講談社・現代新書出版部からのメール
現代新書カフェ ・249 2017年12月28日より
●2455
保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱
【著者】西部邁 【本体価格】840円
【内容紹介】
世界恐慌や世界戦争の危機が見込まれる現在、「政治や文化に関する能力を国民は身につける必要がある。良き保守思想の発達した国家でなければ良き軍隊をもつことはできない」と大思想家・西部は提言する。保守の真実を語り尽くす巨人・最期の書は日本人必読である。
【担当者コメント】
『保守の真髄 老酔狂が語る文明紊乱論』は保守思想の大御所・西部邁氏の最後となる語り下ろしである。
本来語り下ろしという形式はとらない著者だったが、利き手である右手から指にかけて強い神経痛に襲われているために、この形式を取った。
本書は「歴史と国家のコモンセンスを問う」をコンセプトに、今「日本人とは何か」を保守思想の見地から改めて考察する企画である。
そのポイントは以下の10に絞られる。
1・国家の独立性と自発性を喪失させる「アメリカ追随」はやめる
2・国家の「理想と現実の間」が人々の規範とすれば、
それは「活力・公正・節度・良識」である
3・文明を腐敗させる元凶はデモクラシーである(詳細は本文参照)
4・議会の根底をなすのは選挙民の公徳心である
5・国家というものは乗り越えが不可能である
6・「国民に国防の義務あり」と認めることは大切である
7・「反原発」や「核兵器廃絶」に欺瞞や偽善がないといえるか
8・「過去の方が未来より重い」の意味をわかって欲しい
9・「人生を良いものにする4点セット」とは
「女性・友人・書物・思い出」である(チェスタトンの言葉より)
10・勇気とは生き延びようと努力することである、
そして、真の勇気とは死を覚悟してかかることである
老師・ニシベの節度のあるラスト・メッセージを全日本人に贈る。(メイド岡部)
●2457 世界神話学入門
【著者】後藤明 【本体価格】900円
【内容紹介】
神話には、ホモ・サピエンスの歴史の記憶が埋まっている。最新の神話研究とDNA研究のコラボから浮かび上がる壮大なドラマ。人類史の見方が変わる!
【担当者コメント】
日本神話では男神イザナギが、亡き女神イザナミを求めて冥界に下ります。一方ギリシア神話にも、オルフェウスが死んだ妻エウリュディケーを求めて冥界に下るという非常によく似たエピソードがあります。しかしこのパターンの神話は上記の二つに止まるものではなく、広く世界中に分布しています。では、なぜこのように、よく似た神話が世界中にあるのでしょうか?
2013年にハーヴァード大学のマイケル・ヴィツェルが、この謎を解くべく『世界神話の起源』という本を出版しました。この本によれば、世界の神話は古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに大きく分かれるとされます。「ゴンドワナ型」はホモ・サピエンスがアフリカで最初に誕生したときに持っていた神話です。それが人類の「出アフリカ」にともなう移動により、南インドからパプアニューギニア、オーストラリアに広がり、アフリカやオーストラリアのアボリジニの神話などになりました。
一方「ローラシア型」は、すでに地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後に、西アジアの文明圏を中心として新たに生み出されたと考えられています。それがユーラシア大陸に、さらにはシベリアから新大陸への移動によって南北アメリカ大陸に、そしてオーストロネシア語族の移動によって太平洋域へと、広く広がっていきました。つまりこの説によれば、日本神話もギリシア神話もローラシア型に属する同じタイプの神話ということになります。両者が似ているのは、むしろ当然のことなのです。
近年、DNA分析や様々な考古学資料の解析によって、ホモ・サピエンス移動のシナリオが詳しく再現できるようになりました。するとその成果が上記の世界神話説にぴったりと合致することがわかってきました。すなわち神話を分析することで、ホモ・サピエンスのたどった足跡が再現できるようになったのです。
著者はこの知見を元に、日本神話は世界の神話の中でどのように位置づけられるのかについても大胆な仮説を提唱します。著者によれば、日本神話は基本的には「ローラシア型」ですが、よく観察すれば、そこには「ゴンドワナ型」の要素もかなり含まれているということです。つまり日本の神話は、世界でも類例を見ないユニークな位置を占める可能性があるのです。
本書は、近年まれに見る壮大かつエキサイティングな仮説であるこの世界神話学説をベースにして、著者独自の解釈も交えながら、ホモ・サピエンスがたどってきた長い歴史をたどるものです。(YH)
●2458 核兵器と原発 日本が抱える「核」のジレンマ
【著者】鈴木達治郎 【本体価格】800円
【内容紹介】
北朝鮮の「核の脅威」にわれわれはどう対峙すべきか。世界の原子力産業は衰退期に入ったのに、なぜ自民党はその流れに「逆行」するのか。原子力委員会の元委員長代理がはじめて明かした、日本の「核」の真実。
【担当者コメント】
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞し、夏には核兵器禁止条約が採択されるなど、世界的に見れば2017年は「新しい潮流」が生まれたといえる一年でした。新春早々にはICANのフィン事務局長が来日し、長崎などで講演を行う予定です。
一方で、憂慮すべき事態が起きた年でもありました。
トランプ大統領の誕生後、世界が滅亡する「午前零時」まであと何分かを示す「世界終末時計」が「2分半前」を指し、63年ぶりの「危機的状況」に陥っていることをご存じでしょうか? 米国の巨大な核戦力をもってしても、北朝鮮の核攻撃を「抑止」できない可能性があることも、北朝鮮問題によって露呈しました。
もともと「原子力の技術が核兵器に転用できる」という意味において、核兵器と原発は密接な関係にあるわけですが、この北朝鮮問題を機に、「日本も核武装を検討すべき」という意見が目につくようになってきた中、日本の原子力政策は間違った方向に進んでいるのではないか――。そう指摘するのが、『核兵器と原発――日本が抱える「核」のジレンマ』の著者・鈴木達治郎氏なのです。
世界の原子力産業は衰退期に入っているのに、日本がその流れに逆行しようとしている理由とは? 東日本大震災で学んだはずの「福島事故の教訓」を、もう忘れてしまったのか?
122ヵ国の賛成により採択された核兵器禁止条約に、日本はなぜ参加しなかったのか? 唯一の戦争被爆国としての矜持はどこへ行ったのか?
そもそも「核の傘」は本当に意味があるのか?
原子力委員会の元委員長代理で、長崎大学核兵器廃絶研究センター長の鈴木氏が、これからの核問題の「本質」に迫った一冊です。(MK)