旧暦8月15日。今宵は中秋の名月です。私が橋ファンだという事はもう覚えて頂いたと思いますが、「月」も とても好きです。
今日は両方のお話で、本の紹介です。三島由紀夫の短編に「橋づくし」があります。。 1時間たらずで読めます。
【あらすじ】
旧暦8月15日の夜 所定の数の橋を渡り 橋の袂で願掛けする。 その間 一言も口をきいてはいけない 知人に会ってもいけない――この言い伝えを実行するお話。
七つの橋を渡ることにした、芸者2人(小弓・かな子)と 女子大生(満佐子)とその家の お手伝い(みな)の4人。
緑の文字は 原文 黒文字は(私の)補足 ピンクの文字は私の橋の説明です。
今夜の願事はお互ひに言ってはならないのであるが、満佐子もかな子も、あいての願事がなんであるかをもうわかってゐる。満佐子はRと一緒になりたいし、かな子は好い旦那が欲しいのである。そしてこの二人にはよくわかってゐるが、小弓はお金が欲しいのである。
略
「いいこと?さっきも言ったけど、もう一度言ふわよ。家を出てから、七つの橋を渡りきるまで絶対に口をきいちゃだめよ。
願ひごとが、だめになってしまふんだから。・・・それから知ってる人から話しかけられてもだめなんだけれど、(略)
それから同じ道を二度歩いちゃいけないんだけど これは小弓さんが先達だから・・・(略)」
「小弓さん、いい橋を選っといてくれた?」
四人は東銀座一丁目と二丁目の境のところで、昭和通りを右に曲がった。程なく四人の渡るべき最初の橋 三吉橋が 高まって見えた。
もう口をきけません。橋を渡る時と渡り終えた時にお参りの儀式をします。三吉橋は一つ渡ると 二つ渡ったことになるって書いてあります。
私にとって 一つの橋を渡ったら二つ渡ったことになる橋・・・熊本県御船の八瀬眼鏡橋は 奥の八瀬小橋が続いている。だから儀式は4回。
四人は第三の橋、築地橋を渡る。芸者のかな子は急に腹痛がしてとうとう堪え難く、渡りきることが出来ない。
肥った金持ちの中年か初老の男を夢見ている。
かな子は踊りの会でいい役をする為に、旦那が欲しいのだ。
都心の橋、築地橋にも袂には忠実に柳が植えてある と書いてある。私が柳で思い出す橋は長崎の眼鏡橋
第四の橋はかな子が抜けてひとり減り、三人で渡ります。 先達をする小弓と満佐子とみな。
満佐子はかな子を気の毒に思ふが、その気の毒さが、ふだんのやうに素直に流れ出ない、落伍したものは、これから先自分とはちがふ道を辿るほかはないといふ、冷酷な感情が浮かぶだけである。
第四の入船橋は橋から川が直角に曲がっているとあります。 熊本の二俣橋はそんな橋です。
「ちょいと小弓さん、小弓さんぢゃないの。まあしばらくね。知らん顔はひどいでせう 。ねえ小弓さん。」
第五の橋で 小弓は 知人に会ってしまいました。 小弓の望みはお金が欲しいのですが。。。
五番目の暁橋は白い塗料が塗ってある 白く塗ってある・・私は熊本大津の大願寺の橋を思います。
第六の橋で満佐子は みな と二人になり急に怖くなります。みなの願い事だけ想像がつかないのです。
満佐子は個人の願望といふものが、これほど気味の悪いものとは知らなかった。いはば黒い塊が後ろをついてくるかのやうで、かな子や小弓の内に見透かされたあの透明な願望とは違っている。
警官から何をしているのかと聞かれ 答えない。みなが答えるのが当然と満佐子は思うんです。
逃げる気かと言われ 思わず 逃げるなんてひどい と言ってしまいます。
第六の境橋 私の思うお巡りさんのいる橋 鹿児島の西田橋です。 門があるから・・・
先達も連れもいない第七の橋を渡って みなは ひとりで満願します。。
私の好きな橋は いろいろありますが、この永山橋を上から見るなら それだけで心落ち着きます。
家へかへった満佐子が泣いて訴へたので、母親はわけもわからずにみなを叱った。「一体おまへは何を願ったのだい」
さうきいても、みなはにやにや笑ふばかりで答えない。
みなの願い・・ 本には書いてありません。みなのほかに見透かしているのは十五夜のお月さまですね。
わたしも今日 十五夜の月の出るころ フィクションで七つの橋を渡り 橋の袂で14回お願いをしようかな。
今日は 長い文章を読んで頂きありがとうございます。
三島由紀夫短編 「橋づくし」 のご紹介でした。
一昨日偶然 月と橋の写真を撮ることができました。月齢12、3 ライトアップされた明石海峡大橋です。