 国籍別の緊急発進回数(推定を含む)は、対ロシア機が220回(約76%、21年度同期140回)と例年同様最多で、次いで対中国機が48回(約16%、同23回)、対台湾機が5回(約2%、同18回)。対北朝鮮機はゼロ(0%、同8回)、民間機やバルーンなどと見られる判別困難な「その他」に対しては17回(約6%、同24回)だった。 方面隊別では、北空125回(21年度同期85回)、中空69回(同38回)、西空31回(同24回)、南混団65回(同66回)と軒並み増加した。 第3四半期までの特徴としては、露軍機がわが国領空に沿って日本海から太平洋、沖縄方面に至る列島周回の長距離飛行が目立った。また、ガス田や尖閣諸島を巡って東シナ海方面に飛来する中国機への緊急発進も増加している。 緊急発進は国籍不明機がわが国領空に接近した時、戦闘機などを発進させて領空侵犯を未然に防ぐ対領空侵犯措置任務で、緊急発進した戦闘機は対象機に対して無線による通告・警告や翼を振るなどの機体信号を送り、無視した場合は強制着陸、警告射撃等の措置が認められている。 わが国では昭和33年に同任務が開始されて以来、緊急発進回数は昭和59年度の944回をピークに平成元年以降はソ連崩壊の影響で年間150回程度に減少していたが、最近は再び露軍機の増加と、軍備増強を図る中国軍機の増加で同300回程度と増加傾向にあるhttp://www.asagumo-news.com/news/201102/110203/11020309.html

Img_3292  日本の防衛に関して識者等がテレビ番組などで討論をしますと、中国からの圧力や政治家の方も中国の海洋進出を警戒するという論調が目立ちます。しかし、実際に日本周辺に航空機を進出させてくるのは大半がロシア機だ、という事を今回の数字が物語っています。ロシアは中国ほどではないにしても経済状況は好転し、ひところのソ連崩壊後のルーブル暴落等に端を発する経済混乱は今や過去の話となっています。また、海洋資源の面で北方領土に関する日本との係争事案もありますので、日本の防衛を考える上では、西方の脅威、というよりは実質的に北方の脅威に加えて西方の脅威が生じている、という理解が必要なのでしょうね。中国空軍の航空機は現在では国産化に努めていますが、エンジン開発に手間取っていまして、低バイパス比の戦闘機用エンジンは冷却などの部分で日本でもいまだに完全に国産化できない課題を有しています。日本の場合は航空自衛隊創設と戦後の戦闘機ライセンス生産開始以来、この種のエンジンの国産化や技術開発には一応取り組んでいるのですが、日本の冶金技術や金属加工技術を駆使しても残念ながらものにできない高度な技術、そういう意味で中国の戦闘機はロシアからのエンジン輸入に頼り、中国製エンジンを搭載した戦闘機の性能は信頼性や出力の面で問題視されています。他方で、ロシアは世界でも数少ない戦闘機用エンジンの国内開発が可能であり、高度な戦闘機の国産技術を持っているとともに、長距離爆撃機、一部には長距離を超音速で飛行できる機体も保有しており、実際に日本周辺に進出させ、航空自衛隊が約20機の戦闘機等を緊急発進し追尾した事例もありました。中国機は日本周辺においては南西諸島周辺を飛行する程度の事例が大半を占めているのですけれども、ロシア機は日本列島に沿って飛行し北海道から沖縄まで進出する長距離飛行を度々実施しています。

Img_3326  日本は西方に脅威がシフトしたのではなく、脅威が増大して多方面から圧力を受けている、という実情を認識して戦闘機定数についてはかなり真剣に増勢を検討するべきなのではないでしょうか。西方の防衛に重視し過ぎて北方を手薄にするという論理は、西方さえ平和であれば北方は戦果に見舞われても良いという論理が成り立たないように無意味な事でして、確かい財政難ではあるのですが、財政難でも国として果たすべき最低限の事はやってもらわなければ、と。戦闘機定数ですが、次期戦闘機選定とも合わせて考えなければなりません。これまで航空自衛隊の戦闘機は基本的に日本国内の工場で部品を生産し、機体を組み立てていくライセンス生産方式を採ってきました。これでスト日本国内で航空自衛隊の隊員による整備に加えてメーカーでの定期整備を行う事が出来ますし、破損するような事案があったとしても日本国内で修理に必要な部品を調達することが一定の範囲まで可能でした。しかし、機密性が高いF-22、これは多分現時点では不可能でしょうが、また多国間共同生産を行うF-35等は日本国内でのライセンス生産は基本的に望めないでしょう。すると補修整備や予備部品調達を日本国内で行えない事になりますので、戦闘機の稼働率は当然低下してしまう訳です。高性能であれば機数を補う事は出来るのでしょうが、以下に高性能な航空機でも同時に二か所に進出することはできませんので必要な数というものが出てくる、現時点での防衛予算の規模では難しいですが、F-35を有償軍事供与により一定数直輸入して、主力はF/A-18Eをライセンス生産する、そして必要な一定数の稼働率をF/A-18Eにより確保するという案や、もしくは予備部品や補修を円滑に行えるよう米軍との協同運用基盤をアジアに構築して米軍以外の航空機についてもその協同運用基盤で運用する、いわば集団的自衛権に関する運用や武器輸出三原則の運用に関する改正を行うか、もしくは日本の国是を維持しつつ戦闘機稼働率を維持するには、例えばC-2輸送機を現行の輸送機数以上に抜本的に増強し、F-35であれば、予備部品を恒常的にアメリカから供給できる環太平洋空輸補給態勢を航空自衛隊に整備させるか、そういう事も考えなければならないのかな、と思いました。

HARUNA

(本部祖具に掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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X-47初飛行、さて自衛隊が将来同種の機体を導入したとしたら?

2011-02-07 23:40:11 | 先端軍事テクノロジー

◆無人機の任務区分、海外派遣と憲法上の問題

 本日はX-47の初飛行記事を引用しつつ、この種の航空機と将来の自衛隊について備忘録的に少し記載してみます。

Img_2414  次世代無人爆撃機の初飛行成功=空母艦載型、中国対策-米海軍・・・ 【ワシントン時事】米海軍は6日までに、エドワーズ空軍基地(カリフォルニア州)で、次世代型の無人爆撃機「X47B」の初飛行に成功したと発表した。X47Bは空母艦載型で、2013年に空母艦上からの発進試験を行う計画。 X47Bの開発は、米軍接近を阻止する中国の戦略への対抗手段の一つ。中国は「米空母キラー」と呼ばれる新型対艦弾道ミサイル「東風21D」の開発を急ピッチで進めている。X47Bの開発は、中国の対艦弾道ミサイルの射程外から攻撃できる能力を確保する狙いがある。(2011/02/07-14:54)http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011020700442

Img_0290 時事通信が報じていましたX-47の話題ですが、写真の方は手元に当然ありません、形状が酷似していると話題のヤツハシの写真で代用しようとも思ったのですが、まあ、F-16で。海軍だから18のほうがよかったか。さて。航空自衛隊の次期戦闘機の話題とともにこのX-47初飛行成功の一報を載せたのち、この種の無人航空機を自衛隊が運用した場合、ということにも少し考えが及びましたので備忘録として掲載です。有人機の役割について、航空自衛隊の場合は国土の防空、対領空侵犯措置を第一の任務として付随的に対艦攻撃や近接航空支援を実施する、という流れになりますので、特に対領空侵犯措置任務では行動の結果いかんによっては武力紛争に展開する可能性があり、挑発や誤射は絶対に避けなければならない一方で領空侵犯は実力で阻止しなければならない際どい部分を担当するには、有人戦闘機による任務が不可欠なのだろう、と考えます。無人機では何か事故があった場合に責任が採れませんからね。この点で無人機が主力となる事は航空自衛隊が対領空侵犯措置任務を主任務とする間はあり得ない事なのでしょう。

Img_3219 無人機は作戦機に含まれるのか、防衛大綱を考えると当然この概念も出てくるでしょう。現時点では無人機の性能は限定されていてX-47も無人戦闘機と言われつつも爆撃任務に当たるとのことですから巡航ミサイルの延長的な運用、変に解釈してもクラスター爆弾の定義に含まれないような範囲内で延長、という運用を想定しているようにも思えますが、今後お技術発展はどうなるか大きな伸び白を残しています。さて、対艦攻撃と近接航空支援については、F-2やその後継機、これは第六世代戦闘機がどうなるのかという話ともつながるのですが、無人機か無人機との連携を考えた機体が選定される可能性が出てくるでしょう。この場合無人機は作戦機として防衛計画の大綱において整備数が制限もしくは担保される事になるのでしょうか。現時点ではF-15等からの空中発進などに主眼を置いた無人機が主流ですが、米空軍などでは飛行隊に既に無人機のみで編成された飛行隊が存在しています。一方で湾岸戦争においてアメリカ空軍が有人機侵攻の補助として多数の無人機をおとりとして運用したように無人機は運用では有人機とは根本的に異なる部分がありますし、何よりも損耗を前提とした無人機は予備機等の概念が有人機とは異なるため作戦機に含めるのは難しい、もしくは作戦機を有人機と無人機に区分するか、という議論も出てくるかもしれません。航空法の適用範囲内か否かが、航空機として作戦機に含めるか否かという議論に繋がるかもしれませんが、これにより稼働機数を確保するという必要性が運用上生じて必要な無人機を導入できない、というような状況は避けたいところですね。

Img_6866 海外派遣では無人機は法的にどうなるか。最後に、アフガニスタン派遣の話題を昨日の記事に掲載したのですが、無人機を派遣する、例えば公海上の護衛艦などから無人機を進出させ、米軍の支援、これは攻撃任務に限らず偵察でも情報収集でも、もしくは通信中継任務でも同様なのですが海外での活動を行う事は現行憲法上で可能なのか、これも少し考える必要があるのかな、と。自衛隊は今後も国際平和活動や後方支援任務、人道任務において犠牲者を最大限避けなければならない、と考えるのですが、その中で国際貢献を行う手段として、無人機による情報収集などが人的犠牲の可能性が少ない国際貢献の方法として浮上してくるかもしれません。現時点での日本の無人機運用能力では、ひゅうが型や22DDHクラスの艦から運用可能な長距離無人偵察機というものは全く想定できないのですが、自衛官を派遣せず公海上から無人機を進出させるという方法での支援、これは将来も考えられないとは言い切れないでしょう。現代戦は情報優位が戦闘優位に直結するのですから、情報優位を担保するということは国際貢献のみならず米軍の後方支援任務においても少なくない価値があるはずです、これが法的にどうなのか、考える必要はあるのかな、と思い浮かべた次第です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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政府、アフガニスタンへの自衛隊派遣延期を発表 今夏以降に再度検討

2011-02-06 23:07:31 | 国際・政治

◆対米公約、自衛隊“アフガン出張”は延期

 アフガニスタン派遣中止になりました、現時点では延期ですが、法整備を行い当初提示された案、自衛官を海外出張扱いでアフガニスタンに派遣する、という案からは離れるのでしょう。新潟の災害派遣の話題もありますが、本日はこの話題。

Img_8310_1  自衛隊のアフガニスタン派遣は、対米公約でしたが、海外出張扱い、加えてアフガニスタンでの国際治安任務に当たるISAFの指揮下に入らないというかなり政府には身勝手な案でして、それならば出さない方が良かったのでは、というものではありました。海外派遣、しかも戦闘地域でありISAFの部隊から続々と犠牲者が出ている中で山間部の掃討戦が続き、国家の創成を行う中都市部ではテロが頻発するなか、海外派遣と言えば96式装輪装甲車2型を中心に展開するのだと信じていましたら出張とは、余りに無理な派遣計画でしたので、そもそも何故そんな公約を、という次元、強行すれば非常に危険でしたので、ひとまず一考の余地が生まれました。毎日新聞からの引用です。

Img_4705アフガン:自衛隊医官派遣を延期 制度不備、政府内に慎重論・・・ 政府がアフガニスタン復興に向けた人道支援策として検討している自衛隊医官らの派遣が、今夏以降にずれ込むことが、明らかになった。現地での安全性確保や、受け入れ体制の調整に時間を要している上、現行の防衛省設置法に基づく派遣について、慎重に議論を重ねるべきだとの声が強まったためだ。複数の政府関係者が明らかにした。 政府は、医官や看護官約10人が、首都カブールのアフガン国軍の医療関連施設で、指導を行うことを想定。昨年11月の日米首脳会談で、菅直人首相が、オバマ米大統領に前向きに検討する考えを伝えた。同国への自衛隊派遣は駐在武官を除けば初めてで、米国が重視するアフガン安定への「人的貢献」をアピールする狙いだった。

Img_7405  昨年12月には西元徹也防衛相補佐官を団長にした調査団が現地視察。今月中の派遣も視野に入れていた。 しかし、今回の派遣は、防衛省設置法4条に定められた「教育訓練」に基づいており、武器の携行も認められない。隊員に対する補償規定も明確でなく、同省・自衛隊内からも制度面の限界を指摘する声が出ている。最大野党の自民党も、特別措置法の制定が必要だと主張しており、「ねじれ国会の円滑な運営も考えれば、慎重に対応すべきだ」(防衛省幹部)との判断に傾いた。 実務面でも、自衛隊医官が実戦で負傷した兵士を治療した経験がないことを危惧する声があり、現地で活動する国際協力機構(JICA)などの民生支援を優先すべきだとの意見も強い。【坂口裕彦http://mainichi.jp/select/world/news/20110131ddm003030154000c.html

Img_4304  自衛隊のアフガニスタン派遣ですが、防衛省設置法にともづく海外出張扱いで自衛隊から医官を派遣する、というものでした。これは、昨年11月に横浜での日米首脳会談においてオバマ大統領に対して菅首相が対米公約として確約したものでしたが、元々は自衛隊をアフガニスタンに派遣する事でアフガニスタンへの復興に日本が尽力をしている事が大きなアピールとして映るだろう、という打算的なものでした。当時は普天間問題が再燃しつつある状況でオバマ大統領に対して具体的な進展を伝えるところを何もできていないという事でアフガニスタンへの自衛隊派遣、自衛官のアフガニスタン出張が提示されたものでした。冒頭に記したとおり、出張扱いで派遣部隊はISAFの指揮下に入らず、加えて非武装、というものでしたので、これは自衛艦を人身御供に出すようなものです。強行すれば現場の自衛官もISAFもアメリカにも迷惑が及ぶ事でしょう。

Img_2052  政府部内ではJICA等の民生支援を重視するべき、との声があるようですが、現状ではNATOの派遣国がなんとか自国の派遣部隊を撤収させたいというほど危険な状況でして、例えばイギリスはAH-64D戦闘ヘリコプターからトーネード攻撃機まで派遣して部隊を支えているほどで、イギリス国防費にアフガニスタン派遣部隊用の装甲車や航空機、個人装備の費用が大きくのしかかっており、カナダは全廃予定だった戦車を新調、オランダはドイツ製長距離自走砲を、フランスも国産自走榴弾砲を展開させています。自衛隊の衛生部隊も戦車の後ろ盾が無ければ危険な状況でして、ここに民生支援を行う、という事は果たして可能なのでしょうか、イラクで外務省職員の方がやったようにSASやSEAL上がりの方が多数在籍する民間軍事会社の方にエスコートを依頼でもしなければ犠牲者は避けられないでしょう。夏以降に再度判断するようですが、中止を含め現実的に可能であり加えてアフガニスタン復興を目指すアメリカの政策に沿ったものとなる事を期待したいです。なお、下手に派遣すればイギリスの二の舞、防衛費は隊員の安全のための装甲車やヘリコプター、個人装備充実へかなりの増額を強いられることになるのは間違いありません。物事の決定は慎重にお願いしたいですね。

HARUNA

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F-X(次期戦闘機)選定と第五世代戦闘機 X-47B初飛行の報道に接して

2011-02-05 23:38:14 | 先端軍事テクノロジー

◆F-35Aという話も聞くのですが

 DVDからBDに移行中という事で、ちょっと個人的に時間が無い中ではあるのですが、アメリカで海軍次世代無人機X-47Bがエドワーズ空軍基地で4日に初飛行を果たした、との報に接しました。

Img_9341  そこで、最新鋭機が飛ぶたびに、F-X選定がどうなるのか、という事を考えたりするのですが、特にF-35Aについて。F-35といえば無人機ネットワークを維持する端末、ネットワークの無い航空自衛隊は先にこのネットワーク構築から行うべきでは、と。まずX-47Bというのはステルス無人機として設計された機体で、ノースロップグラマンを主契約企業として開発していた航空機、機体そのものはF-117のような輪郭なのですがエアインテイクや翼端部分はB-2のような形状の航空機、航空母艦より運用し、高い戦闘行動半径と無人機ならではの長大な滞空時間を誇り、多用途任務に充てる無人機の中では戦闘機としての任務に充てる事が出来る航空機、を目指しているそうです。

Img_9936  F-35,ペアを組むX-47は空母からの運用を想定しているのでこの場合考えるのは航空自衛隊が導入する可能性があるF-35Aではなく空母艦載機のF-35Cになるのですけれども、F-35CはX-47B,制式化されればF-47になるのか、RF-47,・・・、なんか偵察機みたいだな、では、MF-47か、そんな名前になるのだろうけれども、この機体とF-35Cの役割分担、というのを考えると第五世代機としての役割はちょっと分かりやすくなるのだと思います、F-35というのは、ABC問わず、ネットワーク戦の端末として、情報を中継し、任務を統制し、通信を維持する、そういう端末としての役割を期待しているのですよね、つまりステルス性というのはその端末が生存するための手段であって目的ではない、と。衛星通信で情報通信を維持しようとしても妨害に遭う可能性がある訳で、F-35Cは中継に当たり、通信を妨害する相手に対しては実力でこれを排除する、これが第五世代戦闘機の任務。

Img_0272  航空自衛隊はステルス機としてF-35Aを見ているのならば、これはかなり的外れだと思います。ステルス性は充分あるのだとは言い切れる航空機ですが、F-35はネットワークを一端を担うという事が目的であり、端末である訳です。ネットワークに加入することは従来の戦闘機でも可能でした、航空自衛隊ではF-4の時代からバッジシステムとの適合を考えていますので、バッジシステムは一種のネットワーク、これに加入することは既にできていたのですよね、このネットワークの利用効率を高めているのがF-15の近代化改修型、しかし、これら加入することは第四世代機までの必須で、第五世代機は、ネットワークを構築し運用し完成し統制することが出来る機体、そのネットワークは無人機により形成され、その打撃力により協同交戦能力を構成する。

Img_9118  しかし、例えば相手国に侵攻する場合等では、こうした第五世代機と第四世代機の能力の相違はかなり大きなものになると思うのですが、ネットワークの維持能力や構築能力は別として、戦闘機、航空優勢を確保するための戦術機材として観た場合には、第四世代機で第五世代機に対抗することは可能だ、と思うのですよね。まあ、なんといいますか第四世代機第五世代機というのが強調され始めたのはステルス性の高い航空機を開発し始める時期にかなりの開発費を必要とするので、その為に不便として、予算獲得のために使われたような気がしないのでもないのですが、ね。ステルス機に対抗するのならば、F-15Jにアメリカから何とかAPG-70レーダーを供与してもらって搭載した方が有効でしょう。F/A-18EのAPG-79は現時点で何とも言えないのですが、ロシアや中国がステルス機を導入するのでF-35で、というのは、・・・、まあ、F-35とともに強力な無人機装備体系を構築して敵の出撃前に基地を叩く、という運用でもなければ、あまり意味は無いようにも。

Img_0025  そういう意味で、使いこなせる航空機を選んで、そののちに無人機等のF-35が本来完成するべきネットワークを構築して、これを使いこなす端末としてF-35を導入する、という動きでも良いのではないでしょうか。使いこなせないにもかかわらずスマートフォンを予約して、周りには使いにくいから防水携帯にしろ、といわれつつも、ふ、これからの時代はスマートフォンさ、使い方はこれから考えるけれどもね、という方もいますので理解できるのですけれども、ね。・・・、いや私の事です。F-35Aに固執する場合は、そもそもF-35は戦闘機以外の側面をどれだけ航空自衛隊が活かしきれるのか、という事を考えるべきなのでは、と考える次第。しかし、・・・、いやなんでもないです。欲しいという気持ちはわかるのですよね、対ステルス機戦闘のモデルを構築するという意味でも。

HARUNA

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平成二十二年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報1

2011-02-04 22:18:24 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 九州霧島山の新燃岳ですが、ラハールの危険が高まってきました。自衛隊関連行事の前にこの話題。土石流と報じられていますがラハールは通常の土石流とは別物です。

Img_5849  霧島は火山活動が続き、降り積もった火山灰の上に少量でも雨が降った場合、土地は火山灰により吸水能力保水能力共に喪失している状態ですので、大規模な土石流が発生する、これをラハールといいます。ラハールは噴石よりも川や隘路に沿って広範囲に広がりまして、早めの避難が必要。また火口付近に雨が降る事で水蒸気爆発の危険性も高まり、警戒しなければなりません。

Img_9848  さて、自衛隊関連行事ですが、下関港あるかぽーと岸壁にて6日日曜日と7日月曜日に補給艦ましゅう、が一般公開されます。また、鹿児島港本港区北埠頭では、10日木曜日、11日金曜日、12日土曜日に掃海母艦うらが、が一般公開されることとなっています。詳報は地方協力本部HPをご覧ください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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自衛隊広報施設有料化社会実験終了 朝霞・佐世保・浜松の広報施設

2011-02-03 23:03:17 | 国際・政治

◆広報施設はこういう状況こそ強化すべき

 陸上自衛隊朝霞駐屯地に隣接する陸上自衛隊広報センター、海上自衛隊佐世保基地を見俯瞰する佐世保史料館、航空自衛隊浜松基地を眺める浜松広報館。

Img_2488  行政刷新会議事業仕分の結果に伴い、自衛隊広報はテーマパークであるとして無料での解放から有料化へと決定を下して三カ月を経た今年一月末、有料化の社会実験において必要な結果を見た、との防衛省の判断から広報施設を有料から自由開放に戻す事となりました。防衛はエンターテイメントだ!、と言わんばかりの行政刷新会議には非常に違和感を感じまして、戦車や航空機、艦船や防衛施設は確かに機能美を有しているものではありますが、損本来任務は国家の防衛と主権を実力により保持する事が目的であり、この為に用いられている国民の血税はどう実際に活用されているか、という点を広報しているのですからね。

Img_0315  佐世保史料館、足を運んだ時は当方も入場料を支払いましたが、本来、広報を有料、とする論理は成り立たないのです。政党政治家のHPが有料サイトのものもないのですし政党マニフェストも無料で配布していたのですから、事業仕分に携わる方々や頑張っていた方、広報、周知、というものについては少しくらい理解があると思ったのですが、当時はまあ、日本がこれも政治家を要請するという国民的取り組みを放棄した結果なのか、と残念に思ったりもしていたのですけれども、ね。まあ、国会議事堂をファッションショー会場に使われた方もいらしたので、趣味と実務の仕分が出来ていなかったのかもしれないのかな。

Img_0314  しかし、三ヶ月間とはいえ、軍事組織の広報を滞らせることになったのは大きな問題です。どんな事をやっているのか、志願制の日本においてはもともと国民と軍事組織の距離が小さな徴兵制国家と比べて情報が伝わりにくいのですから、暇だから行ってみようか的な雰囲気ではいることのできる広報館は、地方協力本部レベルでも必要な施設ともいえるわけです。加えて、自衛隊がどの程度の能力を持っているのかという点も広報しなければ伝わりにくく、言い換えれば日本が国外からの軍事的恫喝に曝された際への国民の安心にも一役買う部分はある、という事も忘れてはならないように考えます。財政難であるこうした時こそ防衛については、広報は強化するべきと考えるのですがどうでしょうか。

Img_2452  この他にも、中期防衛力整備計画や防衛計画の大綱など、何故陸上自衛隊には9個師団と6個旅団が必要なのか、如何にして護衛艦隊はシーレーンを防護するのか、どうして航空自衛隊に新しい第五世代の戦闘機が必要なのか、自衛隊の装備計画や編成の由来について、地方協力本部レベルでも常時入場可能な、これは駐屯地の資料館レベルのものでいいのですが、そうしたものがあってもいいのかな、と考えたりもしました。

HARUNA

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日本・インドネシアが協同でARF防災訓練を実施 来月15~17日

2011-02-02 23:31:44 | 防衛・安全保障

◆信頼醸成の観点からも重要な演習

 来月、ASEAN地域フォーラム(ARF)の地震対処訓練が日本とインドネシア共同開催というかたちをとりインドネシア国内で実施、自衛隊が派遣されるそうです。

Img_5634  日本インドネシア共同開催 ARF地震訓練 3月、スラウェシ島で 陸海空320人を派遣・・・ 防衛省・自衛隊は3月15日から同19日までインドネシアのスラウェシ島(セレベス島)最北端のマナドで行われるASEAN地域フォーラム(ARF)の「災害救援実動演習」を同国と共同開催するとともに、陸海空自衛隊から320人と艦艇・航空機を派遣する。このほか外務省、国際協力機構(JICA)なども参加を予定している。

Img_3270  同訓練はARF(26カ国+EU)の枠組みで実施、参加各国が災害救援にかかわる演練を通じ関係国との相互理解、協力関係の促進を図るのが目的。2009年5月にマニラで米比共催の第1回実動訓練を実施しており、今回が2回目。 演習はマナド沖で大地震と津波被害が発生し、要請を受けてARF各国が人道支援を実施するという想定で、各国が人員や装備などを派遣して救援活動を演習、地域の災害救援に関する対応能力を高めることをねらいとしている。

Img_5082  自衛隊は捜索救助や被災者、負傷者の輸送、医療活動などの訓練を予定している。 自衛隊の参加規模は、陸自が約60人とUH1多用途ヘリ2機、海自が約160人、輸送艦1隻、LCAC2隻、空自が約100人、C130H輸送機1機、KC767空中給油・輸送機1機、UH60J救難ヘリ2機http://www.asagumo-news.com/news/201101/110120/11012006.html

Img_9977  日本とインドネシア、ともに地震国であり防災に関する多くの蓄積を持っている国と、インド洋大津波災害により防災に関する関心が高まっている国により主催される地震対処訓練は、地震に続く津波災害に対する各国の連携要領を演練するという意味で非常に現実的な内容といえます。

Img_9495  しかし同時にこの訓練はASEAN地域フォーラムという枠組みの中での多国間共同訓練であるという点にも一つの注目を行う意義があるでしょう。ASEAN地域フォーラムは環太平洋地域における安全保障枠組みの一つであり、日米豪が比較的大きな影響力を有している枠組みです。

Img_3400  現在この地域に対しては、中国が影響力を増大しつつある中で、その行動そのものが不安定要素となっており、加えて安全保障を含めた中国独自の枠組として上海協力機構を立ち上げています。ASEAN地域フォーラムと同じく、一部で言われているような軍事同盟的な国際機構では無いのですが、一つの地域的枠組みであり、これに対して競合する枠組みであるARFにおいて信頼を更に醸成する試みとしては、重要な意味付けがある訳で、加えて、この地域に対する日本国の関心を明確に示すという意味合いも大きいといえましょう。

Img_0686  また、防災訓練として観た場合だけでも意義は大きいです。阪神大震災では日本側がアメリカからの海軍による支援の申し出を指揮系統や国内法、訓練面の不備から断る事例が、当時の村山内閣により当然のように行われており、結果的に人的損害に繋がった可能性が指摘されています。

Img_2587  この点はハイチ地震等大規模地震において受け入れ国の準備不足が被害増大に直結して結果的に援助国の大きな負担となる事例もありますので、まず、こうした演習を経て他国に軍隊が人道援助を目的として円滑に協力し合う体制を構築しておく、という事は平時であるからこそ重要といえるわけです。

Img_2563  付け加えるならば、太平洋側での巨大地震の危険性が強く警告されている日本にとっては、場合によっては自衛隊や米軍の支援だけでは対応できないような巨大災害の可能性も充分考えられる訳で、指揮官同士の連携要領を演練する事は次の地震に備えるという点からも、実施する価値が大きいと言えるのではないでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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福井県豪雪災害 敦賀市・越前市へ第14普通科連隊・第10戦車大隊等が災害派遣

2011-02-01 22:28:30 | 防災・災害派遣

◆北陸の豪雪に福井県知事より災害派遣要請

 福井県敦賀市の国道八号線が豪雪により通行不能となり、車両約150両が積雪により立ち往生する事態となりました。

Img_0704  金沢駐屯地や今津駐屯地には78式雪上車が配備されており駐屯地祭等で片隅に停車している様子を見る事が出来まして、この地方は豪雪地帯なのだという事を思い出しますが、今回の豪雪は異例の規模だったようです。今回の豪雪は豪雪地帯として知られる北陸地方にあっても異例の北陸本線塩津~直江津間が不通になり、特急が立ち往生している様子は報じられていました。

Img_0822  北陸自動車道も広範に通行止めとなりました。また国道八号線が積雪は県や国土交通省の除雪能力ではその通行が困難であったことから、1月31日1515時、福井県知事より金沢駐屯地の第14普通科連隊長へ除雪支援に関わる災害派遣要請が出されました。第14普通科連隊は石川県、福井県、富山県を警備管区に任務に当たっている連隊です。

Img_0759  これを受け第14普通科連隊は直ちに災害派遣部隊を編成、1553時に人員140名、車両30両を以て金沢駐屯地を出発、1700時に増援部隊として今津駐屯地より第10戦車大隊の人員80名が車両20両により出動、更には1920時に方面隊直轄の第372施設中隊が福井県の鯖江駐屯地を人員10名、車両3両を以て出発しました。

Img_2473  第14普通科連隊、第372施設中隊は共に2030時に福井市に隣接する武生市中央公園へ到達。第10戦車大隊は2153時に除雪支援を開始しています。日が換わり2月1日0300時、第10戦車大隊による除雪作業は終了、災害派遣要請に除雪支援に加え31日2100時以降に交付支援が追加されたため、0322時より孤立車両を中心に第10戦車大隊が給油支援を開始しています。

Img_2606  1日1000時に福井県知事より派遣部隊に対し撤収要請が出され、豪雪被害に対する災害派遣は終了しました。今回の災害派遣は人員240名(延べ480名)、車両60両(延べ120両)を以て実施されました。派遣部隊は出発から到達までを見ますと鯖江駐屯地の第372施設中隊が最寄りだったのですが、方面直轄の第4施設団隷下の中隊で人員は100名程度、とてもでは無いですが規模が派遣に対応していません。

Img_2292  北陸地方は、かなり以前から第14普通科連隊一個を以てその全域を担当するには広すぎることもあり、もう一個駐屯地があれば、との声があるようです。第10師団には豊川駐屯地の第49普通科連隊が新編されたさいに、どうせならば鯖江駐屯地を拡張して第49普通科連隊を移駐させては、とも思ったのですが今回の災害派遣事案で再度その事を思い出したりしました。

HARUNA

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