弁当箱の中身は豚肉の塩カルビである。
と、どこか彼方からブヒッ!ブヒーッの鳴き声。
なんとハム工場からであった。
ハム工場で…?と思いながらも、終始呻声は続いた。
それからというもの、弁当の味が若干変わった気がした。
(タマコシエイト 岐阜県大垣市郭町)
昭和37年(1962)11月、タマコシ大垣店として開店したローカルデパート。地上7階、地下1階、5,336m2を有するRC造の構築物である。 この地に何度も訪れている私でさえ、閉店数年前まで存在を知らなかった目立たない店。然しながらその外観はインパクトがあり、営業中から終焉テイストが漂っていた。増床計画の措置が逆に終りが予知されていたが如く、暗い哀愁を訴えかけている様であった…。 業態をディスカウントストアに変更するも、末期には次第に階上閉鎖が始まり、平成16年2月、タマコシの民事再生法申請に至りグループ3社が経営破綻したのを機に閉店。同じ流通グループであった滋賀県の中堅スーパー平和堂との基本合意締結をするも、この大垣店は老朽化を理由に譲渡されず、同年秋に解体された。
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(愛知県岡崎市)
五万石の城堀代わりに使われた川。その間近に架る鉄道鉄橋の橋脚である。
大正12年(1923)愛知電気鉄道の橋梁として築造されたものであり、橋長は170mである。
…どれだけの鉄輪と水流を耐えてきたのであろうか。
(きなさ おくすそばな 長野市鬼無里 日本百景 日本の秘境100選37番 水源の森百選48番 2005年4月29日)
先頃、長野市に編入された鬼無里・戸隠。どことなく神秘的な雰囲気漂うこの辺り。付近は多数の崖崩れが見受けられ、この地方のサバ土地質、雪深さが影響しているものと思われる。麓の朝は19℃の気温。然しながら渓谷に差し掛かるにつれ吐く息が白くなってくるのが分かった。裾花川を遡ると、秘境的要素が増し、人家も無くなる。そしてガードレールも無い崖上の道を更に上り、保護園入口に到着した。辺りは未だ積雪が残り、場所によってはメートルに達する所も存在した。標高1200m、戸隠連山に囲まれた奥裾花と呼ばれる此地は、通常の時節であると雪も大分溶け、水芭蕉が多く見受けられ最盛期には81万本咲き誇る日本一の地であるが、今年は春の訪れが遅く、ようやく所々で顔を出しているような状態であった。先日の雨の日もここでは雪が降ったそうである。危険な雪山道を歩かなければならないため、諦める者も居り、五月中葉以降が見頃かと思われた。私は雪道を歩くのが好きであり、付近を歩き回ってみたが、早春の頃へと後戻りした様な初志貫徹といった語句が脳裏に浮かんだ。麓では晴れているであろう日和も、ここでは曇り。次第に小雨がパラつき始めた。ほぼ一通り散策したため、雨凌ぎに山小屋に入ることにした。歩くと暑いと感じられた気温も、実は一桁の温度であり寒い。小屋の扉から見える白い山並みと雪解けの水量豊富な滝の音。止み間をみて山腹の茶屋まで降りた。ここは一般車両の進入上限であり、駐車場となっている。帰りのバスの時間まで二時間あったが、雨が降り続いているため、ただジッと佇むこととなった。それでも空気が清浄であり心が洗われ、無駄な空き時間とは感じなかったと思う。