朝日新聞の「書評」欄に、作家・出久根達郎氏が推薦する三冊が次のように紹介されている。
いかにも氏らしい選択だと思うが、我が郷土の本をお選びいただいたのは著者との御縁もまたあったのかもしれない。
著者井上智重氏は現在熊本近代文学館の館長である。
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出久根達郎 書評委員お薦め「今年の3点」
[掲載]2012年12月23日
本はまず面白くなくてはならぬ。ジャンルを問わぬ。その基準で三冊選んだ。
(1)こんなにも知的で清新で、かつ情感あふれる日本語で訳された艶笑譚(えんしょうたん)は、近年稀(まれ)。ユーモアとペーソス、
洒落(しゃれ)た暗喩、程よい皮肉の味は、井伏鱒二を思わせる。そういえば井伏の愛読書の一冊が、これだった。
(2)熊本の方言で、いひゅうもん、といい、変わり者のことである。江戸期から現代まで実在した熊本人の、風変わりで愛敬者の伝記。
本人に限らず子や孫に至るまでつづり、おのずと日本近代史を語っている。
(3)自分を語らず、写真も拒否、どんな顔の漫画家か不明。本書で初めて素顔を見せた。いや本人による架空インタビューだが、本
音を吐いていると思う。幻の作品も収録され、文芸別冊中、最高の企画