東京も桜が満開になり、こころなしか皆うきうきしているように思う。しかし、今年に入ってからはコロナ禍、ウクライナ、物価高など大変なことが続いた。知人から苦労している方のお話も時々お聴きする。
そんな中で、怒りの感情に支配されたり、あるいは愛の孤独感に支配されたりする人も少なくないようだ。しかし一方で、冗談のひとつも言いながら、たんたんと自分のペースで活動を続ける方もいらっしゃる。意外に人それぞれのようだ。
私はこの春はNPOで「生き甲斐の心理学」を教えている関係から、自然体を一緒に学んだりフロイトの防衛機制を学んだりした。感情を大切にしつつも感情に振り回されず、他人に迷惑をかけず自他肯定の道を歩むことを意識してきた。とはいえ、日常生活の中では感情をコントロールしイキイキと生きることは決して簡単ではないようだ。
さて、こんな時でもできることの一つに、意識して幸福感を味わうことがあるのではないだろうか。幸福に関しては人生の目的を定めてコツコツ励むような幸福の条件といった世界があるが、もう一つ身近なところで明るい感情、時に幸福感を味わうということがある。
親しい人と気楽な花見のひと時を持ったり、時に好物の料理を作ったり食べたり(最近は料理に嵌っている)、ほんのちょっとしたことで幸福感にあずかる。
私の好きな歌に、啄木の次の歌がある。幸福は幸福の条件だけでなく全く異なる幸福感の世界もあるのだ。
「友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」
文字のある世界の私たちは、こうして書かれた詩からも明るい感情を感じることができるが、縄文時代はどうだったのだろうか。今、多摩境の土器のムラのことをよく考えるが、土器のムラには土器のムラらしく失敗作の土器(使えない土器)が遺跡の中から見つかることが多いそうだ。そんな土器をじっくり眺める機会を最近持たせていただいたが、失敗作(例えば歪んだ深鉢)を作ってしまった縄文人はどうしたのだろうか。失敗作を日常の中で思いがけない使い方をして皆を笑わせたのだろうか。
1/10 感情と付き合う
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森 裕行
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