札幌の「偕楽園」は、計画的に造成された日本最古の都市公園だということを初めて知った。また、公園内に建てられている「清華亭」は幾多の数奇な運命を辿り、現在に至っていることを知ることのできた講演だった。
昨日16日(水)午後、かでる2・7において北海道文化財保護協会主催の「文化財講演会」が開催されたので参加し、聴講した。
講演題は「清華亭と偕楽園 ~その一隅の今は~」と題して同協会理事の遠藤紘之助氏が務めた。遠藤氏のお話は平易な言葉づかいでとても聴きやすい講演だった。
さて、「偕楽園」というと日本三名園の一つとして知られる水戸市の「偕楽園」が有名である。古来日本では公園というと水戸市の「偕楽園」のように大名たちが国元や江戸の屋敷に造成するものがほとんどだった。そうしたものとは違って明治の世になると、都市計画の一環としての公園づくりが進められるようになったが、その第一号が札幌の「偕楽園」ということだ。「偕楽園」という名は、札幌・薄野の命名者として知られる薄井龍之が名付けたという。その由来は、中国の思想家孟子の「古い(いにしえ)の人は、民と偕(とも)に楽しむ」から来ているという。
札幌の「偕楽園」は当初の面積が24万坪、開拓使末期には70万坪という広大なもので、公園内には製物場、鮭孵化場、博物場、育種場などさまざまな施設が建てられていたと伝えられている。
その「偕楽園」に、1880(明治13)年明治天皇が北海道開拓10年の様子を視察することになり、その視察の折りの貴賓接待所として同年に建てられたのが「清華亭」である。
※ 現存する「清華亭」です。来年度修復作業が予定されているとのことです。
その「清華亭」は建設費が今の価値にして約3,000万円をかけて建てられたが、天皇が滞在したのは僅か30分程度だったという。当時の天皇の行幸というのがいかに重大なことであったかを窺い知れる話である。
私が初めてお聴きする話として興味あることを伺った。それは「清華亭」と同じく札幌市指定有名文化財に指定されている「旧永山武四郎邸」の造りが「清華亭」そっくりだということなのだ。これは永山武四郎がことのほか明治天皇を崇拝していたことから「清華亭」を参考にして建設したと考えられるとの講師のお話だった。
※ 清華亭を模して建てられたという「旧永山武四郎邸」です。
さてその後の「偕楽園」並びに「清華亭」の変遷は幾多の運命に翻弄されたようだ。前述した「偕楽園」に集約されていた各種施設は札幌の発展と共に分散してゆき、明治20年以降は「中島公園」が整備されるにつれ「偕楽園」の存在価値は相対的に低くなっていったという。そして明治31年になると、「偕楽園」の土地は民間に払い下げられ民有地となってしまったそうだ。またその「偕楽園」内に建てられていた「清華亭」も同様に民間に払い下げられ、個人の別荘や料亭などとして利用されたが、いずれも長くは続かず別の人の手に渡るなどしてやがては忘れられた存在となり、辺りは荒れ果てていったという。民有地となった旧偕楽園一帯は、その後の札幌の発展と共に次々と住宅地となっていき、わずかに残った空き地が子どもたちの遊び場になっていた。その後、残された空き地一帯は1979(昭和54)年に整備されて「かいらくえん公園」となり、さらに2002(平成14)年には「偕楽園緑地」と公示され、今に至っているそうだ。
一方、「清華亭」の方も前述したように荒れ果てた状態となったことに対して、昭和5年に市民たちが立ち上がって保存運動を起こして買い取り札幌市に寄付したそうだ。しかし、間に戦争などもあり再び荒れ果てたが、1961(昭和36)年に札幌市の有形文化財に指定され、1978(昭和53)年に全面的な復元・修復工事によって現在の姿になっているという。復元工事から40年以上が経過し老朽化も進んでいるため、来年度に修復工事が予定されているとのことである。
講演はこの「偕楽園」と「清華亭」以外にも、それにまつわるお話が聞けたのだが、字数が多くなるため割愛したい。
※ 「文化財講演会」で遠藤講師のお話を聴く受講者たちです。
私は「偕楽園緑地」も「清華亭」も訪れたことがあるが、今回お聴きしたような歴史があることを初めて知った。札幌の歴史をより深く知る意味において、北海道文化財保護協会の「文化財講演会」はとても有益に思える。今後も機会があれば積極的に受講したいと思っている。
《北京冬季五輪寸評》
本日の最大の話題は、やはりスピードスケート女子1000mの高木美帆選手の金メダルだろう。高木選手はここまで銀メダル3個を獲得していた。1000mももし銀メダルだと「シルバーコレクター」などとあるいは揶揄されたかもしれないが、見事に金メダルに輝いたことを讃えたい。彼女は報道陣などへのリップサービスなどには無関心なようで、国民的な人気はイマイチかもしれないが、その実績たるや今大会最大のスターに駆け上がったといえるだろう。一方、平昌大会で銀メダルだった小平奈緒選手は健闘むなしく第10位に沈んだ。残念なことだが、小平選手はすでにピークを越えているのかな?という滑りだった。これまで世界に君臨し続けてきた小平選手に「ご苦労さま」の拍手を送りたい。
続いて、連日その戦いを追い続けたカーリング女子は、決勝トーナメント進出をかけてスイスと対戦したが、残念ながら敗戦となり予選リーグを5勝4敗で終えた。予選リーグ敗退かと思われたが、5勝4敗に日本、カナダ、イギリスが並んだために、あらかじめ行われていたドローショットチャレンジ(DSC)の成績によりからくもイギリス、日本が決勝トーナメントに進出することができるという幸運に恵まれた。明日、決勝進出をかけて本日敗れたスイスと再び対戦する。スイスは予選リーグを7勝1敗と1位通過している強豪である。ここにきてスキップの藤沢五月選手が調子を落としていることが心配だが、今夜みんなで気分転換をして、明日はぜひともジャイアントキリングを果たしてもらいたい。
また、今夜のフィギアスケートにおいて坂本花織選手がSPの第三位を死守できるか注目したい。