我が国オーケストラの最高峰とも称せられるNHK交響楽団(N響)のコンサートを初めて聴くことができた!奏でられる柔らかな音色は “さすが!” との思いだった。また客演の松田華音さんのピアノの超絶技巧には驚くばかりだった…。
昨夜(8月28日)、札幌コンサートホールKitaraにおいて「NHK交響楽団演奏会」が開催された。
札幌に住む私たちとしてはプロのオーケストラというと札幌交響楽団を聴くのが常である。他のオケと聴き比べたいと思っても、なかなかその機会はない。今回N響が数年ぶりに来札するということを知り是が非でもとKitaraに駆け付けた。
この夜のプログラムは、
◆チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番 変ロ長調 作品23
Ⅰ アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ
Ⅱ アンダンティーノ・センブリチェ
Ⅲ 終曲:アレグロ・コン・フオーコ
◆チャイコフスキー/交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
Ⅰ アダージョーアレグロ・ノン・トロッポ
Ⅱ アレグロ・コン・グラーチア
Ⅲ アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
Ⅳ 終曲;アダージョ・ラメントーソ
最初の曲、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲」の始まりは、聴き覚えのある弦のメロディーで始まった。その音色の柔らかなこと、「これがN響の音か!」と思わせるほど私にとっては衝撃的だった。そこから後は、ピアノの松田華音さんの世界だった。あの細身の身体のどこからあれだけのエネルギーがほとばしるのか?というほどの超高速の指さばきは、適切な表現かどうかは別にして、まるで絶頂期のアスリートのプレイを見せられているようでもあった。いったいあのような超絶技巧をいつまで続けることができるのだろうかと思い、彼女の年齢をネットで調べてみたところまだ27歳だということ分かった。しばらくはあの超絶技巧を聴くことができるようだ。
一曲目は、松田華音さんのピアノに意識を奪われ、N響の音を堪能できたとは言い難かった。しかし、2曲目のチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」は、N響の音を十分に堪能することができた。「悲愴」は私からみると面白い構成だと思われた。第1楽章はこの曲の主題を表現するようにゆったりとした、それでいてどこか物悲しい雰囲気だったが、第2楽章ではワルツふうの軽快な調べが心地よく耳に届いた。そして第3楽章では曲は大いに盛り上がり、あるいは終曲ではないかと思われるくらい盛り上がって楽章を終えた。そして第4楽章はこの曲が「悲愴」と命名された所以だろうか?静かに、そして物悲しく演奏が終わる構成だった。
肝心のN響の演奏だが、その安定した演奏はさすがに「N響の音!」という思いで私は聴いた。ただ、私の耳では札響との明確な違いを聴き分けることはできなかった。
指揮を務めたのはラドヴィア人のアンドリス・ポーガという巨漢の方だったが、表情豊かに90名を超えるN響のメンバーを良く統率していたと私はみた。
何年ぶりなのか承知していないが(ポスターに4年ぶりと表示されていた)、「N響が札幌に来演する」ということはクラシックファンにとってはビッグニュースに違いない。満席の客席がそのことを何より物語っていた。私にとっても念願がかなった演奏会だった。