「NHKの280インチの大画面で高梨選手の金メタルジャンプを目撃しました!」と報告するつもりだったが、残念な結果となってしまった。昨夜、NHK札幌放送局でおよそ30人の方々と静かに声援を送ったのだが…。
※ 北京冬季オリンピックジャンプ競技の高梨選手のフォームです。2回目には意地の100mジャンプでした。
昨夜午後6時30分からNHK札幌放送局の8K公開スタジオにおいて、北京五輪の女子ジャンプ競技を観戦のためのパブリックビューイングが開催された。入場券を入手して会場に行ったところ、すでにおよそ30人の方々が集まっていた。
※ カメラで写せた唯一の写真で、NHK札幌放送局の前に立てられたパブリックビューイングを知らせる看板です。
競技開始は7時30分からだったが、その前に小山凌アナウンサーの司会によって、元スキージャンプ選手の山田いずみさんがジャンプ競技の特徴、観方などを説明するトークセッションが設けられていた。ジャンプ競技については、私もかなりテレビなどで知識を得ていたので、特に耳新しいことを得たわけではなかったが、改めてジャンプ競技が選手同士の戦いであるとともに、風との闘いでもあることを山田さんの言葉から再認識することができた。
※ NHK札幌放送局の小山アナウンサーです。 ※ 元女子ジャンプ競技選手の山田いずみさんです。
280インチの画面はさすがに大きい。目の前に大きな画面が迫ってくるようで、選手たちの迫力あるジャンプを楽しむことができた。
競技の経過そのものについては私が説明するまでもなく、高梨選手をはじめ、他の日本人選手3名も願っていたような成績を挙げることはできなかった。
高梨選手は結局、メダル一歩手前の第4位という結果に終わったのだが、十分に準備し、精一杯の戦いだったと思えた。冷静に考えると、高梨選手が金メダルに最も近づいた大会はソチ大会だったのではないかと思える。当時の彼女は世界と戦うワールドカップにおいて向かうところ敵なしの状況だったが、大会本番では風のいたずらも手伝い金メダルどころか第4位という残念な結果に終わった。その頃はまだ女子ジャンプの普及度も今ほどではなく、高梨選手の技術が圧倒していた時代だった。
その後徐々に競技も普及し、体格の良い外国人選手の台頭もあり、それほどたやすくは勝てない状況となったが、それでも高梨選手は健闘していた。そして迎えた2018年の平昌大会、ここでも金メダルを期待されていたのだが、結果は銅メダルだった。
彼女が苦戦するようになった理由の一つは、彼女の身長が152cmと女子選手の中でも小柄のためにスキー板の長さが制限を受けて短いことがある。(正式には身長だけではなく、体重なども加味されて長さが指定されるようだ)板が短ければ浮力も当然小さくなり、ジャンプには不利である。また、筋力も劣るためスキー操作が難しいことにも繋がってくる。さらには高梨選手の最大の特長であるスキー技術も外国人選手が学習することによって、技術差が縮まってしまったことが挙げられる。
こうした不利な条件の中で彼女は懸命に闘ってきたのだ。伝えられるところでは、平昌大会以降、自分のそれまで積み上げてきたジャンプ技術を一度解体し、再びより高度な技術の構築に努めたという。
そうした努力、工夫を重ねて迎えた北京大会だったのが…。北京は高梨選手に残酷な結果をもたらすことになってしまった…。
試合を終えた彼女のコメントが痛々しい。「結果で恩返しできなかったのが、悔やまれるところです。私は頑張って当たり前だった。頑張っても結果を残せなければ意味がないので、私の頑張りが足りなかったんだと思う」と…。そんなことはない。彼女は十分頑張ったし、その頑張りが尊かったと私には思える。彼女の努力を知っている私は、心から彼女の努力を讃えて「ご苦労さん。あなたの努力は素晴らしかった。ゆっくり休んでください」という言葉を送りたい。
彼女は今後について次のように語っている。「結果を受け入れているので、私の出る幕はないのかもしれないな、という気持ちもあります」と…。彼女はこの大会を期に第一線を退くことになるかもしれない。
もし、そうした事態になったとしても彼女は別の世界できっと輝く存在になれる女性のような気がしてならない
《北京冬季五輪寸評》
男子スキーモーグル競技の優勝候補と目された堀島行真選手が予選15位と出遅れて心配されたが、その後は実力を発揮して銅メダルを獲得し、日本選手最初のメダリストになったのは見事だった。
その他の競技も次々と始まっているが、昨日、今日と女子ジャンプ同様思うような結果とはなっていないようだが、これからの健闘に期待したいと思う。
※ 残念ながら会場内でのカメラはNGだった。そのため掲載した写真はウェブ上から拝借した。