長い名前のマンドリンのオーケストラ名(その意味は後述します)だが、その「アウロラ」が創立100周年を記念した演奏会である。やはりマンドリンはある程度のボリュームがあってこそその魅力を発揮する、そう思わせてくれた演奏会だった。
7月16日(日)午後、北海道立道民活動センター「かでるホール」において北大チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」の創立100周年記念演奏会が開催されたので鑑賞に出かけた。100周年という重みだろうか?先輩たちも多数駆け付けていたのだろう、キャパ521の客席はほぼ満席の盛況だった。
さて、チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」の意味だが、調べたところマンドリンがイタリアで生まれたことから、全てをイタリア語から引用しているようである。「チルコロ(Circolo)」はサークル、「マンドリニスティコ(Mandolinistico)」はマンドリン奏者、そして「アウロラ(Aurora)」はオーロラという意味である。したがって、「マンドリン奏者のサークル “オーロラ”」といった団体名ということだ。
※ ステージのバックには団旗ならぬサークル旗が掲げられていました。
記念演奏会は3部構成からなっていた。
第1部は、現役とOBの混成で、
◆ジュゼッペ・ベルレンギ/華麗なワルツ「東洋の香り」
◆ジュゼッペ・ディエゴ・アネッリ/序曲「イタリアの復活」
◆ローラン・ファンタウッツイ/優雅な幻想曲「アウロラ」
を、それぞれ歴代の指揮者が代わる代わる登場して演奏した。
第2部は、現役だけのステージで、
◆エンリオ・モリコーネ/ニュー・シネマ・パラダイス
◆アメデオ・アマディ/海の組曲
第一楽章 ナイアーデのセレナータ
第二楽章 オンディーナの踊り
第三楽章 シレーナの唄
第四楽章 トリトーネのフーガ
第3部は、再び現役とOBの混成に加えて、管楽器とパーカッションに賛助出演を得ての演奏となった。
◆鈴木静一/楽詩「雪の造形」
第一楽章 枯野に散る霙 (北大の北郊にて)
第二楽章 雪の造形 (ニセコにて)
第三楽章 月冴えて (北大校庭にて)
そして最後に、第44代指揮者の阿部純一氏による挨拶と礼奏としてカルロ・ムニエル作曲の「祈り」が演奏され、全ての日程を終えた。
第1部は総勢95名のマンドリンオーケストラの魅力を十分に堪能させてくれた。弦だけによる繊細な音の厚みと重なりが心地よく耳に届いた。私から見て、特にOBの方たちが嬉々として演奏していた姿が印象的だった。
第2部は現役部員だけのステージだったが、こちらは私が数えたところ28名という部員数だったことで、どうしても第1部のステージと比べると寂しさは隠せなかった。やはりマンドリンオーケストラの魅力を発揮するには最低でも50名程度は必要なのでは?と思ったのだがどうなのだろうか?ただ彼らが演奏した「海の組曲」は、先輩諸氏も現役当時に演奏に取り組んだマンドリンの名曲らしい。彼らの演奏がOBの方たちの郷愁をかきたてた一曲だったようだ。
第3部は先述したように95名のOBと現役に、賛助出演の管楽器とパーカッションが加わり、紡ぎ出す音がさらに厚さを増し、管楽器と弦楽器と重なって素晴らしい「雪の造形」の世界を創出してくれた。
※ 演奏中はもちろん撮影は禁止でしたが、コンサートを終えた後記念撮影をするということで、その用意をしているところを一枚撮らせてもらいました。
感動的だったのは、第44代指揮者の阿部純一氏による挨拶の時だった。阿部氏にとって現役時代に取り組んだ「海の組曲」は思い出の強い一曲だったようだ。その曲をこの日現役部員が演奏してくれたことがことのほか嬉しかったらしい。挨拶の中で阿部氏は何度も声を詰まらせた。計算すると阿部氏は70代後半の方のようだ。阿部氏にとって青春の情熱を傾け続けた50数年前の自らの姿が走馬灯のように駆け回ったようだった。そのような阿部氏の姿を見て、私も思わず落涙してしまったのだった。
その阿部氏が礼奏として指揮した「祈り」はことのほか、私の心にしみた一曲だった…。