事例紹介コラムです。
昨日、なでしこジャパンの新監督が発表されました。当初の噂どおり、高倉さんでした。まずは今朝の山陽新聞朝刊の「新しく強いなでしこを」というタイトルの記事。さすが、詳しく書かれています。以下、抜粋して紹介。
今回の契約は2020年東京五輪までの指揮を前提としたもの。6月2日のアウェー米国戦が初陣。高倉監督は当面はU-20女子代表監督も兼務。高倉監督は選手の持ち味を見極める観察力に定評があり、会見でも「パフォーマンスを注意深く見ていく」と強調。今後の活動でこれまで代表での実績が無かった選手にスポットライトが当たる可能性も。
形骸化が指摘されていた女子委員会は一新され、代表の試合数増加や短期合宿の実施も検討。今井委員長は「このチャレンジが成功するように最大限のサポートをしたい」とコメント。
先駆者の自覚を持ち、心の強さは人一倍。「選手の時から一番前を歩く役割。最初に歩いて行く事にプレッシャーを感じていない」とコメント。夫の竹本氏も日本代表コーチの経験があり、現在はJ2東京VのGM職。サッカー界で有名なおしどり夫婦。
そうでした。高倉監督のご主人は、某黄色いチームでネル監督を連れてきた功労者の竹本元GMでしたね。S級ライセンスを取った女性指導者で高倉監督は3番目と聞いており、確か女性初はあの本田監督だったと思いますが、正直本田さんよりもレベルが上のような気がします。以下は、サッカーキングの記事です。抜粋して紹介。
日本サッカー協会は新監督にU-20日本女子代表の高倉監督が就任すると発表。なでしこジャパンの監督を女性指導者が務めるのは史上初。高倉監督は1968年生まれ。選手時代は読売日本サッカークラブ・ベレーザ等でプレー。’00年にはMLSのシリコンバレー・レッドデビルズに移籍。復帰した国内で’04シーズン限りで現役を引退。Lリーグ(現・なでしこリーグ)でMVPを2回受賞。ベストイレブンには7回選出。
日本代表では、’83年から、国際Aマッチ通算79試合出場29ゴールを記録。’96年のアトランタ五輪にも出場。現役引退後は指導者に転身。’07年以降はJFAナショナルコーチングスタッフとして活動。’09年にU-16代表コーチ、’13年にはU-16代表監督に就任。そのまま継し、現在U-20代表監督として活躍。実績としては、’14年のAFC・U-16女子選手権、U-17女子W杯で大会初制覇。’12年と’13年には、AFC アジア年間最優秀コーチ(女子の部)を受賞。
サッカーキング該当記事:http://www.soccer-king.jp/news/japan/nadeshiko/20160427/435563.html
当ブログでヤングなでしこの観戦レポを書いた事がありましたが、その時は4位どまり。その大会で優勝したというのはすごいですね。実績は申し分ないと思います。何かエピソードなど高倉監督の事がわかる情報を探しましたが、なかなか無い。その中で、NUMBERの記事を見つけたので抜粋して紹介。
U-17女子W杯('14年)で日本は6戦全勝で初優勝。登録メンバー21人全員を起用し、得点者は12人。総得点は23、失点はわずか1。リトルなでしこの圧倒的な強さについて。高倉監督のコメントは「負けていい試合はないですよね」というもの。
大事なのは結果か内容か。いわゆる育成年代において指導者が勝敗だけにこだわることは、未来ある選手たちの可能性を奪いかねないという考え方もあるが、高倉監督は勝利に執着。15~17歳の選手たちに、内容も求めるが、その上で「勝つために努力すべきことを、身を以て知る」機会を提供。試合に勝つために、選手それぞれが何をするのか、チームとして何をするのか。それらを理解し、試合でどんな状況でも実行できるようになるために練習を継続。
「1秒後に目の前の世界がどう変化しているのか。それを全員が予測して行動。これは、大人になったら自然にできるわけではなくて、若いうちから積み上げるものだと思う」と高倉監督のコメント。
組織的な守備でスペインのポゼッションを無効化。初戦の相手スペインに対して、苦戦か完敗かと、高倉監督は心配していたが、リトルなでしこは、相手を見て、考えて、粘り強く対応して、2-0で勝利。特に、11人全体が連動した組織的な守備が、勝利を引き寄せる要因。スペインはボールを保持しつつも、ハーフウェーラインから先にまったくボールを運べない状況。
決勝で再戦すると、スペインは早めからロングボールを多用し、日本の弱点をあぶり出そうとしたが、日本の守備陣も集中力を切らさず、互いに連携してゴールを死守。
学びながら勝つ。勝ちながら学ぶ。そのようにして強くなった好例が、'11~'12年にかけてのなでしこジャパン。高倉監督いわく「現状でもひ弱さを感じる体格差をどうやって補うのか? なでしこジャパンはW杯で勝ち癖を覚えて、劣勢な試合でも勝てるようになった。やられそうなのにやられない、王者の戦い方。勝負事に対するしたたかさを、日本人は持っていないと言われますが、勝つとそういうものを得られる」
世界を制したリトルなでしこたちの前には、やがて「20歳の壁」が立ちはだかる。米国やドイツをはじめとする各国の選手たちは、17歳を越えた頃からパワートレーニングに力を入れ始め、20歳前後でその成果がプレーに反映。
「フィジカル的な差による影響が小さいとされる17歳の時点でも、今回の日本はひ弱さが目立った。どのゲームもみんな頑張りましたが、ほんのちょっとの球際のプレーや局面で、負ける場面も」
ボール扱いが上手いだけでなく、相手に邪魔をされる状況でも技術を出せる選手をW杯に連れてきたはずの高倉監督からすれば、思い通りにいかない展開もしばしば見られた。
「日本の将来を考えると、危機感も強い」と高倉監督のコメント。体格差を補える選手に育つには、判断の速さ、技術の正確性を伸ばすことを更に要求。勝利しながらも学んだ大切なことは、そこにあると締めくくっています。
Number WEB該当記事:http://number.bunshun.jp/articles/-/818678
なでしこジャパンの今後の日程で、現時点で発表されているのは、6月のアウェー米国2戦のみ。本来はこの後に8月のリオ五輪を見込んでいた事でしょう。FIFAが定めた'16年の残る国際Aマッチデーは9月2試合、10月2試合、11月2試合。秋に計6試合を組むことができるそうだが、U-20の試合もあるだろうし、どうなのでしょうか。
勝ちにこだわるというのはいいですね。負けた試合の時に選手を強く攻めたかつてのネル監督を思い出します。そういえばハリル監督も元々はそうじゃなかったっけ。学びながら勝つというのもいいですね。まさにリスペクトするサッカーです。
気になるのが「20歳の壁」。確かに女子W杯で当たってきたアメリカやドイツってどうしてあんなプロレスラーのような体なんだと思っていました。17歳から筋肉トレーニングをしているとは。女子テニスの中継で観るウィリアムス姉妹みたいですね。それじゃあ勝てんかとおもいきや、'11年の日本は勝っている訳ですから、対抗できない訳ではないでしょう。通用した佐々木監督のサッカーが研究されまくって、去年惨敗しています。ここからなでしこのサッカーを変えるのは高倉さんに期待しましょう。U-20と兼任というのもいいじゃないですか。かつてのトルシエもそうでしたから。
もう一つ気になるのが、いくら下のカテゴリで強かってもA代表で結果を出した監督は見当たらない事。五輪代表監督でもA代表監督に上りつめた人はいません。アトランタの奇跡(ブラジルに勝利)の西野監督、ベスト4になった関塚監督もJ1監督止まりです。その壁も破ってもらいましょう。高倉さんならできそうな気がします。