現役世代のUターン、Iターンを後押しする、いわゆる地方創生をテーマとした映画だった。趣旨は理解できるのだが、どうも出演者の演技力がイマイチのため映画に没入できないきらいがあったのが残念だった…。
昨日(2月29日) 午前、市民活動サポートセンターが主催する「エルプラ・シネマ」がエルプラザであり、参加した。今回取り上げられた映画は「波乗りオフィスへようこそ」といって、一見分かりづらい題名の映画なのだが…。
映画自体はフィクションだが、原案は存在する。それは徳島県美波町に本社をおくサイファー・テック株式会社および株式会社あわえの社長である吉田基晴が著した「本社は田舎に限る」がベースとなっているということだ。
ストーリーは、東京でセキュリティソフト会社を経営する徳永(関口知宏)は、会社のエンジニアを確保できないことに悩み続けていた。東京で人材を確保することに限界を感じた徳永は、副社長の沢田(田中幸太朗)と共に彼の故郷である徳島県美波町にサテライトオフィスを構え、人材を確保したいと考えた。美波町は太平洋に面していてサーフィンの適地でもあった。
人材募集を始めると、働きながらサーフィンも楽しみたい。また勤務の合い間に四国八十八か所を巡りたい。あるいは、釣りを楽しみながら勤務したい。などといった人たちが次々と応募してきた。映画の題名は、そこから名付けられたようだ。
※ 美波町の再生について徳永と岩佐が語り合うシーンです。
徳永はセキュリティソフト会社を軌道に乗せるだけではなく、疲弊し、限界集落と呼ばれる故郷美波町の再生にも力を入れ始める。そこには強力に助っ人も現れた。徳永の同級生であり役場に勤める久米(柏原収史)、地元の起業家の岩佐(宇崎竜童)たちである。徳永は彼らと共に、美波町の豊かな自然を生かした策を次々と考え、実行に移していった。
映画の最後のシーンはフィクションならではの伏線が用意されていた。ここで観客はホロリさせられてしまうのではないだろうか?実際私がそうだった。
ところが映画全体としては、リード文でも触れたように主演の関口知宏をはじめとして出演者の多くの演技がどうもいま一つのような気がして仕方がなかった。その中で、宇崎竜童の存在が際立っていたように思えた。
※ 映画の最後、美波町の再生に奔走した人たちがある人を迎えるシーンです。
町の中学校のブラスバンドも一役かっています。
さて主題についての考察であるが、私がオホーツクの田舎から札幌へ転居したころは、いわゆる田舎への移住ブームが声高に語られていた。しかし、私と相前後して札幌へ転居した友人と「田舎への移住がブームのように語られているけど、実際は私たちのようなケースが多いのではないか」と語り合ったものだ。実際に札幌の人口動態を伝える新聞記事を見てもそのことは裏付けられているようだ。
地方にとって、またそこに住む人たちにとって、住民が減っていくことは大問題である。限界集落などと言って、集落そのものが成り立たなくなると、そこで生きていくことさえ困難となる。
そうした地方ではさまざまな試行錯誤が続いていると思われるのだが、映画のような成功例はあるとしても、それが全国的な動きにはなっていないところが問題である。
こうした現状の中で自治体内における「コンパクトシティ化」を目指す動きが進んでいる。あるいは、将来的にはもっと大きな単位での「コンパクトシティ化」が進んでいくのだろうか?