同じ楽曲でもシチュエーションが異なると、これほど違った感想を抱くものか!と実感させられた昨日のガラコンサートだった。そうした意味で今年のPMFは私にとっては記憶に残るPMF2023となった。
昨日の投稿でも触れたとおり、友人から譲っていただいたチケットでPMF2023のGARA CONCERTを聴くことができた。
ガラコンサートとは、特別な演奏会というような意味があり、PMFに集った世界の若手演奏家たちが研修を重ねながら、市内各所で演奏会を実施してきた集大成としての「特別演奏会」あるいは「記念演奏会」という意味があるようだ。
出演は指揮者にトーマス・ダウスゴー氏、ヴァイオリンソロに金川真弓さん、ブラスアンサンブルのARK BRASSの6人、と前日とほぼ同じだったが、ピクニックコンサートでは最初に演奏があったPMFアカデミー生のパーカッションメンバーによる和太鼓の演奏はなかった。またARK BRASSの演奏曲目は前日とは異なった曲目だった。重複することになるが、昨日のプログラムを紹介すると…、
《第1部》ARK BRASSによる
◆S.シャイト/戦いの組曲
(〇戦いのガリヤード〇悲しみのクーラント〇ベルガマスクのカンツォーン)
◆ヘンリー八世/組曲「棘のない薔薇」
(〇私にとって大いなる喜び〇良き仲間と気晴らし―ああマダム〇さよならマダム、そして愛しい人〇タンデル・ナーケン〇別れはつらい〇まことの愛―良き仲間との気晴らし)
ARK BRASS + PMFアメリカ + PMFオーケストラメンバーによる
◆ウォルトン/「スピットファイヤ」前奏曲とフーガ
《第2部》は前日同様の曲目であり、演奏陣だったが、指揮者はトーマス・ダウスゴー氏がタクトを振って…、PMFアメリカ、PMFオーケストラの総勢90名を超える大編成で次の曲目を演奏した。
◆メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
※ ヴァイオリンは金川真弓さん
◆ブルックナー/交響曲 第9番 ニ短調(第4楽章補筆完成版)
さて、野外(ピクニックコンサート)と屋内(ガラコンサート)との感想の違いだが、私が特にその違いを感じたのが第2部においてだった。特にそのことを感じさせられたのが、金川真弓さんのヴァイオリンだった。前日のピクニックコンサートでは野外に響き渡った金川さんの力強い弦の響きが印象的だったが、この日の金川さんの演奏は力強いというよりは繊細な指さばきが非常に印象的だった。
同じ演奏者が会場によって演奏を違えるはずがない。それは聴いている私自身にその理由があると考えた。
ピクニックコンサートは野外という開放された空間で聴くコンサートである。その空間では、会場を吹きわたる風、芝生の匂い、時には森で囀る小鳥の鳴き声さえがコンサートの一部を構成している。私たちはその全てを受容しながらコンサートを楽しんでいるのである。対して、音楽専用ホールで聴くそれはひたすら奏でられる音に集中して聴き入るという違いがある。
どちらがどうということではない。私はピクニックコンサートも野外で聴く心地良さを感じながら十分に楽しむことができた。
一方、Kitaraという音楽専用ホールで聴くコンサートは、奏者の一挙手一投足に視線を集中し、奏でられる音に全神経を傾けて聴き入るところに大きな違いを感じた。そういう意味では、ピクニックコンサートでは気付かなかった金川真弓さんの繊細にして超人的とも思える指さばきを間近に確かめることができたし、トーマス・ダウスゴー氏の独特の指揮ぶりも十分に堪能することができた。(特にトーマス氏の楽章毎、演奏が終わるたびに独特の間をとる指揮ぶりが印象的だった)
同じ曲目を異なるシチュエーションで聴くという得難い経験をすることができた今年のPMFは私にとって忘れることのできない記憶に長く残る二つのコンサートとなるであろう。